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二人の男の能力
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シン達とは違い二人しかいないアクセルとケネトは、取り囲むように現れた獣型のモンスターを前に、背中合わせで武器を構えていた。
「早速寄って来たか。もう精気は腹一杯だってか!?」
「戦闘中は向こうの気配を感知出来ない。彼らも襲われてると思うか?」
「恐らくな。だがあの坊主が言ってた話が本当なら、海上レースで上位に入るくらいの実力だって事だろう?弱かったらそんな記録残せねぇって」
喉を鳴らしながら二人との間合いを測るように移動して来るモンスター達。それを前にして、シン達の心配をする余裕があるのは、彼らがこの山での依頼に慣れているからなのだろう。
そして一匹のモンスターがアクセルに向けて襲い掛かると、まるで連携をとるかのように周りにいたモンスター達も一斉に動き出し、あろう事か陣形を組んで二人を襲ったのだ。
「何処で拾った入れ知恵かな?油断するなよ、ケネト!」
「お前こそなッ!」
二人は同時に背中を離し、襲い掛かるモンスターへそれぞれ迎え撃った。
ヒーラー職であるケネトは、そのクラスだけを考えれば近接戦闘は苦手なクラスとなる。ただのモンスターなら兎も角、息を合わせるように動く山のモンスターに対抗し得る術を持っているのだろうか。
ケネトは懐から取り出した小さな筒を取り出すと、筒の横を指で押し込み長い棍棒のような物へと変形させる。そして反対の手でポケットから取り出したのは、透明な球体の中に炎を宿した物だった。
それを棍棒の先端に取り付けると、器用に棒をくるくると手元で回しながら、襲い掛かるモンスターを棒の左右を使って受け止めた。先程球体を取り付けた方で受け止めたモンスターが、ケネトが顔を向けたと同時に突如として発火する。
体毛に引火した炎に驚き、燃え上がった一匹はその場で地面に転げ回る。受け止められていたもう一匹は、棒に噛み付いていた口を開きケネトのスキルを警戒したのか飛び退いていく。
「賢いな・・・だがッ!」
再びケネトは棒術のように身体の周りでロッドをクルクルと回すと、徐々に球体の炎の光を増幅させながら、力強く地面に球体の付いていない方のロッドを突き刺す。
ケネトの周りの地面に炎が走り出し、魔法陣のような模様を描いていく。その様子を見た他のモンスター達が、嫌な予感を感じたのか飛び掛かろうとする足を止め、ジリジリと後退し始める。
しかし既にケネトの術は発動していた。散り散りになって後退するモンスターを、地を走る炎が追尾するようにそれぞれを追いかけ始める。獣型のモンスター達は凄まじい脚力で逃げて行くが、ケネトの炎は勢いを失うことなく加速し続け、遂に一体目のモンスターが炎に捕まり、脚に引火すると瞬く間に全身を轟々と燃え上がる炎が包み込む。
悲痛な叫び声をあげて転げ回るモンスターに続き、あちこちで逃げ惑うモンスター達が火柱をあげて燃え上がる。器用に脚の爪で木を駆け上がる個体もいたが、ケネトの炎は木だろうが何だろうがお構いなしに追いかけ、遂には木の上でモンスターに追いつき、その身体を炎で包み込んだ。
「もう少し知恵をつけなきゃ・・・な」
一方、ヒーラー職であるケネトを守る役割を持つアクセルは、飛び掛かってくるモンスターの攻撃を紙一重で躱す。その際、アクセルの両手は何やら紫黒のオーラを纏い、そっとモンスターの身体に触れる。
着地したモンスターに続き、別のモンスター達が続けてアクセルに飛び掛かっていくと、彼は一体目の時と同じようにモンスターの攻撃を紙一重で避けながら、左右に紫黒のオーラを纏う手で触れていく。
アクセルが余裕を持って避けないのは、モンスターの身体に触れる為のようだった。彼自身の柔軟な身のこなしや身体能力が純粋に高く、そのままカウンターで攻撃を当てても十分なダメージを与えられそうなものだが、一体何の目的があってモンスターの身体に触れていたのか。
全く攻撃の当たらないアクセルの動きに翻弄されるモンスター達。作戦を変えたのか、一体目にアクセルに襲い掛かった個体が鳴き声を上げると、再び陣形を変えて順番に襲い掛かる。
すると、アクセルはその鳴き声を上げた個体に、紫黒のオーラを纏った掌を向けると、空気を掴むように何もない空間を握り締め、一気にそれを自身の方へ引き寄せる。
一見何事も起こらないただのハッタリのように見えたが、次の瞬間彼が掌を向けていた一体のモンスターの身体から、何やら白い煙のようなものが抜き出てくる。
その煙は次第にモンスターの形を形成しながらアクセルに引っ張られると、その煙を反対の手で思いっきり殴りつける。煙は彼の拳を受け、身体の反対側が盛り上がるほど胴体を歪ませた。
その後アクセルが掴んでいた手を離すと、煙はまるでゴムのように勢いよくモンスターの身体の中へと戻っていった。完全に煙が身体の中に戻った瞬間、そのモンスターは強烈な攻撃を受けたかのように上空へと跳ね上げられたのだ。
「次ぃぃぃーッ!」
アクセルは次々に先程触れたモンスターの方へ手を翳しては引っ張り、翳しては引っ張りを繰り返す。すると一体目のモンスターの時と同じように幾つもの煙がアクセルの周りに引き寄せられ、彼はその一つ一つに全力の拳や蹴りをお見舞いしていくと、攻撃を受けた煙は凄い勢いで主人の身体の中へと戻って行く。
