1,301 / 1,646
餌を使った揺動
しおりを挟む
二人が最初に向かったのは、マティアス司祭が普段いるグーゲル教会へとやって来た。案の定、教会は静かな様子だったが、念の為中を覗いてみると、普段と変わらぬ様子で別の牧師や教会の者が仕事をしていた。
中に入り事情を伺うと、マティアス司祭は昨日の式典以来戻っていないそうだ。だがそれは事前に知らされていた事のようで、自分が戻らなくとも普段通り教会を回して欲しいとの事だったようだ。
やはり教会は彼らを微塵も疑う事なく、持ち合わせている情報を提示してくれる。二人は少し踏み込んだところで、宮殿で何か起きたのかどうかを教会の者に尋ねてみる。もしかしたら宮殿内の情報が何か聞けるかもしれない。
しかし、教会の男は何かあったとはどういう事だと逆に突っ込まれてしまい、これ以上はまずいと判断した二人は、その場をうまく誤魔化し教会を後にした。
「やっぱり司祭は宮殿か・・・。後は口止めされてるのか、本当に何も知らないのかだが・・・ジルはどう思う?」
「口止め・・・といった様子はなかったように思うけれど・・・」
「まぁ、考えても仕方がないか。次はニクラス教会だな」
司祭が宮殿から戻っていない以外に、目新しい情報を掴めなかったジルとレオンは、アルバにあるもう一つの教会で、今正に犯人ではないかと疑われ監禁されているルーカス司祭の務めるニクラス教会へと向かう。
だが、どちらかというと二人が期待していたのはグーゲル教会の方だったのだが、そこで何も掴めなかったというのが少し二人の心に影を落とした。
しかしそんな彼らの不安は、とある人物によってかき消される事になる。それが良いことなのか悪い事なのかは分からないが、全く進展のなかった二人のところに新たな風を巻き起こしていく。
二人が重たい足取りでニクラス教会の前へやって来ると、中から何者かの声が響いていた。その声は教会に似つかわしくない怒号のようなもので、言い争っているというよりは、一方的に一人の人物が騒いでいるような雰囲気だった。
ジルとレオンは顔を見合わせて、急ぎ教会の扉を開ける。するとそこでは、教会の者に食ってかかる若者の姿があった。扉が開いた事により光が差し込んだのが目に入ったようで、声を上げていた人物と教会の者が二人の方へ視線を送る。
片方は、教会の主人であるルーカス司祭ではない別の牧師のようだ。そして問題の人物はその牧師の前で声を荒立てていた青年。だが二人はその青年の顔を知っていた。姿こそ彼らの知るいつもの服装とは違っていたが、その人物は二人と同じ音楽学校の生徒である、カルロスだったのだ。
「んだよ、お前らか・・・」
「カルロス?何故教会で騒いでいるんだ?」
「騒いでる訳じゃねぇ!こいつらが何か隠してやがるから問い詰めてるところなんだよ!」
一瞬、なんの話か分からなかったレオンだが、後ろからついてきていたジルが彼の服を引っ張り、何かを訴えるような表情をしていた。そこから何かを察したレオンは、カルロスが教会の者に聞いていたという話の内容について尋ねる事にした。
「お騒がせしてしまい、申し訳ありません。彼の話は私達が伺います」
「あぁ!?なんでッ・・・!」
今度はカルロスの方へ周り、今は黙ってレオンに従うようにと彼を宥めた。ジルとレオンが一緒にいる事にも驚いた様子を見せたカルロスだったが、そんな彼らが自身の邪魔に入るのも何かおかしいと違和感を感じたようで、困惑しながらも三人は教会の隅にある席へと向かい腰を下ろした。
「何で邪魔すんだよ。ってうか、何でお前らが一緒にいるんだ?お前らそんなに仲良かったのか?」
「馬鹿を言うなカルロス。それより、さっきの話について聞かせてくれ。教会の人に何を聞いていた?」
何か聞きせまる表情をしていたレオン達の剣幕に押され、カルロスは先程教会の者に訪ねていた内容について明かした。
「何って・・・。アイツら司祭が宮殿から帰ってこない理由について、片付けだの何だのって、そればっかりしか言わねぇんだよ。だからよぉ、マティアス司祭のパシリやってるクリスに何か知らねぇか聞こうと思ったんだけど、アイツも昨日、宮殿で見かけて以来誰もどこにいるか知らないって言いやがるんだ・・・」
カルロスの話によると、どうやら帰ってこないのは司祭達や式典に関わった者達だけでなく、何故か音楽学校の学生であるクリスまでもが宮殿から帰ってきていないらしい。
クリスに用事があったというカルロスは、彼がどこへ行ったのか周りに尋ねるも誰も彼の行方を知らず、宮殿から帰ってきた者に尋ねようと色々と独自で調べてみたところ、一部の者達が軒並み宮殿から帰ってこないと言うことに行き着いたのだという。
明らかに彼らの言う片付けに関係のない人物まで帰らぬ事に疑問を持ったカルロスは、宮殿で何をしているのかを隠しているのではないかと疑っていたのだと二人に話したのだった。
「おかしくねぇか?司祭達ならまだしも、関係のない連中まで何人か宮殿から戻って来てねぇんだとよ」
「・・・・・」
考えている素振りを見せるレオンに、ジルは例の事件について話してみてはどうかと提案する。何の話だと不思議そうな表情を向けるカルロスに、レオンは彼を上手く利用できないかと考える。どうやらジルも同じ考えだったようだ。
二人は宮殿で大司教が亡くなったという情報をカルロスに話し、彼の動向を伺ってみる事にした。
中に入り事情を伺うと、マティアス司祭は昨日の式典以来戻っていないそうだ。だがそれは事前に知らされていた事のようで、自分が戻らなくとも普段通り教会を回して欲しいとの事だったようだ。
やはり教会は彼らを微塵も疑う事なく、持ち合わせている情報を提示してくれる。二人は少し踏み込んだところで、宮殿で何か起きたのかどうかを教会の者に尋ねてみる。もしかしたら宮殿内の情報が何か聞けるかもしれない。
しかし、教会の男は何かあったとはどういう事だと逆に突っ込まれてしまい、これ以上はまずいと判断した二人は、その場をうまく誤魔化し教会を後にした。
「やっぱり司祭は宮殿か・・・。後は口止めされてるのか、本当に何も知らないのかだが・・・ジルはどう思う?」
「口止め・・・といった様子はなかったように思うけれど・・・」
「まぁ、考えても仕方がないか。次はニクラス教会だな」
