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儀式の直前 その頃彼らは・・・
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ギルドの野営を離れ、黒衣の男によって飛ばされたアクセルと合流したケネトは、回帰の山の七号目付近にて神饌の儀式に遭遇していた。
辺りを真っ白な濃霧に包まれた二人だったが、山に慣れている彼らであっても方向を見失ってしまうほど、同じ景色が次から次へと霧の中から現れるのを目の当たりにしていた。
「ケネト、方位磁針はどうだ?」
「駄目だ、針が上を向いちまって使い物にならない」
「どうすんだ、このままじゃ山頂へは・・・」
「道中に灯火を置いて来ている。それらの対角線上に進めば山頂へ向かう筈だ」
「今はそれに頼るしかねぇか。しかしこの異常な濃霧・・・これが神饌の儀式って奴なのか?」
まだ山頂からは遠い所にいた二人には、上空の赫い眼のようなものは見えてはいなかった。
彼らよりも少し先を進んでいたカガリは、濃霧が広がる事によってより一層ミネの気配を濃く感じるようになっていた。山のヌシとして光脈の精気を吸い出す装置になった事で、放出された濃霧の中に僅かながらミネの魔力が混じっていたのだ。
それは山頂の方からより濃く伝わっており、肉眼では見えずともカガリには山頂への道がしっかりと分かっていた。
「ミネさんの魔力だ。向こうの方からやって来てる。という事は、あっちにミネさんが・・・。待ってて下さいミネさん。俺が絶対探し出してみせますからッ・・・!」
カガリよりも更に先。シン達やアクセルらの捜索依頼を受けて動き出して、捜索隊の隊長ライノは、五号目に野営を設置すると山の異変にミネの影を感じ、彼の気配のする方へ向けて山道を登っていた。
彼は既に八号目を通り過ぎた所まで来ており、突如現れたら濃霧に苦戦していた所だった。
「ミネッ!ミネなんだろ!?俺がギルドの隊長になってから疎遠になっちまったが、俺はギルドと調査隊の架け橋になろうと働きかけて来たつもりだ!歪み合う間柄では、我々はいつになってもこの山の謎を解き明かせないままだ」
そこにいる嘗ての旧友に話しかけるように声を上げ続けるライノ。だが彼の声はその濃霧に呑まれ、ミネの元へ届く事はなかった。
「この霧もお前の仕業なんだろ?俺はあの時、お前に心を許して貰えたと思っていたんだ。だがあれは俺の独りよがりだったのか?俺だけか?ハインドの街の全員が協力し合い、山の怪異に挑むべきだと思っているには!?」
彼の位置からもまだ、山頂で見えていた巨大な眼のようなものは見えない。しかし、ライノもまたカガリのようにミネから感じる特殊な気配のようなものに引き寄せられ、正確に山頂へ向けて歩みを進めていた。
そして最もミネの元へと近付いていたツクヨは、九号目付近まで辿り着きいよいよ山頂まで目前の所まで来ていた。そんな彼の元には、上空の濃霧の中に蠢く巨大な白い壁のようなものが見えていた。
「なッ・・・何だあれ!?空が・・・動いてる?いや、何かそこにあるのか。ミネさん、貴方が言っていた儀式というのがもう始まってしまわれたのですか?」
彼の位置からだと、布都御魂剣の能力で生物の気配が何とか届く範囲に入っていた。祭壇の周りに集まる生命の大きな渦の他に、果てしなく大きな気配が上空に現れていた。
一方、そんな彼らとは対照的に野営を畳み山を下っていたシン達とギルドの捜索隊達の目にも、山道の登りの道の先が濃霧に包まれ始めたのが見えていた。
「すげぇ霧・・・。山じゃよくある光景なのかぁ?」
「いいや?あんなの俺達でも見た事がない。なぁ?」
ツバキが後ろを向きながらギルドの隊員と話しているのが聞こえる。港町での生活で様々な海賊達や漁師達と交流の多かったツバキは、シン達の中でもその地域の人間に馴染むのが最も早かった。
そもそも彼が人懐っこいのもあるのだろうが、おかげで様々な情報がツバキを通して得られる事も少なくはない。彼が山道でギルドの隊員達との会話で聞いた話によると、回帰の山の異変の中でも、これ程の濃霧は経験がないという。
嘗ての記録にはもしかしたらあるかも知れないがと語る様子からも、誰も神饌の儀式がどのように行われるのかを知る者はいないようだ。しかし逆に言えば、それ程の異変が起きているという事が、その神饌が行われる前兆かも知れないと、一行はその足を早めた。
辺りを真っ白な濃霧に包まれた二人だったが、山に慣れている彼らであっても方向を見失ってしまうほど、同じ景色が次から次へと霧の中から現れるのを目の当たりにしていた。
「ケネト、方位磁針はどうだ?」
「駄目だ、針が上を向いちまって使い物にならない」
「どうすんだ、このままじゃ山頂へは・・・」
「道中に灯火を置いて来ている。それらの対角線上に進めば山頂へ向かう筈だ」
「今はそれに頼るしかねぇか。しかしこの異常な濃霧・・・これが神饌の儀式って奴なのか?」
まだ山頂からは遠い所にいた二人には、上空の赫い眼のようなものは見えてはいなかった。
彼らよりも少し先を進んでいたカガリは、濃霧が広がる事によってより一層ミネの気配を濃く感じるようになっていた。山のヌシとして光脈の精気を吸い出す装置になった事で、放出された濃霧の中に僅かながらミネの魔力が混じっていたのだ。
それは山頂の方からより濃く伝わっており、肉眼では見えずともカガリには山頂への道がしっかりと分かっていた。
「ミネさんの魔力だ。向こうの方からやって来てる。という事は、あっちにミネさんが・・・。待ってて下さいミネさん。俺が絶対探し出してみせますからッ・・・!」
カガリよりも更に先。シン達やアクセルらの捜索依頼を受けて動き出して、捜索隊の隊長ライノは、五号目に野営を設置すると山の異変にミネの影を感じ、彼の気配のする方へ向けて山道を登っていた。
彼は既に八号目を通り過ぎた所まで来ており、突如現れたら濃霧に苦戦していた所だった。
「ミネッ!ミネなんだろ!?俺がギルドの隊長になってから疎遠になっちまったが、俺はギルドと調査隊の架け橋になろうと働きかけて来たつもりだ!歪み合う間柄では、我々はいつになってもこの山の謎を解き明かせないままだ」
そこにいる嘗ての旧友に話しかけるように声を上げ続けるライノ。だが彼の声はその濃霧に呑まれ、ミネの元へ届く事はなかった。
「この霧もお前の仕業なんだろ?俺はあの時、お前に心を許して貰えたと思っていたんだ。だがあれは俺の独りよがりだったのか?俺だけか?ハインドの街の全員が協力し合い、山の怪異に挑むべきだと思っているには!?」
彼の位置からもまだ、山頂で見えていた巨大な眼のようなものは見えない。しかし、ライノもまたカガリのようにミネから感じる特殊な気配のようなものに引き寄せられ、正確に山頂へ向けて歩みを進めていた。
そして最もミネの元へと近付いていたツクヨは、九号目付近まで辿り着きいよいよ山頂まで目前の所まで来ていた。そんな彼の元には、上空の濃霧の中に蠢く巨大な白い壁のようなものが見えていた。
「なッ・・・何だあれ!?空が・・・動いてる?いや、何かそこにあるのか。ミネさん、貴方が言っていた儀式というのがもう始まってしまわれたのですか?」
彼の位置からだと、布都御魂剣の能力で生物の気配が何とか届く範囲に入っていた。祭壇の周りに集まる生命の大きな渦の他に、果てしなく大きな気配が上空に現れていた。
一方、そんな彼らとは対照的に野営を畳み山を下っていたシン達とギルドの捜索隊達の目にも、山道の登りの道の先が濃霧に包まれ始めたのが見えていた。
「すげぇ霧・・・。山じゃよくある光景なのかぁ?」
「いいや?あんなの俺達でも見た事がない。なぁ?」
ツバキが後ろを向きながらギルドの隊員と話しているのが聞こえる。港町での生活で様々な海賊達や漁師達と交流の多かったツバキは、シン達の中でもその地域の人間に馴染むのが最も早かった。
そもそも彼が人懐っこいのもあるのだろうが、おかげで様々な情報がツバキを通して得られる事も少なくはない。彼が山道でギルドの隊員達との会話で聞いた話によると、回帰の山の異変の中でも、これ程の濃霧は経験がないという。
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