1,378 / 1,646
街の事情を知る者
しおりを挟む
ツクヨ達が組まされた部隊が宮殿を出て街へ向かうと、すぐに宮殿へ向かってくる人影があった。護衛達と共に戦闘態勢に入るツクヨ。しかし浮かび上がるシルエットの向こうから現れたのは、音楽学校の生徒でクリスが心配していた人物の内の一人であるレオンだったのだ。
「えっ・・・人!?」
「誰だッ!?」
「俺ッ・・・いや、私はアルバの音楽学校のレオンです」
教団の護衛達はその名を聞いて、まず最初に先程宮殿へ駆け込んで来たクリスの姿を思い浮かべた。一行がその名前を口にすると、レオンはクリスが無事であるのかと心配した様子で問う。
「クリスッ!クリスは無事なんですか!?アイツは宮殿に辿り着いたんですか!?」
「落ち着け、大丈夫だ。何があったのかは分からないが、彼は今宮殿で匿われている。だが、宮殿の方も襲撃を受けていて安全とは言い切れない状況だが・・・」
「襲撃・・・?」
レオンは意外そうな反応をしていた。宮殿には現在、アルバの戦力が集中しており、尚且つ各地から招待した音楽家達の護衛も付いているはず。レオン達もグーゲル教会の一件で謎の人物達が襲い掛かってくる場面に遭遇している。
しかしながら彼らは、襲われるというよりも睡魔によって意識を失ってしまうという現象に見舞われ、翌日になるとその時の記憶も失ってしまうという宮殿側とは違った現象を体験していた。
一旦安全な場所へと移動し、護衛隊は街の様子をレオンに問う。宮殿側は外の様子を一切知らない。未だ宮殿の外へ出ていった者達や調査へ向かった部隊は戻ってきておらず、カメラなどの電子機器も機能していなかった。
唯一、ケヴィンがシンの持っているカメラに搭載されていた信号を受信するという例外以外は。
だがそんな街の事情を知るであろうレオンの話を聞こうとするも、彼もクリスと同じように仲間を心配するような発言と素振りが目立っていた。彼曰く、自分とクリスの他にも街には事情を知る生徒が後二人いるという。
一人は音楽学校の首席であるジル。そしてもう一人は、彼女とレオンのように目立つ成績ではないものの、優秀な音楽家の家系に生まれた隠れた秀才であるカルロスだった。
そしてそんなレオンが心配していたのは、二クラス教会へ向かったというジルの事だった。気丈に振る舞う彼女は、グーゲル教会での異変に呼応するように聞こえ始めた演奏の真相を確かめに一人で向かっていったのだという。
プライドの高い彼女を傷つけないようにと、その後を追うようにカルロスが向かい、そこで彼らは二手に分かれてしまったのだそうだ。グーゲル教会に向かったことで昨日の出来事をハッキリと思い出したレオンとクリスだったが、教会で襲われた時と同様に、その日もまた謎の人物達の襲撃を受ける。
急ぎ逃げ出すも、街中には既に謎の人物達が彷徨っており、ジルとカルロスに合流しようと思っていた二人は道を断たれてしまう。そこで一か八か、宮殿から出ることのできたクリスなら話を聞いてもらえるのではと助けを求める。
だが、宮殿への道にも当然のように謎の人物達が蔓延っており、戦闘が行ない彼らにそれを退ける術はなかった。レオンは自分が囮になることを決意し、謎の人物達を音で挑発すると、クリスが宮殿へ向かう道を切り開き、今に至るのだと語った。
「お願いします!もし街にいる連中が危険なのだとしたら、二クラス教会へ向かったジルとカルロスにもこの事を伝えないといけません。でも私一人の力ではどうにも出来ません・・・」
レオンは唯一面識のあったツクヨの方を見る。彼と目があったツクヨは、仲間を心配する彼の気持ちを無碍には出来ないと、その申し出を自分が引き受けると宣言。
彼が行くのならとアカリもそれに追従することに。レオンは自分が案内すると申し出たが、彼は貴重な外の事情を知る人物。何よりツクヨも、戦えない者を二人も守るのは不可能だということで、彼はそのまま宮殿へ保護される事となった。
それがツクヨとアカリが、ニクラス教会にいた経緯になる。
「それならその音楽学校の生徒とやらはどうした?我々がここに来た時には誰も見かけなかったぞ?それとももう保護されたのか?」
「いや、それがまだ・・・。彼女らを探して教会へ来たつもりだったのですが、結局見つけることが出来ないまま教会に着いてしまう、中を覗いたらこんな事に・・・」
ジルとカルロスのことを頼まれた二人だったが、二クラス教会までの道中二人の影を確認することは出来なかった。同じくブルースら一行も、街で他の誰かを目撃することはなかった事から、二人に何かあったのかと考えるのが妥当だろう。
「お前達はどこまで奴らの事を把握している?」
「音を用いた攻撃をしてくる・・・という事だけは聞いています」
「聞いている?まだお前達は攻撃を受けていないということか?」
「えぇ、それらしき攻撃は・・・。そういえば貴方は唯一犯人の魔の手に掛かりながらも命を落とさなかった。どのような攻撃なのかご存知ですか?」
前回二クラス教会にて、謎の人物達を束ねるバッハの霊体の攻撃を受けた時の事を思い出すブルース。その時、相手の近くにいたのはブルースとゾルターンだったが、攻撃されたのはゾルターン一人だけだった。
この事からも、相手は数が増えれば増えるだけ不利になるであろうことが予想される。少しでも手駒が増えた方が勝率が上がると考えたブルースは、ツクヨとアカリに謎の人物達の親玉である霊体の攻撃と、予想されるその状態について説明した。
「えっ・・・人!?」
「誰だッ!?」
「俺ッ・・・いや、私はアルバの音楽学校のレオンです」
教団の護衛達はその名を聞いて、まず最初に先程宮殿へ駆け込んで来たクリスの姿を思い浮かべた。一行がその名前を口にすると、レオンはクリスが無事であるのかと心配した様子で問う。
「クリスッ!クリスは無事なんですか!?アイツは宮殿に辿り着いたんですか!?」
「落ち着け、大丈夫だ。何があったのかは分からないが、彼は今宮殿で匿われている。だが、宮殿の方も襲撃を受けていて安全とは言い切れない状況だが・・・」
「襲撃・・・?」
レオンは意外そうな反応をしていた。宮殿には現在、アルバの戦力が集中しており、尚且つ各地から招待した音楽家達の護衛も付いているはず。レオン達もグーゲル教会の一件で謎の人物達が襲い掛かってくる場面に遭遇している。
しかしながら彼らは、襲われるというよりも睡魔によって意識を失ってしまうという現象に見舞われ、翌日になるとその時の記憶も失ってしまうという宮殿側とは違った現象を体験していた。
一旦安全な場所へと移動し、護衛隊は街の様子をレオンに問う。宮殿側は外の様子を一切知らない。未だ宮殿の外へ出ていった者達や調査へ向かった部隊は戻ってきておらず、カメラなどの電子機器も機能していなかった。
唯一、ケヴィンがシンの持っているカメラに搭載されていた信号を受信するという例外以外は。
だがそんな街の事情を知るであろうレオンの話を聞こうとするも、彼もクリスと同じように仲間を心配するような発言と素振りが目立っていた。彼曰く、自分とクリスの他にも街には事情を知る生徒が後二人いるという。
一人は音楽学校の首席であるジル。そしてもう一人は、彼女とレオンのように目立つ成績ではないものの、優秀な音楽家の家系に生まれた隠れた秀才であるカルロスだった。
そしてそんなレオンが心配していたのは、二クラス教会へ向かったというジルの事だった。気丈に振る舞う彼女は、グーゲル教会での異変に呼応するように聞こえ始めた演奏の真相を確かめに一人で向かっていったのだという。
プライドの高い彼女を傷つけないようにと、その後を追うようにカルロスが向かい、そこで彼らは二手に分かれてしまったのだそうだ。グーゲル教会に向かったことで昨日の出来事をハッキリと思い出したレオンとクリスだったが、教会で襲われた時と同様に、その日もまた謎の人物達の襲撃を受ける。
急ぎ逃げ出すも、街中には既に謎の人物達が彷徨っており、ジルとカルロスに合流しようと思っていた二人は道を断たれてしまう。そこで一か八か、宮殿から出ることのできたクリスなら話を聞いてもらえるのではと助けを求める。
だが、宮殿への道にも当然のように謎の人物達が蔓延っており、戦闘が行ない彼らにそれを退ける術はなかった。レオンは自分が囮になることを決意し、謎の人物達を音で挑発すると、クリスが宮殿へ向かう道を切り開き、今に至るのだと語った。
「お願いします!もし街にいる連中が危険なのだとしたら、二クラス教会へ向かったジルとカルロスにもこの事を伝えないといけません。でも私一人の力ではどうにも出来ません・・・」
レオンは唯一面識のあったツクヨの方を見る。彼と目があったツクヨは、仲間を心配する彼の気持ちを無碍には出来ないと、その申し出を自分が引き受けると宣言。
彼が行くのならとアカリもそれに追従することに。レオンは自分が案内すると申し出たが、彼は貴重な外の事情を知る人物。何よりツクヨも、戦えない者を二人も守るのは不可能だということで、彼はそのまま宮殿へ保護される事となった。
それがツクヨとアカリが、ニクラス教会にいた経緯になる。
「それならその音楽学校の生徒とやらはどうした?我々がここに来た時には誰も見かけなかったぞ?それとももう保護されたのか?」
「いや、それがまだ・・・。彼女らを探して教会へ来たつもりだったのですが、結局見つけることが出来ないまま教会に着いてしまう、中を覗いたらこんな事に・・・」
ジルとカルロスのことを頼まれた二人だったが、二クラス教会までの道中二人の影を確認することは出来なかった。同じくブルースら一行も、街で他の誰かを目撃することはなかった事から、二人に何かあったのかと考えるのが妥当だろう。
「お前達はどこまで奴らの事を把握している?」
「音を用いた攻撃をしてくる・・・という事だけは聞いています」
「聞いている?まだお前達は攻撃を受けていないということか?」
「えぇ、それらしき攻撃は・・・。そういえば貴方は唯一犯人の魔の手に掛かりながらも命を落とさなかった。どのような攻撃なのかご存知ですか?」
前回二クラス教会にて、謎の人物達を束ねるバッハの霊体の攻撃を受けた時の事を思い出すブルース。その時、相手の近くにいたのはブルースとゾルターンだったが、攻撃されたのはゾルターン一人だけだった。
この事からも、相手は数が増えれば増えるだけ不利になるであろうことが予想される。少しでも手駒が増えた方が勝率が上がると考えたブルースは、ツクヨとアカリに謎の人物達の親玉である霊体の攻撃と、予想されるその状態について説明した。
0
お気に入りに追加
302
あなたにおすすめの小説

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
スキル盗んで何が悪い!
大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物
"スキル"それは人が持つには限られた能力
"スキル"それは一人の青年の運命を変えた力
いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。
本人はこれからも続く生活だと思っていた。
そう、あのゲームを起動させるまでは……
大人気商品ワールドランド、略してWL。
ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。
しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……
女の子の正体は!? このゲームの目的は!?
これからどうするの主人公!
【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!

異世界無宿
ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。
アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。
映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。
訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。
一目惚れで購入した車の納車日。
エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた…
神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。
アクション有り!
ロマンス控えめ!
ご都合主義展開あり!
ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。
不定期投稿になります。
投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる