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音の伝わりと認識の変化
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確かにそこには今の今まで何も無かった。だが光の反射がその姿を映し出した時、二人はその後に起こる出来事を直ぐに察した。それまでの安心感がまるで嘘だったかのように、顔を青ざめギョッとするプラチドとケイシー。
一時の安息に気が抜けていたところへの不意打ちは、彼らに考える隙も与えずまともな防御手段すら取らせなかった。
「しまッ・・・!?」
「いつの間にッ!?」
二人の前に現れたのは、最初に彼らを苦しめた音の衝撃を閉じ込めたシャボン玉だったのだ。それも今度は一度目で学習したのか、アンナはツクヨとの戦闘の最中に複数のシャボン玉をプラチドらの元へ送り込んでいた。
一つ一つの威力を弱める事で、更に感知に引っ掛かりにくい性能にしていた。目の前の事態に追われていた彼らには、到底気付きようのない事だった。
一つ目の爆発が発生すると同時に、近くで身を潜めていたシャボン玉が連鎖的に現れ、次々に爆発を起こしていく。気が付いてからの防御になってしまった為、プラチドもケイシーもダメージは免れない。
だが致命傷にならぬ様、二人とも爆発が起こす煙の中で咄嗟に身を守る手段を取っていた。
「なッ・・・!?クソッ!私と戦いながら、向こうにも手を回していたのかッ!」
後方の二人の気配が弱まるのを感じたツクヨは、直ぐにその場を離れ彼らの元へ駆け寄ろうとした。しかしツクヨは、プラチドに言われた役割のことを思い出した。
今この場で彼らの元へ駆け付けてしまえば、同時にアンナを二人の元へと近付けてしまう事になる。攻撃もできず彼女の動きを制限することしか出来ない中で、シャボン玉の奇襲を受けた怪我人を守りながらとなると、一気に総崩れになる可能性が高まる。
アンナの作り出すシャボン玉の爆弾は感知が難しい。ツクヨはこれまで以上にそれらにも気を配りながら、彼らには自力の復帰とシャボン玉に対する攻略法を編み出してもらうのに期待するしかなかった。
「二人には悪いけど、ここを離れる訳にはいかないッ・・・!頼む、何とか持ち堪えて・・・」
その間にもツクヨはツクヨで、感知できぬシャボン玉を如何にして妨害するか、防ぐかを考えていた。フィールドや環境を自身の認識に変える能力も、それ自体を肉眼で視認し、確認する必要がある。
故にシャボン玉自体を歪めて生成を封じるという事も出来ない。そこで彼が着眼点を置いたのは、シャボン玉自体の性質についてだった。と、いっても実際のシャボン玉ではなく、あくまでアルバの街に空気と同じ様に当たり前に存在する“音の振動を閉じ込めたモノ”の事だ。
振動を閉じ込めているのなら、その内側には当たり前だが振動が滞留している筈。そこで、音の振動を伝えやすい環境について考えたのだ。空気中では当然、音の振動など余程強力なものでない限り視認など出来ない。
その上、感知されない様な細工でも施されているのか、シャボン玉の性質はそれらを閉じ込めた周りに殆ど漏らす事はない。考えれば考えるほど、音を武器とする彼女らに取って好都合なモノに思える。
音の振動というものの知識を絞り出す中でツクヨの脳裏に浮かんだもの。それは現実世界でのとある哺乳類の生態に関するものだった。世界最大の哺乳類であるクジラ。彼らの鳴き声は深海でも遠くに響くものとして知られている。
彼らの生息する深海千メートル付近では水温が低く分子の動きが鈍くなり、水中を伝わる音速は低くなる。そして深くなればなるほど水圧が高まり、音波はその層から出ようとする事で反射を繰り返し、遠くまで伝わるのだそうだ。
つまりこの空間の認識を深海に変える事で、ツクヨにだけはそのシャボン玉に閉じ込められた爆発を引き起こす程の音の振動をば感じ取ることができるのではというものだった。
だが、海上レースでツクヨがみせた水中での動きや呼吸のように、全てが自分の都合のいい様に変えられる訳ではない。水中を空気中へと変えた様に、空気中を水中に変える。要するにオンオフを切り替える様な変化しか、今のツクヨには扱えなかった。
今いる空間の認識を水中に変えれば、ツクヨは呼吸が出来なくなるばかりか、その動きはまるで水中の様に遅くなってしまう。それでも効果が現れるのは布都御魂剣を装備し、能力を発揮する目を閉じている間だけ。
シャボン玉から発せられる振動を視認した後に能力を解除すれば、元の宮殿の環境に戻すことが出来る。これを利用すればアンナの厄介な攻撃に対処する事が出来る。
考えのまとまったツクヨは、直ぐにそれを実行に移した。彼の身体はまるで無重力の様に浮かび上がり、頬を膨らませて呼吸を止める。周囲にはアンナや謎の人物達の気配を感じつつ、ツクヨは周囲を見渡し音の振動を探す。
そして遂にツクヨは、感知不可能と思われていたシャボン玉の動きを視認する事に成功した。しかしアンナの方も、不審な動きをするツクヨをほったらかしにしておく事はなく、近くに召喚したスピーカーと共に、音波の弾を彼へ向けて撃ち込んだ。
迫る攻撃の気配を感じ取ったツクヨは、目を開けて布都御魂剣の能力を解除すると、浮かび上がった身体は地上へと落ち、音波弾丸を回避し数発の斬撃で生じさせた衝撃波を、プラチド達の方に迫る見えぬシャボン玉へ向けて放つ。
一時の安息に気が抜けていたところへの不意打ちは、彼らに考える隙も与えずまともな防御手段すら取らせなかった。
「しまッ・・・!?」
「いつの間にッ!?」
二人の前に現れたのは、最初に彼らを苦しめた音の衝撃を閉じ込めたシャボン玉だったのだ。それも今度は一度目で学習したのか、アンナはツクヨとの戦闘の最中に複数のシャボン玉をプラチドらの元へ送り込んでいた。
一つ一つの威力を弱める事で、更に感知に引っ掛かりにくい性能にしていた。目の前の事態に追われていた彼らには、到底気付きようのない事だった。
一つ目の爆発が発生すると同時に、近くで身を潜めていたシャボン玉が連鎖的に現れ、次々に爆発を起こしていく。気が付いてからの防御になってしまった為、プラチドもケイシーもダメージは免れない。
だが致命傷にならぬ様、二人とも爆発が起こす煙の中で咄嗟に身を守る手段を取っていた。
「なッ・・・!?クソッ!私と戦いながら、向こうにも手を回していたのかッ!」
後方の二人の気配が弱まるのを感じたツクヨは、直ぐにその場を離れ彼らの元へ駆け寄ろうとした。しかしツクヨは、プラチドに言われた役割のことを思い出した。
今この場で彼らの元へ駆け付けてしまえば、同時にアンナを二人の元へと近付けてしまう事になる。攻撃もできず彼女の動きを制限することしか出来ない中で、シャボン玉の奇襲を受けた怪我人を守りながらとなると、一気に総崩れになる可能性が高まる。
アンナの作り出すシャボン玉の爆弾は感知が難しい。ツクヨはこれまで以上にそれらにも気を配りながら、彼らには自力の復帰とシャボン玉に対する攻略法を編み出してもらうのに期待するしかなかった。
「二人には悪いけど、ここを離れる訳にはいかないッ・・・!頼む、何とか持ち堪えて・・・」
その間にもツクヨはツクヨで、感知できぬシャボン玉を如何にして妨害するか、防ぐかを考えていた。フィールドや環境を自身の認識に変える能力も、それ自体を肉眼で視認し、確認する必要がある。
故にシャボン玉自体を歪めて生成を封じるという事も出来ない。そこで彼が着眼点を置いたのは、シャボン玉自体の性質についてだった。と、いっても実際のシャボン玉ではなく、あくまでアルバの街に空気と同じ様に当たり前に存在する“音の振動を閉じ込めたモノ”の事だ。
振動を閉じ込めているのなら、その内側には当たり前だが振動が滞留している筈。そこで、音の振動を伝えやすい環境について考えたのだ。空気中では当然、音の振動など余程強力なものでない限り視認など出来ない。
その上、感知されない様な細工でも施されているのか、シャボン玉の性質はそれらを閉じ込めた周りに殆ど漏らす事はない。考えれば考えるほど、音を武器とする彼女らに取って好都合なモノに思える。
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つまりこの空間の認識を深海に変える事で、ツクヨにだけはそのシャボン玉に閉じ込められた爆発を引き起こす程の音の振動をば感じ取ることができるのではというものだった。
だが、海上レースでツクヨがみせた水中での動きや呼吸のように、全てが自分の都合のいい様に変えられる訳ではない。水中を空気中へと変えた様に、空気中を水中に変える。要するにオンオフを切り替える様な変化しか、今のツクヨには扱えなかった。
今いる空間の認識を水中に変えれば、ツクヨは呼吸が出来なくなるばかりか、その動きはまるで水中の様に遅くなってしまう。それでも効果が現れるのは布都御魂剣を装備し、能力を発揮する目を閉じている間だけ。
シャボン玉から発せられる振動を視認した後に能力を解除すれば、元の宮殿の環境に戻すことが出来る。これを利用すればアンナの厄介な攻撃に対処する事が出来る。
考えのまとまったツクヨは、直ぐにそれを実行に移した。彼の身体はまるで無重力の様に浮かび上がり、頬を膨らませて呼吸を止める。周囲にはアンナや謎の人物達の気配を感じつつ、ツクヨは周囲を見渡し音の振動を探す。
そして遂にツクヨは、感知不可能と思われていたシャボン玉の動きを視認する事に成功した。しかしアンナの方も、不審な動きをするツクヨをほったらかしにしておく事はなく、近くに召喚したスピーカーと共に、音波の弾を彼へ向けて撃ち込んだ。
迫る攻撃の気配を感じ取ったツクヨは、目を開けて布都御魂剣の能力を解除すると、浮かび上がった身体は地上へと落ち、音波弾丸を回避し数発の斬撃で生じさせた衝撃波を、プラチド達の方に迫る見えぬシャボン玉へ向けて放つ。
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