彼の周りを取り囲んでいたモンスターの群れは、次々に上空へと舞い上がり、木の枝に激突したり地面に落下しながらダメージを負い、意識のある個体はフラフラとしながら彼らの前から去って行った。
「早速寄って来たか。もう精気は腹一杯だってか!?」
「戦闘中は向こうの気配を感知出来ない。彼らも襲われてると思うか?」
「恐らくな。だがあの坊主が言ってた話が本当なら、海上レースで上位に入るくらいの実力だって事だろう?弱かったらそんな記録残せねぇって」
喉を鳴らしながら二人との間合いを測るように移動して来るモンスター達。それを前にして、シン達の心配をする余裕があるのは、彼らがこの山での依頼に慣れているからなのだろう。
そして一匹のモンスターがアクセルに向けて襲い掛かると、まるで連携をとるかのように周りにいたモンスター達も一斉に動き出し、あろう事か陣形を組んで二人を襲ったのだ。
「何処で拾った入れ知恵かな?油断するなよ、ケネト!」
「お前こそなッ!」
二人は同時に背中を離し、襲い掛かるモンスターへそれぞれ迎え撃った。
ヒーラー職であるケネトは、そのクラスだけを考えれば近接戦闘は苦手なクラスとなる。ただのモンスターなら兎も角、息を合わせるように動く山のモンスターに対抗し得る術を持っているのだろうか。
ケネトは懐から取り出した小さな筒を取り出すと、筒の横を指で押し込み長い棍棒のような物へと変形させる。そして反対の手でポケットから取り出したのは、透明な球体の中に炎を宿した物だった。
それを棍棒の先端に取り付けると、器用に棒をくるくると手元で回しながら、襲い掛かるモンスターを棒の左右を使って受け止めた。先程球体を取り付けた方で受け止めたモンスターが、ケネトが顔を向けたと同時に突如として発火する。
体毛に引火した炎に驚き、燃え上がった一匹はその場で地面に転げ回る。受け止められていたもう一匹は、棒に噛み付いていた口を開きケネトのスキルを警戒したのか飛び退いていく。
「賢いな・・・だがッ!」
再びケネトは棒術のように身体の周りでロッドをクルクルと回すと、徐々に球体の炎の光を増幅させながら、力強く地面に球体の付いていない方のロッドを突き刺す。
ケネトの周りの地面に炎が走り出し、魔法陣のような模様を描いていく。その様子を見た他のモンスター達が、嫌な予感を感じたのか飛び掛かろうとする足を止め、ジリジリと後退し始める。
しかし既にケネトの術は発動していた。散り散りになって後退するモンスターを、地を走る炎が追尾するようにそれぞれを追いかけ始める。獣型のモンスター達は凄まじい脚力で逃げて行くが、ケネトの炎は勢いを失うことなく加速し続け、遂に一体目のモンスターが炎に捕まり、脚に引火すると瞬く間に全身を轟々と燃え上がる炎が包み込む。
悲痛な叫び声をあげて転げ回るモンスターに続き、あちこちで逃げ惑うモンスター達が火柱をあげて燃え上がる。器用に脚の爪で木を駆け上がる個体もいたが、ケネトの炎は木だろうが何だろうがお構いなしに追いかけ、遂には木の上でモンスターに追いつき、その身体を炎で包み込んだ。
「もう少し知恵をつけなきゃ・・・な」
一方、ヒーラー職であるケネトを守る役割を持つアクセルは、飛び掛かってくるモンスターの攻撃を紙一重で躱す。その際、アクセルの両手は何やら紫黒のオーラを纏い、そっとモンスターの身体に触れる。
着地したモンスターに続き、別のモンスター達が続けてアクセルに飛び掛かっていくと、彼は一体目の時と同じようにモンスターの攻撃を紙一重で避けながら、左右に紫黒のオーラを纏う手で触れていく。
アクセルが余裕を持って避けないのは、モンスターの身体に触れる為のようだった。彼自身の柔軟な身のこなしや身体能力が純粋に高く、そのままカウンターで攻撃を当てても十分なダメージを与えられそうなものだが、一体何の目的があってモンスターの身体に触れていたのか。
全く攻撃の当たらないアクセルの動きに翻弄されるモンスター達。作戦を変えたのか、一体目にアクセルに襲い掛かった個体が鳴き声を上げると、再び陣形を変えて順番に襲い掛かる。
すると、アクセルはその鳴き声を上げた個体に、紫黒のオーラを纏った掌を向けると、空気を掴むように何もない空間を握り締め、一気にそれを自身の方へ引き寄せる。
一見何事も起こらないただのハッタリのように見えたが、次の瞬間彼が掌を向けていた一体のモンスターの身体から、何やら白い煙のようなものが抜き出てくる。
その煙は次第にモンスターの形を形成しながらアクセルに引っ張られると、その煙を反対の手で思いっきり殴りつける。煙は彼の拳を受け、身体の反対側が盛り上がるほど胴体を歪ませた。
その後アクセルが掴んでいた手を離すと、煙はまるでゴムのように勢いよくモンスターの身体の中へと戻っていった。完全に煙が身体の中に戻った瞬間、そのモンスターは強烈な攻撃を受けたかのように上空へと跳ね上げられたのだ。
「次ぃぃぃーッ!」
アクセルは次々に先程触れたモンスターの方へ手を翳しては引っ張り、翳しては引っ張りを繰り返す。すると一体目のモンスターの時と同じように幾つもの煙がアクセルの周りに引き寄せられ、彼はその一つ一つに全力の拳や蹴りをお見舞いしていくと、攻撃を受けた煙は凄い勢いで主人の身体の中へと戻って行く。
彼の周りを取り囲んでいたモンスターの群れは、次々に上空へと舞い上がり、木の枝に激突したり地面に落下しながらダメージを負い、意識のある個体はフラフラとしながら彼らの前から去って行った。
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