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表舞台の裏で
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部屋へ戻ったシン達一行は、僅かに外から聞こえてくる物音や声に敏感になっていた。騒ぎが収まるまで待機を命じられていることから、他の部屋でも同様に出歩いていた者達が各自自室へと戻されていた。
その中でも特に独自の視点で事件の調査を行なっていたアンドレイは、シアラと教団の護衛を連れてリヒトルの部屋を訪れていた。二手に分かれているのか、大柄でローブを羽織ったチャドとその彼の身体に乗っていた小人族のケイシーの姿は見当たらない。文字通り少数精鋭での訪問だったようだ。
アンドレイらの訪問に、リヒトルの部屋の前にいた護衛が中にいる仲間に事情を説明し、リヒトル本人の承諾を得ると扉が開かれた。
初めに彼らを迎えたのは、スーツ姿の冴えない人物だった。一見してリヒトルの護衛なのか警備隊の者なのは判断がつかない。眉を潜ませるシアラとは対照的に、微笑みを浮かべてその人物の間に立つアンドレイ。
「お久しぶりですね、マイルズさん。貴方の噂は常々・・・あぁ・・・いや、全く耳にしません。どうやら“ご活躍“していらしゃるようで」
「・・・何ようですか?」
無愛想な男に親しげに話しかけるアンドレイを見て、シアラはこの男が何者なのかと主人に尋ねた。するとアンドレイは、今彼らが拠点としている国の中でその男と面識があった事を語り始めた。
「アンドレイ様、この男は何者なのですか?」
「彼かい?彼はマイルズ・アーカート。私達の拠点にしている国内で、以前私は彼と会っているんだ。あの時は“諜報活動“をしていらしたんですよね?」
笑みを浮かべて問いかけるアンドレイに、マイルズは表情ひとつ変えぬままただその場でアンドレイからの返答を待つだけだった。
「・・・・・」
「ちょっと貴方!アンドレイ様の質問にッ・・・!」
主人の問いに一切答えようとしない無礼者の態度に、痺れを切らしたシアラが突っ掛かろうとしたところを、アンドレイが間に入り静止する。
「あぁ、いいんだシアラ。私が彼の質問を無視して、昔話を始めてしまっただけなんだから・・・。リヒトルさんと話せるかな?何なら貴方や奥方様も一緒でも構わないよ?」
「・・・確認してきます」
「よろしく」
入り口で立ち往生を食らってしまった事に不満を漏らすシアラ。確認なら部屋の前で済んだはずではと、奥にいるであろう者達にも聞こえそうな声量で愚痴を吐き捨てる。
「なんて無駄な時間なの!?アンドレイ様に席も用意せず待たせるなんて・・・」
「まぁまぁ、落ち着いてシアラ。ほら!外から心地の良い音楽が聞こえてくるよ?少しはリラックスでもして」
「ですがアンドレイ様・・・」
すると、奥から先程のマイルズという男が現れ、主人の承諾が得られたとアンドレイ一行を中へと通していった。リヒトルらが使っている部屋の広間には、大きなテーブルといくつかの席が用意され、既にリヒトル夫妻がそれぞれ席につき、彼らの到着を待っていた。
「話は伺っているよ」
「それはよかった」
簡単に挨拶を交わしたあと、リヒトルの目線はアンドレイの後方にいる教団の護衛の方へと向いていた。護衛の様子と表情をじっくりと確認したリヒトルは、開口一番アンドレイの不可解な行動について追求した。
「なるほど・・・。通りで君達の話をよく耳にする筈だ。彼に一体“何“をしたんだ?」
「流石リヒトルさん。すぐにお気づきになられたのは貴方が初めてですよ。危害を及ぼしたつもりはありません。ただ邪魔をされないように、少し大人しくしていただいてるだけです」
なんと、アンドレイらと行動を共にしていた監視役の教団の護衛は、彼らの何らかの術に掛かり半ば操られた状態となっていたのだ。故に部屋の外を歩いていても怪しまれる事なく、誰の指図も受けずに調査を進められていたのだった。
他の者達にはそれは分かっておらず、一緒に会食をしたはずのシン達も例外ではなかった。操りと言っても、完全に意識を乗っ取り操作しているのではなく、あくまで本人には自我があり言葉も普通に話している。
どうやらその護衛が見ているものの中に細工が施されているようだった。自分に視線が向けられていることに気がついた護衛が、不思議そうにリヒトルへ訪ねる。
「私に何か?」
「いや・・・彼に何か変わった点は?」
話を逸らしたリヒトルは、護衛にアンドレイの宮殿での素行について尋ねた。しかしその護衛は、今のところアンドレイらに不審な動きは無いと答え、自身に掛けられている何らかの術には一切気がついている様子もなかった。
「そうか・・・。それで?一体何をしに来たんだ?アンドレイ。事件のことならお前の方がよく知っていそうなものだがな」
「ははは、ご謙遜を。貴方こそ部屋から全くと言って良いほど出ていらっしゃらないそうなのに、宮殿で起きている事件についてよく把握しておいでのようではありませんか」
それは彼の本心から出た言葉なのか、あるいはリヒトルを試す為に計算して用意されていた言葉なのか。
今まで足で情報を集めていたアンドレイは、自室に篭りほとんど姿を見せていないというリヒトルらが、妙に事件の情報を掴んでいることから、自分達が教団の護衛に術を掛けているように、リヒトルらも何らかの裏工作をしているのではと、互いに突かれたくない痛い部分を突き合う。
「よせ、話を逸らさずとも“条件“には乗ってやる。あくまでその条件次第だがな・・・」
