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演奏の謎と曲調の変化
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その人物が奏始めた演奏は、オルガンの演奏にアレンジを加えるようなものになっており、その演奏が加わることでこれまでの心地のいいリラックスできるような音楽だったのが、身体が縦揺れするようなアップテンポの曲調へと変化する。
そして変化が訪れたのは演奏だけではなかった。アップテンポな曲調へと変わったことで、シンやニノンの身体も高揚し力が漲ってきたのだ。曲に気を取られ自身の身に起きる変化に気がつくのが遅れたが、二人ともこれまでの消耗が嘘のように吹き飛び、身体が軽くなったかのような感覚に陥る。
「なんだ・・・さっきまでの痛みが・・・」
「身体が軽い・・・?この曲の影響なのか?」
変化に戸惑う二人を尻目に、演奏を始めた浮遊する謎の人物の側から、次々と街で見たのと同じ謎の人物達が出現する。静かに増え始めた彼らは、一斉にシン達目がけて襲いかかる。
反撃に出るニノンだったが、一瞬にしてシンの前から姿を消したと同時に数体の謎の人物らも何処かへと消えてしまう。そして視線の先で教会の壁に土煙を上げる謎の穴が、一瞬の轟音と共に開けられていた。
「ッ・・・?」
一体何が起きたのか分からないと言った様子のシンに、他の謎の人物達がお構いなしに襲い掛かる。直ぐに起き上がろうと、飛び上がるように足に力を込めるシン。
すると、彼はいつの間にか宙を浮いており、それまでシンがいた場所に手を伸ばす謎の人物達を見下ろしていたのだ。
「なッ・・・何が起こっている!?」
見に起きる変化を理解する間も無く、戦闘を強いられるシンは落下すると同時に短剣を両手に構えると、着地の瞬間に膝を折り畳み体勢を低くしたままの勢いで、一体の謎の人物へアッパーパンチのように刃を振るう。
シン放った一撃は自身でも想定していなかった程の凄まじい勢いの攻撃となり、本来物理的な攻撃が通用しないはずの謎の人物の頭部を真っ二つに切り裂き、塵へと変えた。
だが、思いもしなかった強烈な一撃を放ったことで、振るった腕の勢いに肩を痛めてしまう。
「うッ・・・!なんで・・・そんなに力を込めた筈は・・・」
自身の身に起きる異変にステータスを確認するシン。すると、自身にかけられている付与効果の欄に向上効果が複数かけられていたのだ。
「バフ効果?だがいつこんな物がッ・・・!?」
少し前の記憶を思い返してみると、環境の変化として思い当たるものが一つあった。それはシンやニノンが聞いていた音楽の変化だった。しかしそれは、謎の人物達の親玉のような者が演奏しているもの。
バフの効果を付与するのであれば、仲間である謎の人物達に掛けるのが普通なのではないか。演奏する謎の人物の不可解な行動に困惑していると、背後からシンに掴みかかろうと謎の人物が忍び寄る。
床に映る影でその存在に気がついたシンは、咄嗟に前へ飛び込むように転がると、そのまま教会の壁にまで移動してしまい激突する。衝撃で閉じていた目を開くと、そこには教会から一瞬で何処かへと消えてしまっていたニノンが戻って来ていた。
「シン!無事か!?」
「あっ・・・あぁ、何とか・・・。けど、身体が変なんだ。妙なバフが掛けられている」
「私も同じだ。過剰に力を放出するようになっているようだ。いつも以上に力を抜いて行動しろ。拳を放つのにも小動物に触れるように、一歩前へ踏み込むにも歩くように緩やかに・・・。慣れるまでにはコツがいるが、いつも通りに身体を動かしては、その勢いに振り回され身体を壊すことになる」
武術に長けているニノンは、既に自分の身体に起きている異変に対応していた。言葉で言うのは簡単だが、不慣れな者には極めて厄介な状態だろう。
それこそ脳の認識と身体の感覚に差が生まれ、左右が突然逆転してしまうかのような感覚がシンの身体を襲っていた。ニノンが教会内に沸いた謎の人物達を抑えている間に、単純な動きから確かめるように手足を動かしていくシン。
軽く拳を突き出したり、蹴りを放つ内にどの程度の力で攻撃すれば程よくなるのかの認識と感覚を知り合わせていく。
「よし!これで多少は真面に動けそうだ。ニノン、待たせたな。俺も今から・・・!?」
異常なバフ効果を身体に馴染ませている僅かな間に、ニノンは床に倒れ苦しそうに悶えていた。直ぐに彼女の元へ駆けつけると、群がる謎の人物達へ影を放ち動きを止める。
「どうした!?アンタともあろう者が一体ッ・・・」
「あっ・・・ぐッ!あ・・・アイツ・・・!」
「アイツ!?」
彼女が視線を送る先には、オルガンの演奏に合わせヴァイオリンを奏でる大型の浮遊する謎の人物の姿があった。しかしアレは演奏するばかりで、こちらに奇妙なバフを付与する事しかしてきていないように見える。一体ニノンは何をシンに伝えようとしているのか。
ふと、彼女が苦しそうに首元に当てている手を見てみると、そこには注視しなければ見えない細い“弦“のようなものが揺らめいていた。それを目で辿っていくと、その弦の先は演奏する謎の人物の持つヴァイオリンに繋がっていた。
そして曲のアクセントと共に、演奏する謎の人物のヴァイオリンが一瞬光ると、弓を一気に引いて曲調に変化を齎す。それと同時に、弦で繋がれたニノンが声を上げて急激に苦しみ始めたのだ。
そして変化が訪れたのは演奏だけではなかった。アップテンポな曲調へと変わったことで、シンやニノンの身体も高揚し力が漲ってきたのだ。曲に気を取られ自身の身に起きる変化に気がつくのが遅れたが、二人ともこれまでの消耗が嘘のように吹き飛び、身体が軽くなったかのような感覚に陥る。
「なんだ・・・さっきまでの痛みが・・・」
「身体が軽い・・・?この曲の影響なのか?」
変化に戸惑う二人を尻目に、演奏を始めた浮遊する謎の人物の側から、次々と街で見たのと同じ謎の人物達が出現する。静かに増え始めた彼らは、一斉にシン達目がけて襲いかかる。
反撃に出るニノンだったが、一瞬にしてシンの前から姿を消したと同時に数体の謎の人物らも何処かへと消えてしまう。そして視線の先で教会の壁に土煙を上げる謎の穴が、一瞬の轟音と共に開けられていた。
「ッ・・・?」
一体何が起きたのか分からないと言った様子のシンに、他の謎の人物達がお構いなしに襲い掛かる。直ぐに起き上がろうと、飛び上がるように足に力を込めるシン。
すると、彼はいつの間にか宙を浮いており、それまでシンがいた場所に手を伸ばす謎の人物達を見下ろしていたのだ。
「なッ・・・何が起こっている!?」
見に起きる変化を理解する間も無く、戦闘を強いられるシンは落下すると同時に短剣を両手に構えると、着地の瞬間に膝を折り畳み体勢を低くしたままの勢いで、一体の謎の人物へアッパーパンチのように刃を振るう。
シン放った一撃は自身でも想定していなかった程の凄まじい勢いの攻撃となり、本来物理的な攻撃が通用しないはずの謎の人物の頭部を真っ二つに切り裂き、塵へと変えた。
だが、思いもしなかった強烈な一撃を放ったことで、振るった腕の勢いに肩を痛めてしまう。
「うッ・・・!なんで・・・そんなに力を込めた筈は・・・」
自身の身に起きる異変にステータスを確認するシン。すると、自身にかけられている付与効果の欄に向上効果が複数かけられていたのだ。
「バフ効果?だがいつこんな物がッ・・・!?」
少し前の記憶を思い返してみると、環境の変化として思い当たるものが一つあった。それはシンやニノンが聞いていた音楽の変化だった。しかしそれは、謎の人物達の親玉のような者が演奏しているもの。
バフの効果を付与するのであれば、仲間である謎の人物達に掛けるのが普通なのではないか。演奏する謎の人物の不可解な行動に困惑していると、背後からシンに掴みかかろうと謎の人物が忍び寄る。
床に映る影でその存在に気がついたシンは、咄嗟に前へ飛び込むように転がると、そのまま教会の壁にまで移動してしまい激突する。衝撃で閉じていた目を開くと、そこには教会から一瞬で何処かへと消えてしまっていたニノンが戻って来ていた。
「シン!無事か!?」
「あっ・・・あぁ、何とか・・・。けど、身体が変なんだ。妙なバフが掛けられている」
「私も同じだ。過剰に力を放出するようになっているようだ。いつも以上に力を抜いて行動しろ。拳を放つのにも小動物に触れるように、一歩前へ踏み込むにも歩くように緩やかに・・・。慣れるまでにはコツがいるが、いつも通りに身体を動かしては、その勢いに振り回され身体を壊すことになる」
武術に長けているニノンは、既に自分の身体に起きている異変に対応していた。言葉で言うのは簡単だが、不慣れな者には極めて厄介な状態だろう。
それこそ脳の認識と身体の感覚に差が生まれ、左右が突然逆転してしまうかのような感覚がシンの身体を襲っていた。ニノンが教会内に沸いた謎の人物達を抑えている間に、単純な動きから確かめるように手足を動かしていくシン。
軽く拳を突き出したり、蹴りを放つ内にどの程度の力で攻撃すれば程よくなるのかの認識と感覚を知り合わせていく。
「よし!これで多少は真面に動けそうだ。ニノン、待たせたな。俺も今から・・・!?」
異常なバフ効果を身体に馴染ませている僅かな間に、ニノンは床に倒れ苦しそうに悶えていた。直ぐに彼女の元へ駆けつけると、群がる謎の人物達へ影を放ち動きを止める。
「どうした!?アンタともあろう者が一体ッ・・・」
「あっ・・・ぐッ!あ・・・アイツ・・・!」
「アイツ!?」
彼女が視線を送る先には、オルガンの演奏に合わせヴァイオリンを奏でる大型の浮遊する謎の人物の姿があった。しかしアレは演奏するばかりで、こちらに奇妙なバフを付与する事しかしてきていないように見える。一体ニノンは何をシンに伝えようとしているのか。
ふと、彼女が苦しそうに首元に当てている手を見てみると、そこには注視しなければ見えない細い“弦“のようなものが揺らめいていた。それを目で辿っていくと、その弦の先は演奏する謎の人物の持つヴァイオリンに繋がっていた。
そして曲のアクセントと共に、演奏する謎の人物のヴァイオリンが一瞬光ると、弓を一気に引いて曲調に変化を齎す。それと同時に、弦で繋がれたニノンが声を上げて急激に苦しみ始めたのだ。
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