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はじまり
白き大結晶
しおりを挟む「やっと着いわね。ただ快適すぎて元の生活に戻れないかも」
余程快適な旅だったのかカシミアは満足そうにマリベールに言った。
(私もそう思います。最っ高~でした!ごはん!)
コクンコクンと同意するマリベール。
「お疲れ様でした。ここから奥に小さく見える皇城へ向かい国主ベアトリクス様と謁見していただきます。」
ギデオンははしゃいでいる二人に伝えて紋章の入った送迎車へ案内した。
皇国グランバニア
様々な伝説が残る国。多くの島々で形成されているが国土面積では世界二位の広さを持つ。古きを大切にし最先端の魔法科学も研究している。
自国と決して見劣りのしない街並みを眺めていると
「ここからが皇城の敷地になります。」
「えっと…お城はどこに?」
「まだまだですよ。」
それから敷地内に入ってからも車に揺られながら半日たったころ
「着きました。ベアトリクス様がお待ちです。長旅でしたがすぐに謁見に入らせて頂きます。」
(…………。疲れた。)
やがて荘厳な扉の前まで案内してもらい扉が開く。
そこには多数の重鎮と見受けられる人とあからさまに豪華な玉座に座る美女がいた。
カシミアとマリベールは定められた位置まで進み挨拶をする。
「カシミア・ローレライとマリベール・ミューズで御座います。こちらの者は口が利けぬ為代わりに…。」
「ここまでの長旅お疲れ様でした。私はベアトリクス・カルヴァン・グランバニア。皇国グランバニアを治める者です。私の事はベアトリクスとお呼びください。カシミアさんとマリベールさんですね。カシミアさん、貴女に態々この国まで来ていただいたのは端的に言えば救って欲しいのです。世界を!」
「あ、あのベアトリクス様?理由もそうですが何故私が?私にお力になれる事があるのでしょうか?」
「もちろんです。まずは見て頂くのが早いのですね!参りましょう。」
王城に着いて早々、ベアトリクスに言われるが儘到着したのは城の裏にある厳重に守られた扉と階段を降りた先にある祠であった。その祭壇には数メートルもある白い結晶の様なものが鎮座していた。
「これは我が皇国に伝わる白き大結晶と呼ばれる物です。」
「白?」
「はい。現在七割近く黒く濁っているのがわかりますね。あれは世の穢れです。代々王族に伝わるある言葉があります。それは…」
【世の穢れし種。白き器を満たす時、砕けて散るは人も世も。これを鎮めたるは継がれし音色。】
「これが我がグランバニアの王族に伝わる白き大結晶の言葉。この白き大結晶は世界の魔力を安定させ穢れをためる魔石です。代々我が皇族に伝わりグランバニア家が護ってきた物なのです。この様に黒く濁る前に皇家の力で浄化するのですが…。」
「それが今出来ないから私が呼ばれた。と言うことなのですね?」
「ええ。」
「その方法は?」
「歌です。」
「歌!」
(成程!カシミアさんなら!)
「この白き結晶と同じ様に代々継がれていくものがあります。それは聖歌力です!その歌は世界の黒き物を浄化し、暗きを祓う唯一のチカラ。そのチカラは我が皇族グランバニア家に継承発現されるはずだったのですが私にはその兆候が見られませんでした。」
ベアトリクスが話しながら取り出した物は綺麗な青色のクリスタルだった。
「これは聖歌力を持つ者が歌うと反応し辺り一帯を魔力で満たし歌い手を助けると言われる聖魔石です。私が歌ってもこれは一切反応しなかった。この事態を重く受け止め早急に聖歌力を持つ歌い手を探さねばなりませんでした。…が!」
(ははーん!案外早く見つかったと!大陸ではカシミアさんの歌は有名だったからね。)
何故かドヤ顔でマールが胸を張る。
「それではすぐにでも歌った方がよろしいですか?ただお聞きしたい事が。…私がその歌い手である事は確定しているのですか?」
「確定は…してません。ですが貴女を見つけた聖詠隊隊長のギデオンがほぼ間違いないと言うので来て頂いたのです。歌姫セイレーン。白き大結晶の浄化は2日後にしましょう。体調や魔力が万全で聖魔石の力を借りても相当な消耗が予想されます。今日明日は城内でゆっくりと休まれて下さい。皇都を散策されるのも良いでしょう。」
皇国に着いて早足で呼ばれた説明だけ受けた二人は確かに疲れていた。それを見越しての2日後だった。
白き大結晶が黒に染まった時どうなるのか、万が一カシミアが歌い手でなかったらどうするのか。色々な不安もあったが皇城の客間に案内されたふたりは気持ちの整理をする為お茶を飲んでいた。
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