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動き始める思惑
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宮殿入り口の広場にて、これまでの謎の人物達とは見た目もその実力も桁違いの個体が現れていた一方で、事が動き出した司令室でも事態に急展開が訪れていた。
司令室の現在の状況は、最も人が集まっていた時とは真逆に、シン達がジルを連れアンナのいる入り口へ向かい、オイゲンやケヴィンはアンドレイやマティアス司祭と音楽学校の学生らという、音楽家一行を連れてアンブロジウスのいる屋上へと向かった。
多くの人の移動があり、残されたのは音楽家のブルースとその護衛であるバルトロメオの二人だけになっていた。
部隊を三箇所に分けた理由として、ジルとカルロスが宮殿の外で得た情報で、バッハ一族の霊体達のパワーアップに一役買っている、月光写譜と呼ばれる音楽の父として有名な、かのバッハが残したという遺物がある。
それの解除、及び逆に利用する為にそれぞれの霊体に対応した楽器で、同じく月光写譜に描かれた楽譜を見て演奏する必要がある。その為に、演奏できる音楽家を各地へ散らばせる必要があったのだ。
司令室でブルースらと対峙しているのは、ベルンハルト・バッハであり彼の得意とする楽器はチェンバロという鍵盤楽器だった。無論、司令室となっている部屋に楽器などは置かれていない為、オイゲン達に楽器の捜索も託している状況だ。
チェンバロを見つけ次第、ブルースは司令室からベルンハルトを誘導し、その場所で演奏をするという手筈になっていた。二人だけでもベルンハルトの猛攻には何とか対応出来ていたブルースとバルトロメオ。
それはひとえに、音楽によるバフデバフ効果の効かないブルースと、音の衝撃を伝える糸やシャボン玉に絶大な効果を与えるバルトロメオの青い炎。これが相性が良く、時間稼ぎは上手くいっている様に見えた。
「バルト、まだいけるか?」
「あぁ?誰に言ってる・・・。俺ぁまだやれる・・・」
口では強がっているものの、生身であるバルトロメオには明らかに疲労の色が見えていた。それもその筈。相手が無尽蔵に生み出してくる取り巻きやシャボン玉に対し、バルトロメオは魔力という動力を使って強力な青白い幻影を作り出し戦っている。
その力に割く魔力は、彼の戦闘スタイルからも消費が激しく見える。戦えたとしてもそう長くは保たないだろう。バルトロメオ自身も、戦闘の最中で自分が力尽きた際は、構わず戦闘を続けて欲しいとブルースには伝えていた。
戦闘が長引けば、自分の方が早く力尽きる事は分かっていた。だが均衡した戦いの行方を左右したのは、彼らではなく宮殿入り口の広場に現れた新たな存在と同様に、新たな乱入者によってもたらされた。
それは割れた司令室の窓から一瞬にして入り込んでくると、ブルースらの攻撃を一人で跳ね除けベルンハルトを守る様な動きを見せたのだ。
「ッ!?」
「何だぁッ!?誰だ邪魔しやがんのはッ!?」
二人の前に現れたのは、真っ黒な靄に覆われた、少し小さめの謎の人物と似た存在だった。しかしその動きや異様な雰囲気から、他の個体とは明らかに違う事がブルースらにも伝わった。
「・・・妙じゃねぇか?大将。アイツら・・・あんなに早く動けたか?」
「いや、明らかに別物だ・・・。今度は何が起きている・・・?」
ベルンハルトに攻撃を仕掛けたブルースの身体が、その謎の存在に弾かれた際に受けた衝撃がまだ残っている。余程強い攻撃で弾かれた事が、ブルースの身体に伝わる衝撃からも分かる。
だが彼らを驚かせたのはそれだけではなかった。司令室に現れたその謎の人物は、あろう事かベルンハルトに言葉を投げ掛け始めたのだ。
「イチバン テウスナ ココ ヲ ツブセバ センリョク ヲ ブンサン デキル」
謎の人物が言葉を発した事に、バルトロメオが目を丸くして自分の耳を疑った。あり得ない場面を目撃し、自分が正気かどうかを確かめる様にブルースに声を掛ける。
「なッ・・・!?なぁ!アイツ喋りやがったか!?俺の聞き間違いかぁ!?」
「聞き間違いなんかじゃない。俺にも聞こえた・・・。一体何をするつもりだ・・・?」
「ベルンハルト ドノ オチカラ ヲ オカリシタイ」
謎の人物がベルンハルトに呼び掛けると、それに答える様に彼は首を縦に振る。何か動きがある事はブルースらにも分かった。身構えるブルースらに対して、謎の人物は一瞬にしてその場から姿を消した。
残像の様に残されたのは、その謎の人物が纏っていた黒い靄だけだった。同時に動き出したベルンハルトは、二人の取り巻きを召喚すると、その二人に糸を繋ぎ素早い動きでブルースの方へと向かわせた。
「大将ッ!ここは俺がッ!!」
直様ブルースの前に出たバルトロメオは、二人を覆う程の大きな幻影を召喚する。その姿は宛ら、仏教の阿修羅像を彷彿とさせる見た目をしていた。六本の腕が謎の人物達を振り払い、姿を消した例の真っ黒な人物の攻撃に備える防御体勢と、ベルンハルトに拳を差し向ける攻撃体勢の両立をしていた。
迫る腕を素早い動きで何とか躱すベルンハルト。するとその間に、防御の体勢に入っていた四本の腕が、一つまた一つと切り落とされていた。
司令室の現在の状況は、最も人が集まっていた時とは真逆に、シン達がジルを連れアンナのいる入り口へ向かい、オイゲンやケヴィンはアンドレイやマティアス司祭と音楽学校の学生らという、音楽家一行を連れてアンブロジウスのいる屋上へと向かった。
多くの人の移動があり、残されたのは音楽家のブルースとその護衛であるバルトロメオの二人だけになっていた。
部隊を三箇所に分けた理由として、ジルとカルロスが宮殿の外で得た情報で、バッハ一族の霊体達のパワーアップに一役買っている、月光写譜と呼ばれる音楽の父として有名な、かのバッハが残したという遺物がある。
それの解除、及び逆に利用する為にそれぞれの霊体に対応した楽器で、同じく月光写譜に描かれた楽譜を見て演奏する必要がある。その為に、演奏できる音楽家を各地へ散らばせる必要があったのだ。
司令室でブルースらと対峙しているのは、ベルンハルト・バッハであり彼の得意とする楽器はチェンバロという鍵盤楽器だった。無論、司令室となっている部屋に楽器などは置かれていない為、オイゲン達に楽器の捜索も託している状況だ。
チェンバロを見つけ次第、ブルースは司令室からベルンハルトを誘導し、その場所で演奏をするという手筈になっていた。二人だけでもベルンハルトの猛攻には何とか対応出来ていたブルースとバルトロメオ。
それはひとえに、音楽によるバフデバフ効果の効かないブルースと、音の衝撃を伝える糸やシャボン玉に絶大な効果を与えるバルトロメオの青い炎。これが相性が良く、時間稼ぎは上手くいっている様に見えた。
「バルト、まだいけるか?」
「あぁ?誰に言ってる・・・。俺ぁまだやれる・・・」
口では強がっているものの、生身であるバルトロメオには明らかに疲労の色が見えていた。それもその筈。相手が無尽蔵に生み出してくる取り巻きやシャボン玉に対し、バルトロメオは魔力という動力を使って強力な青白い幻影を作り出し戦っている。
その力に割く魔力は、彼の戦闘スタイルからも消費が激しく見える。戦えたとしてもそう長くは保たないだろう。バルトロメオ自身も、戦闘の最中で自分が力尽きた際は、構わず戦闘を続けて欲しいとブルースには伝えていた。
戦闘が長引けば、自分の方が早く力尽きる事は分かっていた。だが均衡した戦いの行方を左右したのは、彼らではなく宮殿入り口の広場に現れた新たな存在と同様に、新たな乱入者によってもたらされた。
それは割れた司令室の窓から一瞬にして入り込んでくると、ブルースらの攻撃を一人で跳ね除けベルンハルトを守る様な動きを見せたのだ。
「ッ!?」
「何だぁッ!?誰だ邪魔しやがんのはッ!?」
二人の前に現れたのは、真っ黒な靄に覆われた、少し小さめの謎の人物と似た存在だった。しかしその動きや異様な雰囲気から、他の個体とは明らかに違う事がブルースらにも伝わった。
「・・・妙じゃねぇか?大将。アイツら・・・あんなに早く動けたか?」
「いや、明らかに別物だ・・・。今度は何が起きている・・・?」
ベルンハルトに攻撃を仕掛けたブルースの身体が、その謎の存在に弾かれた際に受けた衝撃がまだ残っている。余程強い攻撃で弾かれた事が、ブルースの身体に伝わる衝撃からも分かる。
だが彼らを驚かせたのはそれだけではなかった。司令室に現れたその謎の人物は、あろう事かベルンハルトに言葉を投げ掛け始めたのだ。
「イチバン テウスナ ココ ヲ ツブセバ センリョク ヲ ブンサン デキル」
謎の人物が言葉を発した事に、バルトロメオが目を丸くして自分の耳を疑った。あり得ない場面を目撃し、自分が正気かどうかを確かめる様にブルースに声を掛ける。
「なッ・・・!?なぁ!アイツ喋りやがったか!?俺の聞き間違いかぁ!?」
「聞き間違いなんかじゃない。俺にも聞こえた・・・。一体何をするつもりだ・・・?」
「ベルンハルト ドノ オチカラ ヲ オカリシタイ」
謎の人物がベルンハルトに呼び掛けると、それに答える様に彼は首を縦に振る。何か動きがある事はブルースらにも分かった。身構えるブルースらに対して、謎の人物は一瞬にしてその場から姿を消した。
残像の様に残されたのは、その謎の人物が纏っていた黒い靄だけだった。同時に動き出したベルンハルトは、二人の取り巻きを召喚すると、その二人に糸を繋ぎ素早い動きでブルースの方へと向かわせた。
「大将ッ!ここは俺がッ!!」
直様ブルースの前に出たバルトロメオは、二人を覆う程の大きな幻影を召喚する。その姿は宛ら、仏教の阿修羅像を彷彿とさせる見た目をしていた。六本の腕が謎の人物達を振り払い、姿を消した例の真っ黒な人物の攻撃に備える防御体勢と、ベルンハルトに拳を差し向ける攻撃体勢の両立をしていた。
迫る腕を素早い動きで何とか躱すベルンハルト。するとその間に、防御の体勢に入っていた四本の腕が、一つまた一つと切り落とされていた。
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