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作戦と曲の変更
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黒い人物は趣向を変え、今度はバラード調の音楽へと切り替えた。彼が聴き始めた曲では初めての曲調のもの。一体どんな効果を黒い人物に与えるのか。だがそれも、シン達には知り得ぬこと。効果が出て初めて分かることだ。
一度手の内を見せてしまった以上、同じ手は黒い人物に通用しないだろう。 アサシンのクラスの戦闘は、相手にとって初見の攻撃を行う事により対処を遅らせ、致命的な一撃を与えていくというのが基本となる。
どんなスキルか知られてしまったら、逆に隙を晒す事になるからだ。そしてシンには反撃に耐え得るような強靭な防御力を持っている訳でもない。
「どうする?シン・・・。さっきのは結構上手くいったと思ったんだけどね」
「同じ手はなるべく避けたい・・・。手の内が割れていてはかえって危険だ。何か別の手段で攻めたいが・・・ん?」
先に攻撃を仕掛けて来たのは黒い人物の方からだった。しかし、これまでの素早い身のこなしに比べたら大した事はなく、視界に捉えてから動き出しても十分回避が可能だった。
不自然な攻撃に警戒しつつもそれを避けるシンとツクヨ。新たな作戦が思いつかない中、ツクヨは禍々しいオーラを纏う刀で応戦する。ツクヨの刀は紙一重で回避すると、纏っているオーラで周囲にも攻撃範囲を広げる。
故にある程度距離を置かねば避けきれない斬撃だったのだが、黒い人物はまるでその広がった攻撃範囲内を見極めるような流れる動きでツクヨの斬撃を避けて見せた。
「なッ・・・!?攻撃が当たらない!?」
「今までみたいに速い訳じゃない・・・。まるで受け流されているようだ。奴に一体どんな変化が・・・?」
何度も刀を振い、黒い人物を追いかけるツクヨだったが、いくら攻撃を仕掛けても結果は同じだった。シンも追加で投擲武器を黒い人物の移動先を先読みして投げるも、まるでそれが分かっているかのように意図も容易く避けている。
何故突然回避に徹し始めたのか。そこには何か理由があるのではないかと周囲を探るシン。彼が気になったのは、この後に及んで月光写譜を読みながら歌う事しかしていないアンナの存在だった。
強制バフが初見ではないシンとツクヨは、既に強制バフ下での動きに対応できている。それなのに歌い続けてバフ効果を継続しているのは一体何故なのか。
「まさかッ・・・!ツクヨ!追っちゃダメだッ!!」
余りにも慣れ過ぎてしまって忘れかけていた事。それは初めてバッハの家系の者達による強制バフを受けた時に苦しんだものだった。彼女の歌声が届く範囲では、動いても動かなくても体力を消費する。
バフ効果は身体の構造にも影響を与えているようで、呼吸の一つにしても過剰な動きをする為、宛ら毒を受けているかのように疲労が押し寄せてくる。
しかし身体への影響は、体内に仕込まれた気泡と連動してのものだったようで、それを取り除いたシンにはそれが分からなかったのだ。
そんな中で、あらゆる攻撃を流れる風の如く避ける黒い人物を追って無策に攻め立ててしまえば、ツクヨの体力の消費はシンには計り知れないものになっているに違いない。
だがシンが気が付いた時には既に遅く、ツクヨの振るう太刀筋は初動に暮れべてもだいぶ鈍り始めていた。
シンの声で一旦攻撃の手を止めるツクヨ。後退した彼の表情を見ると、額から大粒の汗を滲ませていた。
「おかしいね・・・そんなに動いて・・・ない筈なのに・・・」
「突然回避に徹し始めたから、何かおかしいと思ったんだ。恐らくスピード勝負に持ち込んでも埒が開かないと思ったんだろう。消耗戦をしようとしているのかもしれない」
シンの考察を聞きながら肩で呼吸するツクヨ。だがこちらが手を止めると、今度は向こうから攻撃が始まる。まるでターン制とでも言わんばかりに、こちらを休ませる気はないようだ。
「どうするッ・・・!元凶のアンナの方を止めるか、それとも奴を先に・・・?」
「・・・・・」
悩むシンの姿を見て、何かに気付いたのかツクヨが素朴な疑問をシンに投げ掛ける。
「シンは・・・疲れてないんだね・・・?」
「え・・・?そういえば何で・・・」
ツクヨの指摘で初めて、二人の間で置かれている状況が違う事に気がつくシン。何故これ程までにツクヨが疲労しているのに対し、自分は大して変わらぬのか。その違いについて考えた時、直ぐにシンは体内にあった気泡の事を思い出した。
「そうかッ!あの気泡が歌声に連動しているのか」
「・・・気泡・・・?」
「俺達の身体に、いつの間にか仕掛けが仕込まれていたんだ。それは奴らの奏でる音に連動して、様々な効果を俺達に与えていた。それを取り除いたから俺は、ツクヨ程疲労しなかったんだ」
急ぎツクヨの体内に仕込まれた気泡も取り除いてやらねばと思ったが、その間シンは無防備になり、疲労したツクヨに二人の相手を任せる事になってしまう。
