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二つの世界の間で
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一方、WoFの世界へ戻って来たシンは、現実世界へ戻った時と同じミア達のいる馬車で目を覚ました。ツクヨの送って来た画像の景色よりも周りは明るくはなっているがまだツバキやアカリが目を覚ますには早かったようだ。
「意外に早かったね」
「こっちの状況は?」
「ん?いや、変わりないけど・・・向こうで何かあった?」
シンは現実世界で起きていた事をミアとツクヨに話した。アサシンギルドが何者かに壊滅させられた事。そして彼らのようなWoFユーザーを探している組織がいる事。
元々ミアとツクヨは現実世界に戻る気はないようだが、それでもその組織が何を企んでいるか分からない。注意喚起がてら、二人にも何か心当たりがあるかどうか尋ねる。
「ごめん、私にはそういうの分からなくて・・・。でも少なくとも私の周りではそういうのはなかったかな?ミアはどう?」
「アタシも分かんないな。現実とは殆ど縁を切ってるからな」
「何それ、ミアらしくないね」
「アタシらしくって何だよ?」
二人で話が盛り上がる中、シンはそう語るミアの過去について少し疑問に思う事があった。彼女と初めて会ったのは、シンがまだ異変を感じる前の現実世界での事。
正確には異変を感じ始めると同時といった方がいいだろう。いつもと同じく、WoFをプレイしていたシンは、買い物に外へ出たところへゲーム内のキャラクターが一般人を襲う光景を目にした。
嫌な予感がしたシンは直ぐにその場を離れたが、どういう訳か一般人を襲っていたゲーム内のキャラクターが、WoFのユーザーであるシンに標的を変えて追いかけ始めた。
逃げる道中、シンはそこで初めてミアと出会う事になったのだが、これだけ現実世界へ戻る事を拒絶しているミアが、どうしてあの時は現実の世界に帰って来ていたのだろう。
あまり現実世界の事を話さないミアに、この話をするのをシンは避けていた。彼女はもしかしたらシン達に隠し事をしているのかもしれない。
ただそれはシン達にとって害のあるものではない為、シンも深く追求する気はなかった。いずれ彼女が自分の口から話してくれるかも知れない、そう思ってその時もシンは、その疑問を彼女にぶつける事が出来なかった。
「で?シンはどうすんの?アサシンギルドがそんな状態で、こっちに集中できんの?」
「するさ。それにまだ仲間もいるし、協力も仰げる。一応今まで通りで問題ないそうだ。何かあれば向こうからも連絡来るだろう」
「シンはそれでいいのか?」
ミアにそう尋ねられた時、シンの脳裏ににぃなやフィアーズで行動を共にした仲間達の顔が浮かんだ。篩にかけられるものではなかった。故にシンは目の前の事にしか意識を向けられなかった。
「今まだそれで大丈夫だ。その時になったらまた・・・考えるさ」
「そうか・・・」
ミアは深く追求しなかったが、その顔はどこか寂しそうだった。そんな二人の様子を察してか、空気を変える為にツクヨは話題を変えるように口を開いた。
「そう言えば次の街だけど・・・山の麓の街だっけ?そこの名産は何だろうね!山が近いから山菜とかかな?それとも新鮮な川魚だったりして!」
「何だそれ、食べ物ばっかじゃん」
ツクヨのあどけない話にミアの表情にも笑顔が戻る。それを見て安心したのか、シンも現実世界の事はまだ分からない事ばかりで、取り敢えず今はできる事をしようと考える事にした。
「意外に早かったね」
「こっちの状況は?」
「ん?いや、変わりないけど・・・向こうで何かあった?」
シンは現実世界で起きていた事をミアとツクヨに話した。アサシンギルドが何者かに壊滅させられた事。そして彼らのようなWoFユーザーを探している組織がいる事。
元々ミアとツクヨは現実世界に戻る気はないようだが、それでもその組織が何を企んでいるか分からない。注意喚起がてら、二人にも何か心当たりがあるかどうか尋ねる。
「ごめん、私にはそういうの分からなくて・・・。でも少なくとも私の周りではそういうのはなかったかな?ミアはどう?」
「アタシも分かんないな。現実とは殆ど縁を切ってるからな」
「何それ、ミアらしくないね」
「アタシらしくって何だよ?」
二人で話が盛り上がる中、シンはそう語るミアの過去について少し疑問に思う事があった。彼女と初めて会ったのは、シンがまだ異変を感じる前の現実世界での事。
正確には異変を感じ始めると同時といった方がいいだろう。いつもと同じく、WoFをプレイしていたシンは、買い物に外へ出たところへゲーム内のキャラクターが一般人を襲う光景を目にした。
嫌な予感がしたシンは直ぐにその場を離れたが、どういう訳か一般人を襲っていたゲーム内のキャラクターが、WoFのユーザーであるシンに標的を変えて追いかけ始めた。
逃げる道中、シンはそこで初めてミアと出会う事になったのだが、これだけ現実世界へ戻る事を拒絶しているミアが、どうしてあの時は現実の世界に帰って来ていたのだろう。
あまり現実世界の事を話さないミアに、この話をするのをシンは避けていた。彼女はもしかしたらシン達に隠し事をしているのかもしれない。
ただそれはシン達にとって害のあるものではない為、シンも深く追求する気はなかった。いずれ彼女が自分の口から話してくれるかも知れない、そう思ってその時もシンは、その疑問を彼女にぶつける事が出来なかった。
「で?シンはどうすんの?アサシンギルドがそんな状態で、こっちに集中できんの?」
「するさ。それにまだ仲間もいるし、協力も仰げる。一応今まで通りで問題ないそうだ。何かあれば向こうからも連絡来るだろう」
「シンはそれでいいのか?」
ミアにそう尋ねられた時、シンの脳裏ににぃなやフィアーズで行動を共にした仲間達の顔が浮かんだ。篩にかけられるものではなかった。故にシンは目の前の事にしか意識を向けられなかった。
「今まだそれで大丈夫だ。その時になったらまた・・・考えるさ」
「そうか・・・」
ミアは深く追求しなかったが、その顔はどこか寂しそうだった。そんな二人の様子を察してか、空気を変える為にツクヨは話題を変えるように口を開いた。
「そう言えば次の街だけど・・・山の麓の街だっけ?そこの名産は何だろうね!山が近いから山菜とかかな?それとも新鮮な川魚だったりして!」
「何だそれ、食べ物ばっかじゃん」
ツクヨのあどけない話にミアの表情にも笑顔が戻る。それを見て安心したのか、シンも現実世界の事はまだ分からない事ばかりで、取り敢えず今はできる事をしようと考える事にした。
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