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第四章 復讐その四 アルグレア王国と神の眷属 前編
地下水路探索④
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「僕の能力の限界を超えた、未知の素材でできているんですから」
そう言うと、ライラ様とハンナさんは納得した様子で頷き、ソフィア様はまるで窺うようにジッと僕を見つめる。
そして。
「チョ、チョット待って!? アデルの能力の限界ってどういうこと!?」
僕の能力を一番理解できていないカルラが困惑の表情を浮かべ、僕に詰め寄った。
はは……この中で最も長く一緒にいた筈のカルラだけが分からないだなんて、皮肉もいいとこだ。
「カルラ……僕の[技術者]は、作るものの難易度などによって限界値があるんだ」
「……だから、アデルは大したものは作れないってことでしょう?」
僕の答えに、そんなことは分かっていると言わんばかりにカルラが僕を見つめる。
聞きたいことは、それじゃない、と。
「……だけど、限界は超えられない訳じゃない。僕の身体にはとんでもなく負担はかかるけど、それでも作れるんだ。この世界の知識や技術では、到底及ばないような代物であったとしても」
「っ!?」
静かにそう伝えると、カルラは息を飲んだ。
そして。
「……何なのよそれ」
「カルラ……?」
「何なのよ! なんでそれを私に言ってくれなかったのよ! だったら本当は、アデルは初めからすごい力を持っていたってことじゃない!」
カルラは怒りに満ちた表情で、僕の胸襟をつかんだ。
「最初から私にそう言ってくれたら……私だって、こんなに悩んで、つらい思いをして……エリアルの口車に乗って、わざとあなたを追い出したりしなくて済んだのに……!」
絞り出すような声でそう叫ぶと、カルラの瞳から大粒の涙が溢れ出す。
その時。
「勝手なことを……勝手なことを言うな!」
叫んだのは、ライラ様だった。
「アデル様の事情も知らないで! アデル様の悲しみも知らないで! 自分の都合で勝手にアデル様を追い出したくせにいっ!」
ライラ様が叫びながら、その右の瞳から涙を流す。
「そんなの……そんなの当たり前じゃない! アデルは四年間冒険者を続けても芽が出なかった! あのままじゃ、いつか大怪我を……いえ、下手をしたら命だって落としかねないのよ!」
カルラも負けじと叫ぶ。
これまで溜め込んできた想いを吐き出すかのように。
「私と一緒にいるせいで、アデルが冒険者に縛られたままで! もし……もし、本当に命を落とすようなことになったら……どうするのよ……!」
カルラが拳を強く握り締め、肩を震わせて嗚咽を漏らす。
そうか……カルラは僕のことを心配して、自分の想いを押し殺して……。
「いい加減にしてください!」
突然、今度はハンナさんが大声で叫んだ。
「そんなにアデル様のことが大事だったと言うのなら、なんで別れを選択したんですか! なんで……なんでその時、一緒に冒険者を辞めてアデル様に寄り添わなかったのですか!」
「あ……」
ハンナさんの指摘に、カルラが閉口する。
「……どんなにもっともらしいことを言っても、アデル様のことを想ってだなんて言っても……結局、あなたはアデル様を捨てたんですよ。自分のために」
そう言い放つと、ハンナさんは僕の肩に額を乗せ、涙を流す。
ライラ様も僕の胸に顔をうずめ、すすり泣いた。
そんな二人を、僕は優しく抱き締めると。
「カルラ……君の想いは分かった。だけど、もう……僕にはこの二人だけが全てなんだ……だから……」
カルラがギュ、と噛み締めた。
唇から、血を流す程に。
……これから告げられる、僕の言葉に耐えるために。
「僕達は、もう……終わったんだよ……」
「あ……ああ……あああああああ……!」
そして、カルラは……その場で、泣き崩れた。
◇
「……皆さん、そろそろよろしいでしょうか?」
まだカルラのすすり泣く声が聞こえる中、ソフィア様が無情に告げる。
カルラを見つめるソフィア様の瞳には、カルラを慮るような感情は一切見受けられなかった。
「……行きましょう。ここがあの見取り図の場所であることは、もう疑いの余地はないんですから」
