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二人の立場
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早速シン達と共に宮殿で行動する同行者としての仕事を果たさんとばかりに、部屋の外で待つもう一人の同行者を迎えに行くオイゲン。それを視線で追いかける一行。通路の先へと消えた彼が警備隊の男と会話した後、通路を戻る足音は二人分になっていた。
通路から姿を現したのはオイゲンと、その後ろから追従する身なりの整った女。彼女が先程オイゲンの言っていた、用事で抜けなければならない時に代わりでやって来る事になる代行のようだ。
「丁度君の説明をしていたところだ。まずは自己紹介から頼む」
護衛隊長の同胞と聞いていたので、それなりに戦闘を想定した格好や体格を想像していた一行だったが、実際に現れたのは意外にも華奢で、パーティーの時のミアと同じく、スーツに身を包んだ冗談の通じそうにない真面目そうな女性だった。
「初めまして。私は“ニノン・ラセター“と申します。紹介はオイゲンの方からあったようなので割愛させて頂きます。よろしくお願いします」
丁寧な口調で礼儀正しい様子からも、その厳格さが窺える。しかし紹介が割愛されてしまったが、一行はオイゲンの代行という以外に彼女の素性について殆ど知らない。
一行の視線は、自己紹介を終えたニノンからオイゲンへと集められる。妙な沈黙と空気感に気がついたニノンは、僅かにオイゲンを睨み付ける。
「紹介したのではないのか?」
「したとも。ただ君の到着が想定よりも早かったものでな。少し特殊な事例となったことを説明しただけになってしまったと、弁明させてもらおう」
二人のやり取りを見て、流石は同胞といった間柄だなと感じた一行。今までシン達と会話をしていた時のオイゲンとは違い、表情が少しだけ柔らかくなっている。これはシン達が仲間と話をする時と同じように、気の知れた仲の者との会話と同じだった。
「一応聞いておきますが、お二人のご関係は?」
痴話喧嘩を始める二人の間に、申し訳なさそうに口を挟んだのはケヴィンだった。一行も二人の様子を見て丁度同じような事を考えていたところだったので、代弁をしてくれたケヴィンには感謝していたが、彼がそんな質問をするとは意外だなとシンは感じていた。
と、いうのもシンとケヴィンは行動を共にしていた時間が一番長く、彼がどんなことに興味を示すのかある程度理解していたつもりだったシンは、人間関係について興味を示したケヴィンに驚かされたのだ。
「同じ所属の同胞。それ以上にはなり得ません。今は上司にあたる立場なのでこれ以上は口を慎みますが・・・」
「私とニノン・ラセターは、教団上の立場としては同じところに位置しています。今回の件では隊長に抜擢されたのが私であっただけで、適材適所で彼女が隊長になることもある。同胞は他にも何人もいるのだ。今回はたまたま一緒だっただけで、仕事上の付き合い以上のものはないだろう」
「そうですか。立場上同じ隊長クラスという事であれば、他の護衛隊にも信用があると見て宜しいのですね?」
「隊員に疑いはない。だが調査や取り調べを怠ることは決してない。仲間だからこそ厳重に調査し、身の潔白を確認している。誤解されるかも知れないが、私らとて皆と同じように互いの行動や言動を厳しく見張り合っている。他の者達からすれば信用ならないだろうが、私らもお互いに調べ上げているといことはここで明言しておく」
オイゲンが連れて来たニノンという女は、彼以上に口数が多くしかしどこか信用してしまいそうになる安心感もある。これは今までの経験がものを言うのかも知れないが、性別の違いだけでもそういった印象を受ける人もいるかも知れない。
だが、どうしても男は都合のいい話を持ちかけられた場合、その背景や胡散臭さを感じてしまうのは男性の方に偏るという人も多いのではないだろうか。
一行はミアやアカリも含め、妙にニノンの言葉に嘘や疑いといった要素を感じられず、妙に納得してしまっていた。これも厳格な二人が口にしているからというものも多分に含まれているからなのかも知れない。
「基本的に彼女が駆り出されるのは、私が参入できず指揮しできない時だけだ。故に私がマティアス司祭の代わりだとは言ったが、実際のところ行動を共にする時間が長くなるのは彼女だと思ってくれていい」
「なるほど。人員の配置も考えられていたのですね。確かにそこまで徹底しているのなら・・・」
一人言葉だけでは考えを左右されない男は、オイゲンの話に隠されたわざわざ言及しなかった配慮と徹底ぶりに、僅かに考えを改めさせられているようだった。
「お二人がいる間に聞いておきたいのですが、ルーカス氏の調査はどのように行われているのですか?」
「大方、大司教の時と違いはない。現場に残された証拠や遺留品に関しては鑑識に任せている。我々が行っているのは、残留する魔力の反応や匂い、あとは僅かではあるが現場の状況再現を行って調査している」
ケヴィンの質問に答えたオイゲンの言葉に嘘や偽りはないか、情報の共有がちゃんとなされているのかなどを確かめるためにも、ケヴィンはオイゲンとニノンが一緒にいる時に調査の方法や段階を尋ねたのだ。
通路から姿を現したのはオイゲンと、その後ろから追従する身なりの整った女。彼女が先程オイゲンの言っていた、用事で抜けなければならない時に代わりでやって来る事になる代行のようだ。
「丁度君の説明をしていたところだ。まずは自己紹介から頼む」
護衛隊長の同胞と聞いていたので、それなりに戦闘を想定した格好や体格を想像していた一行だったが、実際に現れたのは意外にも華奢で、パーティーの時のミアと同じく、スーツに身を包んだ冗談の通じそうにない真面目そうな女性だった。
「初めまして。私は“ニノン・ラセター“と申します。紹介はオイゲンの方からあったようなので割愛させて頂きます。よろしくお願いします」
丁寧な口調で礼儀正しい様子からも、その厳格さが窺える。しかし紹介が割愛されてしまったが、一行はオイゲンの代行という以外に彼女の素性について殆ど知らない。
一行の視線は、自己紹介を終えたニノンからオイゲンへと集められる。妙な沈黙と空気感に気がついたニノンは、僅かにオイゲンを睨み付ける。
「紹介したのではないのか?」
「したとも。ただ君の到着が想定よりも早かったものでな。少し特殊な事例となったことを説明しただけになってしまったと、弁明させてもらおう」
二人のやり取りを見て、流石は同胞といった間柄だなと感じた一行。今までシン達と会話をしていた時のオイゲンとは違い、表情が少しだけ柔らかくなっている。これはシン達が仲間と話をする時と同じように、気の知れた仲の者との会話と同じだった。
「一応聞いておきますが、お二人のご関係は?」
痴話喧嘩を始める二人の間に、申し訳なさそうに口を挟んだのはケヴィンだった。一行も二人の様子を見て丁度同じような事を考えていたところだったので、代弁をしてくれたケヴィンには感謝していたが、彼がそんな質問をするとは意外だなとシンは感じていた。
と、いうのもシンとケヴィンは行動を共にしていた時間が一番長く、彼がどんなことに興味を示すのかある程度理解していたつもりだったシンは、人間関係について興味を示したケヴィンに驚かされたのだ。
「同じ所属の同胞。それ以上にはなり得ません。今は上司にあたる立場なのでこれ以上は口を慎みますが・・・」
「私とニノン・ラセターは、教団上の立場としては同じところに位置しています。今回の件では隊長に抜擢されたのが私であっただけで、適材適所で彼女が隊長になることもある。同胞は他にも何人もいるのだ。今回はたまたま一緒だっただけで、仕事上の付き合い以上のものはないだろう」
「そうですか。立場上同じ隊長クラスという事であれば、他の護衛隊にも信用があると見て宜しいのですね?」
「隊員に疑いはない。だが調査や取り調べを怠ることは決してない。仲間だからこそ厳重に調査し、身の潔白を確認している。誤解されるかも知れないが、私らとて皆と同じように互いの行動や言動を厳しく見張り合っている。他の者達からすれば信用ならないだろうが、私らもお互いに調べ上げているといことはここで明言しておく」
オイゲンが連れて来たニノンという女は、彼以上に口数が多くしかしどこか信用してしまいそうになる安心感もある。これは今までの経験がものを言うのかも知れないが、性別の違いだけでもそういった印象を受ける人もいるかも知れない。
だが、どうしても男は都合のいい話を持ちかけられた場合、その背景や胡散臭さを感じてしまうのは男性の方に偏るという人も多いのではないだろうか。
一行はミアやアカリも含め、妙にニノンの言葉に嘘や疑いといった要素を感じられず、妙に納得してしまっていた。これも厳格な二人が口にしているからというものも多分に含まれているからなのかも知れない。
「基本的に彼女が駆り出されるのは、私が参入できず指揮しできない時だけだ。故に私がマティアス司祭の代わりだとは言ったが、実際のところ行動を共にする時間が長くなるのは彼女だと思ってくれていい」
「なるほど。人員の配置も考えられていたのですね。確かにそこまで徹底しているのなら・・・」
一人言葉だけでは考えを左右されない男は、オイゲンの話に隠されたわざわざ言及しなかった配慮と徹底ぶりに、僅かに考えを改めさせられているようだった。
「お二人がいる間に聞いておきたいのですが、ルーカス氏の調査はどのように行われているのですか?」
「大方、大司教の時と違いはない。現場に残された証拠や遺留品に関しては鑑識に任せている。我々が行っているのは、残留する魔力の反応や匂い、あとは僅かではあるが現場の状況再現を行って調査している」
ケヴィンの質問に答えたオイゲンの言葉に嘘や偽りはないか、情報の共有がちゃんとなされているのかなどを確かめるためにも、ケヴィンはオイゲンとニノンが一緒にいる時に調査の方法や段階を尋ねたのだ。
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