World of Fantasia

神代 コウ

文字の大きさ
1,479 / 1,646

熟練度と使役の仕組み

しおりを挟む
 散り散りになった身体の一部はそのまま塵となって消え、残った胸より上の上半身に淡い青白い光が集まって、再びアンブロジウスの身体を形成する。だが身体が作り出された途端に、彼は崩れ落ちるようにその場で膝をついた。

 実体のように分かりやすい外傷はないものの、その様子からも大きなダメージを負っている事が分かる。息が上がっているのかアンブロジウスは肩を大きく揺らしている。

「弾も込めてないのに銃弾が・・・」

 シルフの指示に従い放った攻撃が、想像以上の火力を有していた事に唖然とするミア。それを見たシルフは得意げな表情を浮かべながら、実態の無い弾丸の正体について説明を始める。

「今のは風で作り出した風の塊で、私達はコレを“風玉”と呼んでいるの。本気になればもっと大きいのも作れるんだけど、今の貴方の熟練度ではそこまで強力な風玉は作れないから肝に銘じておいて」

 偉そうにご講述を垂れるシルフの話を華麗に聞き流したミアは、これがあれば強気に出られると悪そうな企みを含んだ表情へと変わり口角を上げる。

「ねぇ・・・私の話、聞いてた?」

「分かってるって。貴方の力の片鱗を見せてくれたって訳でしょ?正直驚かされた。まだ完全に力を引き出せていないのにこれだけの威力・・・。それに奴との相性も抜群ときた。なるほどウンディーネが推していただけの事はある」

「貴方、目の前に私がいるのに別の奴の話をするなんて、失礼じゃなくて?」

ミアの独り言がウンディーネを誉めているように聞こえたのが気に入らなかったのか、頬を膨らませて不貞腐れるシルフ。それを宥めるように彼女をフォローする言葉を添えた。

「悪かったって。ウンディーネも貴方の力が凄いんだって褒めてたって話だよ」

「そ、そお?ならいいけど・・・」

 満更でもない表情を浮かべるシルフを見て、なるほど気分屋ということもあってチョロいなと思うミアだった。話を戻し、真面目な作戦について話すミアは、これが上手くいくかどうかを魔力の関連に詳しい精霊である彼女に精査してもらう。

「奴の失われた身体は、恐らく奴の魔力を使って再生成された。このまま奴の身体を損傷させ続ければ、やがて演奏なんて無視出来るくらいに弱体化していくんじゃないかと思うんだが・・・。偉大なる風の精であるシルフ様はどうお考えで?」

「そうね、着眼点は悪くないわ。ただ、生成に使われる魔力が彼自身のものであるかはまだ分からないわ」

「そうか!もしかしたら、奴を使役している本体の奴の魔力の可能性もあるって事か!」

 アンブロジウスの存在を現世に呼び出し使役しているのは、彼の魂を召喚している犯人と見て間違いない。だが召喚された彼の身体を、使役者の指示に従い動かしているのは、他ならぬアンブロジウス自身だ。

 ならば身体を失い、指示を実行する身体がなくなればアンブロジウスに出来ることはない。つまり身体を失ったアンブロジウスを再び使役する為には、もう一度身体を与えてやらねばならないという事だ。

 その身体を用意するのは誰か。それは術者である犯人である事が予想される。シルフは遠回しにそれをミアに気づかせていたのだ。

「そう、それとさっきは身体だけだったけど被害が大きくなればなるほど、再生成に必要な魔力は多くなる。それこそ一から作り直しともなれば尚のこと」

「期待通りのようで安心したよ。それと貴方に頼みたい事が。あそこで倒れている彼女らの身体からも、その音響玉って奴を取り除いてやって欲しいんだけど・・・」

 ミアの言葉にシルフはすぐに答える事はなかった。そして表情を曇らせ、それが出来ない理由について話し出した。

「残念だけどそれは出来ないわ」

「なッ・・・!?どうして。まだ私への信頼が足りないと?」

「そうじゃない。さっきも話したけど、まだ貴方の熟練度が足りないのよ。使えるようになったばかりの力は、最初から全てを使いこなす事が出来ないのは貴方もしっているわよね?つまり、まだ私の風の力を他者に使ってあげられる程器用じゃないって事よ」

「奴と戦って、熟練度を上げるしかないって事か・・・。ん?しかしウンディーネの時は割と初めから大掛かり技が使えたと思うが?」

 ミアの言うように、海上レースの時に水の精霊であるウンディーネとの絆を深め、使役出来るようになった時は様々な力を惜しげもなく使えていたように思える。このシルフとの違いは本当に熟練度によるものだけなのだろうか。

「それはその時の戦場や状況によっても異なるのよ。ウンディーネが貴方に絡み始めたのは“海”という果てしない量の“水”があるフィールドだったわよね?それだけウンディーネが自在に扱える自然の力が近くに、それも無尽蔵にあった訳だから多少のプロセスをすっ飛ばしてもおかしくないという訳よ」

 彼女の言い分は分かりやすく、最もらしいものだった。決して意地悪で力を貸したくないという様子ではないようだ。シルフの性格からそういった思いもあったのではと勘繰ってしまったミアは、シルフへの偏見を改めることにした。

「なら、とっとと奴を絞めないとな・・・。何ならその前に決着をつけてやるか?」

「ふふ。私、貴方のそういう強気なところ嫌いじゃない。やりたいようにやってみなさいな。出来るだけのサポートはしてあげる」

 風とは本来掴みどころのないもの。その性質は風を司るシルフの性格にも反映されているかのように、事前に策を用意したり連携をとるなどというものではなく、やりたい事を想像したままに実行する“無垢なる思想“こそ、風を使役する上で最も上達するコツなのかも知れない。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

処理中です...