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分岐した未来
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考えれば考えるほど、ジルへの疑いが募っていってしまう。だがこれまで行動を共にしてきて、彼女も謎の人物達追われ、そして襲われていた。仮に楽譜を盗んだのが彼女らだったとしても、事件の犯人とは別である可能性の方が高いだろう。
悪い方へ考えてしまう己の思考を振り払うように頭を振るカルロス。すると資料を見ていたジルが満足したのか、手にしていた書物を棚に戻し博物館での調べ物はこれ以上はないと口にした。
「もういいのか?」
「えぇ、楽譜の事や知りたかった事はあらかた調べたわ。でもカタリナさんの言う通り、血縁に関しては載ってなかった・・・」
「じゃぁやっぱりバッハの血筋ではなかった?」
「分からない・・・。けど、記録には残せない部分というものは、どんな歴史にだってある筈よ。その時の権力者や情勢で記載される情報というものは左右される。要は、その時代に生きている人達によって都合の良い真実として歴史は後世に伝えられていくって事・・・」
ジルはバッハの資料や月光写譜に関する詳細を調べる中で何を思うのか、その表情は暗く曇りはしていたものの、何か重要な目的を見つけたかのように、瞳は何かを見据えていた。
「これからどうする?こんなところに長居は出来ねぇぜ。レオン達に合流するか?」
「いえ、その前に本来向かうはずだったニクラス教会へ行きましょう。そこでもう一つ確かめたい事があるの」
「また調べ物か!?今じゃなきゃだめなのか?」
「今後に大きく関わる事よ。もしかしたら、グーゲル教会で行われていた儀式のようなものを止められるかもしれない・・・」
「・・・?」
グーゲル教会で行われていた儀式。それは街の人々とは姿形を変えた多くの人の姿をした何者か達が集まり、誰かの演奏を聞きながらまるで神に祈るように静かに大人しくしていた。
ジル達もグーゲル教会の様子はその目で見ており、彼らが教会に侵入した時には既にクリスも中に入り込んでいた。彼が何故その場にいたのかは分からないが、マティアス司祭の使いをしている彼であれば教会にいたとしても何ら不思議ではない。
結局彼らはそこにいた謎の人物達に見つかってしまい、クリスはその場で囮になり捕まり、レオン達は教会を脱出するも追手を振り切る事ができず、それぞれの場所で眠りについてしまい、その時の記憶を消失してしまっている。
しかし起点を効かせたジルのおかげで、その場に目印となる物を残したおかげで、後日そこを通りかかった際に失われていた記憶の断片を集めることに成功している。
それ故に、今の彼らがある。教会での怪しげな儀式や宮殿での事件について周りが一切認知していない、或いは知っていて知らないフリをしている事を知ったジル達は、全ての謎の真実があるであろう宮殿へ向かう計画を立てたのだった。
ジルとカルロスはその途中で別行動をとっているという訳だ。だがここで、ジルはレオン達に告げた本来の目的地であるニクラス教会へ向かうと言い出した。
二人は資料の置かれた部屋を後にし施錠すると、鍵を元に戻して教会へと移動する中、その目的についてジルはカルロスに説明していた。
「思えばニクラス教会は、ジークベルト大司教をあまりよく思っていないルーカス司祭が担当している教会よね?」
「あぁ?そうだったのか?俺にはそうは見えなかったが?」
「ルーカス司祭の事を見ていれば分かるわ。彼、大司教の前だといつもと少し様子が違うもの」
「どんな感じにだ?」
「口数が減って、その代わりにまるで見張っているかのように大司教の事をしっかりその目に捉えている・・・っていうのかしら」
「気のせいとかじゃねぇのか?そんくらい、誰でもするだろ普通」
一向にジルの着眼点を認めようとしないカルロスに、痺れを切らしたのか大きな溜息をつくジル。全く他人のこと見ていないと彼を罵り、普段のルーカs司祭の様子を思い出させた後、先程のジルの着眼点についてもう一度丁寧に説明すると、漸く彼も納得した様子で話が進む。
「でもそれが事件とどんな関係があんだよ?」
「同じ教団の関係者ともなれば、容疑者として真っ先に疑われるのが司祭の二人じゃないかしら?そしてクリスが宮殿から解放されている事を考えれば、マティアス司祭の疑いは十中八九解かれたものと考えていいと思う。じゃなきゃクリスも今頃宮殿に隔離されているはずだもの」
「確かに・・・。宮殿から出て来れたのって、クリスだけなんじゃねぇか?」
「そうね。彼が宮殿から解放されたのも疑問だけれど、今となってはそれは私達にとっては好都合だったのかもしれない。いや、彼の話じゃなくて・・・。ジークベルト大司教に何か思うところのある様子のルーカス司祭なら、何か殺害されるような要因を掴んでいたんじゃないかしら」
「なるほど!それでルーカス司祭の担当していたニクラス教会を調べてみりゃ、それが分かると」
「こっちは事件に直接関係ありそうな証拠探しになるわね。後はグーゲル教会のように演奏会が行われてなければいいのだけど・・・」
「まぁそしたら大人しく、レオン達の向かった宮殿へ行けばいいだろ。どの道無茶は出来ねぇんだ、バレねぇようにしないとな!」
前日の記憶、主にブルース一行の記憶にあるニクラス教会では、ジル達が見たグーゲル教会での儀式のようなものは行われていなかった。その代わり、ニクラス教会内部には謎の人物達が見張りのように徘徊しており、演奏する謎の霊体との戦闘が行われた。
だが今の状況は、宮殿側でもアルバの街でも前日のものとは徐々に違う道を辿り出している。本来辿る筈だった未来が、別の選択肢により違う未来へと分岐したのだ。
しかしそれは彼らの行動によるものではなく、今回のアルバの街全体を巻き込んで起こした事件の犯人によって引き起こされた別の分岐。それは犯人自身にもどのような結果をもたらすのかは分からない。
悪い方へ考えてしまう己の思考を振り払うように頭を振るカルロス。すると資料を見ていたジルが満足したのか、手にしていた書物を棚に戻し博物館での調べ物はこれ以上はないと口にした。
「もういいのか?」
「えぇ、楽譜の事や知りたかった事はあらかた調べたわ。でもカタリナさんの言う通り、血縁に関しては載ってなかった・・・」
「じゃぁやっぱりバッハの血筋ではなかった?」
「分からない・・・。けど、記録には残せない部分というものは、どんな歴史にだってある筈よ。その時の権力者や情勢で記載される情報というものは左右される。要は、その時代に生きている人達によって都合の良い真実として歴史は後世に伝えられていくって事・・・」
ジルはバッハの資料や月光写譜に関する詳細を調べる中で何を思うのか、その表情は暗く曇りはしていたものの、何か重要な目的を見つけたかのように、瞳は何かを見据えていた。
「これからどうする?こんなところに長居は出来ねぇぜ。レオン達に合流するか?」
「いえ、その前に本来向かうはずだったニクラス教会へ行きましょう。そこでもう一つ確かめたい事があるの」
「また調べ物か!?今じゃなきゃだめなのか?」
「今後に大きく関わる事よ。もしかしたら、グーゲル教会で行われていた儀式のようなものを止められるかもしれない・・・」
「・・・?」
グーゲル教会で行われていた儀式。それは街の人々とは姿形を変えた多くの人の姿をした何者か達が集まり、誰かの演奏を聞きながらまるで神に祈るように静かに大人しくしていた。
ジル達もグーゲル教会の様子はその目で見ており、彼らが教会に侵入した時には既にクリスも中に入り込んでいた。彼が何故その場にいたのかは分からないが、マティアス司祭の使いをしている彼であれば教会にいたとしても何ら不思議ではない。
結局彼らはそこにいた謎の人物達に見つかってしまい、クリスはその場で囮になり捕まり、レオン達は教会を脱出するも追手を振り切る事ができず、それぞれの場所で眠りについてしまい、その時の記憶を消失してしまっている。
しかし起点を効かせたジルのおかげで、その場に目印となる物を残したおかげで、後日そこを通りかかった際に失われていた記憶の断片を集めることに成功している。
それ故に、今の彼らがある。教会での怪しげな儀式や宮殿での事件について周りが一切認知していない、或いは知っていて知らないフリをしている事を知ったジル達は、全ての謎の真実があるであろう宮殿へ向かう計画を立てたのだった。
ジルとカルロスはその途中で別行動をとっているという訳だ。だがここで、ジルはレオン達に告げた本来の目的地であるニクラス教会へ向かうと言い出した。
二人は資料の置かれた部屋を後にし施錠すると、鍵を元に戻して教会へと移動する中、その目的についてジルはカルロスに説明していた。
「思えばニクラス教会は、ジークベルト大司教をあまりよく思っていないルーカス司祭が担当している教会よね?」
「あぁ?そうだったのか?俺にはそうは見えなかったが?」
「ルーカス司祭の事を見ていれば分かるわ。彼、大司教の前だといつもと少し様子が違うもの」
「どんな感じにだ?」
「口数が減って、その代わりにまるで見張っているかのように大司教の事をしっかりその目に捉えている・・・っていうのかしら」
「気のせいとかじゃねぇのか?そんくらい、誰でもするだろ普通」
一向にジルの着眼点を認めようとしないカルロスに、痺れを切らしたのか大きな溜息をつくジル。全く他人のこと見ていないと彼を罵り、普段のルーカs司祭の様子を思い出させた後、先程のジルの着眼点についてもう一度丁寧に説明すると、漸く彼も納得した様子で話が進む。
「でもそれが事件とどんな関係があんだよ?」
「同じ教団の関係者ともなれば、容疑者として真っ先に疑われるのが司祭の二人じゃないかしら?そしてクリスが宮殿から解放されている事を考えれば、マティアス司祭の疑いは十中八九解かれたものと考えていいと思う。じゃなきゃクリスも今頃宮殿に隔離されているはずだもの」
「確かに・・・。宮殿から出て来れたのって、クリスだけなんじゃねぇか?」
「そうね。彼が宮殿から解放されたのも疑問だけれど、今となってはそれは私達にとっては好都合だったのかもしれない。いや、彼の話じゃなくて・・・。ジークベルト大司教に何か思うところのある様子のルーカス司祭なら、何か殺害されるような要因を掴んでいたんじゃないかしら」
「なるほど!それでルーカス司祭の担当していたニクラス教会を調べてみりゃ、それが分かると」
「こっちは事件に直接関係ありそうな証拠探しになるわね。後はグーゲル教会のように演奏会が行われてなければいいのだけど・・・」
「まぁそしたら大人しく、レオン達の向かった宮殿へ行けばいいだろ。どの道無茶は出来ねぇんだ、バレねぇようにしないとな!」
前日の記憶、主にブルース一行の記憶にあるニクラス教会では、ジル達が見たグーゲル教会での儀式のようなものは行われていなかった。その代わり、ニクラス教会内部には謎の人物達が見張りのように徘徊しており、演奏する謎の霊体との戦闘が行われた。
だが今の状況は、宮殿側でもアルバの街でも前日のものとは徐々に違う道を辿り出している。本来辿る筈だった未来が、別の選択肢により違う未来へと分岐したのだ。
しかしそれは彼らの行動によるものではなく、今回のアルバの街全体を巻き込んで起こした事件の犯人によって引き起こされた別の分岐。それは犯人自身にもどのような結果をもたらすのかは分からない。
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