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生命のコントロール
しおりを挟む ケネトが感じたという昨日の人影が本当にカガリだとするなら、彼の意識しないところで肉体だけが何かに動かされていたとでも言うのだろうか。
しかし、そうだとして解決しなければならない問題がもう一つある。それはカガリが意識を失ったのは、ここ六合目付近であった事だ。
単純に六合目付近で行動しており、用が済んだ後にシン達が見つけた場所で、肉体が放置されたあの場所にあったとする考えもあるが、先へ向かったというミネの後を追っていたカガリを使って済ませる用事が、六合目付近にあるのかと言われると疑問が残る。
「まぁ後は私が引き受けるから、シンは見張りの方を頼むよ。ついでに少し頭を休めてきなよ」
「あぁ、そうだな。悪いが後を頼む」
アクセルもケネトと入れ替わり見張りの位置へと向かう。かれもまた、ケネトやシン程ではないが周囲の気配を探る事ができる。それに加えて、近くの者の魂を使えばその視点を利用してある程度の距離を視認する事が出来るらしい。
それでも精度はあまり高いとは言えないので、気配感知には使えないようだ。アクセルも続きはケネトに任せ、彼だけが知る情報をツクヨとミアにも話してやれと言って、見張りの位置へと向かっていった。
メンバーが切り替わり、一貫して話を聞いているミアが、カガリの発言も加えながらこれまでの話をまとめて、ツクヨとケネトに話して行く。そしてケネト側も、先程アクセルに打ち明けた昨日の人影がカガリの気配と同じであった事を、カガリ本人も含めて打ち明けた。
「そんな・・・何かの間違いだ!だって俺、気を失ってから今まで森の中で倒れて・・・」
「お前の記憶ではそのようだが、もしお前の肉体が何者かに使われていたのなら話は別だ」
突拍子もない話に困惑するカガリだったが、ケネトの話を聞いて回帰の山の特性には彼らも知らない更なる性質があるのではないかと、自身の考えを話し始めるミア。
「他の連中からも、この山に入るなら精神安定剤を持って行くように言われた。つまり光脈の精気には、生命体の精神に大きな影響を及ぼす性質があるんだろう?じゃぁ意思を持たない生命体にはどんな影響が出るんだ?」
「意思を持たない生命体?植物や土そのものって話か?土には作物の成長を促す養分が多分に含まれている事は、ハインドの街にも広く伝わっている。だが現地の土や植物となると、確かに妙な事もあるな・・・」
ケネトが言う妙な事とは、作物に成長を促す養分を含んでいる土が、その源である回帰の山を離れてもその性質をある程度の期間保っていられるのなら、現地の土にはそれ以上の養分が常に植物に供給されている事になる。
確かに回帰の山の木や草花は、他にはない程数も大きさも豊富で水々しい果実をつけていたり、強い香りを放つ花を咲かせていたり、通常では考えられないほど高く成長した木が幾つも聳え立っている。
だが際限なく大きく育っている訳ではない。木が大きく育つのもあくまで常識の範囲であり、夢物語で見るような巨大樹や世界樹と呼ばれるような大陸のように大きな木も存在しない。
草花もあくまで、通常種よりも大きな物もあると言うくらいで、そこら中に大きなものが存在しているという様子もない。
際限なく養分を与えられている筈の植物が、育ち過ぎないようにまるで人間の農家のように手入れされている。つまりその養分や性質がコントロールされているという可能性をケネトは口にした。
「成長をコントロール?それってつまり・・・」
「恐らくコントロールしているのは、ここの者達が言うヌシと呼ばれる存在だろう。意思を持たないものを制御しコントロールできると言うことは、意思を失った生命体ならもしかしたらコントロールも可能なんじゃないか?」
ミアの推測を聞いたカガリは、ミネとの過去の調査で生物を調べた際、ある不思議な出来事があった事を思い出した。どうやら彼らも回帰の山に巣くう生物達の生態について気になっていたようだ。
山に向かう途中で怪我をしたと思われる鳥を見つけたミネとカガリは、応急処置をして何処か森の安全なところで離してあげるつもりでいたらしい。この時、人間の匂いが残るものを鳥に付着させないよう注意も払っていたようだ。
そうでなければ、森に放ったところで群れには戻れなくなってしまうからだった。暫く山道を進んだ頃、命はあるもののぐったりとして目を覚まさなかったその鳥が突然目を覚まし、二人の元を去っていったのだと言う。
初めは元気になって森へ帰ったのだと安心したが、その後ミネが言っていた言葉にカガリは精気の持つ生命エネルギーのようなものをその時感じたらしい。
ミネはその助けた鳥が羽ばたいて行く直前まで、全くと言っていいほど回復の兆しなど無かったのだと言ったそうだ。生物である以上、意識の無いゼロの状態から全快である百の状態まで一気に回復する事はあり得ないという。
もし目を覚ましても、身体を動かそうとする動作や鳴き声を上げようとする動作がある筈。しかしその時の鳥には、それが全く無く、いきなり健康体の同種の鳥と同じように羽ばたいて行ったのだそうだ。
それも光脈の精気が齎す生命エネルギーだと言ってしまえばそれまでだが、ミアの言うようにヌシによって意識のない鳥が操られ森に戻されたと考えれば、それも十分にあり得る可能性となり、カガリが昨日一人でに動き、ケネトに感知された話とも辻褄が合う。
