機械仕掛けの殲滅少女

サンボン

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プロローグ

『役立たず』

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「“アデル”……悪いが、お前とはここまでだ」

 クエスト対象であるオーガを討伐して魔石を取り出している最中、拠点とする都市アイザック最強のパーティー『黄金の旋風』のリーダーである“エリアル”が、突然僕に告げた。

「は……? い、いきなり何を……!」
「いきなりじゃない、これは俺達全員の総意だ。なあ、みんな?」

 エリアルは後ろへと振り返り、他のメンバーへと同意を求めると。

「ええ、ハッキリ言って、アンタって足手まといなのよね。大体、アンタの武器のボウガンだって、アタシの魔法があれば不要じゃない?」

 そう言ってせせら笑うのは、魔法使いの“レジーナ”。

「だ、だけど君の魔力が尽きた時、一体誰が遠距離から支援を……「はあ? アタシの魔力がそう簡単に尽きるとでも思ってるワケ?」……い、いや、それは……」

 レジーナにすごまれ、僕は思わず口ごもる。

「キャハハ! それにアデルのボウガンって連射きかないし、なんの支援にもならないよねー!」

 今度は斥候で獣人の“ロロ”が僕を指差しながらケラケラと笑う。

「で、でも、その分命中率が……「アハハ、かすり傷程度しかダメージ与えられないんじゃ意味ないでしょ!」」

 た、確かに僕のボウガンは、連射できないし非力な僕じゃ威力を出そうにも弦を引けないけど……。

「だ、だったら! それ以外のこと……物資の調達とか、ギルドとの交渉だって……!」
「はあ……そんなものは、私達の稼ぎなら専門の奴を雇えばいいだけだろう。戦闘に役立たない時点で、君は無用なのだ!」

 イライラした様子で怒鳴るのは、パーティーの守りの要、騎士の“セシル”だった。

「そ、そんな……な、なあ、“カルラ”、君も何とか……「悪いけどアデル、私もみんなと同じ意見だから」……カルラ!?」

 パーティー最強の剣士で、幼馴染で……そして、恋人でもあるカルラが無表情で突き放す。

「ど、どうして!? 四年前に村を出る時、誓ったじゃないか!『一緒に最高の冒険者を目指そう』って!」
「ええ……そうね……」
「な、なら……!」
「でも、あなたのスキル……なんの役にも立たないじゃない」

 冷たく言い放たれた言葉に、僕は思わず俯く。

 僕のスキルは[技術者エンジニア]。

 能力は、必要な武器や道具を【設計デザイン】し、【加工キャスト】し、【製作クラフト】するといったもの。
 ただし……高性能で希少なものになればなる程、僕の身体に大きな負担が掛かるため、結局は簡単なもの、原始的なものしか作れないけど。

「た、確かにみんなみたいな強力なスキルは持ってないけど、それでも、僕のスキルがあれば必要なものをその場で作ったり・・・・できるじゃないか! それだけでも役に……「役に立たない」」

 僕はカルラから、無情にもハッキリと告げられた。
『役に立たない』、と。

「……私達は、ガラクタや“役立たず”なんていらないの。必要なのは強くて優秀なメンバーよ」
「そ、そんな……」

 最愛の幼馴染の言葉に、僕はガックリと膝をついた。

「心配するなアデル。カルラのことは、この俺が大切にするから」
「…………………………え?」

 エリアルはそう告げると、カルラを抱き寄せ、カルラもとろけるような表情を見せた。
 そして僕は、そんな二人の様子に思わず呆けた声を漏らす。

 え? だって僕はカルラの幼馴染で、そして、恋人で……?

「キャハハ! アデルってば知らなかったの? 随分前からこの二人付き合ってるのに!」
「フン、ホント鈍いわね。そんなだから役立たずのクズなのよ。生きてる価値なし!」
「プッ、ククク……い、いやすまん。だ、だがこれは……!」

 そんな僕に、他のメンバーは嘲笑と侮蔑の視線を向ける。

 するとカルラは何を思ったか、討伐したばかりのオーガから抜き取った魔石を放り投げ、僕の目の前にコロン、と転がした。

「……まあ、それは餞別よ。しばらくは生活の足しになるでしょ?」
「ハハハ、カルラは優しいなあ……」
「エリアル……」

 そう言って、見つめ合うカルラとエリアル。

「……っ!」

 僕はそのオーガの魔石を素早く拾うと、その場から逃げるように走り去った。

 ◇

「チクショウ! チクショウ! チクショウ!」

 がむしゃらに森の中を走りながら、大声で叫ぶ。

 悔しくて、情けなくて、つらくて、切なくて……!
 この四年間、僕はあのパーティーのために尽くしてきた! 僕にできることは何だってやった!
 なのに……なのに、その結果がこれかよ!

 僕は腕を振り上げ、握り締めていたオーガの魔石を思いきり投げ捨てようとして……結局、思いとどまった。
 こんなもの、持っていたってどうにもならないのに。

 でも。

「……これがないと、生活もままならない、か」

 パーティーの金は全部エリアルが管理していたから、僕は少しの金も持ち合わせていない。
 少しは分配してくれと頼んだ時も、『お前は活躍していないから金の分配はなしだ』っていつも断られていたから。

 それでも、カルラを支えようと思って、そのまま必死で頑張ってきたのに……なのに……!

「う、うう……」

 僕の目から、涙がこぼれる。

「うああああああああ……!」

 僕は四つん這いになり、地面をひたすら叩いて泣き叫んだ。
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