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もう一度現実の世界へ
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何事もなければ翌日の昼頃までに次の街に到着する予定らしい。シン達を乗せた馬車は、他にも数人の冒険者達や一般の旅行客も乗せている。進行は常に安全第一で進んでいるようで、心地の良い揺れが眠気を誘う。
大きな欠伸を両手で隠すアカリ。それを隣で見ていたミアが、眠いなら寝てていいと彼女に告げると、目を擦りながら小さく頷き首を下へと向け目を閉じた。
同じ年頃のツバキは昼間の疲れからか、既にぐっすりと眠ってしまっている。今回の馬車は相乗りの客はいない。これなら少しの間、シンが現実の世界へ戻ったところで怪しまれる事もない。
「なぁシン、今なら現実世界へ戻っても大丈夫なんじゃないか?」
「え?」
「そうだよ、確か向こうで貰ったアイテムが無くなったんでしょ?報告だけでもしておいた方がいいんじゃない?」
「連絡もつかないって言ってたな。何かあったんじゃないか?」
白獅への連絡は、これまでも何度もしている。だがその全てのメッセージに既読が付けられていない。宛先が変わってしまったのか、何か急を有する事態に陥り連絡を絶っているのか。
もし後者ならば、シンが最後に現実世界からWoFの世界に戻った時の状況からしても、かなり危険な状態だろうという予想がつく。
「あれからどれくらい時間が経ったのか・・・」
「こっちの時間経過にたいして、現実世界の方はどんな感じだったんだい?」
「こっちの世界の方が時間経過は早いと思う。というより、こっちでの数日間が、現実世界では数時間とかいった感じかな」
「ならそれほど経ってないんじゃないか?シンが帰って来てからそれなりに日数は経っちまってるが、それでも向こうでは一日経ってるかどうかってところかもな」
何度も行き来している訳ではないので、正確なところはシンにも分からない。そして肝心の、シンの様子を観測している筈のアサシンギルドとは連絡がつかない為、時間がどれだけ経ったのかも確かめようがない。
ミア達の言う通り一度現実世界に戻ってみるのが良いだろう。今回はミアとツクヨがWoFのメッセージ機能を使って、こちらの世界での様子を報告し合う事にした。
「でも俺は、俺達のようなWoFユーザーを集めてる組織に監視されてる。あまり頻繁な連絡は控えてくれ」
「それは構わないが、機を逃すとまた暫く戻って来れなくなるぞ?」
「ツバキやアカリが目を覚ますまでだね!それか目的地への到着になるかな?」
「分かった。取り敢えず限界そうになったら分かりやすいメッセージを送ってくれ。それじゃぁ・・・行ってくる」
ツバキとアカリを起こさないよう立ち上がったシンは、前回のように視界の端にあるタブからWoFのメニューを開く。するとシンの視界にだけホログラムのモニターが表示されて、ゲームをログアウトする時と同じ手順でモニターをタップしていく。
全ての工程が完了すると、シンの身体は淡く光始めゆっくりと明度が失われていく、そしてシンの身体が完全に消えると、彼はどこかデジタル状の筒の中を光と共に真っ白に輝く球体へと向かって行く。
視界が完全に真っ白な光に包まれると、次第に何も見えなかった視界に景色が構成されていく。そこはまごう事なき現実の世界。シンが転移させられたのは、何処かの建物の中のようだが周囲に灯りはなく暗くて視界が効かない。
「どっ何処だよ、ここ・・・」
目を凝らしてみると、どうやらそこはアサシンギルドの基地にも似た構造をしていた。声は出さずゆっくりと歩き出すシンは、壁に手を当てながら建物内を進んで行く。
足元は瓦礫が散らばっており、争った形跡すら確認できる。ここで誰かが戦っていたのだろうか。痕跡は鋭利な刃物で傷つけられたようなものが多い。まだ何処かに潜んでいる可能性も考慮し、一旦足を止めるシン。
そしてクラススキルの気配探知を発動し、自身を中心に数十メートルの領域を作り出す。目を閉じ、神経を研ぎ澄ませると範囲内の生き物の大きさや魔力量、距離などを特定することが出来るのだが、彼の領域内で確認出来たのは、ネズミらしき小さな反応だけだった。
「よかった・・・。取り敢えず近くには何も居ないな」
安全を確認したシンが、再び目を開きゆっくりと歩き出す。そして曲がり角を曲がったところでソレは起きた。
何かヒンヤリとするものがシンの首元に当たる。その瞬間、彼の身体は何かに巻き取られるように宙に上がり、全身を固定されたまま空中で拘束されてしまう。
「なッ!?しまったッ・・・!」
不覚だった。生物の気配を探っただけで安心してしまったシンは、まんまと何者かが仕掛けた罠に掛かってしまったのだ。だが近くに生命の気配はなかった筈。直ぐに襲われる事はないと、急ぎ脱出しようとするのだが、そこへ聞き覚えのあるような声が聞こえてきた。
「あれ?今の声って・・・?」
「馬鹿ッ!声出すなって!」
「?」
すると、逆さ吊りのシンの視界にゆっくりと姿を現したのは、白獅と同じくアサシンギルドのメンバーで、一緒に東京を目指した双子のアサシンである“瑜那ゆだ”と“宵命よめい”だった。
「シンの旦那ぁ!?アンタ生きてたのか!!」
「宵命!失礼だよ。早くシンさんを下ろそうよ」
「二人とも!良かった、そっちも無事だったのか。ここは何処だ?どっかのアサシンギルドの支部なのか?」
東京での潜入任務の際にバラバラになってしまった彼らだったが、無事に再会できたことが嬉しかったのか、質問ばかり投げ掛けるシンに宵命が少しは落ち着いてくれと宥める。
そして双子の罠から解放されたシンに、瑜那から現状のアサシンギルドがどうなっているのかが語られた。
「恐らくシンさんも何度も連絡を試みたと思いますが、白獅さんからの返事はありませんでしたよね?」
「あぁ、何通かメッセージを送ったんだがどれも読まれてすらいないんだ」
「それもその筈です。僕達が掴んだ情報によると、白獅さんが居るアサシンギルドの本拠地は何者かによる奇襲を受けて崩壊したと聞いています」
「えッ・・・!?」
現実世界にしか存在しない、シン達アサシンの拠り所であるアサシンギルドは、シンがWoFの世界に戻る少し前に何者かによって奇襲を受け、混乱する基地内に外から敵の援軍が傾れ込み、瞬く間に制圧されてしまったのだと言う。
大きな欠伸を両手で隠すアカリ。それを隣で見ていたミアが、眠いなら寝てていいと彼女に告げると、目を擦りながら小さく頷き首を下へと向け目を閉じた。
同じ年頃のツバキは昼間の疲れからか、既にぐっすりと眠ってしまっている。今回の馬車は相乗りの客はいない。これなら少しの間、シンが現実の世界へ戻ったところで怪しまれる事もない。
「なぁシン、今なら現実世界へ戻っても大丈夫なんじゃないか?」
「え?」
「そうだよ、確か向こうで貰ったアイテムが無くなったんでしょ?報告だけでもしておいた方がいいんじゃない?」
「連絡もつかないって言ってたな。何かあったんじゃないか?」
白獅への連絡は、これまでも何度もしている。だがその全てのメッセージに既読が付けられていない。宛先が変わってしまったのか、何か急を有する事態に陥り連絡を絶っているのか。
もし後者ならば、シンが最後に現実世界からWoFの世界に戻った時の状況からしても、かなり危険な状態だろうという予想がつく。
「あれからどれくらい時間が経ったのか・・・」
「こっちの時間経過にたいして、現実世界の方はどんな感じだったんだい?」
「こっちの世界の方が時間経過は早いと思う。というより、こっちでの数日間が、現実世界では数時間とかいった感じかな」
「ならそれほど経ってないんじゃないか?シンが帰って来てからそれなりに日数は経っちまってるが、それでも向こうでは一日経ってるかどうかってところかもな」
何度も行き来している訳ではないので、正確なところはシンにも分からない。そして肝心の、シンの様子を観測している筈のアサシンギルドとは連絡がつかない為、時間がどれだけ経ったのかも確かめようがない。
ミア達の言う通り一度現実世界に戻ってみるのが良いだろう。今回はミアとツクヨがWoFのメッセージ機能を使って、こちらの世界での様子を報告し合う事にした。
「でも俺は、俺達のようなWoFユーザーを集めてる組織に監視されてる。あまり頻繁な連絡は控えてくれ」
「それは構わないが、機を逃すとまた暫く戻って来れなくなるぞ?」
「ツバキやアカリが目を覚ますまでだね!それか目的地への到着になるかな?」
「分かった。取り敢えず限界そうになったら分かりやすいメッセージを送ってくれ。それじゃぁ・・・行ってくる」
ツバキとアカリを起こさないよう立ち上がったシンは、前回のように視界の端にあるタブからWoFのメニューを開く。するとシンの視界にだけホログラムのモニターが表示されて、ゲームをログアウトする時と同じ手順でモニターをタップしていく。
全ての工程が完了すると、シンの身体は淡く光始めゆっくりと明度が失われていく、そしてシンの身体が完全に消えると、彼はどこかデジタル状の筒の中を光と共に真っ白に輝く球体へと向かって行く。
視界が完全に真っ白な光に包まれると、次第に何も見えなかった視界に景色が構成されていく。そこはまごう事なき現実の世界。シンが転移させられたのは、何処かの建物の中のようだが周囲に灯りはなく暗くて視界が効かない。
「どっ何処だよ、ここ・・・」
目を凝らしてみると、どうやらそこはアサシンギルドの基地にも似た構造をしていた。声は出さずゆっくりと歩き出すシンは、壁に手を当てながら建物内を進んで行く。
足元は瓦礫が散らばっており、争った形跡すら確認できる。ここで誰かが戦っていたのだろうか。痕跡は鋭利な刃物で傷つけられたようなものが多い。まだ何処かに潜んでいる可能性も考慮し、一旦足を止めるシン。
そしてクラススキルの気配探知を発動し、自身を中心に数十メートルの領域を作り出す。目を閉じ、神経を研ぎ澄ませると範囲内の生き物の大きさや魔力量、距離などを特定することが出来るのだが、彼の領域内で確認出来たのは、ネズミらしき小さな反応だけだった。
「よかった・・・。取り敢えず近くには何も居ないな」
安全を確認したシンが、再び目を開きゆっくりと歩き出す。そして曲がり角を曲がったところでソレは起きた。
何かヒンヤリとするものがシンの首元に当たる。その瞬間、彼の身体は何かに巻き取られるように宙に上がり、全身を固定されたまま空中で拘束されてしまう。
「なッ!?しまったッ・・・!」
不覚だった。生物の気配を探っただけで安心してしまったシンは、まんまと何者かが仕掛けた罠に掛かってしまったのだ。だが近くに生命の気配はなかった筈。直ぐに襲われる事はないと、急ぎ脱出しようとするのだが、そこへ聞き覚えのあるような声が聞こえてきた。
「あれ?今の声って・・・?」
「馬鹿ッ!声出すなって!」
「?」
すると、逆さ吊りのシンの視界にゆっくりと姿を現したのは、白獅と同じくアサシンギルドのメンバーで、一緒に東京を目指した双子のアサシンである“瑜那ゆだ”と“宵命よめい”だった。
「シンの旦那ぁ!?アンタ生きてたのか!!」
「宵命!失礼だよ。早くシンさんを下ろそうよ」
「二人とも!良かった、そっちも無事だったのか。ここは何処だ?どっかのアサシンギルドの支部なのか?」
東京での潜入任務の際にバラバラになってしまった彼らだったが、無事に再会できたことが嬉しかったのか、質問ばかり投げ掛けるシンに宵命が少しは落ち着いてくれと宥める。
そして双子の罠から解放されたシンに、瑜那から現状のアサシンギルドがどうなっているのかが語られた。
「恐らくシンさんも何度も連絡を試みたと思いますが、白獅さんからの返事はありませんでしたよね?」
「あぁ、何通かメッセージを送ったんだがどれも読まれてすらいないんだ」
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「えッ・・・!?」
現実世界にしか存在しない、シン達アサシンの拠り所であるアサシンギルドは、シンがWoFの世界に戻る少し前に何者かによって奇襲を受け、混乱する基地内に外から敵の援軍が傾れ込み、瞬く間に制圧されてしまったのだと言う。
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