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対照的な性質
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司令室に最初の攻撃が放たれてから少しして、それは突如として姿を現した。最初は漂うように出現した糸だったが、その時の攻撃は明確に目標を捉えて糸が動いていた。
床や天井、壁の向こう側からすり抜けて司令室に生き残った者達目掛けて伸びて来たのだ。だが明確化された目的を持つ物の動きは、司令室に居た勘のいい者達には感知が可能だった。
それは感覚的な気づきだけでなく、肉眼でも直線的に向かって来るものというものは、対象に僅かながらの危機感を与えていたのかもしれない。それらに加えて、シン達はリナムルで獣の感知能力を得ていたが故に、糸の発する無機質な物の目的をという概念を感じ取ることが出来ていたのだ。
「ツバキ!アカリ!」
「ぅおッ!?」
「きゃッ!?」
二人ともシンが助ける前に糸の接近に気が付き、自らその進路上から逃れていた。紅葉はアカリに負担を掛けまいと自ら彼女の元から飛び立ち、彼女に迫る糸には火の粉を浴びせた。
「紅葉!ありがとう。でも他の人達は?」
シン達の周りに迫っていた糸は、彼らの中にある獣の力による勘と紅葉の火の粉によって難を逃れたが、司令室で生き残った者達は、三部隊と一人に分かれている。
シン達の一行を除くと、ブルースらが救ったオイゲンらとケヴィンから成るブルースと教団の一行。そしてもう一つはマティアス司祭と音楽学校の生徒であるレオンとクリスの三人組だ。
残りの一人というのが、紅葉の火の粉を利用し糸を焼き切ることで生存したアンドレイだった。彼が看病をしていた護衛のチャドだが、意識のないまま糸に繋がれ音の衝撃を流されてしまったようで、彼の寝ていたベッドに例の黒い塵が残されていた事から、司令室に残された者達が行き着く考察からも死んだのではなく、記憶の改竄と共に翌日の目覚めを待つ待機状態へと移行してしまったのだろう。
敵対者による第二波を受けたブルースと教団の一行は、それぞれに守りを固めるといった様子で攻撃を凌いでいた。彼らにも謎の糸を焼き切る手段がある。それは司令室に救援へとやって来たブルースの護衛、バルトロメオの能力だった。
当然ながらバルトロメオは自身と主人であるブルースを守る為にその能力を振るう。そしてオイゲンらの方はというと、教団最強の盾と言われる隊長のオイゲンは、自らの能力で生み出した光の盾によって糸を弾いていた。
オイゲンはケヴィンを自らの後ろに守りながら、二人を狙う糸を次々に弾く。それを見ていたケヴィンがとある事に気がつく。それは、オイゲンの光の盾によって弾かれた糸は、その接触した先端から燃えて消滅していたのだ。
「オイゲン氏!糸が燃えていますよ」
「燃える?私の盾にそのような能力はない筈だが?」
その様子は動いているオイゲンには見えていなかった。注視していなければ糸が消滅している事にすら気付けないほど小さな現象。初めに糸を燃やして見せたのは、バルトロメオの腕が発する青い炎。次に紅葉の火の粉というように、一見その関連性から糸は“燃やす“という行為に弱いと思われていたが、オイゲンの盾には自身が口にしていた他に、客観的に見ても引火させるような要素は一切見受けられない。
ということはつまり、糸は熱による引火で消滅しているのではなく、別の要因で消滅しているという事になる。教団の隊員や宮殿に招いた要人とその護衛について資料で調べていたケヴィンには、それぞれの特徴や能力についてざっくりとした知識があった。
まず最初にケヴィンが注目したのは、オイゲンとバルトロメオの能力の共通点についてだった。彼の見た資料にはそれぞれのクラスが記載されていて、オイゲンは聖騎士と記されており、バルトロメオは破戒僧と記されていた。
出来るだけ新しい資料を調達したつもりだが、こういった個人で調達できる資料というものには限度があり信憑性も保証された物ではない。オイゲンに関しては、教団内でクラスチェンジを行った際は申告する必要があるようだが、それも教団に属さない者には確かめようがない。
