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新たな事件
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甘い微睡を過ごし、教団の大司教が遺体で発見されるという大事件が起きた一日を終えたアルバの街が、二日目の朝を迎える。
何も進展のないまま翌日へと持ち込んでしまった事件は、静かな朝とは裏腹に波乱の展開を運んで来たのだった。
宮殿内にも聞こえていた心地の良い音楽のおかげで、前日の疲れがすっかり取れたシン達が徐々に目を覚ましていく。誰よりも早く既にケヴィンが起きており、部屋にほんのりとコーヒーの匂いを漂わせていた。
「お目覚めですか?昨夜はよく眠れたようで」
「あぁ、なんか不思議と熟睡できた気がする・・・。ケヴィンはどうなんだ?」
「見ての通り、優雅な朝を迎えていますよ」
「外で何か動きは?」
「分かりません。昨日のように一人で歩き回る事が出来なくなってしまったので、どなたか見張りの人と一緒じゃないと部屋からも出られないようで・・・」
大司教の密室事件を警戒してのことか、未だ犯人の足取りが掴めぬままでいる警備隊や教団の護衛らは、互いに疑い合うそれぞれの客人を別の客人らと組ませ、監視役をさせると共に部屋から出る時は警備隊の付き添いも同行するようになったらしい。
つまり、各々の部屋を出る為には共に宿泊している別のグループの人間と、部屋の外で見張りをしている警備隊の、計三グループの人間で行動を共にしなければならない仕様へと変更になったそうだ。
その話をケヴィンから聞き、部屋を見渡したシンは自分以外に誰も起きていないのだということを知ると、彼はそれまでの間事件のことを調べたくても調べられなかったのだと悟る。
「そうか、だからか・・・。済まなかったな、調査に行けなくて」
「いや、気にしていませんよ。それに何か大きな動きがあれば・・・」
ケヴィンが何かを言いかけたその時、シン達の部屋に突然来訪者がやって来る。その人物は至って落ち着いた足取りで彼らの泊まる客室の戸を叩いたのだ。
「すみません。マティアス様、ケヴィン様、シン様ご一行様。どなたか起きていらっしゃいますでしょうか?」
「はーい、今行きます」
「俺が出ようか?」
既に一休みする支度を整えていたケヴィン。調査にも行けず折角休んでいたところに来客が来てしまったのだ。せめてもう少しだけゆっくりしてもらおうと声を掛けるシンだったが、何か外で動きがあったのかもしれないと、静止するよりも先に席を立っていた。
「いやいや、私が出るよ。貴方こそ起きたばかりだ、ゆっくりしていた方がいい」
そう言って足速に入口の方へと向かったケヴィン。彼がロックを解除し扉を開けると、そこには数人の警備隊が立っていた。それは彼らの部屋を見張っていた警備隊ではなく、別の配属の警備隊だったらしく、外室を試みようとデモしたのか、見張りの顔ぶれとは違うことに気がついたケヴィンは、新情報が入って来たのかと胸を躍らせる。
「見張りをしてくれていた方々とは違いますよね。何かありましたか?」
「えぇ、実は昨日の事件に関連するかは分かりませんが、今朝新たな動きがありまして・・・」
「動き?犯人の足取りでも掴めましたかな?」
「いえ、それが・・・今朝方、新たな遺体が発見されまして・・・」
「・・・は?」
ケヴィンが期待していた情報とは違った報告が、彼らの元へ届けられる。その警備隊の話によると、昨日のジークベルト大司教が遺体で発見されたのと同様に、先程とある人物の死亡が確認されたのだという。
「だっ誰ですか?その遺体で発見されたというのは?」
「それが、大司教への動機を疑われていた“ルーカス・マイヤー“司祭でして、意識不明での状態で室内に倒れていたのを警備隊が発見し、先程死亡が確認されたとのことです」
「ルーカス司祭が・・・」
急に入口の方が静かになり、どうしたのかと様子を伺いに来たシンは、唖然とするケヴィンに警備隊が部屋へやって来た理由について尋ねる。
「どうしたんだ、ケヴィン?何か事件について動きでもあったのか?」
「・・・動きどころか、新たに事件が起きてしまったようです・・・」
「え?一体何が・・・」
「ルーカス司祭が、ジークベルト大司教と同様に遺体で発見されたようです」
「!?」
ルーカス司祭といえば、余所者のシン達にジークベルトの事を調べてもらう為に試験を設けたり、式典やパーティーに彼らが参加できるよう色々と工面してくれた張本人だった。
教団の話やアークシティの情報について知れたのも彼のおかげと言える。そんな恩人とも言える人物が、大司教と同じく宮殿内で遺体となって発見されたというニュースは、僅かながらではあるが彼の心境を知っていたシンにとって衝撃的な知らせとなった。
「それで?死因や現場の状況は?」
「昨日の大司教の件と同じく、現在調査中です」
「現場を見に行っても?」
「それはもう暫くお待ちください。今鑑識や警備隊が調査を行なっている最中ですので・・・」
「・・・分かりました。また何かあったら知らせてください」
以外にもあっさりと引き下がったケヴィンに、シンは少し驚かされた。事件となれば強引な手段も厭わなかった彼が、何故新たに起きた事件の、それも今回は鑑識の調査と共に現場を確認できるチャンスを見過ごすなど、とても彼らしくないと感じていた。