司祭が宮殿から戻っていない以外に、目新しい情報を掴めなかったジルとレオンは、アルバにあるもう一つの教会で、今正に犯人ではないかと疑われ監禁されているルーカス司祭の務めるニクラス教会へと向かう。
だが、どちらかというと二人が期待していたのはグーゲル教会の方だったのだが、そこで何も掴めなかったというのが少し二人の心に影を落とした。
しかしそんな彼らの不安は、とある人物によってかき消される事になる。それが良いことなのか悪い事なのかは分からないが、全く進展のなかった二人のところに新たな風を巻き起こしていく。
二人が重たい足取りでニクラス教会の前へやって来ると、中から何者かの声が響いていた。その声は教会に似つかわしくない怒号のようなもので、言い争っているというよりは、一方的に一人の人物が騒いでいるような雰囲気だった。
ジルとレオンは顔を見合わせて、急ぎ教会の扉を開ける。するとそこでは、教会の者に食ってかかる若者の姿があった。扉が開いた事により光が差し込んだのが目に入ったようで、声を上げていた人物と教会の者が二人の方へ視線を送る。
片方は、教会の主人であるルーカス司祭ではない別の牧師のようだ。そして問題の人物はその牧師の前で声を荒立てていた青年。だが二人はその青年の顔を知っていた。姿こそ彼らの知るいつもの服装とは違っていたが、その人物は二人と同じ音楽学校の生徒である、カルロスだったのだ。
「んだよ、お前らか・・・」
「カルロス?何故教会で騒いでいるんだ?」
「騒いでる訳じゃねぇ!こいつらが何か隠してやがるから問い詰めてるところなんだよ!」
一瞬、なんの話か分からなかったレオンだが、後ろからついてきていたジルが彼の服を引っ張り、何かを訴えるような表情をしていた。そこから何かを察したレオンは、カルロスが教会の者に聞いていたという話の内容について尋ねる事にした。
「お騒がせしてしまい、申し訳ありません。彼の話は私達が伺います」
「あぁ!?なんでッ・・・!」
今度はカルロスの方へ周り、今は黙ってレオンに従うようにと彼を宥めた。ジルとレオンが一緒にいる事にも驚いた様子を見せたカルロスだったが、そんな彼らが自身の邪魔に入るのも何かおかしいと違和感を感じたようで、困惑しながらも三人は教会の隅にある席へと向かい腰を下ろした。
「何で邪魔すんだよ。ってうか、何でお前らが一緒にいるんだ?お前らそんなに仲良かったのか?」
「馬鹿を言うなカルロス。それより、さっきの話について聞かせてくれ。教会の人に何を聞いていた?」
何か聞きせまる表情をしていたレオン達の剣幕に押され、カルロスは先程教会の者に訪ねていた内容について明かした。
「何って・・・。アイツら司祭が宮殿から帰ってこない理由について、片付けだの何だのって、そればっかりしか言わねぇんだよ。だからよぉ、マティアス司祭のパシリやってるクリスに何か知らねぇか聞こうと思ったんだけど、アイツも昨日、宮殿で見かけて以来誰もどこにいるか知らないって言いやがるんだ・・・」
カルロスの話によると、どうやら帰ってこないのは司祭達や式典に関わった者達だけでなく、何故か音楽学校の学生であるクリスまでもが宮殿から帰ってきていないらしい。
クリスに用事があったというカルロスは、彼がどこへ行ったのか周りに尋ねるも誰も彼の行方を知らず、宮殿から帰ってきた者に尋ねようと色々と独自で調べてみたところ、一部の者達が軒並み宮殿から帰ってこないと言うことに行き着いたのだという。
明らかに彼らの言う片付けに関係のない人物まで帰らぬ事に疑問を持ったカルロスは、宮殿で何をしているのかを隠しているのではないかと疑っていたのだと二人に話したのだった。
「おかしくねぇか?司祭達ならまだしも、関係のない連中まで何人か宮殿から戻って来てねぇんだとよ」
「・・・・・」
考えている素振りを見せるレオンに、ジルは例の事件について話してみてはどうかと提案する。何の話だと不思議そうな表情を向けるカルロスに、レオンは彼を上手く利用できないかと考える。どうやらジルも同じ考えだったようだ。
二人は宮殿で大司教が亡くなったという情報をカルロスに話し、彼の動向を伺ってみる事にした。
0
お気に入りに追加
305
あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜
FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio
通称、【GKM】
これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。
世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。
その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。
この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。
その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…


【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する
こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」
そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。
だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。
「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」
窮地に追い込まれたフォーレスト。
だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。
こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。
これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる