1,637 / 1,646
ソウルハッカー、魂の一撃
しおりを挟む
自ら獲物を森に隠す様な行動をとる黒衣の男に違和感を感じつつも、気配を消しながら接近して攻撃のチャンスを伺うアクセル。
「何故奴はこんなこと・・・?いや、これは逆にチャンスか?あんなの無視してツクヨを追い掛けた方が良いんじゃ・・・」
「それは困る」
「ッ!?いつの間にッ・・・!」
自ら吹き飛ばし、その距離を広げた筈の黒衣の男は、どういう訳か既にアクセルの気配を探し出し、気付かれぬうちにその背後へ回り込んでいたのだ。
「テメェで吹き飛ばしたんだ、大凡の位置くらい分かるってモンだろ」
隠れていた木ごとへし折る蹴りを入れた黒衣の男。突然の攻撃に慌てて前方へ飛び込む様に回避するアクセル。すると、木が倒れるよりも先に回り込んで来た男が、次なる一撃をまだ回避途中の体勢で無防備なアクセルに叩き込む。
男の回し蹴りがアクセルの顔面を捉えたかの様に見えたが、辛うじて両腕でこれをブロックした彼は、そのまま森の奥の方へと吹き飛ばされて行く。
「・・・・・」
森へ消えて行くアクセルの姿を見つめながら、黒衣の男は珍しくその口を閉じていた。一方、吹き飛ばされたアクセルは、何とか受け身を取る方法を模索していた。
「あっ危ねぇ!まともに食うところだったぜ。んな事より木!受け身とらねぇと!」
直ぐに両腕を左右に伸ばし、丁度良い太さの木に狙いを定めると、ソウルハッカーのスキルで木から生命力を引き摺り出し、それをゴムのロープのように使って受け身を取る。
「位置が分かってたって?クソがッ・・・俺ぁ完全に気配を消してた筈だぞ。いくら大体に位置が分かったって、あそこまで正確に場所を突き止められる筈がねぇ。一体どんなトリックが・・・?」
「トリックなんかねぇよ」
「ッ!?」
またしても正確に位置を突き止められてしまうアクセル。この時も彼は気配を消していた。それにも関わらず、遠く離れたアクセルの位置を探り当てたのに、男は何も仕掛けなどないと言う。
そして黒衣の男はそのまま、アクセルの居場所を突き止めている方法について、とてもアクセルには信じがたい話を始めたのだ。
「俺がお前の居場所を突き止めている方法・・・それは“座標”さ」
「座標だと?・・・ッ!?」
話に気を取られたアクセルに、男は刀を鞘ごと振り抜く。喋りに気が逸れているせいか、男に振るう攻撃をアクセルは辛うじて回避出来ていた。その間にも黒衣の男の言う、座標というものの話は続く。
「どうせお前には理解のしようもねぇから話してやるが、俺にはお前が何処にいるのか、その座標が数値として見えている。だから気配を消そうが枯葉に身を隠そうが、俺から逃れることは出来やしないんだよ」
「それがお前の能力・・・?」
「能力って言うのも違う。これはスキルやクラスに備わる特性なんかでもねぇ。俺もまだ“コレ”を与えられて間もない。故にまだ仕様に慣れてないんだ。さっきお前と一緒に居た男・・・。奴が持っていた刀は、普通の人間じゃ扱えない代物だ。もしあれが本物なら・・・」
攻防を繰り広げる最中、僅かに喋りを止めた男が遠くを見つめる様な目をした。アクセルはその隙を見逃しはしなかった。今度は動きではバレぬよう、自分自身を囮に使い、背後の木から魂を結びつける煙の様なオーラを伸ばした。
だが、黒衣の男はそれさえも気付いていたのか、アクセル攻撃を躱した後にも関わらずその触手のように伸びるオーラをも避けて見せた。
「何ッ!?」
「俺が話に気を取られていたとでも思ったか?」
黒衣の男の背後の木から伸びた、触手のようなオーラはそのまま男に避けられ正面に立っていたアクセルに命中してしまう。するとアクセルの身体から魂が引き摺り出され、彼の魂は力強く拳を振り上げていた。
「・・・!」
「お前が避ける事も、織り込み済みだッ!!」
アクセルの魂の拳が、遂に黒衣の男に届いた。ダメージとしてはそれ程大きくなかったかも知れないが、それでもこれまで触れる事すら出来なかったアクセルにとって、この一撃の意味は大きかった。
「何故奴はこんなこと・・・?いや、これは逆にチャンスか?あんなの無視してツクヨを追い掛けた方が良いんじゃ・・・」
「それは困る」
「ッ!?いつの間にッ・・・!」
自ら吹き飛ばし、その距離を広げた筈の黒衣の男は、どういう訳か既にアクセルの気配を探し出し、気付かれぬうちにその背後へ回り込んでいたのだ。
「テメェで吹き飛ばしたんだ、大凡の位置くらい分かるってモンだろ」
隠れていた木ごとへし折る蹴りを入れた黒衣の男。突然の攻撃に慌てて前方へ飛び込む様に回避するアクセル。すると、木が倒れるよりも先に回り込んで来た男が、次なる一撃をまだ回避途中の体勢で無防備なアクセルに叩き込む。
男の回し蹴りがアクセルの顔面を捉えたかの様に見えたが、辛うじて両腕でこれをブロックした彼は、そのまま森の奥の方へと吹き飛ばされて行く。
「・・・・・」
森へ消えて行くアクセルの姿を見つめながら、黒衣の男は珍しくその口を閉じていた。一方、吹き飛ばされたアクセルは、何とか受け身を取る方法を模索していた。
「あっ危ねぇ!まともに食うところだったぜ。んな事より木!受け身とらねぇと!」
直ぐに両腕を左右に伸ばし、丁度良い太さの木に狙いを定めると、ソウルハッカーのスキルで木から生命力を引き摺り出し、それをゴムのロープのように使って受け身を取る。