しかし、そうだとして解決しなければならない問題がもう一つある。それはカガリが意識を失ったのは、ここ六合目付近であった事だ。
単純に六合目付近で行動しており、用が済んだ後にシン達が見つけた場所で、肉体が放置されたあの場所にあったとする考えもあるが、先へ向かったというミネの後を追っていたカガリを使って済ませる用事が、六合目付近にあるのかと言われると疑問が残る。
「まぁ後は私が引き受けるから、シンは見張りの方を頼むよ。ついでに少し頭を休めてきなよ」
「あぁ、そうだな。悪いが後を頼む」
アクセルもケネトと入れ替わり見張りの位置へと向かう。かれもまた、ケネトやシン程ではないが周囲の気配を探る事ができる。それに加えて、近くの者の魂を使えばその視点を利用してある程度の距離を視認する事が出来るらしい。
それでも精度はあまり高いとは言えないので、気配感知には使えないようだ。アクセルも続きはケネトに任せ、彼だけが知る情報をツクヨとミアにも話してやれと言って、見張りの位置へと向かっていった。
メンバーが切り替わり、一貫して話を聞いているミアが、カガリの発言も加えながらこれまでの話をまとめて、ツクヨとケネトに話して行く。そしてケネト側も、先程アクセルに打ち明けた昨日の人影がカガリの気配と同じであった事を、カガリ本人も含めて打ち明けた。
「そんな・・・何かの間違いだ!だって俺、気を失ってから今まで森の中で倒れて・・・」
「お前の記憶ではそのようだが、もしお前の肉体が何者かに使われていたのなら話は別だ」
突拍子もない話に困惑するカガリだったが、ケネトの話を聞いて回帰の山の特性には彼らも知らない更なる性質があるのではないかと、自身の考えを話し始めるミア。
「他の連中からも、この山に入るなら精神安定剤を持って行くように言われた。つまり光脈の精気には、生命体の精神に大きな影響を及ぼす性質があるんだろう?じゃぁ意思を持たない生命体にはどんな影響が出るんだ?」
「意思を持たない生命体?植物や土そのものって話か?土には作物の成長を促す養分が多分に含まれている事は、ハインドの街にも広く伝わっている。だが現地の土や植物となると、確かに妙な事もあるな・・・」
ケネトが言う妙な事とは、作物に成長を促す養分を含んでいる土が、その源である回帰の山を離れてもその性質をある程度の期間保っていられるのなら、現地の土にはそれ以上の養分が常に植物に供給されている事になる。
確かに回帰の山の木や草花は、他にはない程数も大きさも豊富で水々しい果実をつけていたり、強い香りを放つ花を咲かせていたり、通常では考えられないほど高く成長した木が幾つも聳え立っている。
だが際限なく大きく育っている訳ではない。木が大きく育つのもあくまで常識の範囲であり、夢物語で見るような巨大樹や世界樹と呼ばれるような大陸のように大きな木も存在しない。
草花もあくまで、通常種よりも大きな物もあると言うくらいで、そこら中に大きなものが存在しているという様子もない。
際限なく養分を与えられている筈の植物が、育ち過ぎないようにまるで人間の農家のように手入れされている。つまりその養分や性質がコントロールされているという可能性をケネトは口にした。
「成長をコントロール?それってつまり・・・」
「恐らくコントロールしているのは、ここの者達が言うヌシと呼ばれる存在だろう。意思を持たないものを制御しコントロールできると言うことは、意思を失った生命体ならもしかしたらコントロールも可能なんじゃないか?」
ミアの推測を聞いたカガリは、ミネとの過去の調査で生物を調べた際、ある不思議な出来事があった事を思い出した。どうやら彼らも回帰の山に巣くう生物達の生態について気になっていたようだ。
山に向かう途中で怪我をしたと思われる鳥を見つけたミネとカガリは、応急処置をして何処か森の安全なところで離してあげるつもりでいたらしい。この時、人間の匂いが残るものを鳥に付着させないよう注意も払っていたようだ。
そうでなければ、森に放ったところで群れには戻れなくなってしまうからだった。暫く山道を進んだ頃、命はあるもののぐったりとして目を覚まさなかったその鳥が突然目を覚まし、二人の元を去っていったのだと言う。
初めは元気になって森へ帰ったのだと安心したが、その後ミネが言っていた言葉にカガリは精気の持つ生命エネルギーのようなものをその時感じたらしい。
ミネはその助けた鳥が羽ばたいて行く直前まで、全くと言っていいほど回復の兆しなど無かったのだと言ったそうだ。生物である以上、意識の無いゼロの状態から全快である百の状態まで一気に回復する事はあり得ないという。
もし目を覚ましても、身体を動かそうとする動作や鳴き声を上げようとする動作がある筈。しかしその時の鳥には、それが全く無く、いきなり健康体の同種の鳥と同じように羽ばたいて行ったのだそうだ。
それも光脈の精気が齎す生命エネルギーだと言ってしまえばそれまでだが、ミアの言うようにヌシによって意識のない鳥が操られ森に戻されたと考えれば、それも十分にあり得る可能性となり、カガリが昨日一人でに動き、ケネトに感知された話とも辻褄が合う。
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