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音楽による戦闘スタイルの変化
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何もなかった空間に突如出現した、空気を取り込むホールに危機感を感じた様子の黒い靄は、宿主であるアンブロジウスに指示を出したようで、直ぐ様彼はその場を離れる様に大きく後退していった。
「どうやら有効みたいね」
「あぁ!アレなら厄介な頭脳である黒い奴を排除出来そうだ。・・・ところで、アレに吸い込まれるとどうなるんだ?」
靄のような気体や魔力などを吸い込んでいるのは視認出来るが、それらは一体どうなっているのだろうか。一見して消えている様には見えるが、実際のところはミアには分からなかった。
「残念だけど消滅している訳ではないわ。あくまでその場に集めて固定しているだけ。一度身体を離れた魔力は、放たれたも同じこと。本人の元へ自動的に戻るなんて事はないの。霊体も同じことよ。身体を形成していた魔力が削り取られ野に放たれている様なものなの」
「要するにアレだけじゃ奴を消し去る事までは出来ないって事か?」
「アレがただの靄なら話は別なんだけどね。どこからか魔力供給を受けている以上、完全に消し去るのは無理ね」
しかし逆に言えば、その魔力の供給が絶たれるまで削っていけば、いずれあの靄は存在を保てなくなるという事だ。そしてそれはアンブロジウス自身も同じこと。
つまり、特別黒い靄を狙った攻撃をしなくても、先程のシルフのスキルで作り出したホールなら、どちらにも有効的なダメージを与えられるということだ。
「先読みや小さな的を狙わなくてもいいってんなら、難しくはない。さっきのスキル、もっと使えるか?」
「えぇ、勿論よ。それに収集した魔力は私が貰う事だって出来るんだもの。要するに当て続ける限り、私の魔力も尽きる事は無いの」
イタズラな笑みを浮かべるシルフ。だが今はそのイタズラ心が頼もしくもある。直ぐに次の狙撃ポイントへ移動するミアとシルフ。その間に銃には例の魔弾が装填され、シルフのスキルが付与される。
「彼女・・・何か有効打を見つけた様だな。よし、私も隙をみて・・・」
ミアの活躍を遮蔽物から覗いていた二ノンは、彼女の放つ魔弾の影響で距離を取ろうとするアンブロジウスの動きに目をつけ、退避した瞬間を狙い打ちしようと考えた。
魔力を放出するタイプのスキルは、ミア達の作り出すホールに吸い込まれてしまう。二ノンの扱う射出するタイプの光弾なら話は変わってくるだろうが、実体を持つ者があのホールに近づくとどうなるのだろう。
ただ必要以上に距離を取るアンブロジウスを見ると、とてもではないが試してみようという気にはならない。二ノンも体勢を整えると、次のミアの狙撃に合わせいつでも動き出せるよう準備を整える。
そして間も無くして、次の魔弾が放たれる。銃声と共にアンブロジウスが動き出す。自身を狙う弾丸から離れる様に飛び退いた時を見計らい、遮蔽物に隠れていた二ノンが動き出す。
「チッ・・・!馬鹿正直に狙っても警戒されちまってるか・・・ん?」
視界の端で動いた影に視線を送ると、何者かが凄まじい速度で退避したアンブロジウスの元へと向かって行くのが見えた。そしてその影がアンブロジウスの着地点に狙いを定め、眩い光を放つ拳を突き出した。
相手の意表を突いた二ノンの一撃は、見事にアンブロジウスの腹部を捉える。煙の塊に風を当てたかのように、派手にアンブロジウスの身体を形成している魔力が吹き飛ぶ。
その先にはミア達が作り出したホールがあり、煙が吸い込まれるようにアンブロジウスの身体から出た靄が吸い込まれていった。直ぐにその場を離れようとするアンブロジウスだったが、吸い込まれる吸引力に演奏したままでは脱出は不可能だと判断した。
演奏を一時中断し、宙を飛んでホールとは逆方向へ身体を向け、必死に離れようとするのだが、なかなか離れられずにいた。
「厄介な能力ですね・・・。ここは一つ、曲調を変えてみましょう」
アンブロジウスにしか聞こえない声が、再び黒い靄の中から聞こえてくる。僅かな音の振動をキャッチしたシルフが、アンブロジウスに何かしらの動きがありそうだとミアに告げると、次の瞬間アンブロジウスは急にそれまでの流れるような動きから、直線的で力強い動きへと変わったのだ。
変貌したアンブロジウスは、容易にホールの吸引から逃れると、失われた身体の部位を再形成し、地に着く足をまでも追加で形成し始めた。
「足・・・?奴らは飛べる筈だろ。何であんな余計なものを作り出した・・・?」
「単純な事よ、見て」
足を形成したアンブロジウスは、一撃を与え退いていった二ノンを追い掛ける。その初動の動きは、まるで彼女の武闘家としての動きに引けを取らないほど素早いものだった。
予想外の速さで後を追って来たアンブロジウスに、拳から放つ光弾で牽制する二ノンだったが、アンブロジウスはそれを手にしているヴァイオリンの弓で切り裂いた。
「何ッ!?急に近接系の動きに変化しただと!?」
苦戦する二ノンを助けようと銃を構えるミア。シルフのスキルは乗っていないものの、風の力を込めた魔弾を二人の間に撃ち込み突風を発生させ、一先ず二ノンに退避する時間を与えた。
「人の筋肉というのは、その殆どが下半身に集中している。重い頭や上半身を支える為に、特にトレーニングなんかを重ねていなくてもね。彼が足を作り出したのは、単純“力“を得るためよ。もう風のホールで彼の体感は揺るがないわ」
黒い靄が言っていた曲調を変えるというのは、アンブロジウス自体の戦闘スタイルを変えるというものだったのだ。音楽の力によって気分を変えたり、気持ちに変化を齎すように、アンブロジウスは黒い靄の与える音楽でまるで別人のような戦い方へと変化した。
「どうやら有効みたいね」
「あぁ!アレなら厄介な頭脳である黒い奴を排除出来そうだ。・・・ところで、アレに吸い込まれるとどうなるんだ?」
靄のような気体や魔力などを吸い込んでいるのは視認出来るが、それらは一体どうなっているのだろうか。一見して消えている様には見えるが、実際のところはミアには分からなかった。
「残念だけど消滅している訳ではないわ。あくまでその場に集めて固定しているだけ。一度身体を離れた魔力は、放たれたも同じこと。本人の元へ自動的に戻るなんて事はないの。霊体も同じことよ。身体を形成していた魔力が削り取られ野に放たれている様なものなの」
「要するにアレだけじゃ奴を消し去る事までは出来ないって事か?」
「アレがただの靄なら話は別なんだけどね。どこからか魔力供給を受けている以上、完全に消し去るのは無理ね」
しかし逆に言えば、その魔力の供給が絶たれるまで削っていけば、いずれあの靄は存在を保てなくなるという事だ。そしてそれはアンブロジウス自身も同じこと。
つまり、特別黒い靄を狙った攻撃をしなくても、先程のシルフのスキルで作り出したホールなら、どちらにも有効的なダメージを与えられるということだ。
「先読みや小さな的を狙わなくてもいいってんなら、難しくはない。さっきのスキル、もっと使えるか?」
「えぇ、勿論よ。それに収集した魔力は私が貰う事だって出来るんだもの。要するに当て続ける限り、私の魔力も尽きる事は無いの」
イタズラな笑みを浮かべるシルフ。だが今はそのイタズラ心が頼もしくもある。直ぐに次の狙撃ポイントへ移動するミアとシルフ。その間に銃には例の魔弾が装填され、シルフのスキルが付与される。
「彼女・・・何か有効打を見つけた様だな。よし、私も隙をみて・・・」
ミアの活躍を遮蔽物から覗いていた二ノンは、彼女の放つ魔弾の影響で距離を取ろうとするアンブロジウスの動きに目をつけ、退避した瞬間を狙い打ちしようと考えた。
魔力を放出するタイプのスキルは、ミア達の作り出すホールに吸い込まれてしまう。二ノンの扱う射出するタイプの光弾なら話は変わってくるだろうが、実体を持つ者があのホールに近づくとどうなるのだろう。
ただ必要以上に距離を取るアンブロジウスを見ると、とてもではないが試してみようという気にはならない。二ノンも体勢を整えると、次のミアの狙撃に合わせいつでも動き出せるよう準備を整える。
そして間も無くして、次の魔弾が放たれる。銃声と共にアンブロジウスが動き出す。自身を狙う弾丸から離れる様に飛び退いた時を見計らい、遮蔽物に隠れていた二ノンが動き出す。
「チッ・・・!馬鹿正直に狙っても警戒されちまってるか・・・ん?」
視界の端で動いた影に視線を送ると、何者かが凄まじい速度で退避したアンブロジウスの元へと向かって行くのが見えた。そしてその影がアンブロジウスの着地点に狙いを定め、眩い光を放つ拳を突き出した。
相手の意表を突いた二ノンの一撃は、見事にアンブロジウスの腹部を捉える。煙の塊に風を当てたかのように、派手にアンブロジウスの身体を形成している魔力が吹き飛ぶ。
その先にはミア達が作り出したホールがあり、煙が吸い込まれるようにアンブロジウスの身体から出た靄が吸い込まれていった。直ぐにその場を離れようとするアンブロジウスだったが、吸い込まれる吸引力に演奏したままでは脱出は不可能だと判断した。
演奏を一時中断し、宙を飛んでホールとは逆方向へ身体を向け、必死に離れようとするのだが、なかなか離れられずにいた。
「厄介な能力ですね・・・。ここは一つ、曲調を変えてみましょう」
アンブロジウスにしか聞こえない声が、再び黒い靄の中から聞こえてくる。僅かな音の振動をキャッチしたシルフが、アンブロジウスに何かしらの動きがありそうだとミアに告げると、次の瞬間アンブロジウスは急にそれまでの流れるような動きから、直線的で力強い動きへと変わったのだ。
変貌したアンブロジウスは、容易にホールの吸引から逃れると、失われた身体の部位を再形成し、地に着く足をまでも追加で形成し始めた。
「足・・・?奴らは飛べる筈だろ。何であんな余計なものを作り出した・・・?」
「単純な事よ、見て」
足を形成したアンブロジウスは、一撃を与え退いていった二ノンを追い掛ける。その初動の動きは、まるで彼女の武闘家としての動きに引けを取らないほど素早いものだった。
予想外の速さで後を追って来たアンブロジウスに、拳から放つ光弾で牽制する二ノンだったが、アンブロジウスはそれを手にしているヴァイオリンの弓で切り裂いた。
「何ッ!?急に近接系の動きに変化しただと!?」
苦戦する二ノンを助けようと銃を構えるミア。シルフのスキルは乗っていないものの、風の力を込めた魔弾を二人の間に撃ち込み突風を発生させ、一先ず二ノンに退避する時間を与えた。
「人の筋肉というのは、その殆どが下半身に集中している。重い頭や上半身を支える為に、特にトレーニングなんかを重ねていなくてもね。彼が足を作り出したのは、単純“力“を得るためよ。もう風のホールで彼の体感は揺るがないわ」
黒い靄が言っていた曲調を変えるというのは、アンブロジウス自体の戦闘スタイルを変えるというものだったのだ。音楽の力によって気分を変えたり、気持ちに変化を齎すように、アンブロジウスは黒い靄の与える音楽でまるで別人のような戦い方へと変化した。
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