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上空を覆う霧
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地上でカメラからの映像を受け取るデバイスのモニターを確認するツバキ。しかし彼の口から周囲の状況が告げられると、一行は山に慣れている筈の三人も含めて言葉を失う。
「なッ・・・!?」
「如何したんだツバキ、あれだけ息巻いてたんだから何か見つけたんだろうなぁ?」
思わず声を漏らしたツバキの反応を見たアクセルが、彼の手元のモニターを覗き込む。するとそこには、まるでカメラに異常が起きているかのように灰色がびっしりと敷き詰められていた。
「何だこれ、上空から山頂の様子を見るんだろ?何処にカメラを向けてるんだ?」
「いや、コレが上空の様子だよ」
「は?んな訳・・・」
ふざけて言っているのかと思ったアクセルに、ツバキがその証拠の映像を見せる。上空に飛んでいたカメラを地上に向けてゆっくりと降下させる。するとモニター、ゆっくりとボンヤリとしたシルエットが浮かび上がる。
更に降下を続けると、そのシルエットが木である事がハッキリと分かった。ツバキはそのまま木々の間を抜けて、一行の様子が見える位置にまでカメラを持って来た。
一行の頭上にツバキのガジェットが羽ばたく音が聞こえて来る。それを聞いた一行が音のする方を見ると、ツバキのモニターに一行の顔がくっきりと映り込む。
「何で・・・?霧なんか出てなかっただろ!?」
「おっ俺に言うなって!カメラは正常だったろ?だからさっきの様子は紛れもなくこの上空なんだって!」
「馬鹿言えッ!もっかいカメラを上空へ上げてみろ!」
「何だよ!じゃぁ自分でやってみろって!」
一行がここまで山道を登って来るのに、霧が発生したと言う様子はなかった。それに地上では今も霧など発生していない。だがツバキのカメラには、確かに寸分先も見えない程の霧が映し出されていた。
「どういう事?機械には霧が掛かっているように映り込んでるって事かしら?」
「いや、それは如何だろうな。機械にだけ霧が映り込むようにするなんて、それこそ機械による妨害か、それともアタシら居る上空にだけ濃い霧が生み出されてるとしか・・・」
不安がるアカリに考え得る状況を提示するミア。だが機械による妨害であれば、そもそもツバキのカメラが起動できている事にも疑問が生まれる。ミアの言うように、一行の上空にだけ濃い霧が発生しているというのが最も納得出来そうなものだが、そんなに都合よく彼らの上空にだけ霧が出るなど、まるで誰かが意図的にやっているとしか思えない。
「ケネトさん、周囲に魔力の反応は?誰かが私達の上空に霧を発生させてるんじゃ・・・」
「魔力の反応はおろか、周囲には俺達以外の生命体の反応すら無いよ・・・。モンスターによる仕業という線も消えたって訳だ」
「シンは何か感じない?」
同じく周囲の気配を感知できるシンに尋ねるツクヨ。だがシンも、ツバキとアクセルのやり取りを見てから、その可能性を危惧して既に周囲の気配に気を張り巡らせていた。
「ダメだ、俺の方も何も感じない・・・。ここまで順調に登って来れたのに、何で急にこんな事が?」
不気味な現象に見舞われる一行の表情は困惑と不安で、徐々に憔悴し始めていた。そこに再び、一行の視界を奪い去り何者かの記憶の映像が流れ込む。
真っ暗な視界の中に、徐々に光が灯り始める。その光は金色に輝き、何処か心を落ち着かせてくれる様な温かな光だった。その瞳にボヤけて映っていた光は、少しずつ形を変えながら広大な川のようなものへと変わる。
「ここは何処だ・・・。俺は一体・・・」
彼の身体は自分の意思に関係なく、その光り輝く川の方へと引き寄せられて行く。
「何て美しく温かな光だ・・・。まるでこれが、言い伝えの光脈のようだ」
一見、シン達が体験したものと同じ体験をしているように感じるが、この男はこの謎の空間の中でも声を発していた。しかし、彼もまたシン達と同様にその空間が何なのかは分からないようだ。
ただ“言い伝えの光脈”と発していることから、回帰の山に眠る光脈についてある程度知識のある人物だと思われる。
男は手繰り寄せられるように川の淵へとやって来ると、光り輝く川に魅入られるようにそっとその水面を覗き込む。するとそこには、一組の男女が映り込んでいた。
それを見た男は、あやふやになる意識を自分の中へと取り戻し、水面に映る二人へと手を差し伸べる。水面に触れた彼の腕は川に触れた途端、今度は濃い煙の中に手を入れたかのような感覚へと変わる。
