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温情とは名ばかりの処刑方法
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「その不届きな王子の登場ですよ」
現れたのは、八頭もの馬にゆっくりと引かれる荷馬車。
荷台には、ルイとフィリップに加え、将兵……副団長のバラケやデュガリーの姿もあった。
そのことからも、あの二人の副団長も聖女の治癒の力で回復してもらえたみたいだな。
僕としては好都合。
これでいよいよ、レナルドの元に送りつけてやることができるから。
「王国め、くたばれ!」
「よくもこの皇都を狙ってくれたな!」
今日の処刑を見ようと集まった大勢の民衆が、荷台に乗るルイ達に向かって石を投げつける。
それから逃れるために連中はうずくまって叫んでいるが、どうせ『やめろ』だの『俺を誰だと思っている』だの、意味のない言葉を吐いていることだろう。
とにかく、広場に到着するまで、できるだけ怪我を負わないでくれよ。
そうじゃないと、この後の処刑が白けてしまうから。
そして。
「ヴァルロワ王国第二王子ルイ=デュ=ヴァルロワ、並びに第三王子フィリップ=デュ=ヴァルロワ以下五名、到着いたしました」
「うむ、ご苦労」
連中を運んできた騎士の報告に、エドワード王が頷く。
「さて……諸君! 無謀にも女神アリアンロッドの加護を受ける神聖なる皇都、ロンディニアを狙った賊共の処刑を行う!」
エドワード王の宣言により、民衆の興奮が最高潮となる。
……いや、彼等の表情や怒号を聞く限り、もはや狂気と言ってもおかしくはない。
それもそのはず。百年以上にも及ぶ長い戦いの中で、いずれかの国の王族が敵国によって処刑をされるのは、これが初めてなのだから。
もちろん、過去に戦争により亡くなった王族はいたが、いずれも戦場で命を落とした者ばかり。
つまり、ルイとフィリップは、敵の手によって衆人環視のもと処刑されるという屈辱を味わうのだ。
この不名誉な出来事は、永く歴史に刻まれることだろう。
「それで、この者共の処刑に当たってなのだが……」
エドワード王は顎に手を当て、僕に意味深な視線を向けると。
「此度の王国による皇都襲撃を阻止した立役者である皇国の剣、ギュスターヴのたっての願いにより、温情を与えてやることにした」
「「「「「っ!?」」」」」
まさかの発言に、僕とエドワード王を除く全ての者が息を呑んだ。
ルイとフィリップに至っては、ひょっとしたら助かるのではないかと色めき立つ。
だが。
「野良犬にも等しい王国の者共よ。皇国の剣ギュスターヴをその手で屠ることができたならば、その命助けてやろう」
「「「「「え……?」」」」」
エドワード王の言葉に、ルイ達は呆けた声を漏らす。
ただし、その意味合いは違っているが。
おそらくルイは、僕ごときを倒すことなど簡単だと思っているのだろう。その証拠に、表情がますます明るくなっている。
一方で、王国使節団として皇国にやって来て痛い目に遭ったフィリップ達は、僕の実力を知っているから、その顔は血の気を失っていた。
「ギュ、ギュスターヴ殿下……!?」
「アビゲイル殿下、行ってまいります」
困惑するアビゲイル皇女の小さな手を取り口づけを落とすと、僕はサーベルを持ってルイ達の元へゆっくりと歩を進める。
「この者達の枷を解き、武器を持たせてやってくれ」
「「はっ!」」
僕の指示を受け、騎士達は剣や槍、盾などを用意した。
フィリップには特別に、襲撃の際に着用していた甲冑までくれてやる。
「さあ、観客達が待っている。早く準備しろ」
「あ、ああ……」
ルイ達は各々得意とする武器を取り、横一線に並んだ。
「さあ皆の者よ! ギュスターヴが王国の賊を屠る様を、見届けるがいい!」
あはは……エドワード王、それじゃ温情とは言いませんよ。
もちろん、最初から生かしておくつもりはないですが。
「それで、誰が先に戦うんだ?」
手招きするが、連中は動こうとも……いや、僕のことを『不義の子の第六王子』としか認識していない将兵が一人、一歩前に出た。
「貴様、名は?」
「ヴァルロワ王国伯爵、オリヴィエ=テュラム」
まあ、貴族が従軍していてもおかしくはないけど、テュラム伯爵というのは聞いたことがないな。
といっても、一度目の人生を含めて貴族連中と関わり合いになる機会なんてなかったのだから、知らないのも当然か。
「さあ……かかってこい」
「御免ッッッ!」
バスタードソードを上段に構え、テュラム伯爵は一気に詰め寄る。
だが。
「ぬおッッッ!?」
僕と肉薄した瞬間、バランスを崩して地面に倒れた。
それもそのはず。だって、踏み込んだはずの右足が僕の一振りによって斬り落とされているのだから。
「あ、足が……っ!?」
「片足じゃ寂しいだろうから、揃えてやろう」
「っ!? うわああああああああああああッッッ!?」
残る左足も斬り落とし、テュラム伯爵が地面を転げまわる。
別に僕は羽虫をいたぶる趣味はないし、そもそも王国に恨みを持つものの、知らない者に対してまでそこまでの感情は持ち合わせていない。
