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宮殿陥落の危機
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クリスを無事に安置所まで送り届けたプラチドは、オイゲンやツバキに頼まれていた用事を済ませる事にした。依然としてクリスの護衛もあるので、外からでも中の様子が分かるように扉は開かれたままにし、周囲の安全を確認するプラチド。
謎の人物らの気配はなく、その姿も見えないことを確認すると、プラチドは安置所からそれほど遠くない物陰に、ツバキから渡されたカメラを隠した。
「よし・・・。ここなら問題ないだろ。そしたら・・・」
カメラを仕掛け終えた後、今度はオイゲンから渡されたタブレットを使い、司令室との連絡を図る。教えられたキーを入力しロックを解除すると、指示にあった通りにアプリを開きコードを入力する。
最後にタブレットに備え付けられたカメラで使用者の認証が行われると、画面は司令室にいるオイゲンを映し出した。
「お!繋がったか?」
「プラチド、無事に辿り着けたようだな。通信状況も良好、問題なさそうだ」
謎の人物らによる襲撃を受けたおかげで、宮殿内に取り付けたれていたカメラや防犯システムは、ところどころ破壊され各所との通信が途絶えてしまっていた。
オイゲンは彼にタブレットを託したことで、安置所方面の通信を復活させようとしていたようだ。プラチドはオイゲンの指示に従いながらタブレットの操作を行い、復旧作業を進めると廊下に取り付けられていたカメラが反応を示す。
「おい、今カメラの方が光ったみたいだが?」
「あぁ、こちらでも機能が回復したのを確認した。ありがとうプラチド、私の依頼は達成された。ツバキ君の件はどうだ?」
「そっちも完了したよ。そんじゃぁ後は、クリスを連れて帰ればいいんだな?」
「その通りだ。だが宮殿内はまだ安全ではない。依然、各所で襲撃を受けている事に変わりはない」
「あぁ?何ヶ所か戦闘が終わったって報告を聞いたと思うが?制圧できてなかったのか?」
「いくら倒してもそこら中から湧いて出てくる・・・。対処法が分かってきたからかパニックにはなっていないが、まだ連絡のつかない部隊もある。彼らのところにも通信を繋げなければな・・・」
安置所周辺の通信網が復活した事により、今後はタブレットからいつでも司令室との連絡が取れるようになった。また問題が見つかり次第報告するようにと伝えると、オイゲンは通信を切った。
忙しそうにするオイゲンを労いながらも、安置所の様子を覗き込むプラチド。中ではクリスがマティアス司祭の遺体に被せられた布を取り、彼の遺体に触れたまま大人しくしている。
突然訪れた別れに何も伝えること、その時に側にいられなかったことを後悔しているのだろう。色々思い出すこともあるだろうと、今は彼の気持ちが落ち着くまでそっとしておこうと判断したプライドは、安置所内には入らず、そのままタブレットを操作し、他の現場がどのような状況にあるのかを確認する。
カメラが復旧している箇所に関しては、画面に映し出される映像を見る限り襲撃者への対応が出来ているようだ。それでもオイゲンの言う通り、現場へは絶えず謎の人物達が押し寄せている。
人数の多い部隊には、別のポイントへの移動を指示しているようで、プラチドが確認している最中でも、新たに通信が復活している箇所が追加されていた。
「順調みてぇだな。ここもいつまで平穏でいられるかねぇ・・・ん?」
彼の視界に入ったのは、機械でできた蜘蛛が廊下の奥の方にあるカメラに近づき火花を散らしているところだった。暫く様子を見ていると、どうやら遠隔でカメラを直しているようだった。
「へぇ~・・・こいつぁ凄い。あの子供がやってるのか?」
ツバキの活躍に関心していると、安置所の方から何やら物音が聞こえてくる。争うような大きな音ではないが、何が起きているのか再び中を覗いてみるとそこでは何と、街中で戦う彼らを苦しめている糸と同じようなものが張り巡らされていた。
「何だッ!?いつの間にッ・・・!」
安置所にいたクリスの身体には幾つかの糸が繋がれており、それが彼から声を発する機能を奪っているようだ。糸は遺体の数体にも繋がれているようだが、プラチドのいるところからではそれが誰の遺体なのかは分からない。
「んんんーーーッ!!」
「クリスッ!待ってろ、今助けッ・・・!?」
声を発した事によりプラチドの存在がバレたのか、壁や床から突然伸びて来た糸が目の前のクリスと同じように彼の身体を貫いていく。痛みはない。だがプラチドもまた喉をやられてしまい声を発することが出来なくなってしまう。
繋がれた糸から伝わる振動で身体の自由を奪われてしまったプラチドは、全身の力が抜けてしまい床に倒れる。手にしていたオイゲンのタブレットが転がり、彼の顔の前に飛んでくる。
タブレットに映されていたのは、直前までプラチドが見ていたカメラの映像。そこはオイゲンやツバキのいる司令室の映像だった。助けを求めようと手を伸ばしたプラチドだったが、その瞬間糸を伝う強い衝撃が身体の内部を強襲し、想像を絶する痛みが全身を駆け巡る。
「ッーーーー!!!」
