World of Fantasia

神代 コウ

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希望の焔と影の使い道

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 結果的に紅葉の炎はアンナの生み出すシャボン玉を燃やす事が出来るようだ。やはりアンナのシャボン玉もまた、ベルンハルトの糸やシャボン玉と同じように属性で対処出来るのかも知れない。

 ただ、ベルンハルトの時とは違い、感知も視認もしづらいアンナのシャボン玉に関しては、シンの影のスキルは相性が悪いと言えるだろう。試すまでもなく、目に見えないという事は光が目に届かないという事。光がなければ影は生まれない。つまりシンのスキルも通用しないという事だ。

 あくまで影を用いたスキルに限りだが。どの道シンが扱える属性は、闇寄りのスキルになるので通用はしない。アンナのシャボン玉がベルンハルトのモノと同じ性質を持っているのなら、プラチドの聖属性でもシャボン玉を処理する事が出来そうなものだが、彼の話からはそのような話は出てこなかった。

「動けるか?」

「すっすまない、まだ一人では厳しいようだ。それに彼もいる」

 プラチドは手元のツクヨに視線を落とす。何とか彼らをアカリの元へ連れて行ければと思ったが、それも難しいようだ。それにアカリ達を戦場のど真ん中に連れて来るのも危険だ。

 周囲を見渡したシンは、そこで階段の踊り場にある大きめの柱に注目した。この場を何の対策も無しに移動するのは愚策。紅葉の炎で道を切り開くのも一つの手だが、現状で対処が可能な紅葉の炎を無駄に使わせるくらいなら、役に立たない自分のスキルを使おうというのだ。

「奴らにこっちの言葉が通じてる様子は?」

「いや、それはなかった。奴らは奴らで意思の疎通の方法があるみたいだ」

「良かった、なら声に出しても大丈夫だな。ツバキ!」

 シンは上にいるツバキに大きな声で呼びかける。そして紅葉の炎を使い、一階へ降りる階段の踊り場の方を指差し、皆で移動してくるよう伝える。

「あそこに見える柱の陰まで、何とかして来てくれ!今から俺達もそこへ向かう!」

「向かうって・・・。そうか、君のスキルは・・・」

「あの柱の辺りなら、移動距離的にも広さ的にも丁度いい中継地点になる。これから俺の影の中を通ってあそこまで向かう。だがケイシーという彼は・・・」

 そう言って近くにある大きな植物の種を見ると、プラチドは気にする事はないと言って置き去りにしても大丈夫だとシンに伝える。どうやらアレの外殻は非常に硬い強度を持っているようで、爆発でも割れる事はなかったのだと語る。

 シンのスキルは移動させる物の大きさや質量によって、移動できる距離に制限が掛かってしまう。もしもケイシーまでともなっていたら、この話は破綻していたところだった。

 自身とプラチド、それにツクヨの影も使って床に真っ黒な沼のような影でできたゲートを作るシン。自らが先に入り安全であることをしょうめいすると、続いてツクヨを抱えたプラチドが影の中へと落ちていく。

「ぉおらぁッ!紅葉ぃ!あっちに炎の風だぁ!」

 まるで自分の召喚した使い魔のように、威勢の良い指示を出すツバキだったが、紅葉は全く彼の言うことを聞こうとはしなかった。その様子を呆れて見ていたアカリが、彼に代わってシンの指示を紅葉に伝える

「お願いね、紅葉。私達の道を切り開いて」

「キィーーー!」

 大きく翼を羽ばたかせた紅葉は、勢い良く翼を羽ばたかせた階段の踊り場に向けて、火の粉舞う突風を巻き起こす。自分の言うことを聞かなかった紅葉に不服そうな表情を浮かべながらも、ツバキは紅葉の風の中を先陣を切って進み始める。

 宙で引火したシャボン玉は、燃え尽きるその寸前までまるで人魂のように漂い、半分が崩壊したところで床へと落下していく。その殆どは、床に到達することなく全てを蒸発させていた。

 少し焦げ臭い中を、残りの腕に取り付けられたガジェットの冷却ファンをふかしながら進むツバキ。先に到着していたのはシン達だった。司令室で見た事があるような男と、意識を失っている様子のツクヨを見て、無事なのかと問うツバキ。

「アカリ、君に二人の回復を頼みたい」

 漸く自分を頼ってくれた仲間に、アカリは目を輝かせて自信に溢れた返事を返す。荷物を下ろし中に綺麗に入れてある薬草やお香を取り出し、治療の準備を始める。

「すまない、お嬢さん。世話になる・・・」

「いえ、お気になさらないで下さい」

「さてシン。何か作戦がお有りで?」

「先ずはフィールドを掌握している、奴の攻撃を処理する。その為に紅葉の力を借りたい・・・」

 そう言ってシンがアカリの側で羽ばたく紅葉に視線を送ると、ツバキの時と同じようにそっぽを向いてしまう。

「コイツ、俺らの言うことは聞かないってよ」

「頼む、アカリを守る為だ・・・」

 紅葉はシンの言葉を理解しているかのように、一度アカリの方を見た後俯きながらその場で翼を羽ばたかせる。

「お願い、紅葉・・・協力してあげて。貴方しかいないの」

 アカリの言葉に話を聞く気になったのか、紅葉は大人しくなり近くの手摺りに止まり、何をすれば良いのかと尋ねるようにシンの方を見つめる。

「言葉が通じてんのか通じてねぇのか・・・」

「どちらでもいいさ。だがこの広さのフィールドに、一気にさっきの風を吹かせようとするなら、紅葉にはこの何処に爆弾があるかも分からない空間を飛び回ってもらう事になる・・・」

 無論、そんな事をすれば唯一の対抗手段である紅葉までも失い兼ねない。そこでシンが参考にしたのは、アンナの歌声をスピーカーで拡散するという話だった。
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