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その顔はどこか思い詰めているようでもあった。しかしそれ以上ミア達が後を追う事はなかった。不慣れな素人が夜の山へと向かうという事は、この街では自殺行為にも等しいこと。
それが例え戦闘慣れした者達であろうと同じ事。海上レースの時もそうだったが、自然というものはこちらの世界でも現実世界でも、未知なる恵と恐怖を与える。
「何処へ行く気なんでしょう、ミネさん・・・」
「さぁ。ただの調査って感じじゃなさそうだったな」
「えぇ、それにカガリさんも居ませんでした。調査なら二人で向かう筈ですよね?カガリさんは家に居るんでしょうかね」
「ま、アタシらには関係ない事だ。そろそろ完全に陽が沈む。早くシンのところへ帰ろう」
「はい」
整備された道からは大きく外れ、生い茂る草木がまるで大口を開けて待ち受ける大蛇のように、ミネを暗闇の森へと誘う。その姿を見送りながら、ミア達は宿へと戻って行く。
二人が宿に到着し、借りている部屋にやって来ると扉越しにツクヨ達の声が聞こえて来た。既に向こうも情報収集を終え戻って来ていたようだ。
「おかえりミア、アカリちゃん。随分と遅かったようだけど?」
「えっと、それは・・・」
「あぁ、買い物しててな。山に入るのに必要だって言われたのを買い揃えてたら遅れちまった」
ツクヨの質問に正直に答えようとするアカリを制止し、誤魔化しを入れるミア。今彼らに話すのは得策ではない、ミアはそのように判断したのだ。余計な心配や不安を彼らに抱かせる訳にはいかない。
「ミネが山に向かった事は、おいおいな?」
「それは構いませんけど・・・」
こっそり耳打ちする二人を尻目に、今度はツクヨ達が情報収集の成果を発表する。二人は早速ギルドで依頼を受けていた人物の事を一行に説明し、明日の朝彼らと共に山へと入る機会を得た事を伝える。
そこでツクヨは、依頼人のトミの話をしながらどうにか彼の依頼を果たしてあげたいという、本来の目的である山越えとは関係のない依頼に力を貸して欲しいと頼む。
「あぁ、勿論だ。ツクヨがそこまで親身になるんだ、“仲間”として協力しない訳ないだろ?」
「シン・・・」
「まぁ普段から迷惑かけちまってるからな。ここらで恩の一つや二つ売っておくのも悪かない」
照れ隠しのつもりか、素直じゃない返しをするミアにも、ツクヨはいつにもなく真面目な表情で感謝を告げる。思っていた返しと違い、些か困惑するミアを見て笑みを浮かべるアカリ。
勿論ツバキとアカリも、ツクヨの依頼を受ける事に賛成した。一行は明日の準備のため、早速宿で英気を養い、各々の準備を始める。
早めの夕食を終えた後、ツバキは自身のガジェットの改造と改善に勤しみ、他のメンバーはアカリの調合の手伝いを始めた。
シン達WoFユーザー組は、アカリ程の調合のスキルを持っていない為、簡単な素材を使った誰にでも出来る回復薬の調合と、精神安定剤の素材となる状態異常回復のアイテムの調合を始める。
「調合なんて初めてだけど、クラスに関係なく知識だけで出来るものなの?普通」
「まぁ多少はな。本来簡単な調合を要求されるクエストとかもあって・・・って、ツクヨはその段階をすっ飛ばしてるんだもんな」
「ははは、面目ない・・・。その“当時”はあまり興味がなくて」
ツクヨのWoFのキャラクターは、現実世界で妻である十六夜が作っていたキャラクターであり、ここまでのレベルやステータス、スキル構成などはツクヨ自身が作り上げたものではない。
要するにツクヨは、こちらの世界へ転生した時、与えられた器に魂が入り込んでいるのと同じ状態なのだ。故に本来の自分が何が出来、どこまでの実力を有しているのか未だ把握しきれていない。
それが例え戦闘慣れした者達であろうと同じ事。海上レースの時もそうだったが、自然というものはこちらの世界でも現実世界でも、未知なる恵と恐怖を与える。
「何処へ行く気なんでしょう、ミネさん・・・」
「さぁ。ただの調査って感じじゃなさそうだったな」
「えぇ、それにカガリさんも居ませんでした。調査なら二人で向かう筈ですよね?カガリさんは家に居るんでしょうかね」
「ま、アタシらには関係ない事だ。そろそろ完全に陽が沈む。早くシンのところへ帰ろう」
「はい」
整備された道からは大きく外れ、生い茂る草木がまるで大口を開けて待ち受ける大蛇のように、ミネを暗闇の森へと誘う。その姿を見送りながら、ミア達は宿へと戻って行く。
二人が宿に到着し、借りている部屋にやって来ると扉越しにツクヨ達の声が聞こえて来た。既に向こうも情報収集を終え戻って来ていたようだ。
「おかえりミア、アカリちゃん。随分と遅かったようだけど?」
「えっと、それは・・・」
「あぁ、買い物しててな。山に入るのに必要だって言われたのを買い揃えてたら遅れちまった」
ツクヨの質問に正直に答えようとするアカリを制止し、誤魔化しを入れるミア。今彼らに話すのは得策ではない、ミアはそのように判断したのだ。余計な心配や不安を彼らに抱かせる訳にはいかない。
「ミネが山に向かった事は、おいおいな?」
「それは構いませんけど・・・」
こっそり耳打ちする二人を尻目に、今度はツクヨ達が情報収集の成果を発表する。二人は早速ギルドで依頼を受けていた人物の事を一行に説明し、明日の朝彼らと共に山へと入る機会を得た事を伝える。
そこでツクヨは、依頼人のトミの話をしながらどうにか彼の依頼を果たしてあげたいという、本来の目的である山越えとは関係のない依頼に力を貸して欲しいと頼む。
「あぁ、勿論だ。ツクヨがそこまで親身になるんだ、“仲間”として協力しない訳ないだろ?」
「シン・・・」
「まぁ普段から迷惑かけちまってるからな。ここらで恩の一つや二つ売っておくのも悪かない」
照れ隠しのつもりか、素直じゃない返しをするミアにも、ツクヨはいつにもなく真面目な表情で感謝を告げる。思っていた返しと違い、些か困惑するミアを見て笑みを浮かべるアカリ。
勿論ツバキとアカリも、ツクヨの依頼を受ける事に賛成した。一行は明日の準備のため、早速宿で英気を養い、各々の準備を始める。
早めの夕食を終えた後、ツバキは自身のガジェットの改造と改善に勤しみ、他のメンバーはアカリの調合の手伝いを始めた。
シン達WoFユーザー組は、アカリ程の調合のスキルを持っていない為、簡単な素材を使った誰にでも出来る回復薬の調合と、精神安定剤の素材となる状態異常回復のアイテムの調合を始める。
「調合なんて初めてだけど、クラスに関係なく知識だけで出来るものなの?普通」
「まぁ多少はな。本来簡単な調合を要求されるクエストとかもあって・・・って、ツクヨはその段階をすっ飛ばしてるんだもんな」
「ははは、面目ない・・・。その“当時”はあまり興味がなくて」
ツクヨのWoFのキャラクターは、現実世界で妻である十六夜が作っていたキャラクターであり、ここまでのレベルやステータス、スキル構成などはツクヨ自身が作り上げたものではない。
要するにツクヨは、こちらの世界へ転生した時、与えられた器に魂が入り込んでいるのと同じ状態なのだ。故に本来の自分が何が出来、どこまでの実力を有しているのか未だ把握しきれていない。
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