声にならない絶叫をあげた後、プラチドの視界は徐々に何者をも映さない真っ暗闇の中へと消えていく。その僅かな間に彼が捉えたのは、自身と同じように謎の糸によって襲われるオイゲンやツバキの姿だった。
謎の人物らの気配はなく、その姿も見えないことを確認すると、プラチドは安置所からそれほど遠くない物陰に、ツバキから渡されたカメラを隠した。
「よし・・・。ここなら問題ないだろ。そしたら・・・」
カメラを仕掛け終えた後、今度はオイゲンから渡されたタブレットを使い、司令室との連絡を図る。教えられたキーを入力しロックを解除すると、指示にあった通りにアプリを開きコードを入力する。
最後にタブレットに備え付けられたカメラで使用者の認証が行われると、画面は司令室にいるオイゲンを映し出した。
「お!繋がったか?」
「プラチド、無事に辿り着けたようだな。通信状況も良好、問題なさそうだ」
謎の人物らによる襲撃を受けたおかげで、宮殿内に取り付けたれていたカメラや防犯システムは、ところどころ破壊され各所との通信が途絶えてしまっていた。
オイゲンは彼にタブレットを託したことで、安置所方面の通信を復活させようとしていたようだ。プラチドはオイゲンの指示に従いながらタブレットの操作を行い、復旧作業を進めると廊下に取り付けられていたカメラが反応を示す。
「おい、今カメラの方が光ったみたいだが?」
「あぁ、こちらでも機能が回復したのを確認した。ありがとうプラチド、私の依頼は達成された。ツバキ君の件はどうだ?」
「そっちも完了したよ。そんじゃぁ後は、クリスを連れて帰ればいいんだな?」
「その通りだ。だが宮殿内はまだ安全ではない。依然、各所で襲撃を受けている事に変わりはない」
「あぁ?何ヶ所か戦闘が終わったって報告を聞いたと思うが?制圧できてなかったのか?」
「いくら倒してもそこら中から湧いて出てくる・・・。対処法が分かってきたからかパニックにはなっていないが、まだ連絡のつかない部隊もある。彼らのところにも通信を繋げなければな・・・」
安置所周辺の通信網が復活した事により、今後はタブレットからいつでも司令室との連絡が取れるようになった。また問題が見つかり次第報告するようにと伝えると、オイゲンは通信を切った。
忙しそうにするオイゲンを労いながらも、安置所の様子を覗き込むプラチド。中ではクリスがマティアス司祭の遺体に被せられた布を取り、彼の遺体に触れたまま大人しくしている。
突然訪れた別れに何も伝えること、その時に側にいられなかったことを後悔しているのだろう。色々思い出すこともあるだろうと、今は彼の気持ちが落ち着くまでそっとしておこうと判断したプライドは、安置所内には入らず、そのままタブレットを操作し、他の現場がどのような状況にあるのかを確認する。
カメラが復旧している箇所に関しては、画面に映し出される映像を見る限り襲撃者への対応が出来ているようだ。それでもオイゲンの言う通り、現場へは絶えず謎の人物達が押し寄せている。
人数の多い部隊には、別のポイントへの移動を指示しているようで、プラチドが確認している最中でも、新たに通信が復活している箇所が追加されていた。
「順調みてぇだな。ここもいつまで平穏でいられるかねぇ・・・ん?」
彼の視界に入ったのは、機械でできた蜘蛛が廊下の奥の方にあるカメラに近づき火花を散らしているところだった。暫く様子を見ていると、どうやら遠隔でカメラを直しているようだった。
「へぇ~・・・こいつぁ凄い。あの子供がやってるのか?」
ツバキの活躍に関心していると、安置所の方から何やら物音が聞こえてくる。争うような大きな音ではないが、何が起きているのか再び中を覗いてみるとそこでは何と、街中で戦う彼らを苦しめている糸と同じようなものが張り巡らされていた。
「何だッ!?いつの間にッ・・・!」
安置所にいたクリスの身体には幾つかの糸が繋がれており、それが彼から声を発する機能を奪っているようだ。糸は遺体の数体にも繋がれているようだが、プラチドのいるところからではそれが誰の遺体なのかは分からない。
「んんんーーーッ!!」
「クリスッ!待ってろ、今助けッ・・・!?」
声を発した事によりプラチドの存在がバレたのか、壁や床から突然伸びて来た糸が目の前のクリスと同じように彼の身体を貫いていく。痛みはない。だがプラチドもまた喉をやられてしまい声を発することが出来なくなってしまう。
繋がれた糸から伝わる振動で身体の自由を奪われてしまったプラチドは、全身の力が抜けてしまい床に倒れる。手にしていたオイゲンのタブレットが転がり、彼の顔の前に飛んでくる。
タブレットに映されていたのは、直前までプラチドが見ていたカメラの映像。そこはオイゲンやツバキのいる司令室の映像だった。助けを求めようと手を伸ばしたプラチドだったが、その瞬間糸を伝う強い衝撃が身体の内部を強襲し、想像を絶する痛みが全身を駆け巡る。
「ッーーーー!!!」
声にならない絶叫をあげた後、プラチドの視界は徐々に何者をも映さない真っ暗闇の中へと消えていく。その僅かな間に彼が捉えたのは、自身と同じように謎の糸によって襲われるオイゲンやツバキの姿だった。
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