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神代 コウ

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強硬手段

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 大方、想像通りの反応を見せるカルロス。他の者達に宮殿での事件のことを話しても、きっと同じような反応が帰ってきた事だろう。ただ一つ違うのは、彼も二人のように、宮殿で何かが起こっているのであろうと疑っていると言う点だ。

 「何だよそれ・・・。だとしたら、やけに静かじゃねぇか?大司教が死んだとなりゃぁもっと騒ぎになりそうなもんだが・・・」

 「ちょっと!もうちょっと声を押せてよ」

 「騒ぎによる民衆の混乱と、街が機能しなくなることを予想して情報操作を行ったんだろう。おかげで本当のことを知ってる俺達が、それを真実であると言えない状況になっちまってる」

 レオンの言うように、静かな街中で彼らのように真実を知る者が騒ぎ立てれば、すぐにその場所や人物は警備隊の耳に入るだろう。波の立たぬ状況を作り出すことで、僅かな変化にも気がつけるよう姿の見えぬ犯人を捕らえる包囲網を敷いていたということなのだろうか。

 「誰も信じねぇだろ、そんな話・・・」

 「だからお前に話たんだ。今まで会ってきた人間の中で、お前だけが唯一この状況に違和感を感じていたんだからな」

 「しかし、一体どうしてお前らはそんな情報を手に入れたんだ?だって誰も知らねぇんだろ?」

 「俺はフェリクス先生の、ジルはカタリナさんが警備隊に質問され、拘束される様子をこの目で見たからだよ」

 「何だよそれ!?じゃぁ真実を知っていてもどうしようもねぇって事か!?」

 カルロスの質問に、二人は口をつぐんでしまう。それもその筈。彼という疑問を抱く者が現れるまで、二人はそのことを誰にも話せず、気づかれないように細心の注意を払って行動していた。

 「これから二人はどうしようとしてたんだ?」

 「学校へ行って、他に何か知ってる者がいないか探そうと思っていたんだ。教会や学校なら俺達が多少動いたところで、怪しまれることもないだろうからな」

 すると、どうやらカルロスが既に学校での聞き込みをしていたようで、宮殿から帰らぬ者達の事については何も情報が得られなかったと語る。大司教の件もそうだが、彼の調べていた件も内容としては同じこと。

 この後二人が学校へ行ったところで、カルロスと同じように有益な情報を得ることは出来ないだろう。

 「学校へ行っても同じだろうぜ?教師の連中も、フェリクス先生の事に関しては何も知らない様子だったし、生徒達も宮殿まで行ってた連中はまるで何も知らないって感じだったからな」

 「まさに八方塞がりって状況か・・・。このまま動きがあるまで待つしかないって事か?」

 「でも、このままフェリクス先生やカタリナさんを待ち続けて良いのかしら?二人ともパーティーで大司教と会ってる筈でしょ?警備隊のあの様子・・・普通じゃなかった。変な疑いをかけれらてなければいいけど・・・」

 不安そうにするジルに、レオンもカルロスもかける言葉が見つからなかった。事件の起きた渦中の宮殿の外では、得られる情報に限りがある。やはり宮殿の中にいる者でなければ、真相に触れることすら出来ない。

 すっかり静まり返る中、ただじっと事態の収束を待っているだけなど出来ぬと声を上げたのはカルロスだった。彼は自ら宮殿の警備隊の元へ向かい、抗議しに行くと言い出したのだ。

 「そんなことをしたところで、ろくに話など聞けないだろう。それに余計な騒ぎを起こせばお前だって・・・」

 「そうだよ、騒ぎを起こすのが目的さ。お前らから聞いた事件の話を持ち出せば、奴らだって俺を放っておかないだろ?」

 ただ騒ぎを起こすだけでは、宮殿ではなくアルバの警備隊に事情聴取されるだけになってしまう。だが、恐らく外部に漏らしていないであろう大司教の件を知っているとなれば話は別だ。

 どこからその情報を手に入れたのだと、彼らもカルロスを放っておかないだろう。カルロスは二人かこの話を聞いたとは言わないと言っているが、警備隊も犯人探しに躍起になっている。

 怪しい人物に情報を吐かせる為なら、例え学生であろうと容赦はしないだろう。

 「よせ、カルロス。変に騒ぎを起こせばお前も無事では済まないだろう。それに警備隊のあの様子・・・只事ではなかった。最悪、お前と接触している俺達だって・・・」

 「お前らのことは絶対言わねぇよ。少しは俺を信じろ。それに蚊帳の外の俺達が犯人であるなんて誰が思うよ?俺が宮殿に入って情報を掴んできてやる。だからお前らは外で待ってろ」

 席を立ち、今にも宮殿へ向かおうとするカルロスを止めるレオン。彼は隠されている事実を口にすることがどんなに危険なことであるか分かっているのだろうか。

 「待てって!お前、本当にどんなことをしようとしているのか分かってるのか?」

 立ち去ろうとするカルロスの腕を掴むレオン。そんな彼に対し、カルロスは二人が直接宮殿へ向かえない本当の理由について、彼ら自身も口にできなかった言葉を容赦なく浴びせる。
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