1,291 / 1,646
植物学の宝庫
しおりを挟む
驚いていた理由については、何か深い訳があったなどではないようで、単純にアカリの若さから植物や毒、更にはそれらを考慮した簡単な料理の組み合わせなど、多くの知識を収めていることに感心しているかのような驚きだった。
「お若いのにとても優秀なお方のようですね」
「いえ、私がすごいのではなく、学ばせて頂いた場所がとても分かりやすくまとめられていただけだと思います」
「一体どこでその知識を身につけたのですか?」
「“リナムル“という森に囲まれた街で・・・」
アカリが植物学を身に付けた街の名を口にした途端、アンドレイらの表情は再び驚きのものへと変わり、互いに顔を見合わせた。ざわめき出すような反応に困惑したアカリが何事かと尋ねる。
すると彼らは、この地へやって来た別の理由について語り始めた。
「驚きました・・・。まさかリナムルからいらしていたとは・・・」
「リナムルがどうかされたのですか?」
どうやら彼らがアルバへやって来た理由の一つに、リナムルへ向かうという目的もあったのだという。なかなかこの辺りの地方へ遠征することがなかった彼らは、以前から植物について新たな発見や貴重な情報、知識が豊富にあるというリナムルへ興味を抱いており、今回のアルバへの正体を機にリナムルを訪れる予定だったと話す。
「ですがリナムルは、危険な地としても噂のある場所。それなりの戦力を有していなければ、そんな噂の餌食になってしまう考え、今回連れてきた護衛は私の国でも有数の実力者ばかりなのです」
アンドレイは自分達の目的を話すと、今度は嬉しそうに自らの護衛達について説明し始めた。その姿はまるで、自分の大事にしているコレクションの良さを人に薦めるかのようなものだった。
初めに紹介されたのは、最初に厨房で彼らと合流した際に唯一名前を呼ばれていた美しい褐色の女性で、ミアとも馬が合いそうな性格をしている“シアラ“という、アカリと同じく植物の知識や毒に詳しい人物だった。
次に紹介されたのは、アンドレイらと出会った時にも一際視線を集めていた、全身を覆い隠すようにローブを羽織った大柄な男性で、危険な発言で暴走するシアラをいつも止めているという“チャド“。
そして最後に、そんな大柄な彼の肩に乗っている全長三十センチ程の大きさをした小人族の青年“ケイシー“。彼はとてもシャイらしく、人前で話すことが苦手らしく、いつもチャドの陰に隠れているのだそうだ。
アンドレイ本人が異国風の衣装を身に纏っているからか、彼の連れている護衛もかなり個性的なメンバーで構成されている。他にも部隊を連れて来ているそうなのだが、式典や宮殿でのパーティーには彼らだけを連れて来たのだと語る。
アンドレイだけでなく、他の者達も数名の護衛こそ宮殿に連れて来てはいるが、他にも多くの者達をアルバの街中や外に待機させているようだ。それだけ音楽家というものは、この世界において重宝されている存在らしい。
「しかしながら、あのリナムルからやって来たということは、あなた方も相当な手練れのようですね。友好関係を結べそうで安心しました」
笑顔で語るアンドレイを尻目に、その護衛達はまるで品定めをするかのようにシン達へと視線を送っていた。敵意はないのだが、試されているかのような視線に一行は言葉を失う。
「して、リナムルの様子は如何でしたか?噂の真相とは如何程のものだったのでしょう?その辺りの話をお聞かせいただけると、非常に助かります」
どうやら彼らの耳にしているという噂というものは、リナムルの森で起きていた一度入ったら出てこれないという、一部では迷いの森とも呼ばれる行方不明になるというものだった。
実際は獣人達によって捕えられていたのだが、今はそのような心配はない。リナムルでの一件を解決したことにより、捕えられていた者達や森に住む様々な種族の生き物達は、今新しい形の関係性を築き上げ、一丸となって街の再建に尽力している。
獣人族のアズールらのことを話して揉め事になってしまっては、そんな彼らに申し訳が立たない。シン達は真実を伏せながらも、森で起きていた行方不明事件は、非道な生物実験を行なっていた研究所と、そこで作られた生命体によるものだったとアンドレイらに話し、今は傷ついた街の再建の為、森に生きる者達が団結していると説明した。
「生物実験・・・ですか・・・。私も音楽家として様々な土地を訪れるのですが、たまに同じような暗い噂話を耳にすることもありました。この目で見たわけではないので、俄かには信じがたかったのですが・・・。いい機会かもしれません。リナムルを訪れた際には、それらについても調べてみましょう」
「お若いのにとても優秀なお方のようですね」
「いえ、私がすごいのではなく、学ばせて頂いた場所がとても分かりやすくまとめられていただけだと思います」
「一体どこでその知識を身につけたのですか?」
「“リナムル“という森に囲まれた街で・・・」
アカリが植物学を身に付けた街の名を口にした途端、アンドレイらの表情は再び驚きのものへと変わり、互いに顔を見合わせた。ざわめき出すような反応に困惑したアカリが何事かと尋ねる。
すると彼らは、この地へやって来た別の理由について語り始めた。
「驚きました・・・。まさかリナムルからいらしていたとは・・・」
「リナムルがどうかされたのですか?」
どうやら彼らがアルバへやって来た理由の一つに、リナムルへ向かうという目的もあったのだという。なかなかこの辺りの地方へ遠征することがなかった彼らは、以前から植物について新たな発見や貴重な情報、知識が豊富にあるというリナムルへ興味を抱いており、今回のアルバへの正体を機にリナムルを訪れる予定だったと話す。
「ですがリナムルは、危険な地としても噂のある場所。それなりの戦力を有していなければ、そんな噂の餌食になってしまう考え、今回連れてきた護衛は私の国でも有数の実力者ばかりなのです」
アンドレイは自分達の目的を話すと、今度は嬉しそうに自らの護衛達について説明し始めた。その姿はまるで、自分の大事にしているコレクションの良さを人に薦めるかのようなものだった。
初めに紹介されたのは、最初に厨房で彼らと合流した際に唯一名前を呼ばれていた美しい褐色の女性で、ミアとも馬が合いそうな性格をしている“シアラ“という、アカリと同じく植物の知識や毒に詳しい人物だった。
次に紹介されたのは、アンドレイらと出会った時にも一際視線を集めていた、全身を覆い隠すようにローブを羽織った大柄な男性で、危険な発言で暴走するシアラをいつも止めているという“チャド“。
そして最後に、そんな大柄な彼の肩に乗っている全長三十センチ程の大きさをした小人族の青年“ケイシー“。彼はとてもシャイらしく、人前で話すことが苦手らしく、いつもチャドの陰に隠れているのだそうだ。
アンドレイ本人が異国風の衣装を身に纏っているからか、彼の連れている護衛もかなり個性的なメンバーで構成されている。他にも部隊を連れて来ているそうなのだが、式典や宮殿でのパーティーには彼らだけを連れて来たのだと語る。
アンドレイだけでなく、他の者達も数名の護衛こそ宮殿に連れて来てはいるが、他にも多くの者達をアルバの街中や外に待機させているようだ。それだけ音楽家というものは、この世界において重宝されている存在らしい。
「しかしながら、あのリナムルからやって来たということは、あなた方も相当な手練れのようですね。友好関係を結べそうで安心しました」
笑顔で語るアンドレイを尻目に、その護衛達はまるで品定めをするかのようにシン達へと視線を送っていた。敵意はないのだが、試されているかのような視線に一行は言葉を失う。
「して、リナムルの様子は如何でしたか?噂の真相とは如何程のものだったのでしょう?その辺りの話をお聞かせいただけると、非常に助かります」
どうやら彼らの耳にしているという噂というものは、リナムルの森で起きていた一度入ったら出てこれないという、一部では迷いの森とも呼ばれる行方不明になるというものだった。
実際は獣人達によって捕えられていたのだが、今はそのような心配はない。リナムルでの一件を解決したことにより、捕えられていた者達や森に住む様々な種族の生き物達は、今新しい形の関係性を築き上げ、一丸となって街の再建に尽力している。
獣人族のアズールらのことを話して揉め事になってしまっては、そんな彼らに申し訳が立たない。シン達は真実を伏せながらも、森で起きていた行方不明事件は、非道な生物実験を行なっていた研究所と、そこで作られた生命体によるものだったとアンドレイらに話し、今は傷ついた街の再建の為、森に生きる者達が団結していると説明した。
「生物実験・・・ですか・・・。私も音楽家として様々な土地を訪れるのですが、たまに同じような暗い噂話を耳にすることもありました。この目で見たわけではないので、俄かには信じがたかったのですが・・・。いい機会かもしれません。リナムルを訪れた際には、それらについても調べてみましょう」
0
お気に入りに追加
302
あなたにおすすめの小説
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
スキル盗んで何が悪い!
大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物
"スキル"それは人が持つには限られた能力
"スキル"それは一人の青年の運命を変えた力
いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。
本人はこれからも続く生活だと思っていた。
そう、あのゲームを起動させるまでは……
大人気商品ワールドランド、略してWL。
ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。
しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……
女の子の正体は!? このゲームの目的は!?
これからどうするの主人公!
【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる