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それぞれの情報収集と動き
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「ちょっちょっと!その影を使う人って!?」
「なぁ!もう少し詳しく聞かせてくれねぇか!?」
影を扱うという人物というのに食い付く二人。だがアクセル達もはっきりと覚えている訳ではなく、あくまで影を使っていたと“思う”という範囲に過ぎない。
「待ってくれ、俺達だって詳細に覚えてる訳じゃないんだ。なぁ?」
「あぁ、あの時は憔悴しきってたし、当時の記憶も定かではないんだ」
彼らは無償で人助けをする様な人がいる事や、お礼を言う間も無く姿を消してしまった黒い衣の者達の“行い”に感銘を受けたのだ。確かに心のどこかでは、人助けをしていれば、何れ何処かで自分達の噂を聞きつけた彼らともう一度会えるのではないかという期待もあったと、その後に語った。
アクセルらの話を聞いて、ツクヨとツバキは自分達も同じ様な装いの人物を見た事があると伝えた。それは海上レースの開会式の時、スポンサーという形で異世界へのポータルを作り出すアイテムを、ステージとなる大海原の島に隠したと言って。
双方の話を聞き比べてみても、とてもツクヨ達の目撃した黒いコートの人物がいい人の様には思えない。加えてシンから別の黒いコートの二人組の話を聞いていたツクヨは、同様にその者らとも違うと感じていた。
「でもなぁ、黒い格好ってだけじゃぁ、そんな特徴くらい幾らでもありそうな話じゃねぇか?」
「そっそれは・・・」
「それに俺達は何もその人らが誰なのか知りたいんじゃない。出来たらあの時のお礼を言いたいってだけだぜ」
彼らに大きな熱意はない。それにこれ以上聞いたところで何も出てこないだろう。何よりも、今はトミの依頼が最優先。暫く黙っていたツクヨはツバキを引き止め、これ以上の詮索は控えておこうと伝える。
「すみません、話を逸らしてしまって。そういえばお二人もまだ、トミさんから依頼のことについて話を伺っている途中でしたよね?」
「ん?あぁ、そうだったそうだった!すみませんトミさん。じゃぁ早速話の続きを・・・」
と、一行が横になっているトミの方へ視線を移すと、彼は喋り疲れてしまったのか、静かに目を閉じて眠ってしまっていた。ケネトのスキルで精神を安定させていたという事もあり、彼の目の下のクマからも碌に寝れていなかったであろう事が読み取れる。
起こさぬよう顔を見合わせて一行は、一先ず今日の情報収集はこれまでとして、彼の家を出ていく事にした。
玄関を出た一行は、これからの事について話し出す。アクセルらは一度山の様子を見に行くようだ。だがそれはあくまで、依頼のした調べに過ぎない。陽が落ちれば危険になるのは、対策をしている彼らでも同じことのようで、出来れば朝方から昼過ぎ辺りまでの時間で調査を進めたいらしい。
「じゃぁ本格的に動き出すのは明日の朝から、という事ですね?」
「まぁそうなるな。アンタ達の都合が良ければ同行してもらって、手分けして探す事になるだろう。それで構わないか?」
「分かりました。仲間にもそう伝えておきます」
「悪いが時間はズラせねぇ。俺達が待ち合わせ場所に着いてもアンタ達がいなかったら、そのまま山に入っちまうからな」
「要は遅れずに来いって事だろう?分かってるぜ!そっちも遅れるなよ?」
「ふふ、言ってくれるな、ガキのくせに」
「ガキじゃねぇ!」
ツクヨとツバキはそこで二人と別れ、一度宿へと戻る事にした。
一方、山の調査隊というミネとカガリの元を訪れていたミア達もまた、彼らから山に入る際に必要な物や、薬の調合リストをメモさせてもらうと、同行は頼めなかったがツクヨ達以上に必要な知識と道具を集める事が出来た。
アカリの調合のスキルを頼り、リストから必要な材料を探して街の店を巡っていた二人は、精神安定剤やその他の効能を持つ調合素材を買い揃え、シンの待つ宿へと戻っていた。
買った量に対し安く済んだのは、アカリのおかげと言えよう。元々リストにあった物の中で、更に原価の安い物を買い、調合によって揃えるという方法をとっていたからだった。
「流石だな、アカリ」
「いえいえ、獣人族の皆さんの努力の結晶です。私はそれを記憶したに過ぎません」
「それでも大した知識さ。今度は酒でも調合して貰おうか」
「またミアさんはそんなコトを・・・。お仲間でもお金を取りますからね!」
「何でそんな事言う子に育ってしまったのか・・・ん?」
ふと視線を移した先で、見覚えのある姿を見つけたミア。それはつい先程まで北の山の事を聞いていたミネの姿だった。やや陽が沈み始めてる今、彼は何処へ出掛けようというのか。
「ちょっとミアさん!聞いてますか?」
「あぁ・・・いや、そうじゃない。アカリ、ミネだ。こんな時間に一人で何処へ行くんだろうな・・・」
「え?・・・さぁ、お買い物かなにかでは?」
「それにしては様子が変だ。おい!路地裏に入っていっちまう。追うぞ!」
「え?えぇ!?これからですか!?」
アカリの返事を待たずして、建物の間へと入り込んでいってしまうミネを追い掛けるミア。シン達との約束の時間が近づく中、仕方がなくミアを追いかけるアカリ。
気付かれぬよう物陰に身を潜めながら尾行していくと、どうやら彼は街を出て行くつもりらしい。街から出ない範囲でミネの姿を捉えていると、彼はそのまま街を出て北の山の方へと、一人で向かって行ってしまった。
「なぁ!もう少し詳しく聞かせてくれねぇか!?」
影を扱うという人物というのに食い付く二人。だがアクセル達もはっきりと覚えている訳ではなく、あくまで影を使っていたと“思う”という範囲に過ぎない。
「待ってくれ、俺達だって詳細に覚えてる訳じゃないんだ。なぁ?」
「あぁ、あの時は憔悴しきってたし、当時の記憶も定かではないんだ」
彼らは無償で人助けをする様な人がいる事や、お礼を言う間も無く姿を消してしまった黒い衣の者達の“行い”に感銘を受けたのだ。確かに心のどこかでは、人助けをしていれば、何れ何処かで自分達の噂を聞きつけた彼らともう一度会えるのではないかという期待もあったと、その後に語った。
アクセルらの話を聞いて、ツクヨとツバキは自分達も同じ様な装いの人物を見た事があると伝えた。それは海上レースの開会式の時、スポンサーという形で異世界へのポータルを作り出すアイテムを、ステージとなる大海原の島に隠したと言って。
双方の話を聞き比べてみても、とてもツクヨ達の目撃した黒いコートの人物がいい人の様には思えない。加えてシンから別の黒いコートの二人組の話を聞いていたツクヨは、同様にその者らとも違うと感じていた。
「でもなぁ、黒い格好ってだけじゃぁ、そんな特徴くらい幾らでもありそうな話じゃねぇか?」
「そっそれは・・・」
「それに俺達は何もその人らが誰なのか知りたいんじゃない。出来たらあの時のお礼を言いたいってだけだぜ」
彼らに大きな熱意はない。それにこれ以上聞いたところで何も出てこないだろう。何よりも、今はトミの依頼が最優先。暫く黙っていたツクヨはツバキを引き止め、これ以上の詮索は控えておこうと伝える。
「すみません、話を逸らしてしまって。そういえばお二人もまだ、トミさんから依頼のことについて話を伺っている途中でしたよね?」
「ん?あぁ、そうだったそうだった!すみませんトミさん。じゃぁ早速話の続きを・・・」
と、一行が横になっているトミの方へ視線を移すと、彼は喋り疲れてしまったのか、静かに目を閉じて眠ってしまっていた。ケネトのスキルで精神を安定させていたという事もあり、彼の目の下のクマからも碌に寝れていなかったであろう事が読み取れる。
起こさぬよう顔を見合わせて一行は、一先ず今日の情報収集はこれまでとして、彼の家を出ていく事にした。
玄関を出た一行は、これからの事について話し出す。アクセルらは一度山の様子を見に行くようだ。だがそれはあくまで、依頼のした調べに過ぎない。陽が落ちれば危険になるのは、対策をしている彼らでも同じことのようで、出来れば朝方から昼過ぎ辺りまでの時間で調査を進めたいらしい。
「じゃぁ本格的に動き出すのは明日の朝から、という事ですね?」
「まぁそうなるな。アンタ達の都合が良ければ同行してもらって、手分けして探す事になるだろう。それで構わないか?」
「分かりました。仲間にもそう伝えておきます」
「悪いが時間はズラせねぇ。俺達が待ち合わせ場所に着いてもアンタ達がいなかったら、そのまま山に入っちまうからな」
「要は遅れずに来いって事だろう?分かってるぜ!そっちも遅れるなよ?」
「ふふ、言ってくれるな、ガキのくせに」
「ガキじゃねぇ!」
ツクヨとツバキはそこで二人と別れ、一度宿へと戻る事にした。
一方、山の調査隊というミネとカガリの元を訪れていたミア達もまた、彼らから山に入る際に必要な物や、薬の調合リストをメモさせてもらうと、同行は頼めなかったがツクヨ達以上に必要な知識と道具を集める事が出来た。
アカリの調合のスキルを頼り、リストから必要な材料を探して街の店を巡っていた二人は、精神安定剤やその他の効能を持つ調合素材を買い揃え、シンの待つ宿へと戻っていた。
買った量に対し安く済んだのは、アカリのおかげと言えよう。元々リストにあった物の中で、更に原価の安い物を買い、調合によって揃えるという方法をとっていたからだった。
「流石だな、アカリ」
「いえいえ、獣人族の皆さんの努力の結晶です。私はそれを記憶したに過ぎません」
「それでも大した知識さ。今度は酒でも調合して貰おうか」
「またミアさんはそんなコトを・・・。お仲間でもお金を取りますからね!」
「何でそんな事言う子に育ってしまったのか・・・ん?」
ふと視線を移した先で、見覚えのある姿を見つけたミア。それはつい先程まで北の山の事を聞いていたミネの姿だった。やや陽が沈み始めてる今、彼は何処へ出掛けようというのか。
「ちょっとミアさん!聞いてますか?」
「あぁ・・・いや、そうじゃない。アカリ、ミネだ。こんな時間に一人で何処へ行くんだろうな・・・」
「え?・・・さぁ、お買い物かなにかでは?」
「それにしては様子が変だ。おい!路地裏に入っていっちまう。追うぞ!」
「え?えぇ!?これからですか!?」
アカリの返事を待たずして、建物の間へと入り込んでいってしまうミネを追い掛けるミア。シン達との約束の時間が近づく中、仕方がなくミアを追いかけるアカリ。
気付かれぬよう物陰に身を潜めながら尾行していくと、どうやら彼は街を出て行くつもりらしい。街から出ない範囲でミネの姿を捉えていると、彼はそのまま街を出て北の山の方へと、一人で向かって行ってしまった。
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