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第三章 復讐その三 ハリー=カベンディッシュ
アデルの力
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「あははははははははははははははははは!」
——ザシュ、ドチャ、スグ。
「うわあああ! 来るな! 来る……ギャヒッ!?」
「イヤだあああああっ……アエ!?」
「ママ……ママアアアアア……ヘブッ!?」
ライラ様が今度は魔法使いに狙いを定め、その死神の鎌を袈裟切りに、横薙ぎに、それこそありとあらゆる角度から振り続ける。
——ドン! ドン! ドン!
「ガ……ギャ……ヒ……!?」
「うふふふふ! ほうら、もっと踊りなさいな!」
一方のハンナさんは、あえて急所ではなく手脚を撃ち抜いて執拗に弄ぶ。
まるで、操り人形で無邪気に遊ぶ幼い少女のように、
その時。
「【火炎槍】!」
かなりの大きさの炎の槍が、ライラ様目がけて襲い掛かった。
「あは♪」
でも、ライラ様はそれを避けることなく、炎の槍に向け、ただ死神の鎌をかち上げた。
すると炎の槍は真っ二つとなり、そのまま霧散した。
「くく……っ!? 魔法ですら切り裂くというのか……! だがっ!」
魔法使い達の中でもひと際目立つ衣服を着た、恐らく[魔を唱える者]であろう男が、両手をかざしながら詠唱すると、炎の竜巻が出現した。
「こうなったら男の保護はどうでもいい! ここでまとめて葬り去る! 【紅蓮】!」
男の言葉に合わせ、炎の竜巻が魔法使い達の死体を巻き込みながら僕達へと迫る。
ライラ様の鎌でも、さすがにこの規模の魔法の無効化は難しいか……。
なら!
「ライラ様! ハンナさん! 僕の後ろへ!」
「「っ!」」
僕の合図と共に、二人が僕の背後に素早く移動する。
そして、僕は地面に両手をつくと。
「【設計】!【加工】!【製作】!」
僕達三人を囲むかのように、堅牢な壁が幾重にも構築されていく。
これは、アイザックの街で僕が【製作】していた要塞の小型版のようなもの。
元々が魔法による砲撃に耐えることも想定していたので、たとえ上位職の[魔を唱える者]であっても、たった一人の魔法を防ぐことなんて容易い。
「ば、馬鹿な……こんな……こんな馬鹿なことがあってたまるかあああああ!」
[魔を唱える者]の男の狼狽える声が聞こえる。
今までの僕だったら、小型とはいえこんな一瞬のうちに要塞を建造することなんてできなかっただろう。
でも、僕だって命懸けで成長してきたんだ。
大切な二人を護るために。
愛おしい二人を支えるために。
「ライラ様! ハンナさん! 今です!」
「「はい!」」
僕は建造した小型要塞の前面を開放すると、棒立ちになっている[魔を唱える者]の男の姿が露わになる。
そして。
「うふふ♪」
ハンナさんがフギンとムニンの狙いを定め、その引き金を引く。
——ドン! ドン! ドン! ドン!
「ア!? ガッ!? ギャ!? ギヒ!?」
弾丸が命中するたびに男の身体はビクン、ビクンと跳ね、両腕と両脚がちぎれ飛ぶ。
そこへ、いつの間にか男に肉薄していたライラ様が、死神の鎌を振り上げると。
「あは♪」
——ザシュ。
男が地面に転がり落ちる前に、ライラ様は男の首を刈り取った。
「……【加工】」
全てが終わり、僕は能力を発動して建造した小型要塞を無に帰す。
視界が広がり周りを見渡すと、近衛騎士と魔法使い達のグチャグチャになった死体が散乱していた。
「アデル様……その、お身体は大丈夫ですか……?」
いつの間にか僕の傍に来ていたライラ様とハンナさんが、心配そうに僕に尋ねる。
「あはは、これくらいでしたら全然大丈夫ですよ。大したものは作っていませんし」
僕は努めておどけながらそう答える。
だけど……この台詞は今だからこそ言える言葉だ。
だって、アイザックの街を出る前と今では、明らかに能力が大幅に上昇しているんだから。
「……本当、ですか?」
「はい」
おずおずと上目遣いで問い掛けるハンナさんに、僕は笑顔で頷くと。
「よかった……よかった、です……」
ホッと胸を撫で下ろし、安堵の表情を見せた。
「さて……では、どうしますか?」
僕はライラ様へと向き直り、今後について尋ねる。
一旦態勢を立て直すため、このまま王宮を去るか。
それとも……勢いに乗って宰相、そして国王を討つか。
「アデル様はどう思われますか?」
「僕ですか?」
するとライラ様は、僕の眼をジッと見つめて意見を求めるので、思わず聞き返すした。
「はい……確かにこの復讐は私のものです。ですが、私はアデル様の……私をここまで導いてくださった、誰よりも大切なアデル様のお言葉に従いたいのです……」
そう告げると、ライラ様は僕の胸にそっと寄り添い、僕の顔を覗き込んだ。
僕は……。
その時。
「国王陛下の御成りである!」
突然そんな叫び声が聞こえると、王宮の玄関が勢いよく開かれ、近衛騎士……いや、それとは少し違うまた別の騎士が、玄関の両脇にズラリ、と並んだ。
あの騎士……近衛騎士よりもさらに近い、国王の警護のみに特化した騎士、か……。
そして、金色の髪と髭を蓄えた豪奢な男が、アクアブルーに輝く双眸で僕達を見つめながら、居並ぶ騎士達で作る路を練り歩く。
あれが……アルグレア王国の国王。
「……“エドガー=フォン=アルグレア”」
——ザシュ、ドチャ、スグ。
「うわあああ! 来るな! 来る……ギャヒッ!?」
「イヤだあああああっ……アエ!?」
「ママ……ママアアアアア……ヘブッ!?」
ライラ様が今度は魔法使いに狙いを定め、その死神の鎌を袈裟切りに、横薙ぎに、それこそありとあらゆる角度から振り続ける。
——ドン! ドン! ドン!
「ガ……ギャ……ヒ……!?」
「うふふふふ! ほうら、もっと踊りなさいな!」
一方のハンナさんは、あえて急所ではなく手脚を撃ち抜いて執拗に弄ぶ。
まるで、操り人形で無邪気に遊ぶ幼い少女のように、
その時。
「【火炎槍】!」
かなりの大きさの炎の槍が、ライラ様目がけて襲い掛かった。
「あは♪」
でも、ライラ様はそれを避けることなく、炎の槍に向け、ただ死神の鎌をかち上げた。
すると炎の槍は真っ二つとなり、そのまま霧散した。
「くく……っ!? 魔法ですら切り裂くというのか……! だがっ!」
魔法使い達の中でもひと際目立つ衣服を着た、恐らく[魔を唱える者]であろう男が、両手をかざしながら詠唱すると、炎の竜巻が出現した。
「こうなったら男の保護はどうでもいい! ここでまとめて葬り去る! 【紅蓮】!」
男の言葉に合わせ、炎の竜巻が魔法使い達の死体を巻き込みながら僕達へと迫る。
ライラ様の鎌でも、さすがにこの規模の魔法の無効化は難しいか……。
なら!
「ライラ様! ハンナさん! 僕の後ろへ!」
「「っ!」」
僕の合図と共に、二人が僕の背後に素早く移動する。
そして、僕は地面に両手をつくと。
「【設計】!【加工】!【製作】!」
僕達三人を囲むかのように、堅牢な壁が幾重にも構築されていく。
これは、アイザックの街で僕が【製作】していた要塞の小型版のようなもの。
元々が魔法による砲撃に耐えることも想定していたので、たとえ上位職の[魔を唱える者]であっても、たった一人の魔法を防ぐことなんて容易い。
「ば、馬鹿な……こんな……こんな馬鹿なことがあってたまるかあああああ!」
[魔を唱える者]の男の狼狽える声が聞こえる。
今までの僕だったら、小型とはいえこんな一瞬のうちに要塞を建造することなんてできなかっただろう。
でも、僕だって命懸けで成長してきたんだ。
大切な二人を護るために。
愛おしい二人を支えるために。
「ライラ様! ハンナさん! 今です!」
「「はい!」」
僕は建造した小型要塞の前面を開放すると、棒立ちになっている[魔を唱える者]の男の姿が露わになる。
そして。
「うふふ♪」
ハンナさんがフギンとムニンの狙いを定め、その引き金を引く。
——ドン! ドン! ドン! ドン!
「ア!? ガッ!? ギャ!? ギヒ!?」
弾丸が命中するたびに男の身体はビクン、ビクンと跳ね、両腕と両脚がちぎれ飛ぶ。
そこへ、いつの間にか男に肉薄していたライラ様が、死神の鎌を振り上げると。
「あは♪」
——ザシュ。
男が地面に転がり落ちる前に、ライラ様は男の首を刈り取った。
「……【加工】」
全てが終わり、僕は能力を発動して建造した小型要塞を無に帰す。
視界が広がり周りを見渡すと、近衛騎士と魔法使い達のグチャグチャになった死体が散乱していた。
「アデル様……その、お身体は大丈夫ですか……?」
いつの間にか僕の傍に来ていたライラ様とハンナさんが、心配そうに僕に尋ねる。
「あはは、これくらいでしたら全然大丈夫ですよ。大したものは作っていませんし」
僕は努めておどけながらそう答える。
だけど……この台詞は今だからこそ言える言葉だ。
だって、アイザックの街を出る前と今では、明らかに能力が大幅に上昇しているんだから。
「……本当、ですか?」
「はい」
おずおずと上目遣いで問い掛けるハンナさんに、僕は笑顔で頷くと。
「よかった……よかった、です……」
ホッと胸を撫で下ろし、安堵の表情を見せた。
「さて……では、どうしますか?」
僕はライラ様へと向き直り、今後について尋ねる。
一旦態勢を立て直すため、このまま王宮を去るか。
それとも……勢いに乗って宰相、そして国王を討つか。
「アデル様はどう思われますか?」
「僕ですか?」
するとライラ様は、僕の眼をジッと見つめて意見を求めるので、思わず聞き返すした。
「はい……確かにこの復讐は私のものです。ですが、私はアデル様の……私をここまで導いてくださった、誰よりも大切なアデル様のお言葉に従いたいのです……」
そう告げると、ライラ様は僕の胸にそっと寄り添い、僕の顔を覗き込んだ。
僕は……。
その時。
「国王陛下の御成りである!」
突然そんな叫び声が聞こえると、王宮の玄関が勢いよく開かれ、近衛騎士……いや、それとは少し違うまた別の騎士が、玄関の両脇にズラリ、と並んだ。
あの騎士……近衛騎士よりもさらに近い、国王の警護のみに特化した騎士、か……。
そして、金色の髪と髭を蓄えた豪奢な男が、アクアブルーに輝く双眸で僕達を見つめながら、居並ぶ騎士達で作る路を練り歩く。
あれが……アルグレア王国の国王。
「……“エドガー=フォン=アルグレア”」
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