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症状の違い
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今まで他の者達に追及こそしたことがなかったものの、やはり何かがおかしいと感じる感性はあるのだろうか。三人は僅かにアルミンの見せたその疑問の表情に驚きを示す。
「アルミンさん」
先行したカルロスを追い、レオンとジルもアルミンの元へとやって来る。次々に来る音楽学校の学生達に困惑を隠せないアルミンは、一体これは何事だと問う。
「あっ・・・君達は知ってるよ。確かレオンとジルって感じの名前じゃなかったかな?」
「ご存じなら話が早いです」
「えっ?待ってくれよ、私はまだ学校に赴任もしてないからあまり内情は話せないんだけど!?」
「安心してください、学校の話ではありません」
とは言ったものの、赴任前の挨拶といった様子でもない三人を前に、アルミンは不思議そうに頭を傾げる。
まず初めにレオンが彼に聞いたこと。それは昨日の事だった。大司教に関する事件のことではなく、式典やパーティーの後に自宅や学校で引き継ぎ作業の手続きなどを行なっていたと語ったアルミン。
パーティーの後という事は、まだ大司教が殺害される前の夜中ということになる。レオンやジルが大司教の事件を知ったのは、その翌日の早朝になる。そこから二人は激動の一日を過ごすことになるのだが、その間アルミンは丸一日どのような行動を取っていたのか。三人はそれを知りたがっていた。
「昨日かい?そりゃぁ前日の作業の続きさ。夜中じゃ閉まっちゃってて出来なかった手続きとか、パーティーで居なかった人達のところへ訪問したりとか、とにかく忙しかったなぁ・・・」
彼の話からは、何ら不自然さは感じなかった。そしてその話にも矛盾はないし、おかしな点も見当たらなかった。レオンはジルとカルロスの顔を交互に見るも、二人とも疑問点は見つからなかったという様子で小さく首を振っていた。
「しかし、昨日一日探しても司祭達には会えなかったと?」
「勿論、一日中探してた訳じゃないよ?何度か教会を訪問したり、彼らが訪れるっていう場所に足を運んだ時に、そこの人達に話を伺った程度だけどね。それでも皆、居場所を知らなかったり宮殿から戻ってないって言うばかりで、一向に足取りは掴めなかったね」
「宮殿へは向かったのですか?」
「あぁ、勿論だとも」
アルミンはジークベルト大司教がアルバへ連れて来た人物であるため、もしかしたら宮殿への出入りも出来たのではないだろうか。彼のその言葉に微かな希望の光を見出すも、それなら事件のことを知らないのはおかしいのではないかという疑問が残る。
「けど、中には入れなかったなぁ。ジークベルト氏にも確認しておきたい事があったのに、また後にしてくれとか言われちゃって・・・。本人にも伝えておくみたいなこと言ってたけど、本当に伝わってるのかなぁ?まぁ調整はこっちでするみたいなことも言ってたし、彼がそういうなら私も任せるけど」
何か有力な情報でも出てくるかと思ったが、どうやらアルミンであっても事件からは遠ざけられ蚊帳の外になっているという状況にあるようだった。
「そっそれで昨日はずっとその作業を?」
しかしここで、アルミンの様子が少し今までとは違うものへと変わり始める。話の内容もどこかふわふわとしており、記憶も曖昧な様子だと本人も語る。
「いや、作業量的に一日中やるようなものではないはずなんだ。けど・・・何だろう、あんまりはっきりとは覚えていないんだよ。何をしていたんだっけなぁ~・・・。まだ忘れるような歳じゃないはずなんだけどね」
冗談を言いながら、昨日のことを思い出せないなんてと苦笑いを浮かべるアルミン。だが三人は、その話を聞いて一つ思い当たる事があった。それはレオンとカルロスに起きていた記憶の一時的な消失のことだ。
「アルミンさん!昨日のことで思い出せる範囲で構いません。最後に何をしていたか、どこに居たのか。その時周りに何があったのかなど、お話ししていただけませんか?」
「どっどうしたの急に!?別に構わないけど・・・確か昨日、作業を終えた後・・・」
アルミンは日中、音楽監督の引き継ぎ作業を行い、現時点で一人で出来るところまで進めた後、再度二つの教会を訪れ司祭の話やアルバの事について、牧師らと世間話をしたのだという。
詳しい内容までは思い出せなかったが、彼がいうには大した話はsしていないのだとか。その後教会を出ると、すっかり夕暮れ時になっており、新しくアルバで生活する事となった自宅へと戻ろうとした帰り道、最後に宮殿の前を通りかかり、そこで記憶は途絶えているのだそうだ。
しかしレオンらと同じく、アルミンが翌日目を覚ますと、自宅のベッドの上で気持ちよく朝を迎えていたそうだ。酒などは飲んでおらず、記憶に支障をきたすようなこともしていない筈なのに、何故か詳細が思い出せない。
そして目を覚ましてからは、昨日と同じように各所を巡り再び同じような質問や雑談をしながら、今現在少し遅めの昼食を摂りに学食へと赴いたのだという。赴任先への下調べや、学生らの様子を眺めるのも兼ねて。
症状としてはレオンらと酷似しているが、アルミンとレオンらの違いは消失した記憶の場所を訪れても、失った記憶が蘇らなかったということだ。アルミンは記憶に残る場所を数回も訪れている。記憶に残る最後の場所である宮殿前にも訪れている。
何とか学生らの期待に応えようと記憶を手繰り寄せようとするアルミンは、最後にこんなことを思い出したのだ。それは三人の探す元凶に繋がる重要な情報を口にする。
「そう言えば、記憶が途絶えるあたりで何か“音楽“のようなものが聞こえたなぁ・・・」
「!?」
「それ!それはどこから!?」
「ん~・・・場所までは覚えてないけど。それに音楽ならアルバ中で聞こえるだろ?別に特別な演奏って訳でもあるまいし・・・」
「えっ・・・?」
ここで彼らとの間に食い違いが起きた。
「アルミンさん」
先行したカルロスを追い、レオンとジルもアルミンの元へとやって来る。次々に来る音楽学校の学生達に困惑を隠せないアルミンは、一体これは何事だと問う。
「あっ・・・君達は知ってるよ。確かレオンとジルって感じの名前じゃなかったかな?」
「ご存じなら話が早いです」
「えっ?待ってくれよ、私はまだ学校に赴任もしてないからあまり内情は話せないんだけど!?」
「安心してください、学校の話ではありません」
とは言ったものの、赴任前の挨拶といった様子でもない三人を前に、アルミンは不思議そうに頭を傾げる。
まず初めにレオンが彼に聞いたこと。それは昨日の事だった。大司教に関する事件のことではなく、式典やパーティーの後に自宅や学校で引き継ぎ作業の手続きなどを行なっていたと語ったアルミン。
パーティーの後という事は、まだ大司教が殺害される前の夜中ということになる。レオンやジルが大司教の事件を知ったのは、その翌日の早朝になる。そこから二人は激動の一日を過ごすことになるのだが、その間アルミンは丸一日どのような行動を取っていたのか。三人はそれを知りたがっていた。
「昨日かい?そりゃぁ前日の作業の続きさ。夜中じゃ閉まっちゃってて出来なかった手続きとか、パーティーで居なかった人達のところへ訪問したりとか、とにかく忙しかったなぁ・・・」
彼の話からは、何ら不自然さは感じなかった。そしてその話にも矛盾はないし、おかしな点も見当たらなかった。レオンはジルとカルロスの顔を交互に見るも、二人とも疑問点は見つからなかったという様子で小さく首を振っていた。
「しかし、昨日一日探しても司祭達には会えなかったと?」
「勿論、一日中探してた訳じゃないよ?何度か教会を訪問したり、彼らが訪れるっていう場所に足を運んだ時に、そこの人達に話を伺った程度だけどね。それでも皆、居場所を知らなかったり宮殿から戻ってないって言うばかりで、一向に足取りは掴めなかったね」
「宮殿へは向かったのですか?」
「あぁ、勿論だとも」
アルミンはジークベルト大司教がアルバへ連れて来た人物であるため、もしかしたら宮殿への出入りも出来たのではないだろうか。彼のその言葉に微かな希望の光を見出すも、それなら事件のことを知らないのはおかしいのではないかという疑問が残る。
「けど、中には入れなかったなぁ。ジークベルト氏にも確認しておきたい事があったのに、また後にしてくれとか言われちゃって・・・。本人にも伝えておくみたいなこと言ってたけど、本当に伝わってるのかなぁ?まぁ調整はこっちでするみたいなことも言ってたし、彼がそういうなら私も任せるけど」
何か有力な情報でも出てくるかと思ったが、どうやらアルミンであっても事件からは遠ざけられ蚊帳の外になっているという状況にあるようだった。
「そっそれで昨日はずっとその作業を?」
しかしここで、アルミンの様子が少し今までとは違うものへと変わり始める。話の内容もどこかふわふわとしており、記憶も曖昧な様子だと本人も語る。
「いや、作業量的に一日中やるようなものではないはずなんだ。けど・・・何だろう、あんまりはっきりとは覚えていないんだよ。何をしていたんだっけなぁ~・・・。まだ忘れるような歳じゃないはずなんだけどね」
冗談を言いながら、昨日のことを思い出せないなんてと苦笑いを浮かべるアルミン。だが三人は、その話を聞いて一つ思い当たる事があった。それはレオンとカルロスに起きていた記憶の一時的な消失のことだ。
「アルミンさん!昨日のことで思い出せる範囲で構いません。最後に何をしていたか、どこに居たのか。その時周りに何があったのかなど、お話ししていただけませんか?」
「どっどうしたの急に!?別に構わないけど・・・確か昨日、作業を終えた後・・・」
アルミンは日中、音楽監督の引き継ぎ作業を行い、現時点で一人で出来るところまで進めた後、再度二つの教会を訪れ司祭の話やアルバの事について、牧師らと世間話をしたのだという。
詳しい内容までは思い出せなかったが、彼がいうには大した話はsしていないのだとか。その後教会を出ると、すっかり夕暮れ時になっており、新しくアルバで生活する事となった自宅へと戻ろうとした帰り道、最後に宮殿の前を通りかかり、そこで記憶は途絶えているのだそうだ。
しかしレオンらと同じく、アルミンが翌日目を覚ますと、自宅のベッドの上で気持ちよく朝を迎えていたそうだ。酒などは飲んでおらず、記憶に支障をきたすようなこともしていない筈なのに、何故か詳細が思い出せない。
そして目を覚ましてからは、昨日と同じように各所を巡り再び同じような質問や雑談をしながら、今現在少し遅めの昼食を摂りに学食へと赴いたのだという。赴任先への下調べや、学生らの様子を眺めるのも兼ねて。
症状としてはレオンらと酷似しているが、アルミンとレオンらの違いは消失した記憶の場所を訪れても、失った記憶が蘇らなかったということだ。アルミンは記憶に残る場所を数回も訪れている。記憶に残る最後の場所である宮殿前にも訪れている。
何とか学生らの期待に応えようと記憶を手繰り寄せようとするアルミンは、最後にこんなことを思い出したのだ。それは三人の探す元凶に繋がる重要な情報を口にする。
「そう言えば、記憶が途絶えるあたりで何か“音楽“のようなものが聞こえたなぁ・・・」
「!?」
「それ!それはどこから!?」
「ん~・・・場所までは覚えてないけど。それに音楽ならアルバ中で聞こえるだろ?別に特別な演奏って訳でもあるまいし・・・」
「えっ・・・?」
ここで彼らとの間に食い違いが起きた。
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