なので。
「げ……ふ……っ」
喉を一突きし、すぐに息の根を止めてやった。
現れたのは、八頭もの馬にゆっくりと引かれる荷馬車。
荷台には、ルイとフィリップに加え、将兵……副団長のバラケやデュガリーの姿もあった。
そのことからも、あの二人の副団長も聖女の治癒の力で回復してもらえたみたいだな。
僕としては好都合。
これでいよいよ、レナルドの元に送りつけてやることができるから。
「王国め、くたばれ!」
「よくもこの皇都を狙ってくれたな!」
今日の処刑を見ようと集まった大勢の民衆が、荷台に乗るルイ達に向かって石を投げつける。
それから逃れるために連中はうずくまって叫んでいるが、どうせ『やめろ』だの『俺を誰だと思っている』だの、意味のない言葉を吐いていることだろう。
とにかく、広場に到着するまで、できるだけ怪我を負わないでくれよ。
そうじゃないと、この後の処刑が白けてしまうから。
そして。
「ヴァルロワ王国第二王子ルイ=デュ=ヴァルロワ、並びに第三王子フィリップ=デュ=ヴァルロワ以下五名、到着いたしました」
「うむ、ご苦労」
連中を運んできた騎士の報告に、エドワード王が頷く。
「さて……諸君! 無謀にも女神アリアンロッドの加護を受ける神聖なる皇都、ロンディニアを狙った賊共の処刑を行う!」
エドワード王の宣言により、民衆の興奮が最高潮となる。
……いや、彼等の表情や怒号を聞く限り、もはや狂気と言ってもおかしくはない。
それもそのはず。百年以上にも及ぶ長い戦いの中で、いずれかの国の王族が敵国によって処刑をされるのは、これが初めてなのだから。
もちろん、過去に戦争により亡くなった王族はいたが、いずれも戦場で命を落とした者ばかり。
つまり、ルイとフィリップは、敵の手によって衆人環視のもと処刑されるという屈辱を味わうのだ。
この不名誉な出来事は、永く歴史に刻まれることだろう。
「それで、この者共の処刑に当たってなのだが……」
エドワード王は顎に手を当て、僕に意味深な視線を向けると。
「此度の王国による皇都襲撃を阻止した立役者である皇国の剣、ギュスターヴのたっての願いにより、温情を与えてやることにした」
「「「「「っ!?」」」」」
まさかの発言に、僕とエドワード王を除く全ての者が息を呑んだ。
ルイとフィリップに至っては、ひょっとしたら助かるのではないかと色めき立つ。
だが。
「野良犬にも等しい王国の者共よ。皇国の剣ギュスターヴをその手で屠ることができたならば、その命助けてやろう」
「「「「「え……?」」」」」
エドワード王の言葉に、ルイ達は呆けた声を漏らす。
ただし、その意味合いは違っているが。
おそらくルイは、僕ごときを倒すことなど簡単だと思っているのだろう。その証拠に、表情がますます明るくなっている。
一方で、王国使節団として皇国にやって来て痛い目に遭ったフィリップ達は、僕の実力を知っているから、その顔は血の気を失っていた。
「ギュ、ギュスターヴ殿下……!?」
「アビゲイル殿下、行ってまいります」
困惑するアビゲイル皇女の小さな手を取り口づけを落とすと、僕はサーベルを持ってルイ達の元へゆっくりと歩を進める。
「この者達の枷を解き、武器を持たせてやってくれ」
「「はっ!」」
僕の指示を受け、騎士達は剣や槍、盾などを用意した。
フィリップには特別に、襲撃の際に着用していた甲冑までくれてやる。
「さあ、観客達が待っている。早く準備しろ」
「あ、ああ……」
ルイ達は各々得意とする武器を取り、横一線に並んだ。
「さあ皆の者よ! ギュスターヴが王国の賊を屠る様を、見届けるがいい!」
あはは……エドワード王、それじゃ温情とは言いませんよ。
もちろん、最初から生かしておくつもりはないですが。
「それで、誰が先に戦うんだ?」
手招きするが、連中は動こうとも……いや、僕のことを『不義の子の第六王子』としか認識していない将兵が一人、一歩前に出た。
「貴様、名は?」
「ヴァルロワ王国伯爵、オリヴィエ=テュラム」
まあ、貴族が従軍していてもおかしくはないけど、テュラム伯爵というのは聞いたことがないな。
といっても、一度目の人生を含めて貴族連中と関わり合いになる機会なんてなかったのだから、知らないのも当然か。
「さあ……かかってこい」
「御免ッッッ!」
バスタードソードを上段に構え、テュラム伯爵は一気に詰め寄る。
だが。
「ぬおッッッ!?」
僕と肉薄した瞬間、バランスを崩して地面に倒れた。
それもそのはず。だって、踏み込んだはずの右足が僕の一振りによって斬り落とされているのだから。
「あ、足が……っ!?」
「片足じゃ寂しいだろうから、揃えてやろう」
「っ!? うわああああああああああああッッッ!?」
残る左足も斬り落とし、テュラム伯爵が地面を転げまわる。
別に僕は羽虫をいたぶる趣味はないし、そもそも王国に恨みを持つものの、知らない者に対してまでそこまでの感情は持ち合わせていない。
なので。
「げ……ふ……っ」
喉を一突きし、すぐに息の根を止めてやった。
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