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楽譜の重要度
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押し込んでいる筈の刃が、ベルンハルトの身体から発せられる振動により押し戻されていく。それどころかその振動は、発生源から波紋状となって広がり、シンの体自体を押し退けるように迫る。
バルトロメオの方も同じく、魔力で作り出した腕はその形を保てなくなり、見えぬ壁に押し戻されるように二人はベルンハルトから飛び退いて行った。
「どうしたバルトロメオ」
「分からねぇ・・・。俺ぁ確かに全力でぶん殴った。だが奴の前に壁みてぇなものがあって・・・」
「壁?俺には何も見えなかったが・・・!そうか、奴の奏る音か」
バルトロメオが全力で攻撃していたであろう事は、司令室にいる誰もが分かっていた事だろう。その圧倒的な魔力と凄まじい威力の拳は、宮殿という室内にまるでドラゴンの羽ばたき、或いはヘリコプターの巻き起こす風を全身に浴びているかのような突風を巻き起こす程だった。
その風からも、完全にベルンハルトの魔力やその姿から繰り出されるでろう力を上回っているように見えた。あの拳は彼には受け止めきれないと。だが結果としてベルンハルトはやってのけた。
つまり、ベルンハルトの奏る音は力技でどうにかできるものではないらしい。
「音に俺の技が負けたっていうのかぁ!?」
「それは・・・考えづらい」
「何が言いてぇんだ?大将」
「お前の力や魔力が奴に負けると到底思えない。ということは、お前自身に何か要因がある、或いは何かが付与されているか・・・」
ブルースが考えるその付与効果というものこそ、このアルバにやってきてからどこかで知らず知らずに受けた儀式によるもので、おおよそそれが式典の中に仕組まれていたであろう事は分かっていた。
だがその詳細な効果までは理解できない。といったところだった。やはり音の牙城を崩すには、ジルの言っていた通り彼の持つ楽譜をどうにかする他ない。
一方、もう一人ベルンハルトの音の振動により撤退を余儀なくされたシンは、一度アンドレイに任せた仲間の元へと戻る。
「シンさん!」
「おいどうしたってんだ?俺のガジェットじゃ物足りなかったか?」
心配そうに駆け寄るツバキとアカリ。アンドレイは約束通り何とか二人を守ってくれていた。いざ戦闘になると、こちらまで意識が向かわなくなる。そんな中で常に戦況を冷静に見極め、戦えない身でありながらも適切に判断を下せたおかげで、身を守るための指示をツバキ達に出せていたのだろう。
「そうじゃない。ツバキの発明は奴の能力の中でも影響を受けずに戦えることは証明された。ただ・・・」
シンがベルンハルトを暗殺しようと仕掛けた攻撃。その瞬間に起きた出来事をツバキ達に説明しようとした時、黙って彼の帰還を静観していたアンドレイが口を開いた。
「見えない壁に阻まれた・・・ってところじゃないですか?」
「ッ・・・!?何故それを・・・」
「突然割って入ってしまってすみません。シンさんの攻撃を観察していて創刊じたというだけなのですが、彼に刃が刺さろうかとした瞬間、まるでシンさんの持つ武器はまるで金属音のような音を奏でました」
「聞こえていたのか」
「えぇ、しかし何にも触れていないのそのような音が発せられるのはおかしい。何か同じように固い物にぶつかりでもしない限り、あんな音は出ない。これまでの彼の傾向上、そして彼の腕をよく見ると楽器の弦のようなものが見えました。その弦はあの“糸“と同じように、振動を伝える性質を持っているのでしょう」
アンドレイの推理は正しかった。彼らのいる位置からでは、シンが狙った身体の部位が弦のようなものに変化していたのは見えなかったのだろうが、バルトロメオの攻撃を受け止めるベルンハルトの腕は見えていたのだろう。
しかしそれだけでは、シンの攻撃が彼の身体に届かず、何かにぶつかったかのような金属音を奏た現象の説明にはならない。そこでアンドレイが考えたのは、ベルンハルトの身体にある弦は、音の振動を増幅し放つことがdできるのではないかというものだった。
「要するに、音の振動による障壁を生み出し、シンさんとバルトロメオさんを退けたのではないでしょうか?」
「音の障壁・・・」
「それじゃぁアイツが音を出す限り、触れることも出来ねぇってことかよ!?」
音を奏でるベルンハルト自身が、音を増幅させる装置のような役割も持っている。これではツバキの言うように触れることすら叶わない。しかしここで、とあることを思い出したアカリが口を開いた。
「待って。彼がそんな不思議な力を使い始めたのって、あの“楽譜“を使い始めてからじゃない?」
「貴方は何かと素晴らしい着眼点をお持ちですね。そうです、彼があの能力を使い始めたのはあの楽譜を使い始めてからです。ということは・・・」
「その楽譜を奪っちまえばッ!」
