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別の戦場にて クラス・クレリック
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シャボン玉が割れることで確認されている現象として、中に入っていたと思われる音が外に放たれるというもの。そこに宮殿入り口に攻め込んできているアンナの声のような衝撃はない。
振動は生み出しているものの、それはあくまで音として鼓膜を振るわせる程度のものであり、とても攻撃を逸せるほどの振動はあるとは思えない。そこで考え得るのが、シャボン玉から放たれた振動によりアンブロジウスの周囲にある糸に影響を及ぼした可能性だ。
「私のあれが見間違いじゃなければ、この街に蔓延するシャボン玉を奴らは利用している・・・。或いはこれ自体も・・・?」
そう言いながら、ニノンは自分の側に舞うシャボン玉の一つを手のひらの上に載せようとするも、肌にふれたと同時に中に込められた何かしらの楽器の音が小さく聞こえた。
ブルースとバルトロメオが宮殿の一階へ落ちていき、屋上にはミアとニノン、そしてアンブロジウスが対峙している中、アンドレイ達が司令室に向かった後の宮殿入り口では、もう一つの戦いが始まっていた。
「何かすごい音がしたね・・・」
「向こうはオイゲン達がいるんだ。心配することはないだろう」
「それにしても、今までの騒動の音にしてはやけに大きかったよ?他でも彼女みたいなのが現れてるんじゃ・・・」
「こんなのが他にも居ると思うと少し心配だな・・・。でも先ずは目の前の事に集中しないとなッ!」
ツクヨとプラチドが悠長に会話をしている間にも、アンナと彼女の召喚するスピーカーによる攻撃の手は緩まない。空気中に伝わる音の振動に注視しながら攻撃の軌道と範囲を予測して飛び込んでいくプラチド。
スピーカーを持ち運ぶ謎の人物達は接近戦に弱く、波紋状に広がる音波や大砲のように直線的に伝わる音波は、自分達にもダメージがあるのだろうか、互いに干渉しないような動きと角度をとって攻撃してきている。
謎の人物の一人の元へ急接近したプラチドは、錫杖という杖を手にし先に付いた遊環と呼ばれる金属の輪を鳴らす。
「ぐッ・・・ォォォ・・・・!」
左右に三個ずつ付けられた遊環の響かせる音は、一定範囲にいる霊体の彼らに絶大な効果をもたらしていた。遊環の音にやられた謎の人物達は、スピーカーを手放し頭を抱えたまま壁や床の向こう側へと逃げていく。
「逃すかよッ・・・!」
素早く先に回り込もうと移動するプラチド。しかし謎の人物も自身の存在を消されぬ為必死になっており、彼が回り込むよりも先に壁へと到達しそうになる。このままでは透過され、遊環の音の届かぬ場所に逃げられてしまう。
プラチドはすぐに錫杖の持ち方を変え、まるで槍のように先端を壁に突き立てた。錫杖は壁にぶつかる事で遊環を打ち鳴らし、再び周囲に金属音を響かせる。
先ほどよりも近い位置で打ち鳴らされた事により、謎の人物の身体はまるで蜃気楼のように形を保てなくなり、呻き声を上げながらその場から姿を消していった。
「南無三!さて次は・・・」
謎の人物をまるで成仏させるかのように退散させたプラチドが次にターゲットにしたのは、距離的に近くなったアンナだった。だが彼女に近づけば近づくほどその声の影響を受けて、視界の歪みや身体能力の変化といった様々な弊害を受ける事になる。
アンナ・マグダレーナとの戦闘で最も肝となってくるのが、この距離による歌声の影響だろう。近づくことさえ許さない彼女の歌声は、攻防を兼ねた攻撃にもなっており、無策で飛び込めば返り討ちにされるという厄介なものだった。
「先ずは何事もチャレンジだ、いくぞ!」
プラチドは彼女の歌声が響かせる大気の振動に対抗すべく、錫杖を打ち鳴らしながら距離を詰める。
しかし、音の振動に対抗すべく打ち鳴らした遊環の音だったが、そもそも効果のカテゴリーが違うのか、相殺することはなくまた弱体化させることも叶わなかった。
ビリビリと伝わる振動はやがて肌を刺激し、鼓膜を震わせるだけでなく三半規管を麻痺させることで、まともな方向感覚さえも奪われ眩暈を起こしてしまう。
「うッ・・・!」
「下がって!プラチドさん!」
ツクヨの声に頭を抑えて後退りしていくプラチド。眩暈が落ち着きを取り戻すと、すぐにその場を立ち去っていく。代わりに飛び込んできたツクヨが、目を閉じたまま腰に帯刀した刀を抜刀し斬り掛かる。
アンナは歌を続けたまま彼の一撃を避けると、そのまま着地したツクヨに対し手をかざす。するとアンナの背後から複数の糸が、ツクヨに向かって差し向けられる。
素早い刀捌きでいくつかの糸を振り払うも、人間の動きでは全てを払い除けるのは不可能。これ以上近くにはいられないと、後方に一気に飛び退くツクヨだったが、そんな彼を逃すまいとまるで触手のように迫り来る糸。
だが、そんな彼の動きを読んでいたと言わんばかりのアンナは、ツクヨが着地するであろう位置を前もって予測し、既に床に糸を仕込んでいた。それに気が付いたプラチドが揺らぐ意識の中、何とかそれを伝えねばと言葉を投げかける。
「気をつけろ!読まれているぞッ!」
「ッ!?」
だが宙に飛び上がってしまったツクヨの身体は、途中で軌道を変えることは出来ない。着地地点は今更変更など出来ない。その場にいた誰もがそう思っていた。
