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二日目捜索開始
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とはいうものの、作戦というほど計画性のあるものではない。何をするにも、先ずは行方不明になっているユリアを見つけるか、その痕跡を見つけなければ話にならない。
一日目と同様に、何合目看板か或いは最初に捜索の手掛かりにした、木の目印を辿り一つ一つ調べていく他ない。シン達の話もそれ程長くは掛からず、ミア達がギルドのテントで一息ついて間も無く、彼らも後を追うようにテントへとやって来た。
「みんなお待たせ!」
「いや待ってねぇよ。まだ貰ったお茶も飲み干してねぇ」
ツクヨとツバキの小気味のいいやり取りを尻目に、ミアが捜索の方針についてアクセルには尋ねる。
「基本的には昨日の捜索と変わらない。今回は昨日の続きで三合目を目指し、そこから同じように二手に分かれて手掛かりを探す。何か見つけたら、そこの坊主が作ったこの通信機で連絡を取り合おう」
「誰が坊主だ!」
「いや、実際凄い代物だよ。あの山の中は電波が悪く、他の精密機械などでは殆ど連絡が取れなかった。故に離れた者同士の魔力で何かを察しなければならなかったから大変だったんだ。感謝しているよツバキ」
ケネトのフォローによりすっかり機嫌を直した様子のツバキ。だが実際、彼の発明のおかげで、手掛かりとなり得る物の判断をその場でアクセルらに聞く事が出来るのは、かなりの時間の節約になる。
もしこのカメラのガジェットが無ければ、いちいち手掛かりかも分からない物を合流地点に持ち帰り、そこで判断を仰がなくてはならなかったからだ。
「そう言えばあの鳥の容態は?」
アクセルが昨日、精気にやられ体調を崩していた紅葉の心配をすると、紅葉本人から心配ないといった様子で返事が返って来た。
「キィー!」
「大丈夫だといっています」
「はは、元気そうで良かったぜ。実際人間には感じ取れない精気を感じ取ってくれるのは、アンタ達にとっても身を守る上でかなり重要になる。彼の力も借りるとしよう」
一行の状態が万全であることを確認し、いよいよ彼らはギルドの捜索隊よりも先に山の中へと入って行く事となった。拠点が配置されたところからではなく、以前山へ入ったルートから登山を開始する一行は、再び例の木の目印を追いながら先へ先へと足を運ぶ。
前回の慣れもあるおかげか、それ程時間を掛けずして二本目の木の目印のところまでやって来た一行。ここからはシン達にとっとも初見となる山道。ギルドの捜索隊が向かうルートとは異なり、こちらはだいぶ足場も狭まり整備されていない道も増えて来た。
依頼人のユリアが入って行った道という事もあるが、このルートの目印は一体誰がつけて行ったものなのかと気になったツクヨが、アクセルにその詳細を問う。
どうやら回帰の山と呼ばれるここには、古くから山越えの為のルートが幾つも開拓されていたらしい。今でこそ整備の入った登山道が敷かれているが、その古くはヌシが変わるごとに次第に地形の変動や植物の成長によって塞がれてしまうのだという。
なので今ある整備された登山道もいずれは無くなってしまうだろうとアクセルは語る。多くの先人達によって残された開拓の歩みが、様々な形や目印となって残っている場合があり、それらが次の登山道として整備される未来も十分にあるようだ。
今一行が進んでいる山道も、嘗ての調査隊が開拓したものであり、彼らが命懸けで残した軌跡となっているのだという。
「そっか。ここも昔は誰かが登山道として使っていたんだね・・・」
「あぁ。彼らの歩み無くして、今の俺達の調査や活動は無い。ゼロからのスタートでは、捜索も調査もここまでは捗らないだろうよ」
アクセルに嘗ての調査隊の残した功績の話を聞いているうちに、一行は三つ目の目印のあるところにまでやって来た。
「さぁ、そんな彼らの功績が見えて来たぜ。捜索の仕方は昨日と同じだ。俺とケネトはアンタ達と逆方面を攻める。何か見つけたらその都度連絡してくれ。こちらも見つけ次第、情報を共有する」
「分かった」
「了解」
そういって二日目最初の捜索が始まる。前回よりも高く深く山に足を踏み入れた訳だが、紅葉に昨日のような体調不良は見られない。それを見てアクセルの言っていた、山のヌシが移動しているという話を漸く実感する一行。
「紅葉、今日は大丈夫みたいね」
「キィ!」
「昨日よりも登ってる筈なのにな。やっぱりあの男の言っていたヌシが精気の流れを運んで移動しているというのは、本当のようだな」
「疑ってたのか?ミアは」
「疑うというよりも、実感が湧かなかったという方が正しいかな。あんまりそういう昔話や言い伝えみたいなのを、初めから信じるタイプでも無いからなアタシは」
「ミアってそういうところあるよな。何でも最初は疑ってたのか掛かるところ」
ツバキがそう言うと、ミアは意外にも反論するように言い返す事はなかった。何か彼女の触れてはいけない部分に触れてしまったのではないかと、内心焦りを見せるシンとツクヨだったが、あまりそういうのを気にしないツバキはそんなミアをフォローするように言葉を続けた。
「まぁそれがミアの良さでもあるけどよ。無鉄砲で純粋すぎるところがあるからなぁこのチームは」
「ふ、お前が言うなよなツバキ」
「俺は純粋な技術者だからな。好奇心旺盛と言ってくれよ」
