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神代 コウ

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司祭の死因

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 シンが戻ると、ケヴィンが先程の話をツクヨに話し終えた後だった。彼もシンと同じように、ルーカス司祭の死亡の話を聞いて動揺しているようだった。

 当然だろう。皆に代わりルーカス司祭と式典での動きやパーティーでの打ち合わせをしてくれていたのは彼だったのだから。ルーカスの心情を知って最も協力的であったツクヨは、信じられないと言った様子で唖然としていた。

 「話はどこまで?」

 「全て終わりました、状況は我々と同じです。ルーカス司祭の件は残念ですが、今は現場の調査が終わるのを待つほかありません」

 言葉を失うシン達一行の中、ケヴィンは一人静かな休日を過ごすかのように優雅なひと時を過ごしていた。

 順次、目を覚まし始める一行にも同じ話がされた。その中でも最も衝撃を受けていたのはマティアス司祭だった。何故彼がこんな目に遭わなければならないのかと、酷く悲しみに暮れた様子でまるで屍のようになってソファーに座り込んでいた。

 ツバキやアカリも目を覚まし、状況の説明や身支度を済ませながら待っていると、彼らのいる部屋に再び来客が訪れる。誰がやって来たのか、そのおおよその予想はついていた。そして今回はその予想通り、すんなりと事は運んだ。

 「お待たせしました。現場の調査があらかた完了しましたので、報告にあがりました。貴方のことですから、現場に赴かれるのではと思いまして伺いました。私が案内します。誰かを残しておくと言うわけにもいきませんので、皆さんでお越しください」

 今回はツバキらも含めた全員で現場へ向かう事となるようだ。警備隊の者の話では、ルーカス司祭の遺体が発見された現場は驚くほど綺麗だったらしく、荒らされた様子もなければ、何なら最後に警備の者がルーカス司祭と会うその寸前の状態のままだったらしい。

 ケヴィンは現場へと案内する警備隊の者に、肝心のルーカス司祭の死因について尋ねる。彼の先程の口ぶりから、外傷によるものやジークベルト大司教のように毒殺といったものとも違うようだった。

 「ルーカス司祭の死因は“心臓発作“だったようです」

 「発作?彼は持病をお持ちだったのですか?」

 「いえ、そのような報告はありませんでした。急性のものだったようです」

 「急性のもの・・・」

 ルーカスの司祭の年齢的にはあまり考えられない死因ではあるが、必ずしもあり得ない訳ではない。たまたま起こした発作なのか、或いは何か他に原因があっての事だったのだろうか。

 どちらにせよ、偶然にしては話が出来すぎている。恐らくルーカス司祭の死亡に関しても、他殺である可能性の方が高い。だが、彼を狙う理由も見当たらないのだ。

 ジークベルト大司教の殺害を、別の何者かになすりつけたいのであれば、ルーカス司祭以上に動機のある人間は宮殿にいない。否、動機でいえばもう一人、教団の決定により現職を失ったフェリクスもまた、ルーカス司祭と同じくらい大司教殺害の動機があると言える。

 そしてフェリクスは自宅にいたところを取り押さえられ、宮殿へと連れてこられている。新たな駒が手に入ったことで、更にフェリクスへのヘイトを高める為に、最初の駒であったルーカス司祭も利用したというのだろうか。

 ルーカス司祭の死因を聞かされ、様々なことに思考を巡らせていると、一行はその遺体が発見されたという現場の部屋に到着する。案の定、彼はシン達のような客室とは違い、別室にて取り調べを受けていたようだ。

 室内は客室とは大いに異なり、こじんまりとしており、部屋というよりは倉庫のようにも見える。

 「これが・・・取り調べ室?」

 「彼の場合、大司教殺害の容疑もありましたので行動を制限する意味でも、監視のし易いこちらの部屋が選ばれたようです」

 「中に見張りは?」

 「勿論、配置されていました。故に前触れのない事だったので、皆も驚いているのです。まさか彼が亡くなるとは・・・と」

 驚いていたのは警備隊も同じだったようだ。半ば彼がジークベルト殺害の班にで決まりだろうと思っていた者も多い。周りからの圧力も考えれば、それで事を納め宮殿から早々に解放する方が、色々と都合も良かっただろう。

 遺体は既に回収されており、まだ子供であるツバキやアカリが立ち入っても問題はなかった。だが、とても殺風景とも言えるほど何もない現場に、一行は何から調べたものかと頭を悩ませていた。
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