カルラから目を逸らしながら、僕は代表してソフィア様に答える。
落ち着きを取り戻したライラ様とハンナさんも頷き、同調してくれた。
「カルラ……君は、どうする……?」
僕がそう尋ねると。
「ヒック……い、行くわ……ちゃん、と……仕事、しないと……」
カルラは乱暴に涙を拭うと、泣き腫らした顔を上げた。
「では、参りましょう」
ソフィア様はそんなカルラに気を留めることもなく、ニコリと微笑んで歩き始めた。
そんな彼女に面喰ってしまった僕達も、慌ててその後を追う。
もちろん、その中にはカルラも。
ここから先は、見取り図に示された目印を目指して進むだけなので、何の問題もない。
すると、ソフィア様がス、と僕の隣へとやって来た。
「とこるで……アデル様はどうして“黄金の旋風”と別れた後になってから、この地下水路が見取り図の場所だと教えてくださったのですか?」
背の低いソフィア様が、下から僕の顔を覗き込むように尋ねる。
「あはは……それはもちろん、“黄金の旋風”と別行動したかったから、ですよ」
そう……アイツ等が一緒にいる時にネタ晴らしをしてしまったら、結局は目的地まで一緒に行動することになる。
お互い一触即発の状態の中で一緒にいたら、それこそ突然後ろから連中が襲い掛かってくる可能性だって否定できない。
だったらこうしたほうが、変に襲われたりしなくて済むし、アイツ等の顔も見なくて済むし、ね。
「成程……では、目印の場所で彼等を待ちますか?」
「そうですね……放っておいてもいいのですが……」
そう言うと、僕はチラリ、と俯きながら歩くカルラを見ると。
「カルラ、君はどう思う?」
僕はあえて彼女に判断を委ねてみた。
あの場で言い争いになってパーティーを離脱したとはいえ、カルラは“黄金の旋風”のエースだったんだ。彼女の意見も尊重すべきだろう。
……というのは建前で、本当は踏み絵の意味も込めているんだけど。
カルラが、本当に“黄金の旋風”に未練がないのか、と。
「……あの四人と合流したほうがいいと思う」
「それはどうして?」
「……こんな言い方はアレだけど、人数が多いほうが安心だし、それに……」
「それに?」
「……彼等は、盾にもなるから」
そう言うと、カルラがニタア、と嗤った。
そう言うと、ライラ様とハンナさんは納得した様子で頷き、ソフィア様はまるで窺うようにジッと僕を見つめる。
そして。
「チョ、チョット待って!? アデルの能力の限界ってどういうこと!?」
僕の能力を一番理解できていないカルラが困惑の表情を浮かべ、僕に詰め寄った。
はは……この中で最も長く一緒にいた筈のカルラだけが分からないだなんて、皮肉もいいとこだ。
「カルラ……僕の[技術者]は、作るものの難易度などによって限界値があるんだ」
「……だから、アデルは大したものは作れないってことでしょう?」
僕の答えに、そんなことは分かっていると言わんばかりにカルラが僕を見つめる。
聞きたいことは、それじゃない、と。
「……だけど、限界は超えられない訳じゃない。僕の身体にはとんでもなく負担はかかるけど、それでも作れるんだ。この世界の知識や技術では、到底及ばないような代物であったとしても」
「っ!?」
静かにそう伝えると、カルラは息を飲んだ。
そして。
「……何なのよそれ」
「カルラ……?」
「何なのよ! なんでそれを私に言ってくれなかったのよ! だったら本当は、アデルは初めからすごい力を持っていたってことじゃない!」
カルラは怒りに満ちた表情で、僕の胸襟をつかんだ。
「最初から私にそう言ってくれたら……私だって、こんなに悩んで、つらい思いをして……エリアルの口車に乗って、わざとあなたを追い出したりしなくて済んだのに……!」
絞り出すような声でそう叫ぶと、カルラの瞳から大粒の涙が溢れ出す。
その時。
「勝手なことを……勝手なことを言うな!」
叫んだのは、ライラ様だった。
「アデル様の事情も知らないで! アデル様の悲しみも知らないで! 自分の都合で勝手にアデル様を追い出したくせにいっ!」
ライラ様が叫びながら、その右の瞳から涙を流す。
「そんなの……そんなの当たり前じゃない! アデルは四年間冒険者を続けても芽が出なかった! あのままじゃ、いつか大怪我を……いえ、下手をしたら命だって落としかねないのよ!」
カルラも負けじと叫ぶ。
これまで溜め込んできた想いを吐き出すかのように。
「私と一緒にいるせいで、アデルが冒険者に縛られたままで! もし……もし、本当に命を落とすようなことになったら……どうするのよ……!」
カルラが拳を強く握り締め、肩を震わせて嗚咽を漏らす。
そうか……カルラは僕のことを心配して、自分の想いを押し殺して……。
「いい加減にしてください!」
突然、今度はハンナさんが大声で叫んだ。
「そんなにアデル様のことが大事だったと言うのなら、なんで別れを選択したんですか! なんで……なんでその時、一緒に冒険者を辞めてアデル様に寄り添わなかったのですか!」
「あ……」
ハンナさんの指摘に、カルラが閉口する。
「……どんなにもっともらしいことを言っても、アデル様のことを想ってだなんて言っても……結局、あなたはアデル様を捨てたんですよ。自分のために」
そう言い放つと、ハンナさんは僕の肩に額を乗せ、涙を流す。
ライラ様も僕の胸に顔をうずめ、すすり泣いた。
そんな二人を、僕は優しく抱き締めると。
「カルラ……君の想いは分かった。だけど、もう……僕にはこの二人だけが全てなんだ……だから……」
カルラがギュ、と噛み締めた。
唇から、血を流す程に。
……これから告げられる、僕の言葉に耐えるために。
「僕達は、もう……終わったんだよ……」
「あ……ああ……あああああああ……!」
そして、カルラは……その場で、泣き崩れた。
◇
「……皆さん、そろそろよろしいでしょうか?」
まだカルラのすすり泣く声が聞こえる中、ソフィア様が無情に告げる。
カルラを見つめるソフィア様の瞳には、カルラを慮るような感情は一切見受けられなかった。
「……行きましょう。ここがあの見取り図の場所であることは、もう疑いの余地はないんですから」
カルラから目を逸らしながら、僕は代表してソフィア様に答える。
落ち着きを取り戻したライラ様とハンナさんも頷き、同調してくれた。
「カルラ……君は、どうする……?」
僕がそう尋ねると。
「ヒック……い、行くわ……ちゃん、と……仕事、しないと……」
カルラは乱暴に涙を拭うと、泣き腫らした顔を上げた。
「では、参りましょう」
ソフィア様はそんなカルラに気を留めることもなく、ニコリと微笑んで歩き始めた。
そんな彼女に面喰ってしまった僕達も、慌ててその後を追う。
もちろん、その中にはカルラも。
ここから先は、見取り図に示された目印を目指して進むだけなので、何の問題もない。
すると、ソフィア様がス、と僕の隣へとやって来た。
「とこるで……アデル様はどうして“黄金の旋風”と別れた後になってから、この地下水路が見取り図の場所だと教えてくださったのですか?」
背の低いソフィア様が、下から僕の顔を覗き込むように尋ねる。
「あはは……それはもちろん、“黄金の旋風”と別行動したかったから、ですよ」
そう……アイツ等が一緒にいる時にネタ晴らしをしてしまったら、結局は目的地まで一緒に行動することになる。
お互い一触即発の状態の中で一緒にいたら、それこそ突然後ろから連中が襲い掛かってくる可能性だって否定できない。
だったらこうしたほうが、変に襲われたりしなくて済むし、アイツ等の顔も見なくて済むし、ね。
「成程……では、目印の場所で彼等を待ちますか?」
「そうですね……放っておいてもいいのですが……」
そう言うと、僕はチラリ、と俯きながら歩くカルラを見ると。
「カルラ、君はどう思う?」
僕はあえて彼女に判断を委ねてみた。
あの場で言い争いになってパーティーを離脱したとはいえ、カルラは“黄金の旋風”のエースだったんだ。彼女の意見も尊重すべきだろう。
……というのは建前で、本当は踏み絵の意味も込めているんだけど。
カルラが、本当に“黄金の旋風”に未練がないのか、と。
「……あの四人と合流したほうがいいと思う」
「それはどうして?」
「……こんな言い方はアレだけど、人数が多いほうが安心だし、それに……」
「それに?」
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