ブルースの元へ戻ったバルトロメオ達の行き着いた結論と同様に、シン達サイドもまたジルの言っていた楽譜がこれ程までに重要となっていた事に気が付いたのだ。
バルトロメオの方も同じく、魔力で作り出した腕はその形を保てなくなり、見えぬ壁に押し戻されるように二人はベルンハルトから飛び退いて行った。
「どうしたバルトロメオ」
「分からねぇ・・・。俺ぁ確かに全力でぶん殴った。だが奴の前に壁みてぇなものがあって・・・」
「壁?俺には何も見えなかったが・・・!そうか、奴の奏る音か」
バルトロメオが全力で攻撃していたであろう事は、司令室にいる誰もが分かっていた事だろう。その圧倒的な魔力と凄まじい威力の拳は、宮殿という室内にまるでドラゴンの羽ばたき、或いはヘリコプターの巻き起こす風を全身に浴びているかのような突風を巻き起こす程だった。
その風からも、完全にベルンハルトの魔力やその姿から繰り出されるでろう力を上回っているように見えた。あの拳は彼には受け止めきれないと。だが結果としてベルンハルトはやってのけた。
つまり、ベルンハルトの奏る音は力技でどうにかできるものではないらしい。
「音に俺の技が負けたっていうのかぁ!?」
「それは・・・考えづらい」
「何が言いてぇんだ?大将」
「お前の力や魔力が奴に負けると到底思えない。ということは、お前自身に何か要因がある、或いは何かが付与されているか・・・」
ブルースが考えるその付与効果というものこそ、このアルバにやってきてからどこかで知らず知らずに受けた儀式によるもので、おおよそそれが式典の中に仕組まれていたであろう事は分かっていた。
だがその詳細な効果までは理解できない。といったところだった。やはり音の牙城を崩すには、ジルの言っていた通り彼の持つ楽譜をどうにかする他ない。
一方、もう一人ベルンハルトの音の振動により撤退を余儀なくされたシンは、一度アンドレイに任せた仲間の元へと戻る。
「シンさん!」
「おいどうしたってんだ?俺のガジェットじゃ物足りなかったか?」
心配そうに駆け寄るツバキとアカリ。アンドレイは約束通り何とか二人を守ってくれていた。いざ戦闘になると、こちらまで意識が向かわなくなる。そんな中で常に戦況を冷静に見極め、戦えない身でありながらも適切に判断を下せたおかげで、身を守るための指示をツバキ達に出せていたのだろう。
「そうじゃない。ツバキの発明は奴の能力の中でも影響を受けずに戦えることは証明された。ただ・・・」
シンがベルンハルトを暗殺しようと仕掛けた攻撃。その瞬間に起きた出来事をツバキ達に説明しようとした時、黙って彼の帰還を静観していたアンドレイが口を開いた。
「見えない壁に阻まれた・・・ってところじゃないですか?」
「ッ・・・!?何故それを・・・」
「突然割って入ってしまってすみません。シンさんの攻撃を観察していて創刊じたというだけなのですが、彼に刃が刺さろうかとした瞬間、まるでシンさんの持つ武器はまるで金属音のような音を奏でました」
「聞こえていたのか」
「えぇ、しかし何にも触れていないのそのような音が発せられるのはおかしい。何か同じように固い物にぶつかりでもしない限り、あんな音は出ない。これまでの彼の傾向上、そして彼の腕をよく見ると楽器の弦のようなものが見えました。その弦はあの“糸“と同じように、振動を伝える性質を持っているのでしょう」
アンドレイの推理は正しかった。彼らのいる位置からでは、シンが狙った身体の部位が弦のようなものに変化していたのは見えなかったのだろうが、バルトロメオの攻撃を受け止めるベルンハルトの腕は見えていたのだろう。
しかしそれだけでは、シンの攻撃が彼の身体に届かず、何かにぶつかったかのような金属音を奏た現象の説明にはならない。そこでアンドレイが考えたのは、ベルンハルトの身体にある弦は、音の振動を増幅し放つことがdできるのではないかというものだった。
「要するに、音の振動による障壁を生み出し、シンさんとバルトロメオさんを退けたのではないでしょうか?」
「音の障壁・・・」
「それじゃぁアイツが音を出す限り、触れることも出来ねぇってことかよ!?」
音を奏でるベルンハルト自身が、音を増幅させる装置のような役割も持っている。これではツバキの言うように触れることすら叶わない。しかしここで、とあることを思い出したアカリが口を開いた。
「待って。彼がそんな不思議な力を使い始めたのって、あの“楽譜“を使い始めてからじゃない?」
「貴方は何かと素晴らしい着眼点をお持ちですね。そうです、彼があの能力を使い始めたのはあの楽譜を使い始めてからです。ということは・・・」
「その楽譜を奪っちまえばッ!」
ブルースの元へ戻ったバルトロメオ達の行き着いた結論と同様に、シン達サイドもまたジルの言っていた楽譜がこれ程までに重要となっていた事に気が付いたのだ。
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