別に怒ったり傷ついたりしているようではなかった事に安堵するシンとツクヨ。捜索は大きな変化がある訳ではなく、昨日の捜索と殆ど変わらずに進み、三つ目の目印のところでは結局何も見つける事が出来ず、一行は目印の木の元へ集まり、次なる目印の木を目指して再び山を登り始める。
一日目と同様に、何合目看板か或いは最初に捜索の手掛かりにした、木の目印を辿り一つ一つ調べていく他ない。シン達の話もそれ程長くは掛からず、ミア達がギルドのテントで一息ついて間も無く、彼らも後を追うようにテントへとやって来た。
「みんなお待たせ!」
「いや待ってねぇよ。まだ貰ったお茶も飲み干してねぇ」
ツクヨとツバキの小気味のいいやり取りを尻目に、ミアが捜索の方針についてアクセルには尋ねる。
「基本的には昨日の捜索と変わらない。今回は昨日の続きで三合目を目指し、そこから同じように二手に分かれて手掛かりを探す。何か見つけたら、そこの坊主が作ったこの通信機で連絡を取り合おう」
「誰が坊主だ!」
「いや、実際凄い代物だよ。あの山の中は電波が悪く、他の精密機械などでは殆ど連絡が取れなかった。故に離れた者同士の魔力で何かを察しなければならなかったから大変だったんだ。感謝しているよツバキ」
ケネトのフォローによりすっかり機嫌を直した様子のツバキ。だが実際、彼の発明のおかげで、手掛かりとなり得る物の判断をその場でアクセルらに聞く事が出来るのは、かなりの時間の節約になる。
もしこのカメラのガジェットが無ければ、いちいち手掛かりかも分からない物を合流地点に持ち帰り、そこで判断を仰がなくてはならなかったからだ。
「そう言えばあの鳥の容態は?」
アクセルが昨日、精気にやられ体調を崩していた紅葉の心配をすると、紅葉本人から心配ないといった様子で返事が返って来た。
「キィー!」
「大丈夫だといっています」
「はは、元気そうで良かったぜ。実際人間には感じ取れない精気を感じ取ってくれるのは、アンタ達にとっても身を守る上でかなり重要になる。彼の力も借りるとしよう」
一行の状態が万全であることを確認し、いよいよ彼らはギルドの捜索隊よりも先に山の中へと入って行く事となった。拠点が配置されたところからではなく、以前山へ入ったルートから登山を開始する一行は、再び例の木の目印を追いながら先へ先へと足を運ぶ。
前回の慣れもあるおかげか、それ程時間を掛けずして二本目の木の目印のところまでやって来た一行。ここからはシン達にとっとも初見となる山道。ギルドの捜索隊が向かうルートとは異なり、こちらはだいぶ足場も狭まり整備されていない道も増えて来た。
依頼人のユリアが入って行った道という事もあるが、このルートの目印は一体誰がつけて行ったものなのかと気になったツクヨが、アクセルにその詳細を問う。
どうやら回帰の山と呼ばれるここには、古くから山越えの為のルートが幾つも開拓されていたらしい。今でこそ整備の入った登山道が敷かれているが、その古くはヌシが変わるごとに次第に地形の変動や植物の成長によって塞がれてしまうのだという。
なので今ある整備された登山道もいずれは無くなってしまうだろうとアクセルは語る。多くの先人達によって残された開拓の歩みが、様々な形や目印となって残っている場合があり、それらが次の登山道として整備される未来も十分にあるようだ。
今一行が進んでいる山道も、嘗ての調査隊が開拓したものであり、彼らが命懸けで残した軌跡となっているのだという。
「そっか。ここも昔は誰かが登山道として使っていたんだね・・・」
「あぁ。彼らの歩み無くして、今の俺達の調査や活動は無い。ゼロからのスタートでは、捜索も調査もここまでは捗らないだろうよ」
アクセルに嘗ての調査隊の残した功績の話を聞いているうちに、一行は三つ目の目印のあるところにまでやって来た。
「さぁ、そんな彼らの功績が見えて来たぜ。捜索の仕方は昨日と同じだ。俺とケネトはアンタ達と逆方面を攻める。何か見つけたらその都度連絡してくれ。こちらも見つけ次第、情報を共有する」
「分かった」
「了解」
そういって二日目最初の捜索が始まる。前回よりも高く深く山に足を踏み入れた訳だが、紅葉に昨日のような体調不良は見られない。それを見てアクセルの言っていた、山のヌシが移動しているという話を漸く実感する一行。
「紅葉、今日は大丈夫みたいね」
「キィ!」
「昨日よりも登ってる筈なのにな。やっぱりあの男の言っていたヌシが精気の流れを運んで移動しているというのは、本当のようだな」
「疑ってたのか?ミアは」
「疑うというよりも、実感が湧かなかったという方が正しいかな。あんまりそういう昔話や言い伝えみたいなのを、初めから信じるタイプでも無いからなアタシは」
「ミアってそういうところあるよな。何でも最初は疑ってたのか掛かるところ」
ツバキがそう言うと、ミアは意外にも反論するように言い返す事はなかった。何か彼女の触れてはいけない部分に触れてしまったのではないかと、内心焦りを見せるシンとツクヨだったが、あまりそういうのを気にしないツバキはそんなミアをフォローするように言葉を続けた。
「まぁそれがミアの良さでもあるけどよ。無鉄砲で純粋すぎるところがあるからなぁこのチームは」
「ふ、お前が言うなよなツバキ」
「俺は純粋な技術者だからな。好奇心旺盛と言ってくれよ」
別に怒ったり傷ついたりしているようではなかった事に安堵するシンとツクヨ。捜索は大きな変化がある訳ではなく、昨日の捜索と殆ど変わらずに進み、三つ目の目印のところでは結局何も見つける事が出来ず、一行は目印の木の元へ集まり、次なる目印の木を目指して再び山を登り始める。
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