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不気味な客と教会の騒動
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演奏が始まって直ぐには、眠気はやって来ないようだ。三人とも顔を見合わせながらお互いの様子を確認すると、どこからか教会の奥の方にあるオルガンの方へ近づく道はないかと探る。
だが教会内は混雑しているという訳ではなく、人が多く集まっているものの皆席についている者ばかり。両側の通路が空いており、そこからなら柱の陰に隠れつつ前へ進むことができそうだった。
「レオン、ジル。見てくれ」
「あぁ、横の通路から行けそうだな」
「慌てないで、慎重に・・・。柱の陰を使っていきましょう」
三人はゆっくりと席を立ち、身を屈めながら最寄りの柱の陰に身を潜める。前方にはいくつか柱があるが、オルガンへ近づくには反対側へ回る必要がある。
最後列のベンチの裏を通り慎重に移動していくと、柱の陰から見える奥の通路に見覚えのある人物を見つけた。どうやらその人物も、通路の陰から演奏と教会の様子を確かめているようだった。
「奥に誰かいるぜ?」
「あれは・・・クリス!?何故クリスがここに?」
グーゲル教会で演奏される音楽を確かめに来ていたのは、レオン達だけではなくクリスも同じだった。彼は三人よりも遥かにオルガンに近いところから演奏を隠れて眺めていた。
「彼も演奏を?」
「なぁ、アイツの位置からなら誰が演奏してるのか見えてるんじゃねぇのか?」
「とにかくもう少し近づこう。できればクリスともコンタクトを取りたいが・・・」
三人がクリスの居る教会の奥へ歩みを進めようとしたところで、彼もこちらに気がついたようだった。驚きの表情を浮かべつつも、クリスは彼らの方と演奏者の方を交互に見て、隙をついて柱の陰へと移動しこちらとの距離を詰め始めたのだ。
「三人とも!?何でここへ・・・」
しかしクリスは、三人ほど手際よく移動することが出来ず、次の柱へ移動する際に足を絡めて転んでしまったのだ。大きな物音が教会に響く。演奏は止まらなかったが、客席にいた不気味な格好をした観客達が数人、何事かとクリスの方へ顔を急旋回させる。
「バカッ!何で待ってられなかったんだぁ!」
直ぐにクリスの元へ駆け寄ろうとするカルロスの腕を掴み、観客がどのような行動に出るのかを伺う。ただ演奏を聴きに来た観客なら特に行動を移すこともないのだろうが、レオンの直感は冴えていた。
クリスの姿を目の当たりにした数人の観客は、そのまま彼の元へと動き出したのだ。素早い動きではないが、このままではクリスが彼らに捕まってしまう。
ここでもまた、レオンとジル、そしてカルロスの間で意見が割れてしまう。気づかれたことにより作戦は破綻したと判断し、直ぐに逃げ出すべきだというジルと、このままクリスが不気味な観客に何をされるのかを見ておこうと、このまま身を潜めるというレオン。
そしてカルロスは、身の危険が迫るクリスを救わなければと、レオンの手を振り解こうとする。
「じっとしてろだと!?何を言ってんだ、レオン!」
「そうよ。最初に決めたでしょ?トラブルがあれば直ぐにここを離れるって!」
「二人とも落ち着け、俺達はまだバレてない。気付かれたのはクリスだ。ここで何をされたのか確かめられれば、今後の対策や行動の指針にもなるだろ!?」
彼の言っていることが間違いだとは誰も思っていない。だがものの捉え方というのは、土壇場でこそ人それぞれの価値観が最優先になりがちになる。
まだ安全であったさっきまでは、ジルもカルロスもレオンの作戦に乗っかったが、状況が悪い方向へと転がった今、それぞれも思惑が対立し合ってしまう。
そうなった場合、最も強いのは行動力のある者だった。様子を見届けようとするレオンに動くという選択肢はなく、またジルの意見も他の二人の賛同や、或いは説得がなされてから動くという判断に至る。
今回の主導権を握ったのは、三人の中で最も行動力のあるカルロスだった。彼は何よりも先にクリスを保護しなければと、“行動“自体が真っ先に優先され、その後のことはその後の展開で考えればいいという判断だったのだろう。
「離せよ、レオン。身分や立場で動けねぇってんなら俺にも理解できるが、誰かが危ねぇって時に動けねぇのは、やっぱりお前自身に問題があるんじゃねぇのか?」
「俺に・・・問題が・・・?」
振り払うようにレオンの腕を払い除けると、カルロスは転んで床に倒れるクリスの元へと駆け出して行ってしまった。案の定、その姿は動き出した観客達にも気付かれてしまう。
「レオン!しっかりしなさいよ!気付かれてしまった以上、もうここには居られないわ。直ぐにみんなで脱出出来るように全力を尽くすわよ!」
「あっあぁ、すまない・・・」
