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街のギルド
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ミア達が回帰の山の調査隊を調べている一方、別グループとして行動していたツクヨとツバキは、ハインドの街のギルドに足を運んでいた。
情報が集まる場所といえば、その街や村にあるギルドがある。様々なところから依頼が寄せられるギルドであれば、当然北の山に関する依頼もある事だろう。
大きな街であればクラス別のギルドがいくつも建っていたりするものだが、ここでは冒険者ギルドといったように、様々なクラスを一色単にした括りのギルドがあるようだった。
早速カウンターに向かい、依頼をまとめた帳簿を見せてもらい、北の山に関するものを片っ端から調べて行くツクヨとツバキ。帳簿は古典的な分厚い本のようになっており、解決済みの依頼にはギルドの判子が押してあったり、早期解決を望むものには付箋などが貼り付けられている。
「いやしかし、すげぇ量だな~。こりゃぁ直ぐには戻れないかぁ?」
「私達が調べるのは北の山についてだけだから、実際はもっと件数は少ない筈だよ。まぁ根気よく目を通して行く事になりそうではあるけどね・・・」
帳簿に記された北の山に関する依頼は、二人の想像している以上に多く、なかなか骨の折れる作業になりそうだった。暫く帳簿の依頼に目を通していると、ある事にツクヨが気がつく。
それは北の山に関する依頼は全て、解決までの期限が一切記されていないという事だった。大抵の依頼はいつまでに解決して欲しいかという要望や、ギルド側である程度の目標期限が記されているのだが、北の山に関してはまるで無期限かのように記載が一切ない。
「ねぇツバキ。これおかしくない?それともギルドの帳簿ってこういうものなの?」
「さぁ・・・俺も詳しい訳じゃねぇ。俺が造船技師をしていた頃は、大抵じじぃがやってくれていたから、俺もよく分からねぇんだ。でも・・・確かに期限が全くないのは妙だな」
「ちょっと受付の人に聞いてみるよ」
北の山の依頼ページを開き席を立ったツクヨは、そのまま帳簿を受け取ったカウンターへ向かい、受付の人間に北の山の依頼が無期限になっている事について質問をした。
「すみません、少しお尋ねしたいのですが・・・」
「はい、何でしょう?」
「帳簿を拝見して思ったのですが、何故北の山に関する依頼には期限が設けられていないのですか?ざっと見た感じ全てそんな感じがするんですが・・・」
するとツクヨ達の方でも、他所から来た人なのかと尋ねられ、それを肯定すると受付の人間はなら仕方がないといった様子で、この街での北の山に関する依頼内容について教えてくれた。
「ここで北の山の依頼を出すという事は、諦め切れない者達が最後の希望を託すようなものなんだよ」
「最後の希望?」
「あぁ。見てもらったのなら分かるだろうが、北の山に関する依頼の殆どが行方不明者の捜索や、居るかも分からない魔物の討伐依頼ばかりだ。ここら辺の者じゃ、北の山に入ったらどうなるかみんな知ってる。魔物の討伐っていうのも、大半が依頼者の幻覚や妄想だろうと思われてる」
受付の者の話を聞いて、その原因が何なのかツクヨには直ぐに分かった。それこそ馬車の主人に聞いた、北の山にあるという光脈とその精気による影響なのだろうと。
辛うじて山から降りて来られても、光脈の精気に当てられた者は幻覚や幻聴といった精神異常をきたし、結局いつの間にか姿を消してしまう事が殆どなのだと言う。
何人か目撃された彼らの行き先は、決まって北の山だったという。夢遊病のような彼らの行動は抑制できるものではなく、症状が現れた者には必ずと言っていいほど訪れる現象なのだと言う。それが回帰の山と呼ばれる所以でもあるそうだ。
「そんな・・・。症状が現れた人を治す術は?」
「明確な治療法は見つかっていないようだよ。一度光脈に当てられたら、殆ど助かる見込みはないんだ。そういった症状の人々を捜索する依頼や、居なくなった者達が魔物に襲われたんだと思い込んだ患者の依頼ばかりって訳だ」
思っていたよりも重い事情を抱える街の様子に、面食らった様子のツクヨを見て受付の者は安心させるように対策と注意事項を守っていれば問題ないと語る。
それも街にかつて存在したという調査隊が発見した、山を越える為の術なのだという。調査隊というものが存在するのかと問うツクヨに対し、受付の者は今はだいぶ規模が縮小し、最早調査隊と呼べるものではなくなってしまったと語る。
「話が逸れてしまったが、期限が無いのは要するにどうしようもない事に対する希望的な依頼だという事だ。ウチではそういうのも扱ってる。もしかしたら誰かが北の山の件をどうにかしてくれるかもしれないってな」
「そういう事だったんですね・・・。ありがとうございました、助かりました」
「いえいえ。貴方も無茶はなさらない様に・・・」
事情を聞いたツクヨがツバキの元へと帰り、受付で聞いた話を彼にも伝えた。やはりツバキも初めて話を聞いた時のツクヨと同じく、これから向かう事になる北の山に不安を抱いてしまった。
「どうすんだよ、流石にヤバいんじゃないか?」
「私達だけで決定は出来ない。それにまだ情報が集まった訳じゃないんだ。調査隊ってのも気になるし、もう少し調べてみようよ」
気の引けるツバキの背中をポンと叩き、再び彼らは残りの帳簿に目を通して行く。
情報が集まる場所といえば、その街や村にあるギルドがある。様々なところから依頼が寄せられるギルドであれば、当然北の山に関する依頼もある事だろう。
大きな街であればクラス別のギルドがいくつも建っていたりするものだが、ここでは冒険者ギルドといったように、様々なクラスを一色単にした括りのギルドがあるようだった。
早速カウンターに向かい、依頼をまとめた帳簿を見せてもらい、北の山に関するものを片っ端から調べて行くツクヨとツバキ。帳簿は古典的な分厚い本のようになっており、解決済みの依頼にはギルドの判子が押してあったり、早期解決を望むものには付箋などが貼り付けられている。
「いやしかし、すげぇ量だな~。こりゃぁ直ぐには戻れないかぁ?」
「私達が調べるのは北の山についてだけだから、実際はもっと件数は少ない筈だよ。まぁ根気よく目を通して行く事になりそうではあるけどね・・・」
帳簿に記された北の山に関する依頼は、二人の想像している以上に多く、なかなか骨の折れる作業になりそうだった。暫く帳簿の依頼に目を通していると、ある事にツクヨが気がつく。
それは北の山に関する依頼は全て、解決までの期限が一切記されていないという事だった。大抵の依頼はいつまでに解決して欲しいかという要望や、ギルド側である程度の目標期限が記されているのだが、北の山に関してはまるで無期限かのように記載が一切ない。
「ねぇツバキ。これおかしくない?それともギルドの帳簿ってこういうものなの?」
「さぁ・・・俺も詳しい訳じゃねぇ。俺が造船技師をしていた頃は、大抵じじぃがやってくれていたから、俺もよく分からねぇんだ。でも・・・確かに期限が全くないのは妙だな」
「ちょっと受付の人に聞いてみるよ」
北の山の依頼ページを開き席を立ったツクヨは、そのまま帳簿を受け取ったカウンターへ向かい、受付の人間に北の山の依頼が無期限になっている事について質問をした。
「すみません、少しお尋ねしたいのですが・・・」
「はい、何でしょう?」
「帳簿を拝見して思ったのですが、何故北の山に関する依頼には期限が設けられていないのですか?ざっと見た感じ全てそんな感じがするんですが・・・」
するとツクヨ達の方でも、他所から来た人なのかと尋ねられ、それを肯定すると受付の人間はなら仕方がないといった様子で、この街での北の山に関する依頼内容について教えてくれた。
「ここで北の山の依頼を出すという事は、諦め切れない者達が最後の希望を託すようなものなんだよ」
「最後の希望?」
「あぁ。見てもらったのなら分かるだろうが、北の山に関する依頼の殆どが行方不明者の捜索や、居るかも分からない魔物の討伐依頼ばかりだ。ここら辺の者じゃ、北の山に入ったらどうなるかみんな知ってる。魔物の討伐っていうのも、大半が依頼者の幻覚や妄想だろうと思われてる」
受付の者の話を聞いて、その原因が何なのかツクヨには直ぐに分かった。それこそ馬車の主人に聞いた、北の山にあるという光脈とその精気による影響なのだろうと。
辛うじて山から降りて来られても、光脈の精気に当てられた者は幻覚や幻聴といった精神異常をきたし、結局いつの間にか姿を消してしまう事が殆どなのだと言う。
何人か目撃された彼らの行き先は、決まって北の山だったという。夢遊病のような彼らの行動は抑制できるものではなく、症状が現れた者には必ずと言っていいほど訪れる現象なのだと言う。それが回帰の山と呼ばれる所以でもあるそうだ。
「そんな・・・。症状が現れた人を治す術は?」
「明確な治療法は見つかっていないようだよ。一度光脈に当てられたら、殆ど助かる見込みはないんだ。そういった症状の人々を捜索する依頼や、居なくなった者達が魔物に襲われたんだと思い込んだ患者の依頼ばかりって訳だ」
思っていたよりも重い事情を抱える街の様子に、面食らった様子のツクヨを見て受付の者は安心させるように対策と注意事項を守っていれば問題ないと語る。
それも街にかつて存在したという調査隊が発見した、山を越える為の術なのだという。調査隊というものが存在するのかと問うツクヨに対し、受付の者は今はだいぶ規模が縮小し、最早調査隊と呼べるものではなくなってしまったと語る。
「話が逸れてしまったが、期限が無いのは要するにどうしようもない事に対する希望的な依頼だという事だ。ウチではそういうのも扱ってる。もしかしたら誰かが北の山の件をどうにかしてくれるかもしれないってな」
「そういう事だったんですね・・・。ありがとうございました、助かりました」
「いえいえ。貴方も無茶はなさらない様に・・・」
事情を聞いたツクヨがツバキの元へと帰り、受付で聞いた話を彼にも伝えた。やはりツバキも初めて話を聞いた時のツクヨと同じく、これから向かう事になる北の山に不安を抱いてしまった。
「どうすんだよ、流石にヤバいんじゃないか?」
「私達だけで決定は出来ない。それにまだ情報が集まった訳じゃないんだ。調査隊ってのも気になるし、もう少し調べてみようよ」
気の引けるツバキの背中をポンと叩き、再び彼らは残りの帳簿に目を通して行く。
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