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姿を消したのは者の行方
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一行を仕留める準備を整えたアンナは、追い詰めた獲物を目の前に一切の抜かりがない。用意した強化済みのシャボン玉だけでも十分と思われる状況下でも、彼らの逃げ道を断つように周囲に謎の人物達を召喚し、スピーカーを持たせている。
「何処までも逃す気はないようだ・・・」
「プラチドさん、大丈夫ですか?」
「あぁ、この状況じゃもう耐え凌ぐなんて考えは捨てた方が良さそうだ」
「全力でぶつかって打ち破る!それぐらいじゃないと助からないって事だろ?」
プラチドもケイシーも覚悟を決めたようだ。防御で敵の攻撃をやり過ごすのも、隙を見つけて撤退するのも不可能だとでも言うように、前しか向いていない。
「言っておくけど、諦めるつもりなんてないからな?」
「ったりめぇだ!アンドレイ様に会うまで死んでたまるかよ」
「ツクヨ、アンタには引き続き例のシャボン玉の排除を任せたい。勝手は違うだろうが、俺や彼が攻撃するよりも安全に破壊出来るかも知れない」
布都御魂剣が創り出す認識の中で斬り伏せたシャボン玉は、本来触れれば割れて中身の“衝撃”をばら撒く筈だが、その性質や本質を斬る布都御魂剣であれば、爆発を起こす事なくシャボン玉を排除できる。そう踏んでプラチドはツクヨに任せたのだ。
「俺の事はいい・・・。各々の自分に出来る最大限の攻撃で迎え撃つぞ!」
一行はが迎撃体制を整えると、敵側のアンナ一行も一斉に攻撃を開始した。その結果が、シン達が到着した宮殿入り口の惨状だったという訳だ。
時間軸は現在へと戻り、あらかたの話をプラチドから聞いたシンは、総攻撃後にそれぞれがどうなったのか、無事であるのかを尋ねる。
「俺は自己治癒のスキルで、戦闘不能になっても暫くしたら回復する事が出来る。だが、その無防備になってしまったところを彼に救われた・・・」
プラチドはその腕に抱える、意識を失ったツクヨへ視線を向ける。大きなダメージは既にプラチドによって回復されたのか、WoFのユーザー目線で見るツクヨのステータス上だとまだ戦える状態にあるようだ。
これはゲーム上の仕様ではなく、彼らがこの世界の異変に巻き込まれた事によって生じる、現実の疲労と同じ仕組みなのかもしれない。シンも同じ状況を経験した事がある。それはこちらの世界にやって来てから最初の強敵であるメアとの戦闘後だった。
満身創痍の状態だったシンは、数日間の間目を覚まさなかった。それは本人の肉体的な状態やステータスには関係なく、自身の魂とでもいうのだろうか。その本質の疲労が肉体であるキャラクターを動けなくしているようだ。
「ツクヨを守ってくれてありがとう。それでそのアンナとやらは何処へ?」
「分からない・・・。苛烈化する攻撃の中で、俺が目を覚ました時には既に姿が無かった。だが必ずこの広場にはいる筈だ。さっきの見えない爆発こそ、奴の攻撃。他の霊体達には作り出せないものだからな」
彼らの側にある植物については、プラチドの話にもあったアンドレイの護衛であるケイシーのスキルであると見て間違いない。そして彼の姿が見えないが、大きな種のような球体があることから、恐らくケイシーもプラチドのように自己治癒の状態に入っているのではないかと予想される。
現に近づいた事で、その球体の中から何者かの気配を微かに感じる。そしてもう一つ予想出来るのは、苛烈化した攻撃の中で彼らが消されていないという事は、相手側にもそれなりのダメージがあったに違いない。
「この状況で攻めてこないという事は、逆に好機なのでは?」
「だろうな・・・。俺達だけならともかく、君達が来てくれたおかげで向こう側も、戦力的に攻勢に出れなくなったんだろう」
「相手側に回復の手段があるか分からないけど、このままでいるのは得策じゃない。追い詰められているのは向こう側だ。奴を見つけて一気に叩く!」
早速シンは自身に出来る相手の気配感知と魔力感知を試みる。しかしそれで見つけられるのなら、恐らくプラチドらもここまで追い詰められる事はなかっただろう。
ツクヨの能力以外に、姿を消したアンナの行方を探る術はないかと知恵を絞るシン。すると、シンを押し退け反対の方へ避難していたツバキやアカリ達の方である動きがあった。
そこでは大きく成長した紅葉が上空へと羽ばたき、炎を纏った翼で火の粉の舞う風を起こした。火の粉は何もない空間を舞うが、突然あちらこちらで何かに引火するように球体状に燃え始める。
