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隠し事の開示請求
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漸くというべきか、ケヴィンの信頼を得たシン達はアルバの失踪事件の犯人であるという候補から外された。一行が厨房へ帰ってくると、アカリは既に植物の調査を終え、シェフの作ったものと思われるお菓子を皆で食べていた。
「あ!ミアさんシンさん、お帰りなさい」
「どうだった?何か手掛かりは掴めたかい?」
呑気に頬を膨らませながら喋りかけてくる二人に、僅かにため息を零した二人は、取調室でアンジェロが言っていた事と、ケヴィンが質問していた内容について話した。
「なんだよ、結局進展はなしかぁ?」
「まぁ事件の進展はなかったけど、俺達の疑いは少し晴れたよ」
「あぁ?俺らってそんなに疑われてたんかぁ?」
シンは思わず口走ってしまった失言にハッとする。ツバキやアカリだけでなくツクヨもシン達がケヴィンに疑われていたことについて何も知らなかった。
取調室の帰りに話を聞いていたミアは、シンが何故そのことを仲間達に離さないのかこの時はまだ理解していなかったが、とりあえずは困った表情を浮かべたシンの気持ちを汲み取り、助け舟を出した。
「余所者だからだろ?アタシらはアルバの人間でもなければ、音楽に詳しい訳でもない。ただの観光客となんら変わらないからな」
「でもさぁ、関係者である方が怪しくねぇか?関係があるから恨んだり妬んだりすんだろ?」
子供のくせに可愛くない返しで素直に受け入れないツバキに、ミアは目を細めながらそんなことは知らないとだけ言い、この話は終わった。厨房での調査も結局のところ、鑑識で発見されたもの以上の手掛かりは見つからず、毒についてもトリカブトについてのことくらいしか分からず、それが犯行に使われたものである証拠も根拠もなかった。
だが、アカリのリナムルで身につけた植物の知識は、宮殿の料理長であるシェフのレシピに良い刺激を与えたようで、早速新しく身につけた知識を使い、厨房にある食材で簡単なデザートを振舞ってくれていたようだった。
特にシェフの出したデザートを疑うことなく口にした彼らを、シェフもとても気に入ってくれたようで、最初に会った時と比べると大分顔色が明るくなっていた。
「君達のおかげで、沈んでいた気分も少しはマシになったよ。ありがとう」
「いえいえ、私達の方こそこんなに美味しいものご馳走して頂き、感謝しております」
「流石は宮殿シェフだな!元からあったレシピじゃねぇんだろ?それを思いつきで作っちまうんだから大したもんだぜ!」
あの口の悪いツバキがこれほど絶賛するのも珍しい。それだけ言わしめるのならと、遅れてやって来たシンとミアもテーブルに置かれたあまりのデザートの方に視線を向ける。
するとそれに気がついたシェフが笑顔でおひとつどうぞと勧めてくれた。こういうものは食べたくても自分からは聞きづらいものだろう。この時ばかりは絶賛するツバキに心の中で感謝したシンとミアだった。
丁度いい腹拵えが出来たところで、一行は次にケヴィンの提案でベルヘルム・フルトヴェングラーのところへ話を聞きに行ってみる事となった。
ベルヘルムは亡くなったジークベルトともVIPルームで意味深な会話をしていた人物の一人だ。その事もあって、ケヴィンは彼のことを探ろうとシンを使ってカメラまで仕掛けようとしていた。
そういえばケヴィンからその後の話を何も聞いていなかった。彼はシンが仕掛けたカメラでどのような会話を聞いたのか。或いはベルヘルムにどんな動きがあり、誰と会っていたのか。
これまで散々シン達を疑い、利用するだけ利用して肝心なところは話さない。向こうはこちらを信用しても、こちらは有名かなんだか知らないが、アルバで出会ってからというものの怪しいところしか見ていないシンは、いい加減振り回されるのも嫌になり、移動するよりも先にここでベルヘルムの情報について皆に開示することを求めた。
「なぁ、ベルヘルムのところへ向かうのは構わないが、そろそろアンタの事も話してくれないか?じゃないと俺達も、アンタを信用しきれない・・・」
仲間達に聞こえぬよう、小声でケヴィンに呼びかけるシン。その声からは曇りのない誠心誠意の真っ直ぐさが込められており、ケヴィンの心にある罪悪感の部分を表に引き摺り出すように抉った。
