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神代 コウ

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ライノとミネの約束

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 時が流れれば人も変わる。ライノが隊長になってからも、他の国や街から新しいギルドの隊員がやって来るのは止まらなかった。どんなに調査が進んでも、どんなに注意を払っていても、光脈の精気に当てられてしまう者は出てしまう。

「隊長は、ミネっていう調査隊の方とお知り合いなのですよね?」

「ん?あぁ、そうだが・・・」

「いいのですか?その・・・彼に好き勝手させてしまって。以前は調査隊もギルドの管轄にあったとされているようですが?」

 ハインドの街のギルドと調査隊の因縁については、現在調査隊が二名しか残っていない事もあり、長期の自粛という対応を持って、回帰の山の調査の指揮権は各々の組織に依存すると、ライノが新たに規約の改正に努めていた。

 そして今では、そんな彼の働きのおかげもあり、調査隊であるミネとカガリは昼夜問わず自由に山へ出入り出来るようになっている。

「構わんさ、彼らも自己責任んで調査を行なっている。こちらの手を煩わせないという条件でな」

 ただそれは、あくまで建前に過ぎない。この規約の改正はギルドと調査隊が完全に袂を分つものではなく、二人が互いの目的の為に協力する為の、嘗ての約束でもあったのだ。

 あの日、回帰の山の美しい湖で光脈の川を目にする前、ミネはライノに光脈の存在やその性質、そして過去の忌まわしき儀式の事を知れば、自ら調査などしたくなくなると告げたが、それでもライノは自分が出世して調査隊を自由にし、ギルドが裏で協力する事を約束していたのだ。

 これにより回帰の山の調査は実質的にミネとカガリが行う事になり、山の犠牲者の数がこれまで以上に抑えられる事となった。

「ミネ・・・。俺は約束を果たしたぞ。調査はどうなってる?何故今まで沈黙していたんだ。考えが変わっちまったのか?」

 だが、ライノの想定外だったのはミネが失踪し、街に帰って来たと思ったら何処からか赤子を連れて来たミネは、その子をまるで自分の子のように育て始めた。

 ミネの噂はライノの耳にも入っていたが、ギルドが行う山の調査はより安全を重視したやり方となった為、他の依頼がギルドに多く寄せられるようになり、その対応で忙しくなってしまっていた。

 街の風向きが変わり、山への出入りは行商人や旅の者達が行き来する時の光脈の様子を確かめるだけに留まり、調査は滞っていた。ミネにどのような考えがあったのかはライノには知る由もない。



 八号目付近で狼煙を上げていたシン達一行は、夜明けを待つその間も精気によって不気味なほど強靭に成長したモンスターの襲撃を受けていた。

「アクセル、アンタの能力なら事を静かに収められるだろ?」

「それを言うならシン、お前のアサシンとしてのスキルも、相手が死に気づく前に暗殺するのに適した能力なんだろ?」

「行けッ!アクセル、シン!モンスターの来る位置は俺が教えてやる」

「ツバキ達は私達に任せてくれ、シン」

 数こそカガリ救出の時ほど多くはなかったが、個々の能力はこれまでの比にならないほど恐ろしく膨れ上がっていた。

 通常よりも魔力量が二倍以上もあり、体格も一回りも二回りも大きく攻撃の威力も範囲も計り知れないものとなっていた。

 それらの気配をケネトがどの方角から来るか、先回りして調べそしてシンの影のスキルと、アクセルのソウルハッカーのスキルで殺さずに森へと追い返していく。

 明かりが無ければアサシンのスキルは、通常時よりも強力なものとなり存分に力を振えた。ケネトからモンスターの位置を教えてもらったシンは、影の中を移動して忍び寄ると、モンスターがシンの存在に気がつく前に森の木々の影を集め、底無しの巨大な影の沼を作り出し、森の奥へと追い返す。

 別の場所ではアクセルが木の上に登り、枝を伝って移動すると、上方からモンスターの魂を抜き取り遠くへとそれを投げる。魂を失ったモンスターは、自分の魂を追いかけ一人でにその巨体を森の奥へと運んで行った。

「いいか?山頂付近の生き物は、光脈の精気によって育てられた神聖な生物として扱わなければならない。さもなくば山の怒りを買い、人の歴史や営みなど瞬く間に飲み込んでしまう・・・と、されている」

「されている?言い伝えか何かですか?」

 ケネトの語りにツクヨが尋ねる。回帰の山には未だ未開の謎が多くあり、それらの自然の怒りに触れぬよう言い伝えとして、様々な形や儀式としてその行いを封じてきたのだと言う。

「要するに、回帰の山の山頂付近。とりわけ光脈の加護を受けた生物は、人であれ獣人であれ魚人であれ、それが例えモンスターであれ命を奪う事は山の神の怒りに触れるとされてきた」

「なるほど、それでシンとアクセルさんが最適って訳ですね」

 ツクヨの剣技やツバキのガジェット、ケネトの魔法ではその神聖な生き物となったモンスターを傷付けてしまう。それ故の人選だった。
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