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危険な晩餐会
しおりを挟む 一通り話を終えたシン達は、ベルヘルムに他に聞きたいことはないかと尋ねられ、現状これ以上掘り下げることもなくそこで対話が終わろうとしていた。すると最後にケヴィンは、自分達の前に何故アンドレイらが尋ねて来たのか、その理由について尋ねる。
「それは答え兼ねる。質問に答えるのは、あくまで私のことに関してだけだ。他の者達が私の元を訪れた理由や何を話したのかに関して、他の者達に口外するつもりはない。まぁ本人達が話しても構わないと言うのであれば話してもいいが、今は確認のしようがないからな」
「そうですか。でもベルヘルム氏が、見た目通り厳格な方で安心しました」
そう言って胸を撫で下ろすように息を吐いたケヴィンの顔は、文字通り緊張から解放されたように柔らかな表情をしていた。それがベルヘルムにとって不思議だったようで、珍しく彼の方からケヴィンに対し質問が飛んだ。
「安心した?どういう意味かね?」
「いえ、貴方と話していて分かったことがあるのです。少々言葉に棘があるかも知れませんが、どうか機嫌を悪くしないで聞いて頂けたら幸いです」
改まった言い方に、質問をしたベルヘルムもその答えを聞く為の姿勢を整える。
「貴方と会う前は、裏の顔がある食えぬ人物かと思っていましたが、どうやら貴方はただ真っ直ぐな方だっただけのようですね」
「・・・嘘をついているだけかも知れんぞ?」
「ははは、それはないでしょう。少なくとも私はそう思います」
ベルヘルムが何を試そうとしても、対話を経て印象を変えたケヴィンは、もはやベルヘルムを疑うことはなかった。それも探偵として身についた勘なのだろうか。それとも覆しようのない根拠を元に口にしているのか。
「食えぬ奴とは、まさに君のような奴の事をいうのだな・・・。どちらにせよ、私は話すべきことは全て話した。信じるか信じないかは君達次第だ」
「貴重な時間をありがとうございました、ベルヘルム氏。質問は以上です。私達はこれで帰りますが、貴方の方から他に質問はありますか?」
「いや、私もこれ以上はない。後は探偵の腕を見込んで任せるとしよう。早くこの場から解放される事を祈っているよ」
そういうと一行は席を立ち、会釈を交わしてベルヘルムの部屋を後にした。中にいた護衛に案内され、出口までやって来ると、中から扉を開こうとする前に外から扉が開かれた。
「ん?話はもう終わったのか?」
顔を覗かせたのは部屋の外で見張りをしていたプラチドだった。中にいた護衛が何かあったのかと彼に尋ねると、厨房から食事の誘いが来ているのだと伝える。
見送りに来ていたベルヘルムが、会話の内容を聞いていたのか護衛方z寝るまでもなく返事を返す。食事は自分達で済ませる。疑いのある者達が作ったものは安心して口にすることは出来ない。それがベルヘルムの答えだった。
そして彼曰く、ベルヘルムの連れてきた護衛の中には、食べ物の中に隠された毒素を感知できる能力を携えた者はいないのだそうだ。身内の者達しか信じられない現状では、彼の判断も致し方がないだろう。
シン達は外で待たせていたミア達と合流すると、食事の誘いがあったという厨房へ戻るということで意見が一致し、再びきた道を戻ることになった。時刻もいつの間にか夕食時になっており、腹を空かせたツバキが早く行こうとせかしてくる。
伝言を伝えにきたのは、厨房にいた料理人の内の一人らしく、一応宮殿内にいる一部を除いた全ての団体やチームに声をかけたのだそうだ。厨房の横には、全員がやって来たとしても収容できるだけのスペースがある、閑散としたレストランがある。
一行の中では、アカリが毒の感知が可能であり、ケヴィンもマティアスも彼女やシェフを疑う様子はなかった。
厨房へやって来ると、彼らの帰りをシェフが迎え入れ、料理の準備が出来ているとレストランの方へと通される。すると、そこに集まっていたのは、厨房で初顔合わせとなったアンドレイの一行だけだった。
「おや?奇遇ですね。またお会いすることになるとは・・・」
「こちらこそまたお会いできて光栄です、アンドレイ氏。ですが・・・この様子だと他の方々は警戒なさっておいでのようですね」
「無理もありませんね。昨夜人が亡くなっている同じ場所で出される料理を口にするのですから。それに今、殺害の方法として有力視されているのは毒殺。余計に口にするものには注意していることでしょう」
既に席についていたアンドレイが、ケヴィンに対し淡々と事実を口にしながら会話を始める。しかし、それならアンドレイらも警戒するべきなのではと思うシンだったが、いち早く毒素について調べにきていたのはアンドレイらが先だった。
恐らく彼の護衛の中には、食事や食器、衣類や建物の至る所にある毒素を感知できる者がいるのだろう。故に何の疑いもなく、安心して宮殿の用意する食事を口にしようと思えるのだろう。
「でも驚きました。正直なところ、私達以外にには誰も来ないのではと思っていましたので。あなた方の中にも、毒について知識のあるお方が?」
「えぇ、こちらの女性が・・・」
そう言ってアンドレイに見せるように道を開けたケヴィンは、後ろにいたアカリの姿をお披露目する。恥ずかしそうにする彼女の姿を見て、アンドレイらは少し驚いているようだった。
「それは答え兼ねる。質問に答えるのは、あくまで私のことに関してだけだ。他の者達が私の元を訪れた理由や何を話したのかに関して、他の者達に口外するつもりはない。まぁ本人達が話しても構わないと言うのであれば話してもいいが、今は確認のしようがないからな」
「そうですか。でもベルヘルム氏が、見た目通り厳格な方で安心しました」
そう言って胸を撫で下ろすように息を吐いたケヴィンの顔は、文字通り緊張から解放されたように柔らかな表情をしていた。それがベルヘルムにとって不思議だったようで、珍しく彼の方からケヴィンに対し質問が飛んだ。
「安心した?どういう意味かね?」
「いえ、貴方と話していて分かったことがあるのです。少々言葉に棘があるかも知れませんが、どうか機嫌を悪くしないで聞いて頂けたら幸いです」
改まった言い方に、質問をしたベルヘルムもその答えを聞く為の姿勢を整える。
「貴方と会う前は、裏の顔がある食えぬ人物かと思っていましたが、どうやら貴方はただ真っ直ぐな方だっただけのようですね」
「・・・嘘をついているだけかも知れんぞ?」
「ははは、それはないでしょう。少なくとも私はそう思います」
ベルヘルムが何を試そうとしても、対話を経て印象を変えたケヴィンは、もはやベルヘルムを疑うことはなかった。それも探偵として身についた勘なのだろうか。それとも覆しようのない根拠を元に口にしているのか。
「食えぬ奴とは、まさに君のような奴の事をいうのだな・・・。どちらにせよ、私は話すべきことは全て話した。信じるか信じないかは君達次第だ」
「貴重な時間をありがとうございました、ベルヘルム氏。質問は以上です。私達はこれで帰りますが、貴方の方から他に質問はありますか?」
「いや、私もこれ以上はない。後は探偵の腕を見込んで任せるとしよう。早くこの場から解放される事を祈っているよ」
そういうと一行は席を立ち、会釈を交わしてベルヘルムの部屋を後にした。中にいた護衛に案内され、出口までやって来ると、中から扉を開こうとする前に外から扉が開かれた。
「ん?話はもう終わったのか?」
顔を覗かせたのは部屋の外で見張りをしていたプラチドだった。中にいた護衛が何かあったのかと彼に尋ねると、厨房から食事の誘いが来ているのだと伝える。
見送りに来ていたベルヘルムが、会話の内容を聞いていたのか護衛方z寝るまでもなく返事を返す。食事は自分達で済ませる。疑いのある者達が作ったものは安心して口にすることは出来ない。それがベルヘルムの答えだった。
そして彼曰く、ベルヘルムの連れてきた護衛の中には、食べ物の中に隠された毒素を感知できる能力を携えた者はいないのだそうだ。身内の者達しか信じられない現状では、彼の判断も致し方がないだろう。
シン達は外で待たせていたミア達と合流すると、食事の誘いがあったという厨房へ戻るということで意見が一致し、再びきた道を戻ることになった。時刻もいつの間にか夕食時になっており、腹を空かせたツバキが早く行こうとせかしてくる。
伝言を伝えにきたのは、厨房にいた料理人の内の一人らしく、一応宮殿内にいる一部を除いた全ての団体やチームに声をかけたのだそうだ。厨房の横には、全員がやって来たとしても収容できるだけのスペースがある、閑散としたレストランがある。
一行の中では、アカリが毒の感知が可能であり、ケヴィンもマティアスも彼女やシェフを疑う様子はなかった。
厨房へやって来ると、彼らの帰りをシェフが迎え入れ、料理の準備が出来ているとレストランの方へと通される。すると、そこに集まっていたのは、厨房で初顔合わせとなったアンドレイの一行だけだった。
「おや?奇遇ですね。またお会いすることになるとは・・・」
「こちらこそまたお会いできて光栄です、アンドレイ氏。ですが・・・この様子だと他の方々は警戒なさっておいでのようですね」
「無理もありませんね。昨夜人が亡くなっている同じ場所で出される料理を口にするのですから。それに今、殺害の方法として有力視されているのは毒殺。余計に口にするものには注意していることでしょう」
既に席についていたアンドレイが、ケヴィンに対し淡々と事実を口にしながら会話を始める。しかし、それならアンドレイらも警戒するべきなのではと思うシンだったが、いち早く毒素について調べにきていたのはアンドレイらが先だった。
恐らく彼の護衛の中には、食事や食器、衣類や建物の至る所にある毒素を感知できる者がいるのだろう。故に何の疑いもなく、安心して宮殿の用意する食事を口にしようと思えるのだろう。
「でも驚きました。正直なところ、私達以外にには誰も来ないのではと思っていましたので。あなた方の中にも、毒について知識のあるお方が?」
「えぇ、こちらの女性が・・・」
そう言ってアンドレイに見せるように道を開けたケヴィンは、後ろにいたアカリの姿をお披露目する。恥ずかしそうにする彼女の姿を見て、アンドレイらは少し驚いているようだった。
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