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お待ち兼ねの面会
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マティアスがクリスとの関係性や、何故ジークベルトとクリスを合わせたのかについて話すと、二人のその後についてはカメラにより映像の記録と盗聴をしていたというケヴィンが話し始める。
「先程は回りくどい話で怒られてしまいましたからね。今回は皆さんが気になっているであろう結論からお話します」
ツバキのちくちく言葉が刺さったのか、ケヴィンはジークベルトと接触したクリスの件と、クリスを通じて何らかのやりとりをしていたであろうベルヘルムの件について、今回の事件とどんな関わりがあるのかをまず初めに話し始める。
「我々の中で怪しい行動が目立っていたベルヘルム氏ですが、私は彼が今回の事件の犯人である可能性は低いと思います。それにこの後、皆さんに見せるカメラの映像からも、彼がジークベルト氏を殺害したという証拠は何も見つかりませんでした。それどころか、彼が犯行時刻と思われる時間帯にずっと部屋にいたというアリバイを証明するものになっていました」
「それじゃぁクリスの方はどうだったんだ?アイツはベルヘルムって奴と、どんなやり取りをしていた?」
「それに関しても、求めていたような情報はありませんでした。映像には彼がジークベルト氏の依頼でベルヘルム氏の部屋へ何かを届けにきたところが移されていましたが、音声にも部屋の前で護衛の方々による持ち物検査や魔力反応の感知が行われていた様子が伺えます」
「じゃぁその荷物って奴も・・・」
「当然、中身はチェックされているはずです。毒の検査等も抜かりなく行われたことでしょう」
「んだよ!じゃぁわざわざそいつのところに話を聞きに行く必要なんかねぇんじゃねぇか?」
ツバキが言うように、アリバイが証明されているのならわざわざ話を聞きに行くまでもないだろう。しかし、そんなベルヘルムの元へ話を聞きに行こうと言い出したのはケヴィンだった。
彼は一体、これ以上何をベルヘルムに聞こうとしていたのか。ケヴィンはベルヘルムの部屋に仕掛けたカメラの存在を、他の者達に明かすつもりはないらしい。
ケヴィンのカメラに記録されている映像と音声データは、ここにいる彼らにしかわからない情報であり、他の者達を探る際に矛盾点を見つける為の証拠や貴重な情報ともなる。
つまり、誰が嘘をついているかを見抜くための仕掛けという訳だ。
「映像や音声だけでは確認できなかった検査の記録や、その時の様子などについて詳細を伺いたいと思っています。やはり信用できるのは、自身の目と耳で見たものや聞いたもの、そして感じたものやその時の反応などではないでしょうか?」
如何にも探偵らしい言葉を並べ、余裕のある表情すら浮かべるケヴィン。難解な事件に胸を躍らせでもしているのか、一行はまるで上手く言いくるめられたかのような気分で、言われるがままケヴィンの後についていくことにした。
まず初めに一行が向かったのは、ベルヘルム・フルトヴェングラーのいる部屋だった。アルバに招待された有名な音楽家の内の一人であるベルヘルムは、作曲家であり優秀な指揮者とピアニストを兼任する、この世界において屈指の実力と実績を有しているのだそうだ。
パーティーの際、シンがケヴィンと共にカメラによりVIPルームを覗き見ていた時も、彼のその風貌は威厳のある厳格者といった様子であった。故にシークベルトとの会話には、余計な会話などなく要件だけを話し合うというつまらないものだった。
ケヴィンらとは違い、他の者達や要人達は彼のことを特別疑っているわけではないようで、ルーカスやクリスのように生前のジークベルトに接触した、或いは殺害の動機があるであろう人物達のように、厳重な監視はついていなかった。
三階にある彼の部屋の前には、ベルヘルムの護衛が二人立っていた。シン達の存在に気がつくと、とても歓迎されているとは思えない様子で話しかけられる。
どうやら他の者達の訪問でも受けていたのだろうか、彼らもうんざりとした様子だった。
「アンタ達も何か?」
「“アンタ達も“?他にも誰かいらしたのですか?」
「あぁ、アンドレイとその護衛の連中が長いこと俺らのことを調べに来ていたよ。まるで自分達は潔白であるかのようにね・・・。アンタらも同じ口かい?」
「我々も潔白である証拠はありません。できれば情報交換でも出来ればと思いまして伺いました。ベルヘルム氏はいらっしゃいますか?」
ケヴィンは自分達も容疑者の内の一人に過ぎないと言い、互いに監視しながら出歩いている事を護衛の者達に話す。実際のところ、一行の乗り気ではない様子が功を奏したのか、ベルヘルムの護衛らの警戒心も然程高まる事なく部屋の中にいるというベルヘルムに話を通してくると、暫くの間部屋の前で待たされることになった。
暫くすると、先程部屋の中へは行っていった護衛が戻ってくる。すると彼は、中でベルヘルムから言い渡された面会の条件について口にする。彼の出した条件というのは、互いに監視下にある勢力の代表者一人ずつの、計三名までといっているそうだ。
そもそも広い部屋だとはいえ、大勢で押しかけるには些か狭さを感じる。それに万が一訪問者達が結託していた際に襲われかねないということも配慮しての条件なのだろう。
ケヴィンはそれで構わないと護衛の者に話し、シン達の中から代表者を決めるように言い渡す。一行は特に話し合いをする間もなくシンを代表者として選び、ケヴィンとマティアス、そしてシンの三人でベルヘルムの部屋へと入っていく。
中にはベルヘルムの護衛の他に、ジークベルトの近辺にいた教団の護衛も立っていた。外への出歩きをしていないとはいえ、見張りの者はそれぞれの部屋に配置されているらしい。
彼らの前を通り過ぎ、部屋の奥へと歩いていくと、その先にまるで偉い軍人のような装飾を施した服装の人物が、外を眺めるように窓際に立っていた。
「今度は探偵のお出ましか。して・・・お前達は今回の事件についてどんな情報を持っているのかな?」
彼らの前に現れたのは、とても音楽家とは思えぬ風貌をした大柄の男だった。
「先程は回りくどい話で怒られてしまいましたからね。今回は皆さんが気になっているであろう結論からお話します」
ツバキのちくちく言葉が刺さったのか、ケヴィンはジークベルトと接触したクリスの件と、クリスを通じて何らかのやりとりをしていたであろうベルヘルムの件について、今回の事件とどんな関わりがあるのかをまず初めに話し始める。
「我々の中で怪しい行動が目立っていたベルヘルム氏ですが、私は彼が今回の事件の犯人である可能性は低いと思います。それにこの後、皆さんに見せるカメラの映像からも、彼がジークベルト氏を殺害したという証拠は何も見つかりませんでした。それどころか、彼が犯行時刻と思われる時間帯にずっと部屋にいたというアリバイを証明するものになっていました」
「それじゃぁクリスの方はどうだったんだ?アイツはベルヘルムって奴と、どんなやり取りをしていた?」
「それに関しても、求めていたような情報はありませんでした。映像には彼がジークベルト氏の依頼でベルヘルム氏の部屋へ何かを届けにきたところが移されていましたが、音声にも部屋の前で護衛の方々による持ち物検査や魔力反応の感知が行われていた様子が伺えます」
「じゃぁその荷物って奴も・・・」
「当然、中身はチェックされているはずです。毒の検査等も抜かりなく行われたことでしょう」
「んだよ!じゃぁわざわざそいつのところに話を聞きに行く必要なんかねぇんじゃねぇか?」
ツバキが言うように、アリバイが証明されているのならわざわざ話を聞きに行くまでもないだろう。しかし、そんなベルヘルムの元へ話を聞きに行こうと言い出したのはケヴィンだった。
彼は一体、これ以上何をベルヘルムに聞こうとしていたのか。ケヴィンはベルヘルムの部屋に仕掛けたカメラの存在を、他の者達に明かすつもりはないらしい。
ケヴィンのカメラに記録されている映像と音声データは、ここにいる彼らにしかわからない情報であり、他の者達を探る際に矛盾点を見つける為の証拠や貴重な情報ともなる。
つまり、誰が嘘をついているかを見抜くための仕掛けという訳だ。
「映像や音声だけでは確認できなかった検査の記録や、その時の様子などについて詳細を伺いたいと思っています。やはり信用できるのは、自身の目と耳で見たものや聞いたもの、そして感じたものやその時の反応などではないでしょうか?」
如何にも探偵らしい言葉を並べ、余裕のある表情すら浮かべるケヴィン。難解な事件に胸を躍らせでもしているのか、一行はまるで上手く言いくるめられたかのような気分で、言われるがままケヴィンの後についていくことにした。
まず初めに一行が向かったのは、ベルヘルム・フルトヴェングラーのいる部屋だった。アルバに招待された有名な音楽家の内の一人であるベルヘルムは、作曲家であり優秀な指揮者とピアニストを兼任する、この世界において屈指の実力と実績を有しているのだそうだ。
パーティーの際、シンがケヴィンと共にカメラによりVIPルームを覗き見ていた時も、彼のその風貌は威厳のある厳格者といった様子であった。故にシークベルトとの会話には、余計な会話などなく要件だけを話し合うというつまらないものだった。
ケヴィンらとは違い、他の者達や要人達は彼のことを特別疑っているわけではないようで、ルーカスやクリスのように生前のジークベルトに接触した、或いは殺害の動機があるであろう人物達のように、厳重な監視はついていなかった。
三階にある彼の部屋の前には、ベルヘルムの護衛が二人立っていた。シン達の存在に気がつくと、とても歓迎されているとは思えない様子で話しかけられる。
どうやら他の者達の訪問でも受けていたのだろうか、彼らもうんざりとした様子だった。
「アンタ達も何か?」
「“アンタ達も“?他にも誰かいらしたのですか?」
「あぁ、アンドレイとその護衛の連中が長いこと俺らのことを調べに来ていたよ。まるで自分達は潔白であるかのようにね・・・。アンタらも同じ口かい?」
「我々も潔白である証拠はありません。できれば情報交換でも出来ればと思いまして伺いました。ベルヘルム氏はいらっしゃいますか?」
ケヴィンは自分達も容疑者の内の一人に過ぎないと言い、互いに監視しながら出歩いている事を護衛の者達に話す。実際のところ、一行の乗り気ではない様子が功を奏したのか、ベルヘルムの護衛らの警戒心も然程高まる事なく部屋の中にいるというベルヘルムに話を通してくると、暫くの間部屋の前で待たされることになった。
暫くすると、先程部屋の中へは行っていった護衛が戻ってくる。すると彼は、中でベルヘルムから言い渡された面会の条件について口にする。彼の出した条件というのは、互いに監視下にある勢力の代表者一人ずつの、計三名までといっているそうだ。
そもそも広い部屋だとはいえ、大勢で押しかけるには些か狭さを感じる。それに万が一訪問者達が結託していた際に襲われかねないということも配慮しての条件なのだろう。
ケヴィンはそれで構わないと護衛の者に話し、シン達の中から代表者を決めるように言い渡す。一行は特に話し合いをする間もなくシンを代表者として選び、ケヴィンとマティアス、そしてシンの三人でベルヘルムの部屋へと入っていく。
中にはベルヘルムの護衛の他に、ジークベルトの近辺にいた教団の護衛も立っていた。外への出歩きをしていないとはいえ、見張りの者はそれぞれの部屋に配置されているらしい。
彼らの前を通り過ぎ、部屋の奥へと歩いていくと、その先にまるで偉い軍人のような装飾を施した服装の人物が、外を眺めるように窓際に立っていた。
「今度は探偵のお出ましか。して・・・お前達は今回の事件についてどんな情報を持っているのかな?」
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