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神代 コウ

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街の事情を知る者

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 ツクヨ達が組まされた部隊が宮殿を出て街へ向かうと、すぐに宮殿へ向かってくる人影があった。護衛達と共に戦闘態勢に入るツクヨ。しかし浮かび上がるシルエットの向こうから現れたのは、音楽学校の生徒でクリスが心配していた人物の内の一人であるレオンだったのだ。

 「えっ・・・人!?」

 「誰だッ!?」

 「俺ッ・・・いや、私はアルバの音楽学校のレオンです」

 教団の護衛達はその名を聞いて、まず最初に先程宮殿へ駆け込んで来たクリスの姿を思い浮かべた。一行がその名前を口にすると、レオンはクリスが無事であるのかと心配した様子で問う。

 「クリスッ!クリスは無事なんですか!?アイツは宮殿に辿り着いたんですか!?」

 「落ち着け、大丈夫だ。何があったのかは分からないが、彼は今宮殿で匿われている。だが、宮殿の方も襲撃を受けていて安全とは言い切れない状況だが・・・」

 「襲撃・・・?」

 レオンは意外そうな反応をしていた。宮殿には現在、アルバの戦力が集中しており、尚且つ各地から招待した音楽家達の護衛も付いているはず。レオン達もグーゲル教会の一件で謎の人物達が襲い掛かってくる場面に遭遇している。

 しかしながら彼らは、襲われるというよりも睡魔によって意識を失ってしまうという現象に見舞われ、翌日になるとその時の記憶も失ってしまうという宮殿側とは違った現象を体験していた。

 一旦安全な場所へと移動し、護衛隊は街の様子をレオンに問う。宮殿側は外の様子を一切知らない。未だ宮殿の外へ出ていった者達や調査へ向かった部隊は戻ってきておらず、カメラなどの電子機器も機能していなかった。

 唯一、ケヴィンがシンの持っているカメラに搭載されていた信号を受信するという例外以外は。

 だがそんな街の事情を知るであろうレオンの話を聞こうとするも、彼もクリスと同じように仲間を心配するような発言と素振りが目立っていた。彼曰く、自分とクリスの他にも街には事情を知る生徒が後二人いるという。

 一人は音楽学校の首席であるジル。そしてもう一人は、彼女とレオンのように目立つ成績ではないものの、優秀な音楽家の家系に生まれた隠れた秀才であるカルロスだった。

 そしてそんなレオンが心配していたのは、二クラス教会へ向かったというジルの事だった。気丈に振る舞う彼女は、グーゲル教会での異変に呼応するように聞こえ始めた演奏の真相を確かめに一人で向かっていったのだという。

 プライドの高い彼女を傷つけないようにと、その後を追うようにカルロスが向かい、そこで彼らは二手に分かれてしまったのだそうだ。グーゲル教会に向かったことで昨日の出来事をハッキリと思い出したレオンとクリスだったが、教会で襲われた時と同様に、その日もまた謎の人物達の襲撃を受ける。

 急ぎ逃げ出すも、街中には既に謎の人物達が彷徨っており、ジルとカルロスに合流しようと思っていた二人は道を断たれてしまう。そこで一か八か、宮殿から出ることのできたクリスなら話を聞いてもらえるのではと助けを求める。

 だが、宮殿への道にも当然のように謎の人物達が蔓延っており、戦闘が行ない彼らにそれを退ける術はなかった。レオンは自分が囮になることを決意し、謎の人物達を音で挑発すると、クリスが宮殿へ向かう道を切り開き、今に至るのだと語った。

 「お願いします!もし街にいる連中が危険なのだとしたら、二クラス教会へ向かったジルとカルロスにもこの事を伝えないといけません。でも私一人の力ではどうにも出来ません・・・」

 レオンは唯一面識のあったツクヨの方を見る。彼と目があったツクヨは、仲間を心配する彼の気持ちを無碍には出来ないと、その申し出を自分が引き受けると宣言。

 彼が行くのならとアカリもそれに追従することに。レオンは自分が案内すると申し出たが、彼は貴重な外の事情を知る人物。何よりツクヨも、戦えない者を二人も守るのは不可能だということで、彼はそのまま宮殿へ保護される事となった。

 それがツクヨとアカリが、ニクラス教会にいた経緯になる。

 「それならその音楽学校の生徒とやらはどうした?我々がここに来た時には誰も見かけなかったぞ?それとももう保護されたのか?」

 「いや、それがまだ・・・。彼女らを探して教会へ来たつもりだったのですが、結局見つけることが出来ないまま教会に着いてしまう、中を覗いたらこんな事に・・・」

 ジルとカルロスのことを頼まれた二人だったが、二クラス教会までの道中二人の影を確認することは出来なかった。同じくブルースら一行も、街で他の誰かを目撃することはなかった事から、二人に何かあったのかと考えるのが妥当だろう。

 「お前達はどこまで奴らの事を把握している?」

 「音を用いた攻撃をしてくる・・・という事だけは聞いています」

 「聞いている?まだお前達は攻撃を受けていないということか?」

 「えぇ、それらしき攻撃は・・・。そういえば貴方は唯一犯人の魔の手に掛かりながらも命を落とさなかった。どのような攻撃なのかご存知ですか?」

 前回二クラス教会にて、謎の人物達を束ねるバッハの霊体の攻撃を受けた時の事を思い出すブルース。その時、相手の近くにいたのはブルースとゾルターンだったが、攻撃されたのはゾルターン一人だけだった。

 この事からも、相手は数が増えれば増えるだけ不利になるであろうことが予想される。少しでも手駒が増えた方が勝率が上がると考えたブルースは、ツクヨとアカリに謎の人物達の親玉である霊体の攻撃と、予想されるその状態について説明した。
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