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カガリの両親
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篝火で暖を取りながらカガリの話を聞く一行。現在の見張りはケネトとツクヨが担当している。一応、見張り役には気配を感知できるスキル持ちの人間がそれぞれ交互に出るようにしており、シン達一行からはアサシンのクラスで相手の気配を読み取る事に長けているシンが担当する事となった。
アクセルとシンとミア。彼らがカガリの話を聞き、他の者達に伝える役割を持ち、彼の話に耳を傾ける。
「俺には両親がいないんだ。ミネさんが山で泣いている俺を拾ってくれて、それ以来ミネさんが俺の親代わりだった。けど、ミネさんは自分を親とは思うな、お前には確かな愛情を注いでくれる本当の両親がいるって言ってたんだ。まぁ、それ以上聞こうとしても何も教えてはくれなかったけど・・・」
話を聞いたシンがミアの方を見る。この話は宿屋で調査隊との接触を果たしたと言うミアとアカリから聞いた話と同じだった。だがこの時はミアも初めて聞くフリをしていた。
それはミネが両親のことを頑なにカガリに伝えようとしない様子を目の当たりにし、本人からもそう聞いていたからだった。
「けどさ、そんなに隠されたら知りたくなるじゃんか。しかも俺の両親は俺のこと愛してたって言うんだぜ?俺を山に置き去りにしたのにさ・・・」
「何か事情があるんじゃないか?仮にそれが嘘だったとしても、ミネに何のメリットもない」
アクセルは彼の生い立ちについては知らないようだ。調査隊というもの自体は調べていたようだが、その隊員一人一人の情報までは網羅していなかったらしい。
「んなこたぁ俺だって分かってますよ。ミネさんがそんな事言うような人じゃないって事くらい・・・。だから尚更気になるんすよ。ミネさんがそこまで言う俺の両親ってのが、どんな人達だったのか・・・」
「それで調べたのか?両親のこと」
「おい、ミア」
恩人に止められていた両親の捜索と、それでも両親のことを知りたい彼の気持ちのジレンマを突くことは、彼にとって辛い事なのではとシンはミアを止めようとするが、ミアはまるでカガリにそんな事で愛情を注いでくれた両親のことを諦めて欲しくないと言った様子で彼に詰め寄っていた。
「ミネさんには言ってないけど、実は一人で色々と調べてた・・・。この話はミネさんには言わないでくれよ?」
意外にも子供らしい一面を見せるカガリに、当たり前だと微笑ましい表情を浮かべて頷く一行。そして彼が調べたという両親の情報が、直接息子の言葉で伝えられていく。
どうやらカガリの両親はハインドの街で農家をしていたらしく、二人の作る作物は行商人達から評判も良かったようだ。街の中でもそれなりに有名だったらしく、近所の家々にも彼らの噂は広まり、店にも彼らの作った作物が多く並んでいたらしい。
しかし、山の様子が変わってから街で採れる作物に異変が現れ始める。それまで順調に育っていた作物は、今までの栽培方法では育たなくなってしまったのだという。
街の人達は当時の調査隊に山を調べてきて欲しいと頼んだが、これといった成果はなく原因が分からないまま暫くの歳月が経った頃、とある夫婦が何の前触れもなく忽然と姿を消してしまったらしい。
その夫婦の妻の方は、山の様子が変わる少し前から妊娠していたらしい。捜索依頼は調査隊の元にも届いていたが、山での失踪事件は軒並み解決には向かっていないのが街の通例でもあった。
恐らくその夫婦こそが両親だろうとカガリは信じているようだ。
「俺が知る限りの情報はそれだけだ。けどその夫婦が多分俺の・・・」
ハインドの街に農家というのは少なくないらしい。一瞬シンとミアの脳裏に過ったのは、山に消えた妻の捜索依頼を出しているトミの話だった。確か彼らも農家であり、畑を潤す為に山の麓へ土を採りに行ったという話だった筈。
しかしカガリの年齢を考えれば、彼らの話とは結びつかないことは直ぐに分かった。トミの妻であるユリアが失踪したのは、せいぜい数ヶ月前の事らしい。
それに比べてカガリの両親が失踪したのは、カガリ自身が赤子だった頃だという事から、今のカガリの年齢を見るに十数年経っている。
他にも似たような話はあるのかと、カガリとアクセルに尋ねる二人。それを聞いて彼らは少なくない話だと語る。
ハインドの街で生活をすれば分かる事らしいが、やはり山の恩恵を受ける事から、その山の精気がなくなってしまうと生活に支障をきたしてしまうのだという。
身体自体にはそれほど影響はないが、仕事には大きく関係するらしい。恵まれた環境にあると、それが突如として失われた時、人は今までの便利さを求めてしまうらしい。
故に山へ入ってしまう者も少なくないのだとアクセルは言う。
「安定した山の状態が保てればこんな事も無くなるのに・・・」
「自然が起こす現象を安定化させるなんて事、人間には出来ねぇさ」
「けどこのままじゃ、この先もずっと人は山に呑まれて行っちまう!ミネだってもしかしたら・・・」
「悪い方に考えるのはよせ、カガリ。その為の調査隊だろ?お前はそんな自然の現象と戦うミネの背中を見て憧れたんじゃなかったのか?」
「それは・・・」