それでもある程度の指針にはなる。もしケヴィンの調達した資料を信じるのなら、聖騎士も破戒僧もどちらも神や仏に関するものだということだ。属性で言えば聖属性や光属性、能力で言えば神秘的なものを魔力でビジョンとして表現したり実体化させるほか、悪や闇といったものへの特効性や優位性を持っている。
だがそれらの性質や属性は対比するものであり、特効性や優位性もどちらか片方にある訳ではなく、互いに持ち合わせているという属性関係にある。
つまり一見して何の属性や特性など持っていなさそうな糸には、彼らの持つ“聖属性“や“光属性“といったものの影響を受け、消滅していたのではないかという結論に至った。
「そうか!この糸は襲撃者達と同じような性質を持っている。だからオイゲン氏の盾で弾かれた事により消滅しているんです!」
「おい!もっと簡潔に言ってくれ。あんなものを見せられて、今は考えている余裕などないのだぞ?」
「属性ですよ。犯人の使役する襲撃者やこの糸は、強力な聖属性や光属性に弱いんです!」
「なるほど。それなら我々の十八番だな!お前達!聞いたな!?」
オイゲンの掛け声で、生き残った教団の護衛の二人も魔力を用いた攻撃で糸を弾いたり、武器に属性を纏わせることで糸を切断してみせる。
「だからか・・・教団関係者を狙ったのは。しかし部隊の中にもそれに気がつく人がいてもおかしくない。それなら何故教団の護衛の人達を優先的に狙わないんだ・・・?」
オイゲンの声を聞いていた別の一行も、糸の性質を理解し実行に移す。
「マティアスさん!」
「あぁ、分かっているともッ!」
司祭という立場にあるマティアスも、戦闘こそ得意ではないものの、ある程度の除霊や浄化といった能力を使うことはできる。既に繋がれていた糸を浄化の力で燃やし、レオンとクリスに繋がれた糸も次々に焼き切っていくマティアス。
ケヴィンの推理により司令室の生き残りは、それぞれ忍び寄る魔の手から身を守る術を身につけていく。唯一戦う術を持たないアンドレイは、近場にいたシン達の一行に合流し助けを求めることで難を逃れていた。
床や天井、壁の向こう側からすり抜けて司令室に生き残った者達目掛けて伸びて来たのだ。だが明確化された目的を持つ物の動きは、司令室に居た勘のいい者達には感知が可能だった。
それは感覚的な気づきだけでなく、肉眼でも直線的に向かって来るものというものは、対象に僅かながらの危機感を与えていたのかもしれない。それらに加えて、シン達はリナムルで獣の感知能力を得ていたが故に、糸の発する無機質な物の目的をという概念を感じ取ることが出来ていたのだ。
「ツバキ!アカリ!」
「ぅおッ!?」
「きゃッ!?」
二人ともシンが助ける前に糸の接近に気が付き、自らその進路上から逃れていた。紅葉はアカリに負担を掛けまいと自ら彼女の元から飛び立ち、彼女に迫る糸には火の粉を浴びせた。
「紅葉!ありがとう。でも他の人達は?」
シン達の周りに迫っていた糸は、彼らの中にある獣の力による勘と紅葉の火の粉によって難を逃れたが、司令室で生き残った者達は、三部隊と一人に分かれている。
シン達の一行を除くと、ブルースらが救ったオイゲンらとケヴィンから成るブルースと教団の一行。そしてもう一つはマティアス司祭と音楽学校の生徒であるレオンとクリスの三人組だ。
残りの一人というのが、紅葉の火の粉を利用し糸を焼き切ることで生存したアンドレイだった。彼が看病をしていた護衛のチャドだが、意識のないまま糸に繋がれ音の衝撃を流されてしまったようで、彼の寝ていたベッドに例の黒い塵が残されていた事から、司令室に残された者達が行き着く考察からも死んだのではなく、記憶の改竄と共に翌日の目覚めを待つ待機状態へと移行してしまったのだろう。
敵対者による第二波を受けたブルースと教団の一行は、それぞれに守りを固めるといった様子で攻撃を凌いでいた。彼らにも謎の糸を焼き切る手段がある。それは司令室に救援へとやって来たブルースの護衛、バルトロメオの能力だった。
当然ながらバルトロメオは自身と主人であるブルースを守る為にその能力を振るう。そしてオイゲンらの方はというと、教団最強の盾と言われる隊長のオイゲンは、自らの能力で生み出した光の盾によって糸を弾いていた。
オイゲンはケヴィンを自らの後ろに守りながら、二人を狙う糸を次々に弾く。それを見ていたケヴィンがとある事に気がつく。それは、オイゲンの光の盾によって弾かれた糸は、その接触した先端から燃えて消滅していたのだ。
「オイゲン氏!糸が燃えていますよ」
「燃える?私の盾にそのような能力はない筈だが?」
その様子は動いているオイゲンには見えていなかった。注視していなければ糸が消滅している事にすら気付けないほど小さな現象。初めに糸を燃やして見せたのは、バルトロメオの腕が発する青い炎。次に紅葉の火の粉というように、一見その関連性から糸は“燃やす“という行為に弱いと思われていたが、オイゲンの盾には自身が口にしていた他に、客観的に見ても引火させるような要素は一切見受けられない。
ということはつまり、糸は熱による引火で消滅しているのではなく、別の要因で消滅しているという事になる。教団の隊員や宮殿に招いた要人とその護衛について資料で調べていたケヴィンには、それぞれの特徴や能力についてざっくりとした知識があった。
まず最初にケヴィンが注目したのは、オイゲンとバルトロメオの能力の共通点についてだった。彼の見た資料にはそれぞれのクラスが記載されていて、オイゲンは聖騎士と記されており、バルトロメオは破戒僧と記されていた。
出来るだけ新しい資料を調達したつもりだが、こういった個人で調達できる資料というものには限度があり信憑性も保証された物ではない。オイゲンに関しては、教団内でクラスチェンジを行った際は申告する必要があるようだが、それも教団に属さない者には確かめようがない。
それでもある程度の指針にはなる。もしケヴィンの調達した資料を信じるのなら、聖騎士も破戒僧もどちらも神や仏に関するものだということだ。属性で言えば聖属性や光属性、能力で言えば神秘的なものを魔力でビジョンとして表現したり実体化させるほか、悪や闇といったものへの特効性や優位性を持っている。
だがそれらの性質や属性は対比するものであり、特効性や優位性もどちらか片方にある訳ではなく、互いに持ち合わせているという属性関係にある。
つまり一見して何の属性や特性など持っていなさそうな糸には、彼らの持つ“聖属性“や“光属性“といったものの影響を受け、消滅していたのではないかという結論に至った。
「そうか!この糸は襲撃者達と同じような性質を持っている。だからオイゲン氏の盾で弾かれた事により消滅しているんです!」
「おい!もっと簡潔に言ってくれ。あんなものを見せられて、今は考えている余裕などないのだぞ?」
「属性ですよ。犯人の使役する襲撃者やこの糸は、強力な聖属性や光属性に弱いんです!」
「なるほど。それなら我々の十八番だな!お前達!聞いたな!?」
オイゲンの掛け声で、生き残った教団の護衛の二人も魔力を用いた攻撃で糸を弾いたり、武器に属性を纏わせることで糸を切断してみせる。
「だからか・・・教団関係者を狙ったのは。しかし部隊の中にもそれに気がつく人がいてもおかしくない。それなら何故教団の護衛の人達を優先的に狙わないんだ・・・?」
オイゲンの声を聞いていた別の一行も、糸の性質を理解し実行に移す。
「マティアスさん!」
「あぁ、分かっているともッ!」
司祭という立場にあるマティアスも、戦闘こそ得意ではないものの、ある程度の除霊や浄化といった能力を使うことはできる。既に繋がれていた糸を浄化の力で燃やし、レオンとクリスに繋がれた糸も次々に焼き切っていくマティアス。
ケヴィンの推理により司令室の生き残りは、それぞれ忍び寄る魔の手から身を守る術を身につけていく。唯一戦う術を持たないアンドレイは、近場にいたシン達の一行に合流し助けを求めることで難を逃れていた。
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