しかしツクヨの身体は、プラチドの注意を聞き入れたと同時に空中で動きを止めたのだった。
振動は生み出しているものの、それはあくまで音として鼓膜を振るわせる程度のものであり、とても攻撃を逸せるほどの振動はあるとは思えない。そこで考え得るのが、シャボン玉から放たれた振動によりアンブロジウスの周囲にある糸に影響を及ぼした可能性だ。
「私のあれが見間違いじゃなければ、この街に蔓延するシャボン玉を奴らは利用している・・・。或いはこれ自体も・・・?」
そう言いながら、ニノンは自分の側に舞うシャボン玉の一つを手のひらの上に載せようとするも、肌にふれたと同時に中に込められた何かしらの楽器の音が小さく聞こえた。
ブルースとバルトロメオが宮殿の一階へ落ちていき、屋上にはミアとニノン、そしてアンブロジウスが対峙している中、アンドレイ達が司令室に向かった後の宮殿入り口では、もう一つの戦いが始まっていた。
「何かすごい音がしたね・・・」
「向こうはオイゲン達がいるんだ。心配することはないだろう」
「それにしても、今までの騒動の音にしてはやけに大きかったよ?他でも彼女みたいなのが現れてるんじゃ・・・」
「こんなのが他にも居ると思うと少し心配だな・・・。でも先ずは目の前の事に集中しないとなッ!」
ツクヨとプラチドが悠長に会話をしている間にも、アンナと彼女の召喚するスピーカーによる攻撃の手は緩まない。空気中に伝わる音の振動に注視しながら攻撃の軌道と範囲を予測して飛び込んでいくプラチド。
スピーカーを持ち運ぶ謎の人物達は接近戦に弱く、波紋状に広がる音波や大砲のように直線的に伝わる音波は、自分達にもダメージがあるのだろうか、互いに干渉しないような動きと角度をとって攻撃してきている。
謎の人物の一人の元へ急接近したプラチドは、錫杖という杖を手にし先に付いた遊環と呼ばれる金属の輪を鳴らす。
「ぐッ・・・ォォォ・・・・!」
左右に三個ずつ付けられた遊環の響かせる音は、一定範囲にいる霊体の彼らに絶大な効果をもたらしていた。遊環の音にやられた謎の人物達は、スピーカーを手放し頭を抱えたまま壁や床の向こう側へと逃げていく。
「逃すかよッ・・・!」
素早く先に回り込もうと移動するプラチド。しかし謎の人物も自身の存在を消されぬ為必死になっており、彼が回り込むよりも先に壁へと到達しそうになる。このままでは透過され、遊環の音の届かぬ場所に逃げられてしまう。
プラチドはすぐに錫杖の持ち方を変え、まるで槍のように先端を壁に突き立てた。錫杖は壁にぶつかる事で遊環を打ち鳴らし、再び周囲に金属音を響かせる。
先ほどよりも近い位置で打ち鳴らされた事により、謎の人物の身体はまるで蜃気楼のように形を保てなくなり、呻き声を上げながらその場から姿を消していった。
「南無三!さて次は・・・」
謎の人物をまるで成仏させるかのように退散させたプラチドが次にターゲットにしたのは、距離的に近くなったアンナだった。だが彼女に近づけば近づくほどその声の影響を受けて、視界の歪みや身体能力の変化といった様々な弊害を受ける事になる。
アンナ・マグダレーナとの戦闘で最も肝となってくるのが、この距離による歌声の影響だろう。近づくことさえ許さない彼女の歌声は、攻防を兼ねた攻撃にもなっており、無策で飛び込めば返り討ちにされるという厄介なものだった。
「先ずは何事もチャレンジだ、いくぞ!」
プラチドは彼女の歌声が響かせる大気の振動に対抗すべく、錫杖を打ち鳴らしながら距離を詰める。
しかし、音の振動に対抗すべく打ち鳴らした遊環の音だったが、そもそも効果のカテゴリーが違うのか、相殺することはなくまた弱体化させることも叶わなかった。
ビリビリと伝わる振動はやがて肌を刺激し、鼓膜を震わせるだけでなく三半規管を麻痺させることで、まともな方向感覚さえも奪われ眩暈を起こしてしまう。
「うッ・・・!」
「下がって!プラチドさん!」
ツクヨの声に頭を抑えて後退りしていくプラチド。眩暈が落ち着きを取り戻すと、すぐにその場を立ち去っていく。代わりに飛び込んできたツクヨが、目を閉じたまま腰に帯刀した刀を抜刀し斬り掛かる。
アンナは歌を続けたまま彼の一撃を避けると、そのまま着地したツクヨに対し手をかざす。するとアンナの背後から複数の糸が、ツクヨに向かって差し向けられる。
素早い刀捌きでいくつかの糸を振り払うも、人間の動きでは全てを払い除けるのは不可能。これ以上近くにはいられないと、後方に一気に飛び退くツクヨだったが、そんな彼を逃すまいとまるで触手のように迫り来る糸。
だが、そんな彼の動きを読んでいたと言わんばかりのアンナは、ツクヨが着地するであろう位置を前もって予測し、既に床に糸を仕込んでいた。それに気が付いたプラチドが揺らぐ意識の中、何とかそれを伝えねばと言葉を投げかける。
「気をつけろ!読まれているぞッ!」
「ッ!?」
だが宙に飛び上がってしまったツクヨの身体は、途中で軌道を変えることは出来ない。着地地点は今更変更など出来ない。その場にいた誰もがそう思っていた。
しかしツクヨの身体は、プラチドの注意を聞き入れたと同時に空中で動きを止めたのだった。
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