目に映るものと、肌で感じる感覚の違いに戸惑いながらも、彼は川に映っていた二人の元へ意を決して飛び込んで行った。
「なッ・・・!?」
「如何したんだツバキ、あれだけ息巻いてたんだから何か見つけたんだろうなぁ?」
思わず声を漏らしたツバキの反応を見たアクセルが、彼の手元のモニターを覗き込む。するとそこには、まるでカメラに異常が起きているかのように灰色がびっしりと敷き詰められていた。
「何だこれ、上空から山頂の様子を見るんだろ?何処にカメラを向けてるんだ?」
「いや、コレが上空の様子だよ」
「は?んな訳・・・」
ふざけて言っているのかと思ったアクセルに、ツバキがその証拠の映像を見せる。上空に飛んでいたカメラを地上に向けてゆっくりと降下させる。するとモニター、ゆっくりとボンヤリとしたシルエットが浮かび上がる。
更に降下を続けると、そのシルエットが木である事がハッキリと分かった。ツバキはそのまま木々の間を抜けて、一行の様子が見える位置にまでカメラを持って来た。
一行の頭上にツバキのガジェットが羽ばたく音が聞こえて来る。それを聞いた一行が音のする方を見ると、ツバキのモニターに一行の顔がくっきりと映り込む。
「何で・・・?霧なんか出てなかっただろ!?」
「おっ俺に言うなって!カメラは正常だったろ?だからさっきの様子は紛れもなくこの上空なんだって!」
「馬鹿言えッ!もっかいカメラを上空へ上げてみろ!」
「何だよ!じゃぁ自分でやってみろって!」
一行がここまで山道を登って来るのに、霧が発生したと言う様子はなかった。それに地上では今も霧など発生していない。だがツバキのカメラには、確かに寸分先も見えない程の霧が映し出されていた。
「どういう事?機械には霧が掛かっているように映り込んでるって事かしら?」
「いや、それは如何だろうな。機械にだけ霧が映り込むようにするなんて、それこそ機械による妨害か、それともアタシら居る上空にだけ濃い霧が生み出されてるとしか・・・」
不安がるアカリに考え得る状況を提示するミア。だが機械による妨害であれば、そもそもツバキのカメラが起動できている事にも疑問が生まれる。ミアの言うように、一行の上空にだけ濃い霧が発生しているというのが最も納得出来そうなものだが、そんなに都合よく彼らの上空にだけ霧が出るなど、まるで誰かが意図的にやっているとしか思えない。
「ケネトさん、周囲に魔力の反応は?誰かが私達の上空に霧を発生させてるんじゃ・・・」
「魔力の反応はおろか、周囲には俺達以外の生命体の反応すら無いよ・・・。モンスターによる仕業という線も消えたって訳だ」
「シンは何か感じない?」
同じく周囲の気配を感知できるシンに尋ねるツクヨ。だがシンも、ツバキとアクセルのやり取りを見てから、その可能性を危惧して既に周囲の気配に気を張り巡らせていた。
「ダメだ、俺の方も何も感じない・・・。ここまで順調に登って来れたのに、何で急にこんな事が?」
不気味な現象に見舞われる一行の表情は困惑と不安で、徐々に憔悴し始めていた。そこに再び、一行の視界を奪い去り何者かの記憶の映像が流れ込む。
真っ暗な視界の中に、徐々に光が灯り始める。その光は金色に輝き、何処か心を落ち着かせてくれる様な温かな光だった。その瞳にボヤけて映っていた光は、少しずつ形を変えながら広大な川のようなものへと変わる。
「ここは何処だ・・・。俺は一体・・・」
彼の身体は自分の意思に関係なく、その光り輝く川の方へと引き寄せられて行く。
「何て美しく温かな光だ・・・。まるでこれが、言い伝えの光脈のようだ」
一見、シン達が体験したものと同じ体験をしているように感じるが、この男はこの謎の空間の中でも声を発していた。しかし、彼もまたシン達と同様にその空間が何なのかは分からないようだ。
ただ“言い伝えの光脈”と発していることから、回帰の山に眠る光脈についてある程度知識のある人物だと思われる。
男は手繰り寄せられるように川の淵へとやって来ると、光り輝く川に魅入られるようにそっとその水面を覗き込む。するとそこには、一組の男女が映り込んでいた。
それを見た男は、あやふやになる意識を自分の中へと取り戻し、水面に映る二人へと手を差し伸べる。水面に触れた彼の腕は川に触れた途端、今度は濃い煙の中に手を入れたかのような感覚へと変わる。
目に映るものと、肌で感じる感覚の違いに戸惑いながらも、彼は川に映っていた二人の元へ意を決して飛び込んで行った。
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