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無自覚の変化
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馬車の主人から買った菓子を片手に、窓から見える景色を堪能しながら腹ごしらえを済ませる一行。すると、流れる景色の先に次第に他の土地からやって来る馬車や旅の一行の列などが見え始める。
「アカリ、見ろよ人だ!」
「ホントだ。街が近いのかな?」
ツバキとアカリの会話に、大人組の三人も窓から見える景色に視線を送る。道中を歩む者達の先を見ると、そこにはアルバ程の大きな街が見えてきた。山の麓の街と言われた時は、村のように寂れた感じの街を想像していたシンだったが、どうやらそういう訳でもなさそうで少し安堵していた。
あれだけ広ければ、ギルドや必要な買い物など、ある程度の事は一通りこなせそうだ。ツクヨが話していた温泉や自然豊かな景色の中で、新鮮な空気を堪能するという訳には行かなそうだが、しっかりした街の様子からもそれなりに良い宿が取れそうだ。
一休み出来るところがあれば、シンは落ち着き次第現実世界で瑜那が準備してくれたメッセージ機能を使ってみようと考えていた。事前に使用感を確かめておかなければ、咄嗟の時に上手く使えないかも知れないからだ。
「なぁ~んだ、大自然の中でリフレッシュって訳には行かなそうだね・・・」
「まぁ良いじゃないか、これはこれでゆっくり出来そうだ。それに山も近いだろ?ほら、街の奥側にケヴィンの言ってた北の山が見える」
馬車の窓から見える景色に、街並みの他に広大な範囲の山のシルエットが映し出される。まだここからでは大分距離があるように見えるが、それでも明らかに大きく見える山のシルエットに、どうやってこんな山を越えていくのか想像がつかない程のスケールを一行は感じていた。
それから間も無くして馬車はハインドの街へと入って行き、組合の停留所辺りまで行くと、馬車の主人はそこでシン達一行を下ろし、積んでいた商品の確認作業へと入る。
主人に別れを告げ、先ずは恒例の泊めれる宿探しへと向かう。前の街が観光地でもあったせいか、アルバとの人の往来の違いにまるでハインドの街が寂れているような錯覚に陥っているようだった。
「街の広さの割には、人通りが少ないな」
「そうか?こんなもんだろ。アルバが異常だっただけだって。こっちの方が幾分か落ち着いて休めそうだ」
「何だよ、また休む気かぁ?」
「急ぐ旅でもないんだから。不安な話も聞いてしまいましたし、準備はしっかり整えてから!ですよね?ミアさん」
「あっあぁ、なんかアタシがやらかすとでも思ってそうな言い方だな」
アカリは直ぐにそんなつもりはなかったのだと弁解したが、実際穏やかな日々を過ごすと緊張感が抜けて、いつまでもこんな生活を送りたいと思うようになってしまう。
無論、それが悪いことではないのだが、現実世界の異変やこちらの世界の異変が、彼らが止まっている間にも着々と動き出しているであろうことを思うと、心の隅に押し込んでいたざわめきが一気に溢れ出して来るようだった。
「アカリの言う通り、先ずは宿探し。それから北の山についての情報収集だ。馬車の主人の話も気になるが、事実確認とその対策について情報をまとめたい。またチームを分けての情報収集になるが、何か問題があれば直ぐに宿に・・・」
すっかり一行のこれからの行動と、目的を指示できるようになっていたシンの姿を見て、一瞬ミア達はポカンとした表情を浮かべるも、これまでの旅や現実世界での出来事が彼を成長させたのだと思うと、まるでそれを暖かく見守る者達の表情へと変わる。
「なっ何だよ、急に黙ってニヤニヤして・・・」
「別にぃ~?」
「ミア!シンの言う通りだね、ゆっくり休むのも先ずはしっかりとやるべき事をやってからだ」
妙な反応を示すツクヨとミアに対して、ツバキとアカリは何故二人が舞い上がっているのか不思議に思いながらも、珍しく指揮を取るシンの姿に頼もしさを感じていた。
「どうしたんだ?あの二人」
「さぁ・・・。でも今のシンさん、すっごく頼りになる感じがしましたよ」
アカリの真っ直ぐな言葉に、突然自分がしてしまったことを冷静に思い返してしまい、シンは恥ずかしそうに赤面して顔を逸らした。
「あっありがとう・・・。あぁ、どうして急に俺、あんな事を・・・」
するとそんな様子を見たツバキが彼の後ろから歩み寄り、まるで気合を入れるかのように背中を叩く。パチンという気持ちのいい音を立てて、ツバキは何を後悔することがあるとシンを励ました。
「何だよ、何も間違っちゃいなかったぜ?別に誰がリーダーだとかも無いんだし、アンタ達大人がビシッと言ってくれた方が気持ちも引き締まるってもんだ!」
「おっ押忍・・・」
「あ?何だそりゃぁ?」
シンの発した謎の言葉に困惑するツバキ。気を取り直して宿屋探しに取り組む一行。今回は時間帯もさる事ながら、人の往来もアルバほどではなかった為、苦戦する事なく見つけることが出来た。
それも見つけた宿が、丁度北の山の絶景を眺められる部屋を取ることができ、ツクヨの望みだった自然の景色を見ながらのんびりするという条件は図らずとも満たせた。
「アカリ、見ろよ人だ!」
「ホントだ。街が近いのかな?」
ツバキとアカリの会話に、大人組の三人も窓から見える景色に視線を送る。道中を歩む者達の先を見ると、そこにはアルバ程の大きな街が見えてきた。山の麓の街と言われた時は、村のように寂れた感じの街を想像していたシンだったが、どうやらそういう訳でもなさそうで少し安堵していた。
あれだけ広ければ、ギルドや必要な買い物など、ある程度の事は一通りこなせそうだ。ツクヨが話していた温泉や自然豊かな景色の中で、新鮮な空気を堪能するという訳には行かなそうだが、しっかりした街の様子からもそれなりに良い宿が取れそうだ。
一休み出来るところがあれば、シンは落ち着き次第現実世界で瑜那が準備してくれたメッセージ機能を使ってみようと考えていた。事前に使用感を確かめておかなければ、咄嗟の時に上手く使えないかも知れないからだ。
「なぁ~んだ、大自然の中でリフレッシュって訳には行かなそうだね・・・」
「まぁ良いじゃないか、これはこれでゆっくり出来そうだ。それに山も近いだろ?ほら、街の奥側にケヴィンの言ってた北の山が見える」
馬車の窓から見える景色に、街並みの他に広大な範囲の山のシルエットが映し出される。まだここからでは大分距離があるように見えるが、それでも明らかに大きく見える山のシルエットに、どうやってこんな山を越えていくのか想像がつかない程のスケールを一行は感じていた。
それから間も無くして馬車はハインドの街へと入って行き、組合の停留所辺りまで行くと、馬車の主人はそこでシン達一行を下ろし、積んでいた商品の確認作業へと入る。
主人に別れを告げ、先ずは恒例の泊めれる宿探しへと向かう。前の街が観光地でもあったせいか、アルバとの人の往来の違いにまるでハインドの街が寂れているような錯覚に陥っているようだった。
「街の広さの割には、人通りが少ないな」
「そうか?こんなもんだろ。アルバが異常だっただけだって。こっちの方が幾分か落ち着いて休めそうだ」
「何だよ、また休む気かぁ?」
「急ぐ旅でもないんだから。不安な話も聞いてしまいましたし、準備はしっかり整えてから!ですよね?ミアさん」
「あっあぁ、なんかアタシがやらかすとでも思ってそうな言い方だな」
アカリは直ぐにそんなつもりはなかったのだと弁解したが、実際穏やかな日々を過ごすと緊張感が抜けて、いつまでもこんな生活を送りたいと思うようになってしまう。
無論、それが悪いことではないのだが、現実世界の異変やこちらの世界の異変が、彼らが止まっている間にも着々と動き出しているであろうことを思うと、心の隅に押し込んでいたざわめきが一気に溢れ出して来るようだった。
「アカリの言う通り、先ずは宿探し。それから北の山についての情報収集だ。馬車の主人の話も気になるが、事実確認とその対策について情報をまとめたい。またチームを分けての情報収集になるが、何か問題があれば直ぐに宿に・・・」
すっかり一行のこれからの行動と、目的を指示できるようになっていたシンの姿を見て、一瞬ミア達はポカンとした表情を浮かべるも、これまでの旅や現実世界での出来事が彼を成長させたのだと思うと、まるでそれを暖かく見守る者達の表情へと変わる。
「なっ何だよ、急に黙ってニヤニヤして・・・」
「別にぃ~?」
「ミア!シンの言う通りだね、ゆっくり休むのも先ずはしっかりとやるべき事をやってからだ」
妙な反応を示すツクヨとミアに対して、ツバキとアカリは何故二人が舞い上がっているのか不思議に思いながらも、珍しく指揮を取るシンの姿に頼もしさを感じていた。
「どうしたんだ?あの二人」
「さぁ・・・。でも今のシンさん、すっごく頼りになる感じがしましたよ」
アカリの真っ直ぐな言葉に、突然自分がしてしまったことを冷静に思い返してしまい、シンは恥ずかしそうに赤面して顔を逸らした。
「あっありがとう・・・。あぁ、どうして急に俺、あんな事を・・・」
するとそんな様子を見たツバキが彼の後ろから歩み寄り、まるで気合を入れるかのように背中を叩く。パチンという気持ちのいい音を立てて、ツバキは何を後悔することがあるとシンを励ました。
「何だよ、何も間違っちゃいなかったぜ?別に誰がリーダーだとかも無いんだし、アンタ達大人がビシッと言ってくれた方が気持ちも引き締まるってもんだ!」
「おっ押忍・・・」
「あ?何だそりゃぁ?」
シンの発した謎の言葉に困惑するツバキ。気を取り直して宿屋探しに取り組む一行。今回は時間帯もさる事ながら、人の往来もアルバほどではなかった為、苦戦する事なく見つけることが出来た。
それも見つけた宿が、丁度北の山の絶景を眺められる部屋を取ることができ、ツクヨの望みだった自然の景色を見ながらのんびりするという条件は図らずとも満たせた。
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