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神代 コウ

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植物学の宝庫

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 驚いていた理由については、何か深い訳があったなどではないようで、単純にアカリの若さから植物や毒、更にはそれらを考慮した簡単な料理の組み合わせなど、多くの知識を収めていることに感心しているかのような驚きだった。

 「お若いのにとても優秀なお方のようですね」

 「いえ、私がすごいのではなく、学ばせて頂いた場所がとても分かりやすくまとめられていただけだと思います」

 「一体どこでその知識を身につけたのですか?」

 「“リナムル“という森に囲まれた街で・・・」

 アカリが植物学を身に付けた街の名を口にした途端、アンドレイらの表情は再び驚きのものへと変わり、互いに顔を見合わせた。ざわめき出すような反応に困惑したアカリが何事かと尋ねる。

 すると彼らは、この地へやって来た別の理由について語り始めた。

 「驚きました・・・。まさかリナムルからいらしていたとは・・・」

 「リナムルがどうかされたのですか?」

 どうやら彼らがアルバへやって来た理由の一つに、リナムルへ向かうという目的もあったのだという。なかなかこの辺りの地方へ遠征することがなかった彼らは、以前から植物について新たな発見や貴重な情報、知識が豊富にあるというリナムルへ興味を抱いており、今回のアルバへの正体を機にリナムルを訪れる予定だったと話す。

 「ですがリナムルは、危険な地としても噂のある場所。それなりの戦力を有していなければ、そんな噂の餌食になってしまう考え、今回連れてきた護衛は私の国でも有数の実力者ばかりなのです」

 アンドレイは自分達の目的を話すと、今度は嬉しそうに自らの護衛達について説明し始めた。その姿はまるで、自分の大事にしているコレクションの良さを人に薦めるかのようなものだった。

 初めに紹介されたのは、最初に厨房で彼らと合流した際に唯一名前を呼ばれていた美しい褐色の女性で、ミアとも馬が合いそうな性格をしている“シアラ“という、アカリと同じく植物の知識や毒に詳しい人物だった。

 次に紹介されたのは、アンドレイらと出会った時にも一際視線を集めていた、全身を覆い隠すようにローブを羽織った大柄な男性で、危険な発言で暴走するシアラをいつも止めているという“チャド“。

 そして最後に、そんな大柄な彼の肩に乗っている全長三十センチ程の大きさをした小人族の青年“ケイシー“。彼はとてもシャイらしく、人前で話すことが苦手らしく、いつもチャドの陰に隠れているのだそうだ。

 アンドレイ本人が異国風の衣装を身に纏っているからか、彼の連れている護衛もかなり個性的なメンバーで構成されている。他にも部隊を連れて来ているそうなのだが、式典や宮殿でのパーティーには彼らだけを連れて来たのだと語る。

 アンドレイだけでなく、他の者達も数名の護衛こそ宮殿に連れて来てはいるが、他にも多くの者達をアルバの街中や外に待機させているようだ。それだけ音楽家というものは、この世界において重宝されている存在らしい。

 「しかしながら、あのリナムルからやって来たということは、あなた方も相当な手練れのようですね。友好関係を結べそうで安心しました」

 笑顔で語るアンドレイを尻目に、その護衛達はまるで品定めをするかのようにシン達へと視線を送っていた。敵意はないのだが、試されているかのような視線に一行は言葉を失う。

 「して、リナムルの様子は如何でしたか?噂の真相とは如何程のものだったのでしょう?その辺りの話をお聞かせいただけると、非常に助かります」

 どうやら彼らの耳にしているという噂というものは、リナムルの森で起きていた一度入ったら出てこれないという、一部では迷いの森とも呼ばれる行方不明になるというものだった。

 実際は獣人達によって捕えられていたのだが、今はそのような心配はない。リナムルでの一件を解決したことにより、捕えられていた者達や森に住む様々な種族の生き物達は、今新しい形の関係性を築き上げ、一丸となって街の再建に尽力している。

 獣人族のアズールらのことを話して揉め事になってしまっては、そんな彼らに申し訳が立たない。シン達は真実を伏せながらも、森で起きていた行方不明事件は、非道な生物実験を行なっていた研究所と、そこで作られた生命体によるものだったとアンドレイらに話し、今は傷ついた街の再建の為、森に生きる者達が団結していると説明した。

 「生物実験・・・ですか・・・。私も音楽家として様々な土地を訪れるのですが、たまに同じような暗い噂話を耳にすることもありました。この目で見たわけではないので、俄かには信じがたかったのですが・・・。いい機会かもしれません。リナムルを訪れた際には、それらについても調べてみましょう」
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