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昨夜の真実
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二クラス教会からの帰り道を思い出したレオンは、来た時とは少し違ったルートで自宅を目指した。その道中では、これまでのフラッシュバックほどではないものの、当時の光景が視界に映るといった現象を体験し、徐々に記憶を取り戻していった。
帰り道こそジルに報告するほどの出来事はなかったが、自宅が見えてきた頃からレオンの記憶にとある人物の姿が映り出したのだ。
「これは・・・!」
「何か思い出したの?」
「カルロスだ・・・俺がアイツと一緒に歩いてる」
それを聞いてジルは不可解だという表情を浮かべて彼を問いただした。それもその筈。彼女の記憶では、カルロスは宮殿へ抗議しに向かい、そのまま中へ連れて行かれてしまったのだから。
「カルロスと?そんな筈ないわ。だって彼は宮殿へ連れて行かれてしまったんだもの。それとも、私と会うよりも前の話?」
「いや、お前と教会で解散した後だ。間違いない」
「それじゃぁカルロスは宮殿から出て来られたってこと?一体どうやって?私は彼とは会ってないわ」
質問攻めになるのも無理もない。正しい記憶を保有しているジルにとっては、カルロスの行方というのは宮殿で途絶えている。その後彼がどうやって宮殿から出てきたのか、どうしてレオンの前に現れたのかなどは、全く新しい情報だったのだ。
だが肝心なところを思い出せずにいるレオンは、自宅へ到着する事によって昨夜の出来事を全て思い出す事になる。
レオンが部屋で外から聞こえてくる音楽に浸っていると、突如カルロスが彼の自宅へやって来たのだとジルに伝える。説明を求められると、レオンは当時カルロスに投げかけた質問内容を思い出し、振り返るようにその時のカルロスの言葉を口にした。
「カルロスの奴、宮殿からクリスが出てきたって言ってた・・・」
「クリス?あのマティアス司祭の・・・」
言葉を詰まらせるジル。どうやら言葉を選んでいるようだった。確かにクリスは音楽学校でもマティアス司祭の腰巾着や媚び売りなどと、あまり良い印象はなく成績も良い方ではなかった為、ジルの印象にもあまり強くは残っていなかった。
言葉に困っているジルを見て、レオンは彼女の代弁をしながら話を続ける。
「あぁ、そのマティアス司祭の雑用係のクリスさ。何でもクリスは宮殿内から吉備隊と一緒に出てきたって言ってた。カルロスも実際宮殿へ抗議には行ったものの、捕まったわけではないらしい」
「どういうこと?私の記憶が間違っているの?それともそれも貴方の記憶違い?」
「俺達はカルロスが宮殿へ抗議しに向かった事しか知らない。だが実際は、宮殿の前まで行ったカルロスは、中から警備隊に連れられて外に出てきたらしい。すぐに駆け付けると怪しまれるっていうんで、そのままクリスの動向を窺ったんだって言ってた」
ジル自身も、カルロスは宮殿内へ連れて行かれてしまったと思い込んでいたようだ。ジルhレオンのように記憶をうっしなった訳ではない。しかし彼女らが置かれている状況や精神状態から、誤った記憶を真実だと思い込んだり、真実をありもしない事だと切り捨て忘れてしまうといった状態にあったようだ。
「じゃぁカルロスは実際に宮殿内へは入っていないってこと?」
「そういうことだ」
「それでクリスは?彼はとカルロスはどうなったの?」
レオンはカルロスから聞いた尾行の話をジルに伝えた。クリスは二クラス教会へ向かうと、教会の者達に宮殿内での出来事について報告すると、彼らから鍵を受け取り教会の奥へと消えていったのだという。
だがそれっきりクリスが戻ることはなく、そこでクリスの行方がわからなくなってしまったカルロスは、ことの顛末を伝える為にレオンの自宅を訪れたのだった。