カルロスの言葉と、ジルの真っ当な判断に面食らってしまったレオンは、一瞬頭の中が真っ白になり身体が動かなくなってしまう。だがジルの言う通り、最早状況を伺うなどと言っていられる場合ではない。直ぐにジルとレオンは、カルロスがクリスを抱えて脱出できるルートを模索する。
だが教会内は混雑しているという訳ではなく、人が多く集まっているものの皆席についている者ばかり。両側の通路が空いており、そこからなら柱の陰に隠れつつ前へ進むことができそうだった。
「レオン、ジル。見てくれ」
「あぁ、横の通路から行けそうだな」
「慌てないで、慎重に・・・。柱の陰を使っていきましょう」
三人はゆっくりと席を立ち、身を屈めながら最寄りの柱の陰に身を潜める。前方にはいくつか柱があるが、オルガンへ近づくには反対側へ回る必要がある。
最後列のベンチの裏を通り慎重に移動していくと、柱の陰から見える奥の通路に見覚えのある人物を見つけた。どうやらその人物も、通路の陰から演奏と教会の様子を確かめているようだった。
「奥に誰かいるぜ?」
「あれは・・・クリス!?何故クリスがここに?」
グーゲル教会で演奏される音楽を確かめに来ていたのは、レオン達だけではなくクリスも同じだった。彼は三人よりも遥かにオルガンに近いところから演奏を隠れて眺めていた。
「彼も演奏を?」
「なぁ、アイツの位置からなら誰が演奏してるのか見えてるんじゃねぇのか?」
「とにかくもう少し近づこう。できればクリスともコンタクトを取りたいが・・・」
三人がクリスの居る教会の奥へ歩みを進めようとしたところで、彼もこちらに気がついたようだった。驚きの表情を浮かべつつも、クリスは彼らの方と演奏者の方を交互に見て、隙をついて柱の陰へと移動しこちらとの距離を詰め始めたのだ。
「三人とも!?何でここへ・・・」
しかしクリスは、三人ほど手際よく移動することが出来ず、次の柱へ移動する際に足を絡めて転んでしまったのだ。大きな物音が教会に響く。演奏は止まらなかったが、客席にいた不気味な格好をした観客達が数人、何事かとクリスの方へ顔を急旋回させる。
「バカッ!何で待ってられなかったんだぁ!」
直ぐにクリスの元へ駆け寄ろうとするカルロスの腕を掴み、観客がどのような行動に出るのかを伺う。ただ演奏を聴きに来た観客なら特に行動を移すこともないのだろうが、レオンの直感は冴えていた。
クリスの姿を目の当たりにした数人の観客は、そのまま彼の元へと動き出したのだ。素早い動きではないが、このままではクリスが彼らに捕まってしまう。
ここでもまた、レオンとジル、そしてカルロスの間で意見が割れてしまう。気づかれたことにより作戦は破綻したと判断し、直ぐに逃げ出すべきだというジルと、このままクリスが不気味な観客に何をされるのかを見ておこうと、このまま身を潜めるというレオン。
そしてカルロスは、身の危険が迫るクリスを救わなければと、レオンの手を振り解こうとする。
「じっとしてろだと!?何を言ってんだ、レオン!」
「そうよ。最初に決めたでしょ?トラブルがあれば直ぐにここを離れるって!」
「二人とも落ち着け、俺達はまだバレてない。気付かれたのはクリスだ。ここで何をされたのか確かめられれば、今後の対策や行動の指針にもなるだろ!?」
彼の言っていることが間違いだとは誰も思っていない。だがものの捉え方というのは、土壇場でこそ人それぞれの価値観が最優先になりがちになる。
まだ安全であったさっきまでは、ジルもカルロスもレオンの作戦に乗っかったが、状況が悪い方向へと転がった今、それぞれも思惑が対立し合ってしまう。
そうなった場合、最も強いのは行動力のある者だった。様子を見届けようとするレオンに動くという選択肢はなく、またジルの意見も他の二人の賛同や、或いは説得がなされてから動くという判断に至る。
今回の主導権を握ったのは、三人の中で最も行動力のあるカルロスだった。彼は何よりも先にクリスを保護しなければと、“行動“自体が真っ先に優先され、その後のことはその後の展開で考えればいいという判断だったのだろう。
「離せよ、レオン。身分や立場で動けねぇってんなら俺にも理解できるが、誰かが危ねぇって時に動けねぇのは、やっぱりお前自身に問題があるんじゃねぇのか?」
「俺に・・・問題が・・・?」
振り払うようにレオンの腕を払い除けると、カルロスは転んで床に倒れるクリスの元へと駆け出して行ってしまった。案の定、その姿は動き出した観客達にも気付かれてしまう。
「レオン!しっかりしなさいよ!気付かれてしまった以上、もうここには居られないわ。直ぐにみんなで脱出出来るように全力を尽くすわよ!」
「あっあぁ、すまない・・・」
カルロスの言葉と、ジルの真っ当な判断に面食らってしまったレオンは、一瞬頭の中が真っ白になり身体が動かなくなってしまう。だがジルの言う通り、最早状況を伺うなどと言っていられる場合ではない。直ぐにジルとレオンは、カルロスがクリスを抱えて脱出できるルートを模索する。
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