「そうですね・・・。流石に何も伝えぬままというのは、よくありませんよね」
思わず口にした言葉だったが、まさかここまで突き刺さるとは思っていなかったシンは、予想外の彼の反応に逆に戸惑わされてしまった。
「あ!ミアさんシンさん、お帰りなさい」
「どうだった?何か手掛かりは掴めたかい?」
呑気に頬を膨らませながら喋りかけてくる二人に、僅かにため息を零した二人は、取調室でアンジェロが言っていた事と、ケヴィンが質問していた内容について話した。
「なんだよ、結局進展はなしかぁ?」
「まぁ事件の進展はなかったけど、俺達の疑いは少し晴れたよ」
「あぁ?俺らってそんなに疑われてたんかぁ?」
シンは思わず口走ってしまった失言にハッとする。ツバキやアカリだけでなくツクヨもシン達がケヴィンに疑われていたことについて何も知らなかった。
取調室の帰りに話を聞いていたミアは、シンが何故そのことを仲間達に離さないのかこの時はまだ理解していなかったが、とりあえずは困った表情を浮かべたシンの気持ちを汲み取り、助け舟を出した。
「余所者だからだろ?アタシらはアルバの人間でもなければ、音楽に詳しい訳でもない。ただの観光客となんら変わらないからな」
「でもさぁ、関係者である方が怪しくねぇか?関係があるから恨んだり妬んだりすんだろ?」
子供のくせに可愛くない返しで素直に受け入れないツバキに、ミアは目を細めながらそんなことは知らないとだけ言い、この話は終わった。厨房での調査も結局のところ、鑑識で発見されたもの以上の手掛かりは見つからず、毒についてもトリカブトについてのことくらいしか分からず、それが犯行に使われたものである証拠も根拠もなかった。
だが、アカリのリナムルで身につけた植物の知識は、宮殿の料理長であるシェフのレシピに良い刺激を与えたようで、早速新しく身につけた知識を使い、厨房にある食材で簡単なデザートを振舞ってくれていたようだった。
特にシェフの出したデザートを疑うことなく口にした彼らを、シェフもとても気に入ってくれたようで、最初に会った時と比べると大分顔色が明るくなっていた。
「君達のおかげで、沈んでいた気分も少しはマシになったよ。ありがとう」
「いえいえ、私達の方こそこんなに美味しいものご馳走して頂き、感謝しております」
「流石は宮殿シェフだな!元からあったレシピじゃねぇんだろ?それを思いつきで作っちまうんだから大したもんだぜ!」
あの口の悪いツバキがこれほど絶賛するのも珍しい。それだけ言わしめるのならと、遅れてやって来たシンとミアもテーブルに置かれたあまりのデザートの方に視線を向ける。
するとそれに気がついたシェフが笑顔でおひとつどうぞと勧めてくれた。こういうものは食べたくても自分からは聞きづらいものだろう。この時ばかりは絶賛するツバキに心の中で感謝したシンとミアだった。
丁度いい腹拵えが出来たところで、一行は次にケヴィンの提案でベルヘルム・フルトヴェングラーのところへ話を聞きに行ってみる事となった。
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そういえばケヴィンからその後の話を何も聞いていなかった。彼はシンが仕掛けたカメラでどのような会話を聞いたのか。或いはベルヘルムにどんな動きがあり、誰と会っていたのか。
これまで散々シン達を疑い、利用するだけ利用して肝心なところは話さない。向こうはこちらを信用しても、こちらは有名かなんだか知らないが、アルバで出会ってからというものの怪しいところしか見ていないシンは、いい加減振り回されるのも嫌になり、移動するよりも先にここでベルヘルムの情報について皆に開示することを求めた。
「なぁ、ベルヘルムのところへ向かうのは構わないが、そろそろアンタの事も話してくれないか?じゃないと俺達も、アンタを信用しきれない・・・」
仲間達に聞こえぬよう、小声でケヴィンに呼びかけるシン。その声からは曇りのない誠心誠意の真っ直ぐさが込められており、ケヴィンの心にある罪悪感の部分を表に引き摺り出すように抉った。
「そうですね・・・。流石に何も伝えぬままというのは、よくありませんよね」
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