「それからどうしたの?」
「俺達は街で聞こえてた妙な音楽の出所を探る事になって、それで・・・」
「それで?」
ふと、レオンはジルにとある質問をした。あの時街に流れていた不思議な音楽。彼女はそれを聞いていなかったのだろうか。そこにレオンとジルの記憶の違いが生じた手掛かりはないかと考えたのだが、ジルもその音楽については聞こえていたと語ったのだ。
「それなら私も聞いていたわ」
「お前も!?妙だとは思わなかったのか?あんな演奏、先生達でも難しい・・・。一体誰が演奏してるんだって」
「確かに心地の良い演奏だったけど、その日は疲れてたし余計なことは考えないようにして早めに眠ってしまったの。それに音楽なら毎日のように流れてるじゃない?たまに衝撃を受けるようなものもあったし、その演奏だけが特別だとは・・・思わなかったかしら・・・」
レオンからの話を聞いて昨夜のことを語るジルだったが、言われてみれば確かに耳に残る素晴らしい演奏であったと思い始める。彼女の言うように、昨夜はジルもアルバのあちこちへ赴き、肉体的にも精神的にも憔悴していたことは確かだろう。
そのことも相待ってか、疲労した彼女を癒すような心地の良い音色に導かれるように、彼女はすんなりと眠りについてしまったようだ。だがそれでも、一流の音楽家でも難しいと思わせる演奏をする人物が誰なのか、何故その時に疑問に思わなかったのかと、当時の自分の行動と思考に疑問を抱き始めた。
「俺とカルロスは、その音楽が聞こえてくる方へ向かって、演奏がグーゲル教会から聞こえていたことを突き止めたんだ」
「教会から?でも真夜中だったんでしょ?いくら何でも教会の楽器を演奏するのは・・・」
「俺達もそう思った。だから中を覗いたんだ。そしたら、教会の椅子にびっしりと人が座ってて、みんな大人しくその演奏を聞いてたんだ。あんな心地の良い演奏とは真逆に、その光景はすごく不気味だった・・・」
レオンはカルロスと共にグーゲル教会まで赴き、音の出所を調べることまでは成功したものの、それからのことに関しては激しい眠気に誘われて意識を失ってしまい、気がついたら自宅で寝ていたと語る。
帰り道こそジルに報告するほどの出来事はなかったが、自宅が見えてきた頃からレオンの記憶にとある人物の姿が映り出したのだ。
「これは・・・!」
「何か思い出したの?」
「カルロスだ・・・俺がアイツと一緒に歩いてる」
それを聞いてジルは不可解だという表情を浮かべて彼を問いただした。それもその筈。彼女の記憶では、カルロスは宮殿へ抗議しに向かい、そのまま中へ連れて行かれてしまったのだから。
「カルロスと?そんな筈ないわ。だって彼は宮殿へ連れて行かれてしまったんだもの。それとも、私と会うよりも前の話?」
「いや、お前と教会で解散した後だ。間違いない」
「それじゃぁカルロスは宮殿から出て来られたってこと?一体どうやって?私は彼とは会ってないわ」
質問攻めになるのも無理もない。正しい記憶を保有しているジルにとっては、カルロスの行方というのは宮殿で途絶えている。その後彼がどうやって宮殿から出てきたのか、どうしてレオンの前に現れたのかなどは、全く新しい情報だったのだ。
だが肝心なところを思い出せずにいるレオンは、自宅へ到着する事によって昨夜の出来事を全て思い出す事になる。
レオンが部屋で外から聞こえてくる音楽に浸っていると、突如カルロスが彼の自宅へやって来たのだとジルに伝える。説明を求められると、レオンは当時カルロスに投げかけた質問内容を思い出し、振り返るようにその時のカルロスの言葉を口にした。
「カルロスの奴、宮殿からクリスが出てきたって言ってた・・・」
「クリス?あのマティアス司祭の・・・」
言葉を詰まらせるジル。どうやら言葉を選んでいるようだった。確かにクリスは音楽学校でもマティアス司祭の腰巾着や媚び売りなどと、あまり良い印象はなく成績も良い方ではなかった為、ジルの印象にもあまり強くは残っていなかった。
言葉に困っているジルを見て、レオンは彼女の代弁をしながら話を続ける。
「あぁ、そのマティアス司祭の雑用係のクリスさ。何でもクリスは宮殿内から吉備隊と一緒に出てきたって言ってた。カルロスも実際宮殿へ抗議には行ったものの、捕まったわけではないらしい」
「どういうこと?私の記憶が間違っているの?それともそれも貴方の記憶違い?」
「俺達はカルロスが宮殿へ抗議しに向かった事しか知らない。だが実際は、宮殿の前まで行ったカルロスは、中から警備隊に連れられて外に出てきたらしい。すぐに駆け付けると怪しまれるっていうんで、そのままクリスの動向を窺ったんだって言ってた」
ジル自身も、カルロスは宮殿内へ連れて行かれてしまったと思い込んでいたようだ。ジルhレオンのように記憶をうっしなった訳ではない。しかし彼女らが置かれている状況や精神状態から、誤った記憶を真実だと思い込んだり、真実をありもしない事だと切り捨て忘れてしまうといった状態にあったようだ。
「じゃぁカルロスは実際に宮殿内へは入っていないってこと?」
「そういうことだ」
「それでクリスは?彼はとカルロスはどうなったの?」
レオンはカルロスから聞いた尾行の話をジルに伝えた。クリスは二クラス教会へ向かうと、教会の者達に宮殿内での出来事について報告すると、彼らから鍵を受け取り教会の奥へと消えていったのだという。
だがそれっきりクリスが戻ることはなく、そこでクリスの行方がわからなくなってしまったカルロスは、ことの顛末を伝える為にレオンの自宅を訪れたのだった。
「それからどうしたの?」
「俺達は街で聞こえてた妙な音楽の出所を探る事になって、それで・・・」
「それで?」
ふと、レオンはジルにとある質問をした。あの時街に流れていた不思議な音楽。彼女はそれを聞いていなかったのだろうか。そこにレオンとジルの記憶の違いが生じた手掛かりはないかと考えたのだが、ジルもその音楽については聞こえていたと語ったのだ。
「それなら私も聞いていたわ」
「お前も!?妙だとは思わなかったのか?あんな演奏、先生達でも難しい・・・。一体誰が演奏してるんだって」
「確かに心地の良い演奏だったけど、その日は疲れてたし余計なことは考えないようにして早めに眠ってしまったの。それに音楽なら毎日のように流れてるじゃない?たまに衝撃を受けるようなものもあったし、その演奏だけが特別だとは・・・思わなかったかしら・・・」
レオンからの話を聞いて昨夜のことを語るジルだったが、言われてみれば確かに耳に残る素晴らしい演奏であったと思い始める。彼女の言うように、昨夜はジルもアルバのあちこちへ赴き、肉体的にも精神的にも憔悴していたことは確かだろう。
そのことも相待ってか、疲労した彼女を癒すような心地の良い音色に導かれるように、彼女はすんなりと眠りについてしまったようだ。だがそれでも、一流の音楽家でも難しいと思わせる演奏をする人物が誰なのか、何故その時に疑問に思わなかったのかと、当時の自分の行動と思考に疑問を抱き始めた。
「俺とカルロスは、その音楽が聞こえてくる方へ向かって、演奏がグーゲル教会から聞こえていたことを突き止めたんだ」
「教会から?でも真夜中だったんでしょ?いくら何でも教会の楽器を演奏するのは・・・」
「俺達もそう思った。だから中を覗いたんだ。そしたら、教会の椅子にびっしりと人が座ってて、みんな大人しくその演奏を聞いてたんだ。あんな心地の良い演奏とは真逆に、その光景はすごく不気味だった・・・」
レオンはカルロスと共にグーゲル教会まで赴き、音の出所を調べることまでは成功したものの、それからのことに関しては激しい眠気に誘われて意識を失ってしまい、気がついたら自宅で寝ていたと語る。
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