World of Fantasia

神代 コウ

文字の大きさ
上 下
1,601 / 1,646

落とし物調査

しおりを挟む
 アクセルから回帰の山の本当に恐ろしい事について聞いていると、見つかった布の調査を終えたカガリから、それがミネの物ではないとの結果が一行に告げられた。

「え・・・じゃぁそれは一体誰の物なの?」

「分からない、俺の知ってる魔力反応じゃないんだ。それにコレの持ち主の魔力反応がかなり薄まっている事からも、恐らく失踪して暫く経ってると思う・・・」

「暫くってのは、具体的にどのくらいだ?」

 失踪して暫く経っている人物といえば、アクセルとケネトが依頼を受けているトミの奥さんが該当する。その可能性はないかと尋ねるアクセルに、カガリは眉間にシワを寄せながら、彼なりの経験と推測に基づく大凡の失踪時期を告げる。

「正確なところは容赦願いたいが、恐らく数ヶ月前くらい。半年以内に失踪していると思うよ」

「半年以内か・・・十分可能性としてあり得るか。どうだ?ケネト」

「あぁ、俺も同じ考えだ。その人物がユリア・キヴェラであると考えて調査を進めたい。カガリ、俺達もミネの捜索に協力するから、その布の持ち主である人物の捜索に協力してくれないか?」

 ケネトの提案に、カガリは二つ返事で申し出を受け入れた。彼にとっても、この先の山は危険がついて回るという事だろう。単純に精気を纏うモンスターの群れに襲われたら、彼もひとたまりもないだろう。

 彼らが結束を深める中、シン達はアクセルらに求めるのは、安全に山を越える為の方法だった。

「俺達は何とかこの山を越えたい。勿論、乗りかかった船だから出来る限りの協力はするが、何かいい方法があれば伺いたいんだが・・・」

 アクセルらに協力を持ちかけた際、具体的な攻略について聞かされていなかったシン達は、ここで一度アクセルらの山越えに関する考えを聞いておくことにした。

 だが、シンの問いに対してアクセルは予想もしていなかった返しをした。

「山越えの算段?無いよ、そんなの」

「はぁ・・・?無い!?」

 アクセルらが言うには、山の様子が変わった今、安全に山を越えられる保証はないと言うのだ。だが整備された山道もあると聞いているシン達一行は、そちらの道なら越えられるのではないかと尋ねるも、整備された道は特殊な鉱石で壊れづらく作られている為に残っているだけで、危険である事には変わりないのだと言う。

「じゃぁ整備の意味ねぇじゃん!!」

「山道の整備は、山のヌシが交代して間も無くに行うんだ」

「交代して間も無く?それはどうやって調べる?」

「簡単さ。今みたいに山の様子が変わって、それが落ち着いてからさ。ただ、その山の様子も、調査する人間がいてこそだがな・・・」

「調査隊やギルドがそれを担っていると?」

「そうだ。ただでさえ少なくなってしまった調査隊と、有志を募って結成される“ギルドの結成する“調査隊がそれをやるんだ。だが大概、ギルド側の募った人間の何人かは犠牲になるがな」

 犠牲というのは、そのまま回帰の山で失踪してしまうという事だろう。一方、二人だけとなってしまった調査隊は、それ以降犠牲者を出していない。二人だけだからと言われる事もしばしばあるが、それでもここまで長く犠牲を出さずに調査を継続出来ているのは彼らが初めてらしい。

「けどそれも、今回までかもしれないけどな・・・」

「カガリ・・・」

 ミネの失踪がカガリに不安を与えてしまっているようだ。コレばかりは彼の痕跡や残留魔力といった目印でも見つけない限り、誰にも何とも言えない事だろう。

 生みの親と育ての親が違うという共通点を持つツバキは、そんな彼に何処か親近感を持っているようで、何か声を掛けてやりたいとソワソワしている。

 そんな様子を見逃さなかったツクヨは、そっと彼の背中を押して自分の気持ちや言葉を伝えた方がいいと、一歩踏み出す事を促す。

「なぁ、アンタ・・・」

「ん?どうしたんだ、君」

「俺も本当の両親を知らないで育った。海で捨てられてた俺を拾ってくれた人がいるんだ。今ではその人が俺の親だ」

 自分と同じ境遇で、更には自分よりも年下であるツバキが、親元を離れ彼らと一緒に旅をしている姿を見て、その経緯が気になったのかカガリはツバキの話を食い入るように聞き入っていた。

 早朝から動き回っていた事もあり、一行はここで一旦休憩を取る事にした。しかしこの休憩から、彼らの身に不思議な現象が度々起こるようになる。

 篝火を焚きながら、カガリが調べた布をケネトに再度調べさせるアクセル。カガリの道具を使った調査と、ケネトのスキルによる魔力の調査は違い、魔力の調査だけで言えばケネトのスキルの方がより鮮明に持ち主の情報を得られる。

 ケネトは手にした布に繊維のように細かい、魔力で作った糸を巡らせていく。彼の魔力が一本一本布の糸を覆うように淡い光で包まれていく。

 すると、すっかり身体を休めていた一行の視界が、突然何かの映像に切り替わる。その光景はまるで誰かの見ている景色のようだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...