今のカガリにはまだ難しい事なのかもしれないが、ミネまでも失踪してしまった以上、今誰よりも山の知識があるのはカガリだけだ。山のヌシのことや光脈のこと、そしてそこから溢れる精気のことを解明する為に、彼の力は欠かせない。
アクセルとシンとミア。彼らがカガリの話を聞き、他の者達に伝える役割を持ち、彼の話に耳を傾ける。
「俺には両親がいないんだ。ミネさんが山で泣いている俺を拾ってくれて、それ以来ミネさんが俺の親代わりだった。けど、ミネさんは自分を親とは思うな、お前には確かな愛情を注いでくれる本当の両親がいるって言ってたんだ。まぁ、それ以上聞こうとしても何も教えてはくれなかったけど・・・」
話を聞いたシンがミアの方を見る。この話は宿屋で調査隊との接触を果たしたと言うミアとアカリから聞いた話と同じだった。だがこの時はミアも初めて聞くフリをしていた。
それはミネが両親のことを頑なにカガリに伝えようとしない様子を目の当たりにし、本人からもそう聞いていたからだった。
「けどさ、そんなに隠されたら知りたくなるじゃんか。しかも俺の両親は俺のこと愛してたって言うんだぜ?俺を山に置き去りにしたのにさ・・・」
「何か事情があるんじゃないか?仮にそれが嘘だったとしても、ミネに何のメリットもない」
アクセルは彼の生い立ちについては知らないようだ。調査隊というもの自体は調べていたようだが、その隊員一人一人の情報までは網羅していなかったらしい。
「んなこたぁ俺だって分かってますよ。ミネさんがそんな事言うような人じゃないって事くらい・・・。だから尚更気になるんすよ。ミネさんがそこまで言う俺の両親ってのが、どんな人達だったのか・・・」
「それで調べたのか?両親のこと」
「おい、ミア」
恩人に止められていた両親の捜索と、それでも両親のことを知りたい彼の気持ちのジレンマを突くことは、彼にとって辛い事なのではとシンはミアを止めようとするが、ミアはまるでカガリにそんな事で愛情を注いでくれた両親のことを諦めて欲しくないと言った様子で彼に詰め寄っていた。
「ミネさんには言ってないけど、実は一人で色々と調べてた・・・。この話はミネさんには言わないでくれよ?」
意外にも子供らしい一面を見せるカガリに、当たり前だと微笑ましい表情を浮かべて頷く一行。そして彼が調べたという両親の情報が、直接息子の言葉で伝えられていく。
どうやらカガリの両親はハインドの街で農家をしていたらしく、二人の作る作物は行商人達から評判も良かったようだ。街の中でもそれなりに有名だったらしく、近所の家々にも彼らの噂は広まり、店にも彼らの作った作物が多く並んでいたらしい。
しかし、山の様子が変わってから街で採れる作物に異変が現れ始める。それまで順調に育っていた作物は、今までの栽培方法では育たなくなってしまったのだという。
街の人達は当時の調査隊に山を調べてきて欲しいと頼んだが、これといった成果はなく原因が分からないまま暫くの歳月が経った頃、とある夫婦が何の前触れもなく忽然と姿を消してしまったらしい。
その夫婦の妻の方は、山の様子が変わる少し前から妊娠していたらしい。捜索依頼は調査隊の元にも届いていたが、山での失踪事件は軒並み解決には向かっていないのが街の通例でもあった。
恐らくその夫婦こそが両親だろうとカガリは信じているようだ。
「俺が知る限りの情報はそれだけだ。けどその夫婦が多分俺の・・・」
ハインドの街に農家というのは少なくないらしい。一瞬シンとミアの脳裏に過ったのは、山に消えた妻の捜索依頼を出しているトミの話だった。確か彼らも農家であり、畑を潤す為に山の麓へ土を採りに行ったという話だった筈。
しかしカガリの年齢を考えれば、彼らの話とは結びつかないことは直ぐに分かった。トミの妻であるユリアが失踪したのは、せいぜい数ヶ月前の事らしい。
それに比べてカガリの両親が失踪したのは、カガリ自身が赤子だった頃だという事から、今のカガリの年齢を見るに十数年経っている。
他にも似たような話はあるのかと、カガリとアクセルに尋ねる二人。それを聞いて彼らは少なくない話だと語る。
ハインドの街で生活をすれば分かる事らしいが、やはり山の恩恵を受ける事から、その山の精気がなくなってしまうと生活に支障をきたしてしまうのだという。
身体自体にはそれほど影響はないが、仕事には大きく関係するらしい。恵まれた環境にあると、それが突如として失われた時、人は今までの便利さを求めてしまうらしい。
故に山へ入ってしまう者も少なくないのだとアクセルは言う。
「安定した山の状態が保てればこんな事も無くなるのに・・・」
「自然が起こす現象を安定化させるなんて事、人間には出来ねぇさ」
「けどこのままじゃ、この先もずっと人は山に呑まれて行っちまう!ミネだってもしかしたら・・・」
「悪い方に考えるのはよせ、カガリ。その為の調査隊だろ?お前はそんな自然の現象と戦うミネの背中を見て憧れたんじゃなかったのか?」
「それは・・・」
今のカガリにはまだ難しい事なのかもしれないが、ミネまでも失踪してしまった以上、今誰よりも山の知識があるのはカガリだけだ。山のヌシのことや光脈のこと、そしてそこから溢れる精気のことを解明する為に、彼の力は欠かせない。
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