「位置が分かってたって?クソがッ・・・俺ぁ完全に気配を消してた筈だぞ。いくら大体に位置が分かったって、あそこまで正確に場所を突き止められる筈がねぇ。一体どんなトリックが・・・?」
「トリックなんかねぇよ」
「ッ!?」
またしても正確に位置を突き止められてしまうアクセル。この時も彼は気配を消していた。それにも関わらず、遠く離れたアクセルの位置を探り当てたのに、男は何も仕掛けなどないと言う。
そして黒衣の男はそのまま、アクセルの居場所を突き止めている方法について、とてもアクセルには信じがたい話を始めたのだ。
「俺がお前の居場所を突き止めている方法・・・それは“座標”さ」
「座標だと?・・・ッ!?」
話に気を取られたアクセルに、男は刀を鞘ごと振り抜く。喋りに気が逸れているせいか、男に振るう攻撃をアクセルは辛うじて回避出来ていた。その間にも黒衣の男の言う、座標というものの話は続く。
「どうせお前には理解のしようもねぇから話してやるが、俺にはお前が何処にいるのか、その座標が数値として見えている。だから気配を消そうが枯葉に身を隠そうが、俺から逃れることは出来やしないんだよ」
「それがお前の能力・・・?」
「能力って言うのも違う。これはスキルやクラスに備わる特性なんかでもねぇ。俺もまだ“コレ”を与えられて間もない。故にまだ仕様に慣れてないんだ。さっきお前と一緒に居た男・・・。奴が持っていた刀は、普通の人間じゃ扱えない代物だ。もしあれが本物なら・・・」
攻防を繰り広げる最中、僅かに喋りを止めた男が遠くを見つめる様な目をした。アクセルはその隙を見逃しはしなかった。今度は動きではバレぬよう、自分自身を囮に使い、背後の木から魂を結びつける煙の様なオーラを伸ばした。
だが、黒衣の男はそれさえも気付いていたのか、アクセル攻撃を躱した後にも関わらずその触手のように伸びるオーラをも避けて見せた。
「何ッ!?」
「俺が話に気を取られていたとでも思ったか?」
黒衣の男の背後の木から伸びた、触手のようなオーラはそのまま男に避けられ正面に立っていたアクセルに命中してしまう。するとアクセルの身体から魂が引き摺り出され、彼の魂は力強く拳を振り上げていた。
「・・・!」
「お前が避ける事も、織り込み済みだッ!!」
アクセルの魂の拳が、遂に黒衣の男に届いた。ダメージとしてはそれ程大きくなかったかも知れないが、それでもこれまで触れる事すら出来なかったアクセルにとって、この一撃の意味は大きかった。
0
お気に入りに追加
302
あなたにおすすめの小説
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」

秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話
嵐華子
ファンタジー
【旧題】秘密の多い魔力0令嬢の自由ライフ。
【あらすじ】
イケメン魔術師一家の超虚弱体質養女は史上3人目の魔力0人間。
しかし本人はもちろん、通称、魔王と悪魔兄弟(義理家族達)は気にしない。
ついでに魔王と悪魔兄弟は王子達への雷撃も、国王と宰相の頭を燃やしても、凍らせても気にしない。
そんな一家はむしろ互いに愛情過多。
あてられた周りだけ食傷気味。
「でも魔力0だから魔法が使えないって誰が決めたの?」
なんて養女は言う。
今の所、魔法を使った事ないんですけどね。
ただし時々白い獣になって何かしらやらかしている模様。
僕呼びも含めて養女には色々秘密があるけど、令嬢の成長と共に少しずつ明らかになっていく。
一家の望みは表舞台に出る事なく家族でスローライフ……無理じゃないだろうか。
生活にも困らず、むしろ養女はやりたい事をやりたいように、自由に生きているだけで懐が潤いまくり、慰謝料も魔王達がガッポリ回収しては手渡すからか、懐は潤っている。
でもスローなライフは無理っぽい。
__そんなお話。
※お気に入り登録、コメント、その他色々ありがとうございます。
※他サイトでも掲載中。
※1話1600〜2000文字くらいの、下スクロールでサクサク読めるように句読点改行しています。
※主人公は溺愛されまくりですが、一部を除いて恋愛要素は今のところ無い模様。
※サブも含めてタイトルのセンスは壊滅的にありません(自分的にしっくりくるまでちょくちょく変更すると思います)。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
スキル盗んで何が悪い!
大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物
"スキル"それは人が持つには限られた能力
"スキル"それは一人の青年の運命を変えた力
いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。
本人はこれからも続く生活だと思っていた。
そう、あのゲームを起動させるまでは……
大人気商品ワールドランド、略してWL。
ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。
しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……
女の子の正体は!? このゲームの目的は!?
これからどうするの主人公!
【スキル盗んで何が悪い!】始まります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる