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仮死状態
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それは仮死状態にする薬の効果だとケヴィンは説明するのだが、それにしては仮死状態である時間が長過ぎると、オイゲンがマティアスの遺体を調べて分かったことを語る。
「兎に角、一度マティアスの遺体を見てみろ」
「えぇ・・・えぇ、勿論!」
二人は急ぎ遺体留置所となっている宮殿の一室へと向かった。そこには第一の事件で殺害されたジークベルト大司教や、第二の事件で亡くなってしまったルーカス司祭の遺体が保管されていた。
一緒に部屋の中央に並べられていた一つのベットに、マティアス司祭の札が吊るされている。覆い株せられた布を剥がすと、青白く変色するマティアス司祭の遺体が姿を表す。
仮死状態とはいえ、一見してはそれが仮死状態であることを見抜く事はできない。勿論、生存を確認するスキルや機材を用いても死亡している判定になるため、実際に息を吹き返すかは本人次第になってしまう部分も大きい。
マティアスは生きることを諦めてしまったのだろうか。それなら、そうさせた要因とはなんなのか。何にせよ、目を覚さないマティアスの状態を見て驚きを隠せないケヴィン。
もしこのまま彼が目を覚さなければ、ケヴィンが彼を殺害してしまった直接的な要因を作った犯人になってしまう。そしてその話を聞いていたオイゲンが、何よりもその証人になっている。
「マティアス氏・・・。しかし、そちら側で隔離させる直前まで一緒にいたからこそ分からない。彼が死を選ぶとは到底思えないのですが・・・」
「あぁ、それに関しては私も同意だが、このままではお前が犯人として全ての罪を背負わされる事になるやもしれんぞ?」
「そんなっ・・・。マティアス司祭の件はともかく、他のは動機や手段が分らないですし、アリバイもありますよ?」
「だが周りはそうは思わないだろうな。お前を犯人に仕立て上げ、騒動を収めようとする方向で動き出す可能性が高い。そうなれば私でも止められないぞ」
無論、それはケヴィンも分かっていた。だが、犯人の狙いが教団関係者であり、次のターゲットとして確定的だったマティアスを救うにはこの方法しかなかったのだ。
「それでどうなんだ?犯人に繋がる手掛かりは見つかったのか?それと犯人らしい動きは何かあったか?」
「生憎、貴方達の言いつけに従っていたため、対して調査できませんでしたよ。けど、宮殿内には変わった様子はなさそうでした」
「何?妙な動きをしている奴もか?」
犯人が宮殿内にいれば、何かしらのアクションを起こしそうなもの。自身の殺害の目的がバレ、先に狙おうとしていたターゲットが殺害されれば、何者かがこちらの意図を読み取り邪魔しに来ていると考えるのが普通だろう。
ましてや殺人などという事を企てていれば、そうそう冷静でいられる筈もない。それこそ日常的に人の命を奪っているような、連続殺人鬼でもない限り犯行がバレる事に対し神経質になっているに違いないとケヴィンは考えていたからだ。
しかし、マティアスの死の報告が宮殿内に広がっても、少なくともシン達やケヴィンの前では妙な事をしている人物などは現れず、そのような報告も届いてはいなかった。
「もしかしたら、犯人は宮殿にいない可能性もあるのではないでしょうか・・・」
「それならどうやって警備隊や護衛だらけの宮殿内にいるターゲットを殺せる?少なくともスキルの発動や魔法を検知する能力を持ってる人間が、私の知る限り何人も宮殿内にいるんだぞ?外部からスキルや魔法で殺すにしても、直接手を下すにしても、宮殿内の守りはかなり厳重になっている。それを誰にも気付かれずに・・・?」
言葉にすればするほど、とても宮殿内で起きている事件が不可解であることを再確認するようで、その手段や人物像が見えてこない。
「兎に角、一度マティアスの遺体を見てみろ」
「えぇ・・・えぇ、勿論!」
二人は急ぎ遺体留置所となっている宮殿の一室へと向かった。そこには第一の事件で殺害されたジークベルト大司教や、第二の事件で亡くなってしまったルーカス司祭の遺体が保管されていた。
一緒に部屋の中央に並べられていた一つのベットに、マティアス司祭の札が吊るされている。覆い株せられた布を剥がすと、青白く変色するマティアス司祭の遺体が姿を表す。
仮死状態とはいえ、一見してはそれが仮死状態であることを見抜く事はできない。勿論、生存を確認するスキルや機材を用いても死亡している判定になるため、実際に息を吹き返すかは本人次第になってしまう部分も大きい。
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もしこのまま彼が目を覚さなければ、ケヴィンが彼を殺害してしまった直接的な要因を作った犯人になってしまう。そしてその話を聞いていたオイゲンが、何よりもその証人になっている。
「マティアス氏・・・。しかし、そちら側で隔離させる直前まで一緒にいたからこそ分からない。彼が死を選ぶとは到底思えないのですが・・・」
「あぁ、それに関しては私も同意だが、このままではお前が犯人として全ての罪を背負わされる事になるやもしれんぞ?」
「そんなっ・・・。マティアス司祭の件はともかく、他のは動機や手段が分らないですし、アリバイもありますよ?」
「だが周りはそうは思わないだろうな。お前を犯人に仕立て上げ、騒動を収めようとする方向で動き出す可能性が高い。そうなれば私でも止められないぞ」
無論、それはケヴィンも分かっていた。だが、犯人の狙いが教団関係者であり、次のターゲットとして確定的だったマティアスを救うにはこの方法しかなかったのだ。
「それでどうなんだ?犯人に繋がる手掛かりは見つかったのか?それと犯人らしい動きは何かあったか?」
「生憎、貴方達の言いつけに従っていたため、対して調査できませんでしたよ。けど、宮殿内には変わった様子はなさそうでした」
「何?妙な動きをしている奴もか?」
犯人が宮殿内にいれば、何かしらのアクションを起こしそうなもの。自身の殺害の目的がバレ、先に狙おうとしていたターゲットが殺害されれば、何者かがこちらの意図を読み取り邪魔しに来ていると考えるのが普通だろう。
ましてや殺人などという事を企てていれば、そうそう冷静でいられる筈もない。それこそ日常的に人の命を奪っているような、連続殺人鬼でもない限り犯行がバレる事に対し神経質になっているに違いないとケヴィンは考えていたからだ。
しかし、マティアスの死の報告が宮殿内に広がっても、少なくともシン達やケヴィンの前では妙な事をしている人物などは現れず、そのような報告も届いてはいなかった。
「もしかしたら、犯人は宮殿にいない可能性もあるのではないでしょうか・・・」
「それならどうやって警備隊や護衛だらけの宮殿内にいるターゲットを殺せる?少なくともスキルの発動や魔法を検知する能力を持ってる人間が、私の知る限り何人も宮殿内にいるんだぞ?外部からスキルや魔法で殺すにしても、直接手を下すにしても、宮殿内の守りはかなり厳重になっている。それを誰にも気付かれずに・・・?」
言葉にすればするほど、とても宮殿内で起きている事件が不可解であることを再確認するようで、その手段や人物像が見えてこない。
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