何も進展のないまま翌日へと持ち込んでしまった事件は、静かな朝とは裏腹に波乱の展開を運んで来たのだった。
宮殿内にも聞こえていた心地の良い音楽のおかげで、前日の疲れがすっかり取れたシン達が徐々に目を覚ましていく。誰よりも早く既にケヴィンが起きており、部屋にほんのりとコーヒーの匂いを漂わせていた。
「お目覚めですか?昨夜はよく眠れたようで」
「あぁ、なんか不思議と熟睡できた気がする・・・。ケヴィンはどうなんだ?」
「見ての通り、優雅な朝を迎えていますよ」
「外で何か動きは?」
「分かりません。昨日のように一人で歩き回る事が出来なくなってしまったので、どなたか見張りの人と一緒じゃないと部屋からも出られないようで・・・」
大司教の密室事件を警戒してのことか、未だ犯人の足取りが掴めぬままでいる警備隊や教団の護衛らは、互いに疑い合うそれぞれの客人を別の客人らと組ませ、監視役をさせると共に部屋から出る時は警備隊の付き添いも同行するようになったらしい。
つまり、各々の部屋を出る為には共に宿泊している別のグループの人間と、部屋の外で見張りをしている警備隊の、計三グループの人間で行動を共にしなければならない仕様へと変更になったそうだ。
その話をケヴィンから聞き、部屋を見渡したシンは自分以外に誰も起きていないのだということを知ると、彼はそれまでの間事件のことを調べたくても調べられなかったのだと悟る。
「そうか、だからか・・・。済まなかったな、調査に行けなくて」
「いや、気にしていませんよ。それに何か大きな動きがあれば・・・」
ケヴィンが何かを言いかけたその時、シン達の部屋に突然来訪者がやって来る。その人物は至って落ち着いた足取りで彼らの泊まる客室の戸を叩いたのだ。
「すみません。マティアス様、ケヴィン様、シン様ご一行様。どなたか起きていらっしゃいますでしょうか?」
「はーい、今行きます」
「俺が出ようか?」
既に一休みする支度を整えていたケヴィン。調査にも行けず折角休んでいたところに来客が来てしまったのだ。せめてもう少しだけゆっくりしてもらおうと声を掛けるシンだったが、何か外で動きがあったのかもしれないと、静止するよりも先に席を立っていた。
「いやいや、私が出るよ。貴方こそ起きたばかりだ、ゆっくりしていた方がいい」
そう言って足速に入口の方へと向かったケヴィン。彼がロックを解除し扉を開けると、そこには数人の警備隊が立っていた。それは彼らの部屋を見張っていた警備隊ではなく、別の配属の警備隊だったらしく、外室を試みようとデモしたのか、見張りの顔ぶれとは違うことに気がついたケヴィンは、新情報が入って来たのかと胸を躍らせる。
「見張りをしてくれていた方々とは違いますよね。何かありましたか?」
「えぇ、実は昨日の事件に関連するかは分かりませんが、今朝新たな動きがありまして・・・」
「動き?犯人の足取りでも掴めましたかな?」
「いえ、それが・・・今朝方、新たな遺体が発見されまして・・・」
「・・・は?」
ケヴィンが期待していた情報とは違った報告が、彼らの元へ届けられる。その警備隊の話によると、昨日のジークベルト大司教が遺体で発見されたのと同様に、先程とある人物の死亡が確認されたのだという。
「だっ誰ですか?その遺体で発見されたというのは?」
「それが、大司教への動機を疑われていた“ルーカス・マイヤー“司祭でして、意識不明での状態で室内に倒れていたのを警備隊が発見し、先程死亡が確認されたとのことです」
「ルーカス司祭が・・・」
急に入口の方が静かになり、どうしたのかと様子を伺いに来たシンは、唖然とするケヴィンに警備隊が部屋へやって来た理由について尋ねる。
「どうしたんだ、ケヴィン?何か事件について動きでもあったのか?」
「・・・動きどころか、新たに事件が起きてしまったようです・・・」
「え?一体何が・・・」
「ルーカス司祭が、ジークベルト大司教と同様に遺体で発見されたようです」
「!?」
ルーカス司祭といえば、余所者のシン達にジークベルトの事を調べてもらう為に試験を設けたり、式典やパーティーに彼らが参加できるよう色々と工面してくれた張本人だった。
教団の話やアークシティの情報について知れたのも彼のおかげと言える。そんな恩人とも言える人物が、大司教と同じく宮殿内で遺体となって発見されたというニュースは、僅かながらではあるが彼の心境を知っていたシンにとって衝撃的な知らせとなった。
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「昨日の大司教の件と同じく、現在調査中です」
「現場を見に行っても?」
「それはもう暫くお待ちください。今鑑識や警備隊が調査を行なっている最中ですので・・・」
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以外にもあっさりと引き下がったケヴィンに、シンは少し驚かされた。事件となれば強引な手段も厭わなかった彼が、何故新たに起きた事件の、それも今回は鑑識の調査と共に現場を確認できるチャンスを見過ごすなど、とても彼らしくないと感じていた。
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