「ホラ見ろッ!やっぱり俺の言った通りだぜぇ!」
ツバキの勝ち誇ったかのような声が聞こえてくる。どうやらツバキは司令室での出来事から、紅葉の炎を用いれば抗う事が出来るのではないかとかんがえたようだ。
「何処までも逃す気はないようだ・・・」
「プラチドさん、大丈夫ですか?」
「あぁ、この状況じゃもう耐え凌ぐなんて考えは捨てた方が良さそうだ」
「全力でぶつかって打ち破る!それぐらいじゃないと助からないって事だろ?」
プラチドもケイシーも覚悟を決めたようだ。防御で敵の攻撃をやり過ごすのも、隙を見つけて撤退するのも不可能だとでも言うように、前しか向いていない。
「言っておくけど、諦めるつもりなんてないからな?」
「ったりめぇだ!アンドレイ様に会うまで死んでたまるかよ」
「ツクヨ、アンタには引き続き例のシャボン玉の排除を任せたい。勝手は違うだろうが、俺や彼が攻撃するよりも安全に破壊出来るかも知れない」
布都御魂剣が創り出す認識の中で斬り伏せたシャボン玉は、本来触れれば割れて中身の“衝撃”をばら撒く筈だが、その性質や本質を斬る布都御魂剣であれば、爆発を起こす事なくシャボン玉を排除できる。そう踏んでプラチドはツクヨに任せたのだ。
「俺の事はいい・・・。各々の自分に出来る最大限の攻撃で迎え撃つぞ!」
一行はが迎撃体制を整えると、敵側のアンナ一行も一斉に攻撃を開始した。その結果が、シン達が到着した宮殿入り口の惨状だったという訳だ。
時間軸は現在へと戻り、あらかたの話をプラチドから聞いたシンは、総攻撃後にそれぞれがどうなったのか、無事であるのかを尋ねる。
「俺は自己治癒のスキルで、戦闘不能になっても暫くしたら回復する事が出来る。だが、その無防備になってしまったところを彼に救われた・・・」
プラチドはその腕に抱える、意識を失ったツクヨへ視線を向ける。大きなダメージは既にプラチドによって回復されたのか、WoFのユーザー目線で見るツクヨのステータス上だとまだ戦える状態にあるようだ。
これはゲーム上の仕様ではなく、彼らがこの世界の異変に巻き込まれた事によって生じる、現実の疲労と同じ仕組みなのかもしれない。シンも同じ状況を経験した事がある。それはこちらの世界にやって来てから最初の強敵であるメアとの戦闘後だった。
満身創痍の状態だったシンは、数日間の間目を覚まさなかった。それは本人の肉体的な状態やステータスには関係なく、自身の魂とでもいうのだろうか。その本質の疲労が肉体であるキャラクターを動けなくしているようだ。
「ツクヨを守ってくれてありがとう。それでそのアンナとやらは何処へ?」
「分からない・・・。苛烈化する攻撃の中で、俺が目を覚ました時には既に姿が無かった。だが必ずこの広場にはいる筈だ。さっきの見えない爆発こそ、奴の攻撃。他の霊体達には作り出せないものだからな」
彼らの側にある植物については、プラチドの話にもあったアンドレイの護衛であるケイシーのスキルであると見て間違いない。そして彼の姿が見えないが、大きな種のような球体があることから、恐らくケイシーもプラチドのように自己治癒の状態に入っているのではないかと予想される。
現に近づいた事で、その球体の中から何者かの気配を微かに感じる。そしてもう一つ予想出来るのは、苛烈化した攻撃の中で彼らが消されていないという事は、相手側にもそれなりのダメージがあったに違いない。
「この状況で攻めてこないという事は、逆に好機なのでは?」
「だろうな・・・。俺達だけならともかく、君達が来てくれたおかげで向こう側も、戦力的に攻勢に出れなくなったんだろう」
「相手側に回復の手段があるか分からないけど、このままでいるのは得策じゃない。追い詰められているのは向こう側だ。奴を見つけて一気に叩く!」
早速シンは自身に出来る相手の気配感知と魔力感知を試みる。しかしそれで見つけられるのなら、恐らくプラチドらもここまで追い詰められる事はなかっただろう。
ツクヨの能力以外に、姿を消したアンナの行方を探る術はないかと知恵を絞るシン。すると、シンを押し退け反対の方へ避難していたツバキやアカリ達の方である動きがあった。
そこでは大きく成長した紅葉が上空へと羽ばたき、炎を纏った翼で火の粉の舞う風を起こした。火の粉は何もない空間を舞うが、突然あちらこちらで何かに引火するように球体状に燃え始める。
「ホラ見ろッ!やっぱり俺の言った通りだぜぇ!」
ツバキの勝ち誇ったかのような声が聞こえてくる。どうやらツバキは司令室での出来事から、紅葉の炎を用いれば抗う事が出来るのではないかとかんがえたようだ。
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