World of Fantasia

神代 コウ

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高値の茶葉

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 そもそもジークベルトが宮殿へ茶葉を持ち込んだのはいつだったのか。シェフの話とアンジェロの話が噛み合うかどうかを確かめる為か、ケヴィンは厨房で聞いたシェフの話は一切出さなかった。

 アンジェロ曰く、茶葉を初めて見たのは式典が行われる早朝。宮殿へ視察で訪れている時に、仕込みをしていた彼らのいる厨房へ大司教と護衛隊長のオイゲンがやって来た。

 茶葉はその時に渡されたもので、シェフとアンジェロはその珍しい茶葉に目を奪われたのをよく覚えているとの事だった。茶葉の種類は“ウバ“というものらしく、産地は日中の高温と夜間の冷気により霧の発生しやすい土地だという。

 その環境によってバラやスズランの花香の甘い刺激的なフレーバーが作り出される為、特に珍重されて高値が付けられている代物だそうだ。WoFの世界でも珍しい気候の土地で生産される事の多いウバフレーバーは、渋みと特有の香気、コクがあり明るい真紅色をした水色で、見た目にも美しい紅茶とされているらしい。

 厨房で植物の調査をしているアカリから、茶葉の採れた土地の気候や環境を聞いて、同じような場所にスズランが咲いていた可能性があるという話を聞かされていたシン達一行。

 スズランにも人体に影響を及ぼす毒素として、コンバラトキシンやコンバロシドといった有毒物質が含まれているらしい。初めはその線で疑っていたようだが、後にスズランの毒は検出されなかったとされている。

 やはりジークベルトを死に至らしめたのは、どこかで混入したトリカブトの毒素によるものなのだろうか。

 ケヴィンがジークベルトの死に関して毒が用いられたのではないかとアンジェロへ話すと、彼は顎に手を当てて同じ話を話し始めた。そのウバと言われる茶葉を扱ったことのある彼は、以前にその茶葉を扱った際、スズランの毒素により生産者が亡くなったことがあるという話を聞かされていた。

 同じような土地に生息する別の植物による毒素。それが何らかの要因で混入し毒が混じってしまうことは珍しいらしいが、決して侮れないことでもあるという。それは彼が料理人として、提供する食事への安全性を徹底するからこそ考慮する点であるのかもしれない。

 扱いについても現地から学んでいたアンジェロは、ジークベルトから預かったその茶葉を淹れる際も、細心の注意を払い淹れたのだと語る。それを証明するかのように、ジークベルトの部屋の前まで運んだ彼を徹底的に調べた護衛隊の結果は、毒素や魔力の混入などを一切感知されなかったとされている。

 「ではアンジェロさんは、どこで毒が混入したと思いますか?」

 「あぁ?そんなん知らねぇよ。・・・だがまぁ、俺が触れて紅茶を淹れて、大司教の部屋に届けたその間の工程では、どう足掻いたって混入する筈がねぇから、大司教が受け取った後の部屋の中でじゃねぇのか?」

 そう言って周囲の護衛を見渡すアンジェロ。大司教の部屋の中がどうなっていたのかなどは、彼らの方がよく知っている筈だと疑いの目を向ける。

 護衛達もまた、複数の護衛達の間で互いに持ち物や状態のチェックを行なっていたようだ。なので、アンジェロが疑うような事は一切ないと言い張る護衛隊だったが、全員が結託して犯行に及んだのではないかと追求すると、またしても取調室の空気は悪くなる。

 「とっとにかく!アンジェロ氏が毒を盛ったという線は、護衛隊のあなた方が無実だと証明しているようなものですね。そうでなければ、彼のいうようにあなた方の検査に抜けがあったのか、手抜きをしていたことになりますよ?」

 「お前も我々を愚弄するつもりか?そんな失態などあり得ない。大司教殿の護衛に選出されたメンバーは、親しみ深い者達ばかりと言う訳ではない。こう言った事態に、対等な立場で検査を行えるようにメンバーは抽選されている。ましてや、今回の遠征に関しては大司教殿本人による護衛隊の編成だったのだ。疑う余地などあるまい」

 「おや、これはまた新しい事実が判明しましたね」

 「別に隠していた訳でもない。聞かれなければ話すまでもない事だっただけだ。それに事件とは関係ないだろ?」

 護衛の言うように直接的な関係はないのかもしれない。だがこれで新たに、護衛達の結託による行動という疑いも薄れることになる。宮殿に閉じ込められている者達と同じように、護衛は護衛同士を信頼しているという贔屓の線は絶たれたことになる。

 「ですがいい事を聞きました。これで護衛の方々も、私達と同じように対等に相手を疑っていることが分かりましたから・・・」

 「・・・・・」

 沈黙の中で互いに視線を交える護衛達。言葉は交わさずとも、互いに自分の無実を証明するため真摯に調査へ打ち込む姿勢に、更に気が引き締まるのを感じていた。

 「なぁ~?探偵さんもこう言ってんだ。俺もそろそろ解放してくれてもいいんじゃねぇか?」

 「アンタは他の者達よりも、犯人である可能性が高い。それに皆、アンタを犯人にしたがってるんだ。ここにいた方が安全かもしれんぞ?」

 「なッ・・・何だよ、脅しのつもりか?」

 護衛は決して脅しで言っているのではなかった。誰が犯人かも分からず、こんな監禁状態が続けば解放を求めて、自分達で犯人を作り上げ兼ねない。そして、早々に事件を闇に葬るため自殺を装い、最も疑わしき人物を殺してしまうケースも少なくはない。

 犯行の手段が分からない上に、直接的な外傷やスキルによる暗殺でも無いことが、一行を更に不安にさせていた。犯人も手口も分からない中で、その犯人と同じ場所に閉じ込められている。犯人がジークベルトだけを狙っていたとは限らない。変に疑いの目を向けられれば、口封じの為に殺され兼ねないからだ。

 「さぁ、そろそろよろしいですかな?ケヴィンさん」

 「えぇ、お邪魔してしまい申し訳ありません」

 笑顔でおどけるケヴィンに無表情で扉を開き出口を案内する護衛。無愛想な顔に見送られながら、ケヴィンとシンとミアは取調室を後にした。
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