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北の山の異名
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宿の部屋に着いた一行は早速情報収集の為、宿で留守番をする者と二つのグループに分かれる事となった。シン達WoFユーザーは三手に分かれ、メッセージ機能を使った情報交換が出来るので、この三人でグループ分けが行われる。
だがグループ分けはもう決まったようなものだった。シンは現実世界の瑜那達と新たなシステムの確認と調整を行いたいので、宿で情報収集組の帰りを待つ留守番役で決定。
残りは再び男女のグループという事で、ツクヨとツバキ、ミアとアカリのグループで決定した。北の山に関する情報収集の他に、現地民で山を越える一団などがあれば合流し超えたい。
別れ際の馬車の主人の曰く、流石に山を越える馬車は出ていないらしい。商人達も別ルートから山の向こう側へ向かうらしいが、ハインドの街からはかなり離れた場所に行かなければならず、シン達にとっても何日ものタイムロスは痛い。
だが危険な山であっても、現地の山に詳しい者達と共に慎重に山を登る時間帯と注意すべき事を守って登れば、何もそこまで大きな大惨事にはならないのだという。
詳しくはこの街の人達に聞いてみてくれと、馬車の主人との会話はそこで終わってしまった。
「じゃぁ俺は宿で待ってるから」
「分かったよシン。情報収集は私達に任せてくれ!」
「何だよ、シンはまた留守番でいいのか?」
「あぁ、ちょっと用事があってな。まぁ今直ぐに出発って訳でもないんだ、夜とか明日とか時間のある時にでも街を見て回るよ」
「ではその時の為に、街案内出来るくらいに詳しくならないとですね!」
「そんなに詳しくなってどうする・・・。まぁ夕食頃までには戻る予定だ。それまで大人しくしてろよぉ~?」
羨ましいかと言わんばかりの表情でシンの顔を覗き込んでくるミア。いいから早く情報を集めて来いと突っぱね拗ねるような態度を見せたシンを尻目に、一行は一度宿を離れ、それぞれ街の中へと散らばって行った。
「さて・・・。瑜那の奴はWoFユーザーのメッセージ機能と同じって言ってたけど・・・」
シンは視界の端のタブからメニュー画面を表示すると、メッセージの欄を調べてみる事にした。すると一件のメッセージが来ており、宛先が全く知らない人物からとなっていた。
試しにそのメッセージを開いてみると、本文には瑜那の名前と共にテスト用のメッセージだという一文が添えられていた。早速シンはそのメッセージに返信をすると、直ぐにメッセージに気づけるように宛先を登録する操作を行う。
『良かった、ちゃんと届いたようですね。今後は取り敢えずこの宛先にメッセージを送ってくれれば、こちらで調べられる事は調べてお答えします。但し時差がありますので、急ぎの際はお気を付けて』
現実世界とのメッセージ機能は問題ないようだった。後は暫く使ってみて不備やおかしな出来事が起こらないかどうかを調べていく必要がある。
『了解した、ありがとう。では早速で悪いんだが、今俺の現在地から北にある山のマップについて情報が欲しい。場所はハインドと言う街の北側にある。どうやら無策で進むには危険な地らしい。よろしく頼む』
向こう側からの返信はやや遅く、これが時差によるものなのだろうというのがシンの見解だ。時間にして十分ほど掛かっているようだが、正確なところはハッキリとはしない。
瑜那の調査結果を待つ間、シンは部屋の窓から見える景色を堪能しながら用意されている茶葉で一服する事にした。
アルバの不思議な体験の後で、モヤモヤとした気分が残っていたシンは、あの時の事件解決のスピードや違和感を思い出していた。これまでのWoFで起きた異変とはまた別物の違和感。
自分達の知らないところで修正を加えられているような不気味な感覚は、直接強大な相手を差し向けられるよりも、ある意味怖い現象なのかも知れない。知らないという事は、こちら側から何も対策を打てないという事でもある。
「てっきり奴らの思惑が働いているのかと思っていたんだが・・・。あれは気のせいだったのか?」
まるで黄昏れるように窓際の椅子に腰掛けたシンは、入れ立ての熱々のお茶を啜り、舌を火傷でもしたかのように口から出して冷ましていた。
一方その頃、街へと繰り出して行ったミアとアカリ組は、街行く人々から人が集まるところを聞き出し、ハインドの酒場へとやって来ていた。
「ミアさん、また・・・」
「安心しろって、もう飲まないから!すみませ~んちょっといいですか?」
今回ばかりは目的を優先したミア。早速カウンターの店員に話を伺うことにした。ハインドの街の北側にある山の話を出したら、何と一件目からそれらしい情報を得ることに成功する。
「北の山?あぁ、“回帰の山”の事かい?」
「回帰の山・・・?」
「他所から来た人かい?あの山に入るなら気をつけなよ?しっかり準備をした上で、詳しい者の導きがないと危ないからさ」
馬車の主人の忠告は、どうやら確かだったらしい。ミアとアカリはあの時馬車で聞いた忠告と同じことをここでもされた。どうやらハインドの街では、誰もが知る有名な話だったらしく、近隣を行き来する者達には毎度同じ話をする事になるらしい。
だがグループ分けはもう決まったようなものだった。シンは現実世界の瑜那達と新たなシステムの確認と調整を行いたいので、宿で情報収集組の帰りを待つ留守番役で決定。
残りは再び男女のグループという事で、ツクヨとツバキ、ミアとアカリのグループで決定した。北の山に関する情報収集の他に、現地民で山を越える一団などがあれば合流し超えたい。
別れ際の馬車の主人の曰く、流石に山を越える馬車は出ていないらしい。商人達も別ルートから山の向こう側へ向かうらしいが、ハインドの街からはかなり離れた場所に行かなければならず、シン達にとっても何日ものタイムロスは痛い。
だが危険な山であっても、現地の山に詳しい者達と共に慎重に山を登る時間帯と注意すべき事を守って登れば、何もそこまで大きな大惨事にはならないのだという。
詳しくはこの街の人達に聞いてみてくれと、馬車の主人との会話はそこで終わってしまった。
「じゃぁ俺は宿で待ってるから」
「分かったよシン。情報収集は私達に任せてくれ!」
「何だよ、シンはまた留守番でいいのか?」
「あぁ、ちょっと用事があってな。まぁ今直ぐに出発って訳でもないんだ、夜とか明日とか時間のある時にでも街を見て回るよ」
「ではその時の為に、街案内出来るくらいに詳しくならないとですね!」
「そんなに詳しくなってどうする・・・。まぁ夕食頃までには戻る予定だ。それまで大人しくしてろよぉ~?」
羨ましいかと言わんばかりの表情でシンの顔を覗き込んでくるミア。いいから早く情報を集めて来いと突っぱね拗ねるような態度を見せたシンを尻目に、一行は一度宿を離れ、それぞれ街の中へと散らばって行った。
「さて・・・。瑜那の奴はWoFユーザーのメッセージ機能と同じって言ってたけど・・・」
シンは視界の端のタブからメニュー画面を表示すると、メッセージの欄を調べてみる事にした。すると一件のメッセージが来ており、宛先が全く知らない人物からとなっていた。
試しにそのメッセージを開いてみると、本文には瑜那の名前と共にテスト用のメッセージだという一文が添えられていた。早速シンはそのメッセージに返信をすると、直ぐにメッセージに気づけるように宛先を登録する操作を行う。
『良かった、ちゃんと届いたようですね。今後は取り敢えずこの宛先にメッセージを送ってくれれば、こちらで調べられる事は調べてお答えします。但し時差がありますので、急ぎの際はお気を付けて』
現実世界とのメッセージ機能は問題ないようだった。後は暫く使ってみて不備やおかしな出来事が起こらないかどうかを調べていく必要がある。
『了解した、ありがとう。では早速で悪いんだが、今俺の現在地から北にある山のマップについて情報が欲しい。場所はハインドと言う街の北側にある。どうやら無策で進むには危険な地らしい。よろしく頼む』
向こう側からの返信はやや遅く、これが時差によるものなのだろうというのがシンの見解だ。時間にして十分ほど掛かっているようだが、正確なところはハッキリとはしない。
瑜那の調査結果を待つ間、シンは部屋の窓から見える景色を堪能しながら用意されている茶葉で一服する事にした。
アルバの不思議な体験の後で、モヤモヤとした気分が残っていたシンは、あの時の事件解決のスピードや違和感を思い出していた。これまでのWoFで起きた異変とはまた別物の違和感。
自分達の知らないところで修正を加えられているような不気味な感覚は、直接強大な相手を差し向けられるよりも、ある意味怖い現象なのかも知れない。知らないという事は、こちら側から何も対策を打てないという事でもある。
「てっきり奴らの思惑が働いているのかと思っていたんだが・・・。あれは気のせいだったのか?」
まるで黄昏れるように窓際の椅子に腰掛けたシンは、入れ立ての熱々のお茶を啜り、舌を火傷でもしたかのように口から出して冷ましていた。
一方その頃、街へと繰り出して行ったミアとアカリ組は、街行く人々から人が集まるところを聞き出し、ハインドの酒場へとやって来ていた。
「ミアさん、また・・・」
「安心しろって、もう飲まないから!すみませ~んちょっといいですか?」
今回ばかりは目的を優先したミア。早速カウンターの店員に話を伺うことにした。ハインドの街の北側にある山の話を出したら、何と一件目からそれらしい情報を得ることに成功する。
「北の山?あぁ、“回帰の山”の事かい?」
「回帰の山・・・?」
「他所から来た人かい?あの山に入るなら気をつけなよ?しっかり準備をした上で、詳しい者の導きがないと危ないからさ」
馬車の主人の忠告は、どうやら確かだったらしい。ミアとアカリはあの時馬車で聞いた忠告と同じことをここでもされた。どうやらハインドの街では、誰もが知る有名な話だったらしく、近隣を行き来する者達には毎度同じ話をする事になるらしい。
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