「難しい話ではありませんよ。私達はただ、事件を早く“解決“したいだけなのですから。その為にも、色々と情報が必要なのです。なので、我々も協力をしませんか?」
その中でも特に独自の視点で事件の調査を行なっていたアンドレイは、シアラと教団の護衛を連れてリヒトルの部屋を訪れていた。二手に分かれているのか、大柄でローブを羽織ったチャドとその彼の身体に乗っていた小人族のケイシーの姿は見当たらない。文字通り少数精鋭での訪問だったようだ。
アンドレイらの訪問に、リヒトルの部屋の前にいた護衛が中にいる仲間に事情を説明し、リヒトル本人の承諾を得ると扉が開かれた。
初めに彼らを迎えたのは、スーツ姿の冴えない人物だった。一見してリヒトルの護衛なのか警備隊の者なのは判断がつかない。眉を潜ませるシアラとは対照的に、微笑みを浮かべてその人物の間に立つアンドレイ。
「お久しぶりですね、マイルズさん。貴方の噂は常々・・・あぁ・・・いや、全く耳にしません。どうやら“ご活躍“していらしゃるようで」
「・・・何ようですか?」
無愛想な男に親しげに話しかけるアンドレイを見て、シアラはこの男が何者なのかと主人に尋ねた。するとアンドレイは、今彼らが拠点としている国の中でその男と面識があった事を語り始めた。
「アンドレイ様、この男は何者なのですか?」
「彼かい?彼はマイルズ・アーカート。私達の拠点にしている国内で、以前私は彼と会っているんだ。あの時は“諜報活動“をしていらしたんですよね?」
笑みを浮かべて問いかけるアンドレイに、マイルズは表情ひとつ変えぬままただその場でアンドレイからの返答を待つだけだった。
「・・・・・」
「ちょっと貴方!アンドレイ様の質問にッ・・・!」
主人の問いに一切答えようとしない無礼者の態度に、痺れを切らしたシアラが突っ掛かろうとしたところを、アンドレイが間に入り静止する。
「あぁ、いいんだシアラ。私が彼の質問を無視して、昔話を始めてしまっただけなんだから・・・。リヒトルさんと話せるかな?何なら貴方や奥方様も一緒でも構わないよ?」
「・・・確認してきます」
「よろしく」
入り口で立ち往生を食らってしまった事に不満を漏らすシアラ。確認なら部屋の前で済んだはずではと、奥にいるであろう者達にも聞こえそうな声量で愚痴を吐き捨てる。
「なんて無駄な時間なの!?アンドレイ様に席も用意せず待たせるなんて・・・」
「まぁまぁ、落ち着いてシアラ。ほら!外から心地の良い音楽が聞こえてくるよ?少しはリラックスでもして」
「ですがアンドレイ様・・・」
すると、奥から先程のマイルズという男が現れ、主人の承諾が得られたとアンドレイ一行を中へと通していった。リヒトルらが使っている部屋の広間には、大きなテーブルといくつかの席が用意され、既にリヒトル夫妻がそれぞれ席につき、彼らの到着を待っていた。
「話は伺っているよ」
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簡単に挨拶を交わしたあと、リヒトルの目線はアンドレイの後方にいる教団の護衛の方へと向いていた。護衛の様子と表情をじっくりと確認したリヒトルは、開口一番アンドレイの不可解な行動について追求した。
「なるほど・・・。通りで君達の話をよく耳にする筈だ。彼に一体“何“をしたんだ?」
「流石リヒトルさん。すぐにお気づきになられたのは貴方が初めてですよ。危害を及ぼしたつもりはありません。ただ邪魔をされないように、少し大人しくしていただいてるだけです」
なんと、アンドレイらと行動を共にしていた監視役の教団の護衛は、彼らの何らかの術に掛かり半ば操られた状態となっていたのだ。故に部屋の外を歩いていても怪しまれる事なく、誰の指図も受けずに調査を進められていたのだった。
他の者達にはそれは分かっておらず、一緒に会食をしたはずのシン達も例外ではなかった。操りと言っても、完全に意識を乗っ取り操作しているのではなく、あくまで本人には自我があり言葉も普通に話している。
どうやらその護衛が見ているものの中に細工が施されているようだった。自分に視線が向けられていることに気がついた護衛が、不思議そうにリヒトルへ訪ねる。
「私に何か?」
「いや・・・彼に何か変わった点は?」
話を逸らしたリヒトルは、護衛にアンドレイの宮殿での素行について尋ねた。しかしその護衛は、今のところアンドレイらに不審な動きは無いと答え、自身に掛けられている何らかの術には一切気がついている様子もなかった。
「そうか・・・。それで?一体何をしに来たんだ?アンドレイ。事件のことならお前の方がよく知っていそうなものだがな」
「ははは、ご謙遜を。貴方こそ部屋から全くと言って良いほど出ていらっしゃらないそうなのに、宮殿で起きている事件についてよく把握しておいでのようではありませんか」
それは彼の本心から出た言葉なのか、あるいはリヒトルを試す為に計算して用意されていた言葉なのか。
今まで足で情報を集めていたアンドレイは、自室に篭りほとんど姿を見せていないというリヒトルらが、妙に事件の情報を掴んでいることから、自分達が教団の護衛に術を掛けているように、リヒトルらも何らかの裏工作をしているのではと、互いに突かれたくない痛い部分を突き合う。
「よせ、話を逸らさずとも“条件“には乗ってやる。あくまでその条件次第だがな・・・」
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