一歩間違えれば、気泡を取り除く前にツクヨが消滅させられてしまうかもしれない。状況は既に後戻り出来ないところまで進んでいた。黒い人物はシンとツクヨの違いに気付き、先手を打っていたとでもいうのだろうか。
一度手の内を見せてしまった以上、同じ手は黒い人物に通用しないだろう。 アサシンのクラスの戦闘は、相手にとって初見の攻撃を行う事により対処を遅らせ、致命的な一撃を与えていくというのが基本となる。
どんなスキルか知られてしまったら、逆に隙を晒す事になるからだ。そしてシンには反撃に耐え得るような強靭な防御力を持っている訳でもない。
「どうする?シン・・・。さっきのは結構上手くいったと思ったんだけどね」
「同じ手はなるべく避けたい・・・。手の内が割れていてはかえって危険だ。何か別の手段で攻めたいが・・・ん?」
先に攻撃を仕掛けて来たのは黒い人物の方からだった。しかし、これまでの素早い身のこなしに比べたら大した事はなく、視界に捉えてから動き出しても十分回避が可能だった。
不自然な攻撃に警戒しつつもそれを避けるシンとツクヨ。新たな作戦が思いつかない中、ツクヨは禍々しいオーラを纏う刀で応戦する。ツクヨの刀は紙一重で回避すると、纏っているオーラで周囲にも攻撃範囲を広げる。
故にある程度距離を置かねば避けきれない斬撃だったのだが、黒い人物はまるでその広がった攻撃範囲内を見極めるような流れる動きでツクヨの斬撃を避けて見せた。
「なッ・・・!?攻撃が当たらない!?」
「今までみたいに速い訳じゃない・・・。まるで受け流されているようだ。奴に一体どんな変化が・・・?」
何度も刀を振い、黒い人物を追いかけるツクヨだったが、いくら攻撃を仕掛けても結果は同じだった。シンも追加で投擲武器を黒い人物の移動先を先読みして投げるも、まるでそれが分かっているかのように意図も容易く避けている。
何故突然回避に徹し始めたのか。そこには何か理由があるのではないかと周囲を探るシン。彼が気になったのは、この後に及んで月光写譜を読みながら歌う事しかしていないアンナの存在だった。
強制バフが初見ではないシンとツクヨは、既に強制バフ下での動きに対応できている。それなのに歌い続けてバフ効果を継続しているのは一体何故なのか。
「まさかッ・・・!ツクヨ!追っちゃダメだッ!!」
余りにも慣れ過ぎてしまって忘れかけていた事。それは初めてバッハの家系の者達による強制バフを受けた時に苦しんだものだった。彼女の歌声が届く範囲では、動いても動かなくても体力を消費する。
バフ効果は身体の構造にも影響を与えているようで、呼吸の一つにしても過剰な動きをする為、宛ら毒を受けているかのように疲労が押し寄せてくる。
しかし身体への影響は、体内に仕込まれた気泡と連動してのものだったようで、それを取り除いたシンにはそれが分からなかったのだ。
そんな中で、あらゆる攻撃を流れる風の如く避ける黒い人物を追って無策に攻め立ててしまえば、ツクヨの体力の消費はシンには計り知れないものになっているに違いない。
だがシンが気が付いた時には既に遅く、ツクヨの振るう太刀筋は初動に暮れべてもだいぶ鈍り始めていた。
シンの声で一旦攻撃の手を止めるツクヨ。後退した彼の表情を見ると、額から大粒の汗を滲ませていた。
「おかしいね・・・そんなに動いて・・・ない筈なのに・・・」
「突然回避に徹し始めたから、何かおかしいと思ったんだ。恐らくスピード勝負に持ち込んでも埒が開かないと思ったんだろう。消耗戦をしようとしているのかもしれない」
シンの考察を聞きながら肩で呼吸するツクヨ。だがこちらが手を止めると、今度は向こうから攻撃が始まる。まるでターン制とでも言わんばかりに、こちらを休ませる気はないようだ。
「どうするッ・・・!元凶のアンナの方を止めるか、それとも奴を先に・・・?」
「・・・・・」
悩むシンの姿を見て、何かに気付いたのかツクヨが素朴な疑問をシンに投げ掛ける。
「シンは・・・疲れてないんだね・・・?」
「え・・・?そういえば何で・・・」
ツクヨの指摘で初めて、二人の間で置かれている状況が違う事に気がつくシン。何故これ程までにツクヨが疲労しているのに対し、自分は大して変わらぬのか。その違いについて考えた時、直ぐにシンは体内にあった気泡の事を思い出した。
「そうかッ!あの気泡が歌声に連動しているのか」
「・・・気泡・・・?」
「俺達の身体に、いつの間にか仕掛けが仕込まれていたんだ。それは奴らの奏でる音に連動して、様々な効果を俺達に与えていた。それを取り除いたから俺は、ツクヨ程疲労しなかったんだ」
急ぎツクヨの体内に仕込まれた気泡も取り除いてやらねばと思ったが、その間シンは無防備になり、疲労したツクヨに二人の相手を任せる事になってしまう。
一歩間違えれば、気泡を取り除く前にツクヨが消滅させられてしまうかもしれない。状況は既に後戻り出来ないところまで進んでいた。黒い人物はシンとツクヨの違いに気付き、先手を打っていたとでもいうのだろうか。
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